日本経済

2024年4月1日

【室伏謙一】単なる「安倍憎し」で評価や選択を誤ってはいけません

 政策には、なんでもそうですが、正しいものもあれば間違ったものもあります。安倍政権下で企画立案され、執行された政策には、格差を拡大させたり、日本の産業を衰退させたり、地域の破壊につながったりしたものもありますし、「デフレ脱却」とは正反対にはたらくものもあります。しかし、だからと言って安倍政権の政策が全てダメだったという話ではありません。

 しかし、これは「いいものもあれば悪いものもあるんだから仕方がないじゃん。」といった類の話ではありません。それでは評価を曖昧にしてしまって、臭いものには蓋をする類の話になってしまいます。

 一方で、結果として生じている現在の日本の状況から、「アベノミクスは失敗した」というように、頭ごなしに否定するのも、臭い物に蓋をするの類と言えます。そしてこの後者の態度、考え方は緊縮派と左翼リベラル系を中心に多く見られますが、左翼リベラル系の場合はどうも「安倍憎し」からアベノミクス全否定という流れになっているようです。

 先月19日、日本銀行の金融政策決定会合において、金融政策の枠組みの見直しが決定されました。その中身は、マイナス金利の解除、イールドカーブコントロール(YCC)の終了、ETFの購入の停止、そして、支払準備金への0.1%の金利付与。要するにアベノミクスの大規模な金融緩和を終了させるということ。

 これを受けて雨後の筍のように、アベノミクス否定、アベノミクス失敗説がネットには氾濫するようになりました。もちろん、金融緩和を苦々しく思っていた財務省や主流派経済学者らが仕掛けたものもありますが、先ほど挙げた「安倍憎し」の人たちの論調はと言えば、アベノミクスのせいで格差が拡大した、無用の金融緩和のせいで、失敗したのにそれを認めずに続けてきたらから物価高に苦しむことになったのだ、安倍政治の象徴がアベノミクスだから終わらせるのは当然・・・といった評価。「坊主憎けりゃ袈裟まで」の世界ですね。

 そうした彼らの論調、評価に共通するのは、アベノミクスとは何か、何を目指し、何が不十分で、何がダメだったのかについて理解できておらず、したがって評価もできていないということ。

 アベノミクスは異次元の金融緩和と機動的な財政政策、そして成長戦略によって構成されるわけですが、異次元の金融緩和は機動的かつ大規模な財政政策の大前提になっており、異次元の金融緩和の否定、そしてその終了は機動的かつ大規模な財政政策の実施を難しくします。左翼リベラルの中には、立民系の「事業仕分けの夢よもう一度」の勢力のようなマクロ経済も財政も税の役割も、貨幣とは何かも全く理解できていない連中も多いですが、今の日本経済社会の実情を正確に捉えて、積極財政を主張する勢力も少なくありません。それは大変結構なことですが、「坊主憎けりゃ袈裟まで」をやってしまっては、緊縮・増税を進めて日本経済社会を更に衰退させたい連中の思う壺です。

 アベノミクスは失敗したのではなく、異次元の金融緩和を粘り強く続けてきたにも関わらず、新型コロナショック対応の時期を除いて、財政政策が不十分だった、全く機動的でも大規模でもなかった、つまりまだまだ完遂されていないというのが正しい評価です。

 一方で、アベノミクスの成長戦略は、例えば移民の受入拡大のように、デフレを加速化、定着化させる方向にはたらくもの、会社法の改正のように株主資本主義を深化させ、賃金を更に上方硬直的にさせたり、短期主義の蔓延によって成長しない経済をより「強固」にしてしまったり、無用の貿易協定によって日本の食糧供給力を毀損したりと、成長とは真逆の方向のものが多数を占めました。これらは大いに批判され、しっかりと総括する必要があります。

