日本経済

2023年9月4日

【三橋貴明】カネを重視し続けたツケを払う時がきた

【今週のNewsピックアップ】
国民経済の平時と非常時
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12818310258.html
戦慄の24年問題
荷物が届かなくなる!
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12818446928.html

骨太の方針2023には、
「歳出構造を
平時に戻していくとともに、
緊急時の財政支出を必要以上に
長期化・恒常化させないよう取り組む。」
という言葉があります。

岸田内閣は、完全な緊縮財政内閣です。
要は、現在の歳出構造は
「非常時」に基づくものであり、
今後は「平時の緊縮路線」に戻す
という宣言でございますね。

政府にとって、財政赤字の拡大が
「非常時」という話なのでしょうが、
実際には違います。
財政赤字は非常時ではない。普通です。
政府が財政赤字になれば、
国民が黒字になるだけ。

もっとも、現在の日本の国民経済は、
確かに非常時ではあります。
なにしろ、企業(非金融法人企業)の
資金過不足で
「資金過剰」の状態が続いている。
この何が問題なのかは、
メルマガの方をご覧いただくとして、
http://www.mag2.com/m/P0007991.html

企業が資金過剰状態であるにもかかわらず、
政府が資金不足(財政赤字)を
十分に拡大しない。
結果的に、デフレが継続。
デフレという総需要不足が続いた結果、
基盤産業から人がいなくなり、
投資も進まず、
ついに日本は
「サプライロス型インフレ」の
局面に入りつつあります。

通常、インフレには、
「需要拡大が牽引する
デマンドプル型インフレ」と、
「(輸入物価上昇や消費税増税により)
物価だけが一方的に上昇する
コストプッシュ型インフレ」
の二種類があります。

そこに、日本の場合は、
「デフレーションの長期化により
供給能力(サプライ)が
毀損(ロス)した結果、
発生するサプライロス型インフレ」
が加わるのです。

デマンドプル型インフレと
サプライロス型インフレは、
「総需要>供給能力」となり、
インフレギャップ状態が物価を
引き上げている点が共通しているため、
同じに思えますが、
実際には異なる経済現象です。

特に、2024年4月に働き方改革による
残業規制が始まると、
日本のサプライロス型インフレは
一気に深刻化することになります。
これこそが、
まさに「非常時」でございますよ。

結局、国民経済における
「平時・非常時」は、
供給能力、
財やサービスを生産する力で
図るべきところを、
「カネ(収支)」で判断してしまったことが
問題なのです。
カネなど、
政府は「発行」できるにもかかわらず。

長年、生産能力ではなく
カネを重視し続けたツケを、
我々日本国民が支払うときが来たようです。

◆一般参加可能な講演会のお知らせ
第100回AT-1 / 大経連お披露目祭り
9月23日(土) 13:30(開場12:45)
※懇親会18:30〜20:30
会場:東京プリンスホテル / 2階 鳳凰の間
https://ampersand-basic.shop-pro.jp/?tid=2&mode=f5

◆経営科学出版から
「財政破綻論の嘘
99%の日本人を貧乏にした
国家的詐欺のカラクリ」が刊行になりました。
https://in.38news.jp/38zase_blog

◆小学館から「日本経済 失敗の本質:
誤った貨幣観が国を滅ぼす」
が刊行になりました。
https://www.amazon.co.jp/dp/4093888973

◆メルマガ 週刊三橋貴明 Vol748
ネットの資金需要とPB黒字化目標
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
日本はネットの資金需要
(=一般政府と企業の
資金過不足合計のマイナス)が
対GDP比5%程度にならない限り、
経済成長路線には戻れません。

◆メディア出演

NTT売却問題から分かる
自民党は決して「保守政党」ではない
[三橋TV第748回]三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/SzyfDjCCzr8

戦慄の24年問題!
荷物が届かなくなる!
現場の悲痛な声を聞いてくれ
[三橋TV第749回] 甲斐まさやす・三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/u1BMQSjOgok

