日本経済

2023年8月28日

【三橋貴明】先端分野ではなく基盤的分野への投資を

【今週のNewsピックアップ】
大阪万博とサプライロス型インフレ
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12817655598.html
先端分野ではなく
基盤的分野の投資促進を!
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12817769262.html

大阪万博は、まさに、
現在の日本全体の問題を凝縮したような
有様になっています。

夢洲の土壌や地盤の問題は置いておいて
(これも凄いですが)、
とりあえず車のアクセスが
夢咲トンネルと夢舞大橋の二本しかない。

それにもかかわらず、
想定来場者数を半年間で
3036万人(!)としている。

ということは、半分は
(未完成の)地下鉄で来るとして、
残りはシャトルバスになるため、
一日におおよそ10万人が
トンネルもしくは橋を渡ることになる。
シャトルバスは乗客数50人程度だから、
2000台(!)。大渋滞必至ですね。
というか、
そこにロジスティクスセンターの
トラックも加わる。

それ以前に、準備が本格化すると、
夢洲地区に流入する
工事車両等により大渋滞になりかねない。
しかも、2024年問題(残業規制)と
もろに重なる。
運送ドライバーや、
現場の土木・建設業の作業員の方々にも
「働き方改革」を適用せざるを得ない。

しかも、作業員の方々が
(地下鉄がまだないので)
車で通勤するとなると、
これまた大渋滞必至でしょう。

現場は地盤沈下が激しい
ゴミの埋め立て地です。
汚染水やガス噴出が発生する夢洲で、
パビリオンを建設するのは、
もちろんおカネと時間をかければ
十分に可能なのでしょうが、
時間が区切られている状況では
相当に厳しい。

さらには、来場者の
汚水処理(要はトイレ)の問題については
目途が立っていない。

万博の大人1人あたりの入場料が
7500円とされており、
現在の貧困日本では人々が
チケットを買えず、
閑古鳥が鳴く可能性が高い。

とはいえ、逆に目論見通り
一日10万人規模の来場者があった場合、
交通インフラも、下水道インフラも
対応が不可能。

そもそも、インフラ投資を
怠っていたにもかかわらず、
「島」で万博を開催するなど、
狂気の沙汰ですよ。

加えて、24年4月以降、
働き方改革で土木・建設、
運送業で残業時間が規制され、
「サプライロス(供給能力の喪失)型
インフレ」が深刻化する。
そのタイミングで、生産性向上に
何の貢献もしないパビリオンを
建設せねばならず、供給能力を食われる。

というわけで、現在の日本は、
国民経済の基盤的な分野、
すなわち「土木・建設」「運送」、
さらには「医療」「介護」「農業」
「防衛」「電力」等、
我々の生活に不可欠な
財・サービスの分野に
注力するべきでしょう。

なにしろ、長年の緊縮財政と
デフレーション(総需要不足)により、
基盤的分野への投資が進まず、我々は、
「これまでの普通の生活」すら
維持困難な状況に
追い込まれつつあるのです。

それにもかかわらず、
日本政府は「先端分野での
設備投資を促す政策」にばかり
注力しようとする。

いや、政府の経済対策は、
先端分野ではなく
基盤的分野への投資を
促す政策であるべきです。
最先端の工場が稼働したところで、
物流が成り立っていない、
電気が安定的に供給されないのでは、
全く無意味です。

というか、基盤的産業の供給能力が
弱体化しているような国で、
先端分野とやらへの投資が
進むはずがないのですよ。

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会場:東京プリンスホテル / 2階 鳳凰の間
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「財政破綻論の嘘
99%の日本人を貧乏にした
国家的詐欺のカラクリ」が刊行になりました。
https://in.38news.jp/38zase_blog

◆小学館から「日本経済 失敗の本質:
誤った貨幣観が国を滅ぼす」
が刊行になりました。
https://www.amazon.co.jp/dp/4093888973