 個人の感情として安倍総理を憎く思ったり、忌まわしく思ったりすることまでダメだというつもりはありません。しかしそうした感情論は政策の評価・分析においては邪魔になるだけです。もちろん、冷静に政策分析をした結果、怒りが込み上げてくるということはありますから、それはそれで正しい政策を考える原動力にもなりますからいいのですが、はじめに感情論ありきでは増税緊縮勢力や売国勢力に振り回されるだけですよ、というお話でした。

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【室伏謙一】単なる「安倍憎し」で評価や選択を誤ってはいけませんへの6件のコメント

  1. はあ、財政出動が不十分、機動的大規模でなかった完遂してなかっただと、 より

    アベマがアホノミクソを言いだしたのは、
    2012、財政出動して結果出したのは2013、
    翌2014に三橋氏が最後にゴミ売、そのまま言って委員会に出演して⌈去年は今年より経済良いだろう⌋と明言しましたよ、
    中野剛志氏も同様ですよ、
    二人供面識あるのでしょう!
    確認して下さいよ。
    何故かと言えばアベマは2014には公共事業を絞り消費税上げを考えだしたからでしょう
    2015には消費税は8%
    2017には10%
    どこが財政出動かね
    どうせ国民は忘れるだろう、だから
    渡辺喜美さんの教えですか?

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      1. 感情論ありきで何が悪い より

        フランスでもオランダでも農民一揆、
        糞尿
        役所にぶちまいてますよ
        力で民主主義勝ち取ってますよ
        綺麗事ですむか!

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  2. ひとりごはん より

    岸田氏は派閥解消をいいながら派閥闘争を全面展開
    要は福田氏 森氏 安倍氏の清和会潰し

    ここで焦りだしたのが ここの学校秀才たち
    岸田氏が仕掛けた清和会潰しで
    安倍派に多いとされる
    積極財政派議員たちまで潰されてはかなわない

    そこで先日から安倍氏の総括やらを勝手に始めて
    アベノミクスにも理があったといいだした

    これはなかなか面白い
    まるでソ連崩壊後の
    社会主義者 共産主義者たちのようではないか
    当時 彼らも口を揃えて言ったのだ
    考え方は悪くなかった やり方が悪かったのだと

    古今東西 学校秀才たちはうぬぼれやすい
    ソ連も安倍も 法治をないがしろにし
    人治を先鋭化させた根本に目を向けなかった
    全体主義の本当のところが理解できない

    モリカケなんてどうでもいい問題だと
    かつてここの学校秀才たちも言っていたのが
    何よりの証拠で 象徴的だ

    アベノミクスがどうの以前の問題を問わず
    総括も坊主の袈裟論もあったもんじゃない

    安倍氏は反日旧統一教会と結託
    彼らの選挙協力により一部の積極財政派も当選
    反日集団の意を汲む政策を次々と実現

    しかも 安倍氏は完全な新自由主義者であり
    保守主義と対極に位置する国家破壊主義者だった

    アベノミクスの功罪を説いてみせる前に
    政策以前の問題で
    政治に携わってはいけない人間とは
    いかなる人間かを いま一度説いてほしい

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      1. 利根川 より

         学校秀才とやらが誰のことかは知らないけれど、政治に携わってはいけない人間がどんな人間かと問われれば

        国民生活(経済)を顧みない人間

        といったところでしょうか。引かぬ、媚びぬ、顧みぬ!
         人治を憎み法治を遵守し、清貧を心掛け、女におぼれず、勤勉に励む、そして需要不足の時に緊縮増税を行う。こういった人間は政治家の椅子に座らせるべきではないと私は思っています。
         何事にも最低限クリアすべきラインというものはございましてね…医者であれば最低限、医療に関する知識は必要ですし、大工であれば建築に関する知識や技術は持っている必要はあるでしょう。そこにプラスアルファで性格の良さやファッションセンスなどあればなおいいとは思いますが、プラスアルファの部分というのはあくまでも最低ラインをクリアした上で「あればいいな」程度のものなんですよ。
         
