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2024年6月12日
【藤井聡】維新・馬場代表「大阪都構想,三度目の住民投票」を目指すと発言.それは民主主義の原則も住民自治の原則も完全に破壊する「絶対許してはならない」最悪の暴挙です
驚くべき事に,維新の馬場代表が,大阪都構想「3度目チャレンジしたい」と発言していることが報道されました.
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6503921
大阪都構想と言えば,これまで一度ならずも二度も,直接の住民投票で「否決」された維新提案.
一度目の否決の際には,当時の橋下大阪市長は,
「最後、この結果は本当に悔いなし、リベンジはないです」
と再住民投票を明確に否定し,二度目の否決の際には,吉村大阪府知事の
「僕自身が大阪都構想に政治家として挑戦することはもうありません。もうやり切ったという思いです」
と,同じく,自身が再住民投票に関わることを明確に否定しています.
したがって吉村府知事はここまで言っていた以上,この馬場宣言を受けても「今も考え方は変わらない」と発言していますし,横山大阪市長も「今時点で何も議論は動いていない。実施の有無含めて現段階では白紙」と馬場氏への賛同の意は表明していません.
そもそも民主主義における住民投票・選挙というものは,結果が出るまでどれだけ激しく論争していようが,一旦結果が出れば,ノーサイドとなり,その結果を有権者「全員」が受け入れることを「義務」付けられているもの.それが民主主義の最低限のルールです.
したがって言うまでも無く馬場代表自身も,過去の住民投票で否決された結果を受け入れる「義務」があるわけです.ですから,今回の馬場氏が言う三度目のチャレンジなるものは,その「義務」を完全に違反した,民主主義の前提を破壊する極めて深刻な暴挙なのです.
もちろん,前回の住民投票の時か大きな根本的な変化があるなら,再度の住民投票が正当化されることもあり得るかもしれません.しかし,馬場代表自身も,再度の住民投票を正当化できるような何らかの大きな変化があったとは,何ら説明していないのです.
これでは「最高裁で判決」がでた後に,「僕はその判決が気に入らない!だから,もう一回,裁判やってくれ!」と言っているようなもの.つまり,今回の馬場三度目チャレンジ宣言は,根本的なルール違反なのであり,こんなルール違反の馬場発言など,いちいちメディアで取り上げてはいけない「戯れ言の類い」なのです.
…
そもそも大阪都構想というものは,単なる「通称」に過ぎず,その本質は
「大阪市廃止・特別区設置構想」
です.つまり,大阪市という地方自治体を解体してしまい,それをいくつかの「特別区」という,大阪市よりも財源も権限も極端に小さな自治体に分割する,というものです.
(詳しくはコチラ:『都構想の真実』https://www.amazon.co.jp/dp/4899920725)
そんなことをすれば,大阪市民は,大きな財源と権限を失い,住民サービスレベルが大幅に低下することは必至なのです.
維新は「二重行政を廃止するため」と主張していますが,二重行政そのものは悪いものでも何でもありません.例えば当方は「京都市民」ですが「京都府民」でもあり,両方の自治体のサービスを享受しており,何ら不都合等ありません.それどころか当方は,府と市の両方のサービスを享受できることから,「京都府」だけしか無い状況(いわば「京都都構想」)より,より高いレベルのサービスを享受しているわけです.
こうした事実を知らない市民が「賛成」を示していたわけですが,こうした事実がさらに知れ渡れば,賛成する市民はさらに減少することは確実です.というより,こうした<真実>が住民投票の機会を通してそれなりに大阪市民に広まったからこそ,二度にわたって否決されているわけです.
つまり,「筋論」から考えても「政策論」から考えても,「都構想」の住民投票等繰り返す必要など微塵もないのです.
ただし,こうした構図を認識している馬場代表は,今度は投票対象者を「大阪市民」だけでなく,「大阪府民」に広げようとしています.
そうなると,賛成者は今よりも増える可能性が考えられます.なぜなら,(大阪市以外の)大阪府民は,大阪市が持つ財源と権限を「奪い取る」「吸い上げる」ことができるのですから,自分たちにとっては「得だ」と考え,賛成に回る可能性が考えられるからです.
…しかし,それもあくまでも「短期的」な話し.
「長期的」に考えれば,大阪府の成長の「メインエンジン」である大阪市が衰退すれば,大阪府民も巨大な不利益を被ることになります.
ただし,目先の利益を大阪府民が追い求める傾向が強ければ,多くの府民が賛成票を投ずることになるでしょう.
…というような議論はあり得るのですが,そういう議論以前にそもそも,「大阪市の解体」を「大阪市民自身」で決めるのではなく,「大阪市以外の府民」の意見も含めて決めようとするのは,大阪市の「自治の精神に完全に反する」もの.
これでは,日本の政策を,アジア全体の会議体で決定するようなものです.それは,「自治」の精神に根本的に反するものです.
したがって,今回の馬場氏の都構想の三度目住民投票宣言は,第一に,過去に否決された民主的決定を尊重せず,それを受け入れる義務を無視することを通して「民主主義」の原則を破壊するものであり,第二に,大阪市の行政のあり方を大阪市民以外が関与して決定することを通して「地方自治」の原則を破壊するものでなのす.したがってそれは,民主主義や地方自治の原理原則の視点から,絶対に是認できない宣言なわけです.
後は,大阪が最悪の地獄に突き落とされるか否かは,「日本人」,とりわけ「大阪人」が,この<真実>をどれだけ理解していけるのか否かにかかっていると言えるでしょう.
日本人,そして大阪人の良識を,信じたいと思います.
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