◆メルマガ 週刊三橋貴明 Vol747
財政のペイ・アズ・ユー・ゴー原則
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
日本には緊縮財政を強要する
財政ロジックが幾つもあります。
その一つが「裁量的経費」にまで適用し
「期限一年」のペイ・アズ・ユー・ゴーの
原則なのです。

◆メディア出演

国立科学博物館は国営に戻せ!
独立行政法人は「失敗政策」だ!
[三橋TV第745回]三橋貴明・saya
https://youtu.be/-_e-j-jnPkI

毎度おなじみの国の借金でございます
[三橋TV第746回]三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/hQxFK8Kq31Y

驚愕の真実!
我々の経済システムは弥生文明から
変わっていない?!
[三橋TV第747回]三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/ZdcOzFnFDto

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なぜ農業の誕生が餓死者を増やし、
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【8月31日(木)までの限定公開】
https://youtu.be/XJo0zm-Zqco?si=3h3mJgml_WfYgpkW

日本は経済成長していない。
確かにその通りです。
ならば、日本経済を成長させるためには
どうしたら良いのでしょうか。
日本経済の成長に
本当に必要な指標、考え方、そして政策を、
わたし、シンガーsayaと共に
学んでいただくのが
「シンガーsayaの3分間エコノミクス
第二巻」です。
さあ、私と共に経済成長について
「ゼロ」から学んで下さい。
特別コンテンツとして、
三橋貴明&saya
「シンガーsayaが三橋先生に
ひたすら聞いてみた第一回」
の全編もご視聴いただけます。
https://keiseiron-kenkyujo.jp/economics/

◆三橋経済塾
8月19日に開催された、
三橋経済塾第十二期第八回対面講義が
配信されました。
https://members12.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=2211
ゲスト講師は室伏謙一先生でした。
インターネット受講の皆様、
お待たせいたしました。

◆チャンネルAJER
今週の更新はありません。

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【三橋貴明】先端分野ではなく基盤的分野への投資をへの2件のコメント

  1. 利根川 より

     日本を含めどの国にも良い所もあれば良くない所もある。良い所だけの国なんてないわけですが、自分の立場をきちんと表明するというのは大切なことだと思います。中国なんかはアメリカが相手でもきちんと自分の立場を表明するじゃないですか。日本のように言われっぱなしにはならない。
     国連の気候変動会議COP25で気候変動対策を後退させる国に贈られる「化石賞」に日本は選ばれました。環境活動家のグレタさんにさんざん罵られまくった日本ですが…

    <世界の二酸化炭素排出量2020>

    出典:EDMCエネルギー・経済統計要覧2023年版

    中国:32.1%
    アメリカ:13.6%
    インド:6.6%
    ロシア:4.9%
    日本:3.2%
    ドイツ:1.9%
    韓国:1.7%
    インドネシア:1.7%
    カナダ: 1.6%
    ブラジル:1.2%
    オーストラリア:1.2%
    メキシコ:1.1%
    イギリス:1.0%
    イタリア:0.9%
    フランス:0.8%
    その他:26.4%

    このようになっていまして、上位4国を差し置いて日本だけが激しく罵られたりしたわけです。腹が立ちますね。
     さて、現在、中国が福島第一の処理水について抗議の声を上げているとのことですが日本のトリチウムの年間排出量は、事故前と同じ22兆ベクレル未満を予定しているとのこと。では、中国はどうなのか?