        政治家であれば最低限、経済成長はさせなければいけない

         ご存じのように日本が長期経済停滞におちいっている主因は、需要不足の時に需要をさらに削り取る緊縮増税政策を行ってしまったことにあります。(客を減らしてどうする)どれだけ法治を尊重していようが、どれだけ清貧を心掛けていようが、経済成長(国民生活)を顧みない者に政治家の椅子に座る資格はないと私は考えます。
         逆に言えば、最低限、経済を成長させてくれる人物(国民生活を顧みてくれる人物)であれば他のことにはある程度は目をつぶりますよということでもあります。
         
        ・品行方正で見た目も性格も良く学歴も肩書も立派だが経験不足な医師

        ・無免許医で金に汚く性格も悪く、見た目もこれ以上ないほど怪しいが必ず手術は成功させる医師(ブラックジャック)

        どちらに仕事を頼むのかと言えば私ならブラックジャックにお願いするということです。
         
        「品行方正で見た目も性格も良く学歴も肩書も立派で手術も必ず成功させる奴に頼めよ」

        という方もいるかもしれませんが、神様仏様(完璧超人)に御用の方は投票所ではなく神社仏閣にお参りに行くのがよろしいんじゃないでしょうか。境内に投票所があるところは一石二鳥だね!ヤッタネ!
         さて、現在、能登半島は未だに水道の復旧もままならず、別の土地に移らざるを得ない人も増えております。先日も青森や台湾で大きな地震もあり、災害復旧と合わせて災害対策も急ぐ必要があると思います。まさに今、国民生活に目を向けねばならないこの時にスキャンダルの話題ばかりが国会で取り上げられているのをみるとウンザリだってことです。言ってること、理解できていますか?
         国民生活そっちのけでスキャンダルの話をしている連中と、それを持ち上げている連中が「愛国」だとか「新自由主義反対」だとか口にしていると虫唾が走るってことです。
         そもそも、国民生活を顧みなかったのは安倍晋三総理(自民党)だけの話ではありません。公明党も民主党も維新の会も共産党ですら緊縮政策を礼賛していました。その支持者たちも同様に緊縮応援団をしていましたね。討論番組で、

        三橋さん「変動為替相場制の自国通貨建て国債の国は財政破綻しない。なので、もっと政府が投資をすべき」

        と言っていた時、彼は多くの人たちに馬鹿にされ石を投げられていました。そこから、ボコボコにされながらも10年以上の年月をかけて財務省に財政破綻しないことを認めさせました。その後も、様々な人たちの活躍で今では消費税が間接税ではないことも暴露されるに至っています。
         ひとりで飯を食っていると自称している方は、彼らが馬鹿にされ、石を投げられている間、どこで何をしておられたのでしょうか。

        「おお、ブッダよ!寝ているのですか!」

        ちなみに私は寝ていました(笑

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  3. 利根川 より

     安倍晋三首相とその政策については、以前、新・経世済民新聞でどなたかが指摘していたように

    安倍晋三「器(空っぽの器)説」

    が最もしっくりくるのではないかと。
     どういうことかというと、普通は、成したいこと(目的)を実現するために政治家になるという手段をとるわけですが、彼の場合は、政治家であり続けるということが目的で、そのための手段として票になりそうな政策を掲げていたのではないかと…
     だから、三橋さん達に会えば

