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2025年1月17日

【藤井聡】阪神淡路大震災から30年.日本国家の「復興力」は激しく凋落した.その根幹にあるものこそ,岸田・石破政権に象徴される「国民よりも財政規律」という棄民思想である.

本日は,阪神淡路大震災からちょうど30年目.30年前の本日1月17日,午前5時46分に,阪神淡路地域を最大震度7の地震が襲いました.

戦後日本国民が始めて体験した,100万人以上の人口を抱える大都市がまるまる破壊されてしまうという都市型大震災.

日本の歴史全体で考えても,「近代都市の大震災」というのは,1923年の関東大震災以来の二度目の経験となりました.

当方は当時,京都大学のまだ20代の若手助手で, その大きな揺れを京都市内で体験しました.

「大変に大きな揺れ」だと感じたので,てっきり震源地は京都なのかと思っていましたが,テレビをつけてみて神戸あたりが震源地だと知ります.

そのテレビの映像は,これまで「B29による大空襲で都会が焼け野原になる」という話も映像も繰り返し目にしてきましたが,そんな恐ろしい焼け野原が,この平和の現代日本において有る筈等ない…と漠然と感じていた「平和ボケ」にどっぷりと浸かった20代の当方の精神を,激しく揺さぶる恐るべき映像でした.

あれから30年…その間に,観測史上,阪神淡路大震災で初めて記録された「震度7」を記録した大地震として,中越地震(2004年)が起こり, 東日本大震災(2011年)が起こり,熊本地震(2016年)が起こり,胆振東部地震(2018年)が起こり,そして昨年2024年のお正月には能登半島地震が起こり.

つまり,それまでとは次元の異なる大地震が,過去30年の間に,6回も,おおよそ5年に一度のペースで繰り返される状況となったのです.

地震に関する地学者達はこういった状況を「地震活性期」と呼び,大地震が頻発する期間であるととらえています.

とりわけ,日本国家に対して激烈に深刻な被害をもたらす南海トラフ地震は,過去においてもその発生前の40年間は(それ以外の期間よりも圧倒的に)よりも圧倒的に多い頻度で地震が起こってきたことが知られています.

それを踏まえると,日本は正に今,南海トラフ地震の「カウントダウン」が始まった状況にあると言えるでしょう.

しかし,日本の復旧・復興力は,この30年間でどんどん「退化」してきてしまっているように思えます.

あの阪神淡路大震災を振り返ってみると,政府も民間も,一日でも早く被災された方々を救うために,元通りの暮らしや活動を取り戻す為に,平時における「マニュアル」や「平時のルール」を度外視した復旧・復興に取り組んだ姿勢があったことが見て取れます.

例えば,あの600メーター以上にわたって倒壊してしまった阪神高速道路の復旧には当初,「最低でも3年はかかる」と見られていましたが,各種規制によって平常時のルールでは採用できない様なさまざまな技術やアイディアが現場の判断で次々と採用され,1年9ヶ月で復旧されました.

同様に,JR六甲道駅も復旧には2年はかかると当初言われていましたが,倒壊した駅舎の「梁」をそのまま活用する等の様々な工夫を重ね,僅か2ヶ月と2週間(64日)で復旧させました.

民間においても,例えば,ダイエー創業者・中内功氏は,『店の明かりをつければ、それだけで被災者たちは力が出る』と語り,『行政を無視』して、開けられる店は全て営業するように号令を出し,ヘリコプターやフェリーを使い食料品や生活用品を運んで店頭に並べ、自らも三日後に現地に入り陣頭指揮をとりました.

こんな官民の復旧,復興に向けた半ば命がけの真剣な取り組みは勿論,「官邸・国会」においても共有されていましたた.

地震から僅か1月強後の2 月 28 日には,1兆円以上の(1994 年度第二次)補正予算を成立させ,その三ヶ月後の5 月 19 日にはさらに追加の1.4兆円の震災復興予算を含めた(1995年度)補正予算を成立させています.

つまり,まだ日本がデフレ不況に突入する前の,未だ経済が成長していた,30年前の1995年当時,日本には,

「未曾有の被害を受けた神戸の人達を助けよう!」

という機運が民間にも政府にも,地方にも中央にも十分に漲っており,平常時のルールを度外視して迅速な復旧復興が進められたのです.