食料やエネルギー価格の急騰と
国民の困窮は
「政府のせい」にして良いんだよ
[三橋TV第750回]三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/8Q-SyAESxco

日本は経済成長していない。
確かにその通りです。
ならば、日本経済を成長させるためには
どうしたら良いのでしょうか。
日本経済の成長に
本当に必要な指標、考え方、そして政策を、
わたし、シンガーsayaと共に
学んでいただくのが
「シンガーsayaの3分間エコノミクス
第二巻」です。
さあ、私と共に経済成長について
「ゼロ」から学んで下さい。
特別コンテンツとして、
三橋貴明&saya
「シンガーsayaが三橋先生に
ひたすら聞いてみた第一回」
の全編もご視聴いただけます。
https://keiseiron-kenkyujo.jp/economics/

◆三橋経済塾
8月19日に開催された、
三橋経済塾第十二期第八回対面講義が
配信されました。
https://members12.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=2211
ゲスト講師は室伏謙一先生でした。
インターネット受講の皆様、
お待たせいたしました。

◆チャンネルAJER
今週の更新はありません。

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【三橋貴明】カネを重視し続けたツケを払う時がきたへの2件のコメント

  1. 利根川 より

    >>企業が資金過剰状態であるにもかかわらず、
    政府が資金不足(財政赤字)を
    十分に拡大しない。
    結果的に、デフレが継続。
    デフレという総需要不足が続いた結果、
    基盤産業から人がいなくなり、
    投資も進まず、
    ついに日本は
    「サプライロス型インフレ」の
    局面に入りつつあります。>>

     たまげたな~、ついに日本も本格的に「発展途上国型の国」になってしまったということか~。

    「失われた20年」

    長らく日本は「需要不足」の状態(デフレ)が続いてきたわけです。需要が足りないのだから需要を増やす政策をすればよかったわけですが

    「構造改革」

    といって「供給を増やす政策」をやってしまったわけだ。客が少なくて困ってるのに(需要不足)客を増やさず店を増やしたから

    「過当競争」

    になって、つぶしあいの末、延々と「実質賃金がさがっていった」わけだ。そして、「過当競争」「つぶしあい」の果てに

    「元々少なかった”需要に合わせて”供給能力も減っていった」

    そりゃそうですよね、「売れないものを作っても買い手はいない」わけで、売れない物は作れない、だから最初から作らない。はい、供給能力低下。
     アメリカの主流派経済学者であるジョセフ・E・スティグリッツ(コロンビア大学)教授が責任ある積極財政を推進する議員連盟で講義をしたところによると

    スティグリッツ教授「日本を苦しめている総需要の弱さについてかんがえるならば、なぜ消費が少ないのか、なぜ投資が少ないのかを分析し、どうすれば消費と投資を刺激できるのか分析する必要があります」

    スティグリッツ教授「消費が低い理由の一つには実質賃金が非常に低いことです。労働が本来あるべき姿ではないのです」

    スティグリッツ教授「その理由の一つは、市場の支配力があり、労働者の交渉力が弱いことです」

    スティグリッツ教授「それに対応するには、労働者の交渉力を高め、組合を強化すること」

    このようにお話ししておられましたが、日本の政治家やマスコミがこの20年間行ってきたことは真逆のことでした。

    政治家マスコミ「労働組合は無駄だ」

    政治家マスコミ「正社員は既得権益」

    政治家マスコミ「日本的経営は古臭い。改革すべし」

    今でも労働組合がストを行ったりすると日本では顰蹙を買ったりしますので、労働者の交渉力を高めるどころか自ら低い状態で維持しているのが日本国民の現状。それから、次のようなことも指摘していました。