    安倍晋三首相「デフレから完全に脱却するまでは消費税の増税はしてはいけない」

    という話をするし、財務官僚に会えば

    安倍晋三首相「日本はすでにデフレから脱却したのに、未だに積極財政が必要とか何を言っているやら」

    と言うわけだ(苦笑い
     くわえて、自民党の有力な票田である統一教会に向けては、

    安倍晋三首相「統一教会の活動は素晴らしい」

    なんてビデオレターも送っていましたね。
     結果、アクセルとブレーキを同時に押すような意味不明な政策(緊縮と積極財政がハンパに混ざった政策)になってしまって、失われた20年が30年になってしまったわけだ。まあ、玉虫色の政策こそが民主制の真骨頂なので、ある意味、民主政治をよく反映した政治だとも言えますが、国民に対して誠実な態度ではなかったと思います。
     三橋さんも度々解説していますが、需要が少ないときに投資を拡大する営利企業はありません。100個製品を作っても90個しか売れないときに、新規設備投資をして200個作れるようにしようとは思わないでしょう。誰かが投資をしなければ(お金を使わなければ)永遠に需要不足(不景気)のままです。なので、景気が悪いときは、政府による投資が必要になります。
     さて、ここで建部正義さんによる貨幣の発行プロセスを振り返ってみましょう。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    1、三菱銀行が「日銀当座預金」1兆円で政府から「新規国債」を買い取る
    ※三菱銀行の「日銀当座預金」1兆円が政府の口座に振り替えられる。

    2,政府は公共事業発注にあたり、請負企業に「政府小切手1兆円分」で代金を支払う

    3,企業は小切手のままだと使いにくいので、三菱銀行に1兆円の小切手を持っていく

    4,三菱銀行は請負企業の預金口座に「1兆円と書き込む」

    ★「銀行預金1兆円 爆・誕」★

    5,三菱銀行は中央銀行に政府から小切手1兆円分の「日銀当座預金」を取り立てるように依頼する

    6,中央銀行は政府の口座から1兆円の「日銀当座預金」を三菱銀行の口座に振り替える

    7,三菱銀行は1で政府に払った「日銀当座預金1兆円」が戻ってきたので、再びその1兆円で国債を購入する

    1に戻る

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

     日銀当座預金というのは、政府や銀行だけが使える特別なお金なので、金融緩和で日銀当座預金が増えても我々一般人にも一般企業(非金融企業)にも何の影響もございません。我々が使えるお金である「銀行預金」が増えないと民間の需要は増えないし、需要が増えないと景気は良くなりません。よって、需要不足な時に銀行預金を増やすためには政府による財政出動が必要なわけです。だから、

    安倍晋三首相「アベノミクスは『金融緩和』と『財政出動』の両輪です」

    と言っていたわけですが、当然ながら財務省にとっては財政出動なんてされたら自分の出世の芽が断たれてしまうわけで、それは困る。そこで、子飼いの経済学者を使ってこう囁いたわけだ…

    財務省の狗「総理、財政出動などしなくても金融緩和だけでデフレ脱却は可能ですよ」

    それを鵜吞みにした安倍総理は「金融緩和」のみの片輪走行を行って爆死したわけですね。
     未だに安倍政権は「放漫財政」だったというイメージを持つ人たちがいますが、なんで数字を見ないのかと…安倍政権期はむしろ国債発行額は減らしていましたしね。少なくともアベノミクスは積極財政というのは間違いです。
     ところで、国会では相変わらず国民生活そっちのけで「スキャンダル(裏金問題)」の話をしていますね。

    野党「政治責任をとれ!」

    勘違いしている方が多いようですが、政治責任というのは政治家が自らとるものではなく、国民によって「責任を取らされるもの」なんですよ。落選という形でね。
     政治に限らず、スポーツでも文化芸術でも、結果を出さずに負け続けていたら二部リーグに降格されたり、二軍落ちしたりするでしょう。しかし、政治だけは「失われた30年」とかやっていても一向に責任を取らされないわけでしてね…そりゃあ、政治家も劣化するってもんでしょうよ。
     よく、「政権交代したって何も変わらない」という話を耳にします。その通り、よくわかっていらっしゃる。でもね、「失われた30年」の責任は取らせなければいけないんですよ。失敗し続けてきた者は降格、どこの世界でもそうでしょう。政治だけ特別ということでは、それはもう特権階級ということになってしまいますから。まあ、選挙に行きましょうということですね。
     ちなみに、海外では暴力で政権をひっくり返そうという動きがあるのは知っていますし、「海外の」そうした動きを批判したことは私はないんですよ。まともな選挙が行われない、話し合いや選挙で解決できない土地では、もうパワーでどうにかするしかないでしょうし、それを非難することなどできません。しかし、日本のように「まともな選挙」が行われている国で、選挙にもいかずに暴力に訴えようというのはサイコパスだと思っているだけのことです。 

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