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2012年11月5日

【三橋貴明】出口のない国々

FROM 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】

●新古典派 対 実践主義
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11392984884.html

●出口のない国々
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11393818143.html

アメリカ大統領選挙が行われる11月6日が近付いてきています。

今回のアメリカ大統領選挙は、
一応、「新古典派経済学」派であるロムニー候補と、
「実践主義的経済学」派であるオバマ大統領との一騎打ちになっています。

実際には、ここまでシンプルな区分けができるわけではありませんが、
大枠的には新古典派対実践主義で間違いありません。

ノーベル経済学者のポール・クルーグマンは、
新著「さっさと不況を終わらせろ」で、

「オバマが勝てば、雇用創出に向けたケインズ的な動きに出る。
ロムニーが勝てば共和党の正統教義に従い、新自由主義的な動きとなり、
雇用創出とか財政出動はミニマイズされる。」

と書いています。

(クルーグマンがどちらの「派」に立っているかは、
言うまでもありません)

もっとも、オバマ大統領が勝っても、
即座に雇用創出、需要創出のための政策が打たれ、
年末に迫った「財政の崖」を回避できるかといえば、
そう簡単にいかないのも確かです。

理由は、アメリカ議会では共和党が優勢だからです。

オバマ大統領が勝った場合、大統領は民主党、議会は共和党という
「ねじれ現象」が続くことになります。

逆に、ロムニー氏が大統領職を射止めた場合、
共和党が主導する議会が、財政の崖回避に同意すると主張する人もいます。
確かに、財政の崖の「二つの衝撃」のうち、
減税停止については法改正が行われるかも知れません。

とはいえ、政府支出の強制削減の方は、
何しろ共和党が主導して成立させた法律ですから、
いきなり態度を翻すとは到底思えないわけです。

ユーロ圏では、新古典派経済学に基づく「机上のシステム」が
限界に達しようとしています。

新古典派経済学、
あるいは市場原理主義に基づきシステムが設計されたユーロ圏では
国家間の「弱肉強食」が発生しています。

何しろ、強者(生産性が高い国々)からの輸出ドライブにに対し、
弱者(生産性が低い国々)側は
「関税」や「為替レートの切り下げ」といった、
国家として当たり前に持っているはずの「盾」を
使うことが許されていないのです。

結果的に、生産性が高いドイルやオランダが、
南欧諸国に延々と輸出攻勢をかけ続け、
貿易黒字、経常収支の黒字を拡大していきました。

反対側では、スペインやギリシャの北部諸国に対する
経常収支赤字が膨らんでいきます。

経常収支赤字とは対外純負債の増加なので、
結局のところユーロは「ある時点」で限界に達することが
はじめから明らかだったといえます。

一部の国々が、
一方的に対外純負債を増やすことを前提にした通貨同盟など、
継続するはずがありません。

無論、勝ち組である北部諸国にしてみれば、
「南欧諸国が生産性向上のために努力しなかったのが悪いんだ。
現在の財政危機は彼らの自己責任だ」
という話になるのでしょうが、
現実の世界はそんなに理屈通り進まないのです。
南欧諸国が、

「はい、私たちが生産性向上に努力しなかったのが悪いのです。
このまま貧乏になり、輸出競争力を回復するまで
高失業率と所得低下を受け入れます」

などという話にはなりません。

必ず、南欧諸国は政治的な限界に突き当たり、
ユーロ離脱等の選択を(最終的には)迫られることになるでしょう。

さて、日本では「第三極」を作るという動きが活発になっていますが、
日本維新の会が中心になる限り、
第三極は「新古典派経済学」的にならざるを得ません。

これはこれで、悪いことではないと思っています。

来るべき総選挙において、新古典派経済学的な
「構造改革党(日本維新の会、みんなの党、石原新党)」と、
実践主義的な自民党がガチで激突すれば、
現在の与党は埋没して消えてしまいます。

と言いますか、そういう戦いにしなければならないのです。

結果的に、反日色が強い政党が勢力を縮小し、
構造改革党も敗北し、実践主義的な政党が政権を握る。

これこそが、現在の日本にとって、
近々に目指すべきハッピーエンドだと考えているわけですが、
いかがでしょう。

PS
経済学者たちは、ぶっちゃけ「経済」を知りません。
その結果が、20年デフレなのだとしたら、、、
もし、こうしたカラクリに関心があるなら、
この本はとても参考になると思います。
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