    中国・浙江省秦山第3原発 約143兆ベクレル/年 福島の6.5倍

    中国・広東省陽江原発 約112兆ベクレル/年 福島の5倍

    中国・遼寧省紅沿河原発 約90兆ベクレル/年 福島の4倍

    (出典:環境省)

    となっています。ちなみに、中国以外の国は以下のようになっています。

    韓国・月城原発 福島の3.2倍

    韓国・古里原発 福島の2.2倍

    フランス・ラ・アーグ再処理施設 福島の454.5倍

    カナダ・ブルースA・B原発 福島の54倍

    イギリス・ヘイシャム2原発 福島の14.7倍

    アメリカのブランズウィック第一第二原発は年間3.7兆ベクレルと日本よりも少ないようですが、日本よりも多く放出しているところはいくらもあるわけでね…
    毎回毎回なんで日本だけが悪しざまに罵られなくてはならないのか。ちゃんと言い返しなさいよ。TVもちゃんと報道しなさいな。
     それから、福島県産の水産物に対する風評被害が懸念されていましたが

    「ふるさと納税」を通じて”民間の努力で”被害が抑えられている

    という話をTVで見ました。ふるさと納税というのは…

    財務省「『このまま地方自治体の予算を減らされると公共サービスが維持できない』と地方の政治家が陳情してきているが、我らの出世のためにも地方の予算は増やしたくない」

    財務省「ならば、地方自治体同士で予算を奪い合えばいい」

    財務省「他所の自治体から予算を奪えば、その分だけその自治体の予算は増えるだろう」

    ということで始まったものです。つまり、福島が潤うということは他の自治体が困窮するということにもつながるわけですが…
     伝統的に日本は上層部と比較して下々(現場)はミクロレベルでは優秀なことが多いようで、上層部がやらかしても現場が何とかしてしまうケースがみられる。すると、上層部はポンコツでもなんとかなってしまうので永遠にポンコツのままという。良いことなのか悪いことなのか…
     今回のケースで言えば、他の自治体を困窮させる「ふるさと納税」ではなく、政府にしっかり金を出させる(支援をさせる)べきなんじゃないでしょうか。こんなことを言うと

    「財源はどうするんだ!」

    が始まりそうですが、そんなあなたに以下の書籍をお勧めします。

    「目から鱗が落ちる奇跡の経済教室」 著:中野剛志

    「知識ゼロからわかるMMT入門」 著:三橋貴明

    「東大生が日本を100人の島に例えたら面白いほど経済が分かった!」 著:ムギタロー

    「国の借金は問題ないって本当ですか?」 著:森永康平

    「超入門MMT」 著:藤井聡

    「MMTとは何か」 著:島倉原

    中野剛志さんやムギタローさんの記事は東洋経済オンラインで無料で読めますし、三橋さんの場合は三橋TVで動画解説もしているので、書籍の購入の前にそちらを見てみるのもいいかもしれません。
     とりあえず、日本政府は誰が相手でもしっかり自分の立場を主張してくれ。半分植民地な政府では難しいのかもしれないけど…

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  2. 利根川 より

    山本太郎議員「定期的にハゲタカ(ハゲタカファンド)に餌やりするのやめてもらえませんか?」

    国会でこのように訴えている議員がいるわけですが、言われてみると日本政府は定期的に「わざと」日本企業の経営を一時的に傾かせている節が見られるんですよね。昨日、バブル崩壊後のBIS規制による

    「貸しはがし」

    で健全経営をしていた企業でさえ傾いたという話をしましたが、日本の優良企業が一時的に傾いて「安くなった」ところを「安く買って高く売る(転売)」ということをやっていたのは主に海外のハゲタカファンドと呼ばれる者たちだったという。その構造は現在も続いています。

    「さすがは植民地現地政府」

    と言わざるを得ない。財務官僚のケツをなめたり海外の投機家の靴をなめたり、ペロリストの皆さんは大変お忙しいようで(苦笑い
     ハゲタカと日本の政治家のおいしい関係について以前、三橋さんと室伏謙一さんが対談していたので、ご紹介。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    第420回三橋TV 室伏謙一さん回⇓