    スティグリッツ教授「私は、消費税増税には強く反対でしたが、安倍首相には炭素税の導入を促しました、これは実現しませんでしたが、この問題で何度も議論しました」

    ~中略~

    スティグリッツ教授「私が重要と考える二つ目の税は、法人税です」

    スティグリッツ教授「パンデミックの時、多くの企業は巨額の超過利潤税が発生しました。石油会社、ガス会社、アマゾンなどは皆、莫大な利益を上げていました。彼らに課税しない理由はなかったのです」

    スティグリッツ教授「『法人税は、企業の利益に対する税金に聞こえますが、投資コストを引くことができるため、投資を抑制することはありません。労働コストも差し引くことができるため、雇用を阻害することもありません』」

    スティグリッツ教授「この税金は、投資、生産における投入、労働を支払った後の余剰利益にかかる税金です」

    スティグリッツ教授「法人税を下げたらどうなるのか?2つの考え方がありました。」

    スティグリッツ教授「私は、投資を促す大きな影響を与えることはなく、むしろ株主配当の増加、CEOの給与の増加、自社株買いの増加につながるだろうと考えていました」

    スティグリッツ教授「トランプ大統領は2017年に実施した減税に関して『より多くの投資につながる』と発言していました」

    スティグリッツ教授「それで、私はいつも学生に、私とトランプ大統領、どちらが正しかったと思いますか、と聞くんです」

    スティグリッツ教授「答えは私が正しかった、です(笑)」

    スティグリッツ教授「投資はほとんど増えず、自社株買いは1兆ドル近くに達し、過去最高水準となりました」

    スティグリッツ教授「(法人税減税は)政府から金持ちの株主への資金移動だったのです」

    ということでした。日本がこの20年間行ってきたのは消費税増税と法人税減税でした。スティグリッツ教授が「やってはいけない」と言っていることを延々と繰り返し、今もまだ続けているわけです。
     私はよく現代貨幣論(MMT)における貨幣の説明を引用するのでMMT信者とか言われますが、別段、MMTのすべてが良いと思っているわけではないのですよ。MMTで説明されている貨幣の成り立ちは現代の貨幣の在り方をよく説明しているので引用していますが、MMTの社会政策部分は引用したことはありません。

    自称保守「自民党の政策を否定しているのはMMT信者だけ」

    こんなことを言っている人も見かけますが、ジョセフ・スティグリッツ教授のお話を聞く限りではアメリカの主流派経済学者からみても自公政権は間違った政策を行ってきたということです。
     日本が本格的にデフレ不況に陥ったのが1998年から。

     
    日本の自殺者数

    1997年

    総数 24,391

    男性 16,416

    女性 7,975

    1998年

    総数 32,863

    男性 23,013

    女性 9,850

    たった一年で自殺者数が8000人以上増えるのは異常な数値。
    阪神淡路大震災で亡くなられた方は6,432人であることを考えればこの異常さが分かろうというもの。経済的影響だけが自殺者増加の原因ではないものの、政治家が政策を間違えるとどれだけの影響が出るのかがわかろうというものです。
     同胞をこれだけ死に追いやってきた政策を支持してきた連中が保守とか愛国とか口にしているわけで、口汚く罵りたくなる私の気持ち、わかっていただけるでしょうか。
     三橋さんは10年以上前から保守系番組にて「緊縮政策の転換」をうったえていましたが、保守系コメンテーターたちは中韓叩きに夢中であまり取り合ってくれませんでしたね。当時の三橋さんはどの様な気持ちだったのでしょうか。虚無感?

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  2. 利根川 より

     第420回三橋TVにて室伏謙一さんがハゲタカビジネスの手法について解説していましたが、

    そごう西武は新たな代表取締役に劉勁(りゅうじん)氏が就任したと発表

    そごう西武の田口広人社長は代表権のない取締役執行役員社長となった

    ということで、「乗っ取り完了!」みたいですね(苦笑い
    山本太郎議員も当時国会で指摘していましたが、いまや日本はバーゲンセール状態なようでしてね…

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