…しかし…

誠に残念ながら,それから30年が経過した今日,被災地を助けだそうという機運は(皆無となったとは言わずとも),かつてに比して圧倒的に縮小してしまっていることは否定しがたい事実です.

能登半島地震について,中央政府においては岸田政権も石破政権も,阪神淡路大震災時のような「補正予算」を全く組もうとしません.「予備費」があるから良いじゃないかというのが彼らの言い訳ですが,予備費では,その予算執行の基本ルールは全て『平常時』を想定してつくられたものに準拠する,という柔軟性のない予算執行が余儀なくされてしまうのです.

補正予算ならば,復旧復興を想定した柔軟な執行を可能とすることが国会決議で可能となるのですが,予備費ではそうはいかないのです.これが,被災地の復旧復興の大きな妨げとなっています(例えば,予備費では「大渋滞が頻発する道路を利用して被災地の半島の先まで移動して復旧作業をする」という特殊な状況のために必要な追加費用が必ずしも十分に手当てされず,十分に建設業者が集まらないという事態を招きかねないのです).

さらには,政界・官界・言論界においても,例えば立憲民主党の米山隆一衆院議員は,被災の状況によっては復旧を諦めて被災者の移住を促進すべきだという発言したり,政府・財務省の財政審議会の答申においても,全く同様の主張がなされる等,「過疎地の復旧は無駄だ」といわんばかりの主張が平然と繰り返されるに至っています.

彼らはさながら「言いにくい事を言うのが政治の責務なのだ!」と言わんばかりの,歪んだ正義感と言わざるを得ない感覚をお持ちのようです.

政治家や政府の答申が「復興を諦めろ」という論調であり,補正予算も組まれないのですから,民間の復興に対する機運が拡大しないのも致し方ない…と言えるようにも思えます.

例えば,能登半島地震の復興では,圧倒的な「ボランティア不足」の状況が続いているようです.東日本大震災では半年ほどで閉所へ向かう災害ボランティアセンターも多くあった一方で,今回は震災から1年が近づいても終わりが見えない,とレポートされています.
https://sdgs.yahoo.co.jp/originals/243.html

こうみれば,官邸も財務省も国会議員も一般の国民も,30年前とは比べものにならないくらいに,「被災者を助ける意欲」「国家としての復旧復興意欲」が減退しているように思われます.

中には,国土交通省のテックフォース(復旧復興の技術・能力を持った全国の国交省職員で公正される,復旧復興支援の舞台)のように,この30年間で進歩したものもあるにはあるのですが,国家全体の復興意欲の減退は,明らかなものと言えるでしょう.

この状況を打開するには,まずは中央政府において,強力なリーダーシップを発揮することが必要なのですが,補正予算一つ組めない現在の岸田・石破政権にそれは全く期待できないと言わざるを得ないでしょう….

要するに,岸田政権から石破政権に引き継がれた現在の政府は,「国民よりも財政規律」という棄民思想が,その政治の根幹に巣くっているのです.

この状況を打開するには,棄民思想を持たぬ,国民を慮る政治家を中心とした新しい政権を樹立する他ないのです.

阪神淡路大震災から30年…この節目に,改めて,国民を慮る当たり前の常識を持つ政権が存在することこそが,復旧復興の要諦であり,強靱化な国を作り上げるための最重要課題であるとしみじみと感じます.

能登半島の迅速な復興のためにも,そして,きたるべく国難級の数々の巨大災害を乗り越えるためにも,欧米やアジア諸国等の政府と同程度に,国民を慮る態度を持った政権が日本において成立することを,心から祈念したいと思います.

追伸:石破・岸田政権の「棄民思想」は,その税政,経済政策に如実に表れています.彼らのような「今だけ地位だけ自分だけ」な政治屋達を政権から排除できない限り,日本に明るい未来が訪れることなどあり得ないのでしょう…

『政府は「税を不当に徴収し過ぎ」である.困窮する国民から昨年から8兆円以上,コロナ前から約20兆円も多く徴税.この「還元」こそが「178万への壁引き上げ」の財源である.』
https://foomii.com/00178/20250113155511133722

 

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