    三橋さん「2019年10月にゴールドマンサックスが日本での営業免許の取得申請を出したの」

    ※金融庁は2019年7月7日、銀行法第4条1項の規定に基づきゴールドマンサックスバンクUSA東京支店の銀行業の営業免許を行った

    三橋さん「これ、銀行法改正の直後に行われたんですね(苦笑い)」

    三橋さん「ということで、これ明らかに2019年ごろから…いや、それ以前から将来的には『銀行法を改正して非上場企業(中小企業)の株式を100%もてるようにしてやろう。それでM&A(企業の買収)で大儲けだぜ』」

    三橋さん「『丁度いいことに日本の中小企業は事業継承問題(後継ぎがいない問題)や相続税問題(継ぎたくても相続税払えない問題)で困ってる経営者が多い』と」

    三橋さん「ということで、ゴールドマンサックスは完全にそういった商売(ハゲタカ行為)に乗り出してる。これで日本でぼろ儲けするつもりなんだろうな」

    三橋さん「それでゴールドマンサックスは19年10月時点で申請出して、その後(元ゴールドマンサックスのデービットアトキンソン氏と仲良しの自公政権によって)銀行法改正の動きが始まりましたからね」

    室伏さん「そうですね、菅内閣の銀行法の改正に続く流れって言うのは昨年の『成長戦略フォローアップ』の中で明確に書かれてます。その後9月にすぐに金融審議会で銀行法改正の諮問があって…」

    室伏さん「9月に(審議が)始まって10、11、12と3ヶ月で今回のような大改正が決まる。ということは、これと(審議と)ほぼ同時並行で銀行法改正の作業も行われていたということ」

    室伏さん「つまり、これは完全に出来レース(初めから審議するまでもなく銀行法改正が行われるのは決定済みだったということ)」

    室伏さん「計画的犯行としか思えない」

    三橋さん「あの~、銀行が非上場企業(中小企業)の株式を上限なしに取得できるようになると、こういったことをやってくるようになる」

    三橋さん「例えば三橋銀行が株式会社高家に一億円の融資をしました」

    三橋さん「で、『1億円も返済するの大変でしょ?じゃあ、その借金1億円を株式にスワップしてあげますよ。もうお金返さなくていいですよ(その代わり君の企業の経営権は三橋銀行のモノだ。乗っ取り完了)』」

    三橋さん「で、M&A(経営権を取得した企業を外資とかに売り飛ばして儲ける商売)で大儲け、ということができるようになっちゃうんですよ」

    三橋さん「たぶんね、私の年代より上の経営者の方々は絶対にこれに気がついてる。これやってくるって」

    三橋さん「で、ゴールドマンサックスが日本の銀行業の免許を取得しました。この企業、デービットアトキンソンさんの古巣ですね。すごい露骨」

    室伏さん「基本的に(銀行法改正の)対象になるのが『地域活性化事業会社』というものが対象になるんですけど、地域活性化企業と聞くと何か地域のために良いことをする会社だと思うでしょ?でも違うんですよ(苦笑い)」

    室伏さん「あくまで名前がこうであるというだけで、内閣府令で定める条件・手続きが当てはまっちゃえば(地域のために良いことをする企業じゃなくても)どこでもできちゃうんですよ」

    高家さん「どんな条件なんですか?」

    室伏さん「関わってるのが弁護士とか商工会議所とかそういうところが計画を作って申請をしてなんで、要はその手続きの形式を整えればいいと言うことなんですよ」

    室伏さん「そうすると(内閣府令で定めた形式通りに申請を出すと)中小企業の株式を100%所得出来るようになると言うことなんですよ」

    室伏さん「なので、銀行はどこでも適当に組んでやっちゃえばいいと言うことになるんですよ」

    室伏さん「でも”地域活性化企業”という名前に誤魔化されちゃう」

    室伏さん「財務金融機関(銀行法改正の審議をしたところ)でも政府の参考人の金融庁の人間は『観光関係があります』とか誤魔化してますね」

    室伏さん「いや、観光関係も入りますけどそれだけじゃないでしょと」

    三橋さん「ということで、いよいよ来るべきものが来たという感じですが…諸悪の根源はデフレなんですが、さらには相続税という問題があって高齢化した経営者は自分の子供に会社継がせたくないんです、大変だから」

    三橋さん「で、もしそのまま自分が亡くなってしまうと『非上場企業の株式まで株価を計算して相続税に上乗せしてくる』んですよ、これおかしくない?」

    ※非上場企業の株式は売買できない(価格がつかない)。しかし、上場企業であればこの程度の株価になるだろうと計算した上で、その値段も相続税に上乗せされるので事業継承を行おうとする事業者の大きな負担になっている

    室伏さん「いや、本当にそうなんです。本来、非上場企業の株には価格がつかないのに無理やり価格つけて相続税に上乗せして払わされるわけですから『だったらもういいや。会社継がないで売っちゃえ』ってなっちゃう」

    室伏さん「そうすると(ゴールドマンサックスのようなハゲタカ企業が)『うちがやりましょうか』という感じで口を開けて待ってるんですよね」

    室伏さん「その為の仕組み(ゴールドマンサックスのようなハゲタカファンドに儲けさせて差し上げるための仕組み)っていうのは今回だけじゃなくって、以前から行われていた。実は2年前かな?『中小企業成長促進法』という名前で、いわゆる中小企業の事業承継の円滑化法なんですけど、これを変えたんですね」

    室伏さん「この法律っていうのは事業承継をMA(合併・買収)という形で行ったとしても従業員の雇用義務というのがあるんですけど」

    室伏さん「この従業員の雇用義務というのが8割”目標”といって達成できなくても『いいわけすればOK』なんですよ。(あくまで目標だから)」

    室伏さん「それじゃ事実上のザル法じゃないかと」

    室伏さん「となると、(ハゲタカファンドによる事業継承という名のM&Aで)従業員をどんどん解雇していって、ただ企業を転売するだけということになってしまう」

    室伏さん「こういった一連の改正は、何段階かに分けて法令を改正することによって進めてきたというのが実態(経産省所管)」

    室伏さん「この最終形が今回の『銀行法改正』と、もう一つ『産業競争力強化法等一部を改正する等の法律』」

    三橋さん「あのね~、この後の日本がどうなるのかってわかるんですよ私。外資系に勤めてたから」

    三橋さん「2000年のITバブルの頃そうだったんですけど、若い才能のある経営者とかが『長期的視点に立った社会のためになる研究開発』とかしなくなるんですよ」

    三橋さん「『短期で開発できて目立つような技術(役に立たなくてもいい)』を開発して、シスコとかIBMとかに売って自分は創業者利益を得て悠々自適に暮らすんだけど」

    三橋さん「基本的に売り飛ばされた企業というのは大企業の中の一部門になるんですよ」

    三橋さん「そうするとね、研究開発が全く進まなくなるの」

    三橋さん「なぜかというと、大企業というのは元々『短期の株主資本主義』に支配されてるから研究開発費が出せないから技術を持ってる企業を外から買って来てるんです」

    三橋さん「その研究開発費を出せない大企業の一部門になっちゃうんだから研究開発なんか進むわけがない」


    大企業は四半期決算といって3ヶ月で成果を出すことを株主から求められている。3ヶ月で利益を伸ばして利益を出したら配当金をよこせというわけだ。
    当然だが、たった3ヶ月で利益を伸ばす策など打てないので、場当たり的に研究開発や設備投資費、人件費などを削って利益を伸ばし配当金を払っている

    三橋さん「大企業に売り飛ばされた後はだいたいサポート部門になるの」

    三橋さん「(研究開発が出ないから)新たな製品とかは開発できなくなる。だから今まで売ってきた商品のコールセンターみたいな感じになって、その対応をする人だけが残って他の人はやめるか別の部署に行くかという形でバラバラにされちゃう」

    三橋さん「外資時代にもう何回も見てきたからね」

    室伏さん「PC(パソコン)業界がまさにそうですよね」

    室伏さん「元々パソコン作ってたところは子会社にして、さらにそれを売っぱらっちゃってサポート部門ばっかりでしょ」

    三橋さん「ひどいのがね、これフランスの会社だったけどビジネスウェアっていうソフトウェア売ってたんですけど、そこに私が勤めてて、向こうからCEOがやってきて」

    CEO「我々は社会をより良い方向にもっていくためにこの会社を立ち上げたんだ。だから、この会社が売り飛ばされることはないから君たちは安心して働いてほしい」

    三橋さん「と、そのCEOは我々に言ったんですよ。この会社、3ヶ月後に売り飛ばされましたからね」

    室伏さん「はっはっは(苦笑い)でもね、最近のベンチャーの若者って自分で創業して、それをいくらで売り飛ばしたっていう話を誇りにしてるんですよ」

    高家さん「あ、分かりますその感じ」

    室伏さん「で、それを種銭にしてまた新しいイノベーションという名のすぐに儲かる薄っぺらい起業をして3年くらい回して売り飛ばしてまた儲けて、クルーザー乗ってますとかリゾート地に別荘もってますとかそういうことやって」

    室伏さん「でもね、それがなんか今の若い子たちのあこがれの人生設計みたいになってる」

    三橋さん「サクセスストーリーみたいになってる」

    高家さん「分かります、ドラマとかでもなんかそういう感じの見てたし周りも…」

    三橋さん「もちろん本人はそれでいいんだろうけど、従業員はたいていろくな目に合わないからね(苦笑い)」

    室伏さん「本来はこういったことが行われないように規制しなければならない立場の国が規制緩和してしまった」

    室伏さん「しかも今回、地域の優良な中小企業や地銀までもそういったビジネスの餌食にしちゃいましょうっていうのが本改正の一番大きな問題点でね」

    室伏さん「こういったことはしっかり解説されて国民に知らされるべき事なのですがなかなかきちんと解説されていなくて、某大手町の新聞社なんかは『バラ色の未来、色々な事ができるようになる』みたいなことを言ってる」

    室伏さん「この銀行法改正は非上場企業(中小企業)の株を買えるようにするというだけのことではなくて、銀行自体もできる事の幅が広がるというのはあるけれど、そちらばっかりクローズアップして報道している」

    室伏さん「『営業成績が芳しくない地方銀行も、この銀行法改正でやれる事の幅が広がれば儲かるだろう』という報道がされている」

    室伏さん「地方銀行が儲からないのはデフレ不況で貸し先が無い(不況の時期に大々的に借り入れを行ってまで投資をする企業が少ない)からですからね」

    三橋さん「デフレって全体としての稼ぎは増えないわけじゃないですか」

    三橋さん「そこで、銀行に対して『規制緩和したから色々できるようになりますよ』っていうのは、供給能力の引き上げになりますよね」

    三橋さん「椅子取りゲームの椅子の数は変わらないのに、新たにそこに銀行マンが参戦してくる(参加人数が増える)のだから血みどろの戦いが始まるわけですよ」

    三橋さん「結局、デフレが続くかぎりこうならざるを得ないのかなと」

    室伏さん「しかもね、地銀が色々やるといっても地場で色々やることになるわけで、本来協力関係を築かなくてはいけない地場の企業との戦いになってしまうわけですよ」

    室伏さん「だからね、デフレなのになおさら”過当競争”が進んじゃうって言う」

    室伏さん「そういうことを考えたら、規制を強化すると同時に政府はしっかり財政出動して有効需要を生み出すというのがまともな政府なのではないかと」

    室伏さん「だけどね、なぜか『規制を緩和すれば何かよくなるんじゃないか』とか『とりあえず競争させればよくなる』という妄想に取りつかれて政策を進めてしまっているのが今の政権の実態ですね」

    三橋さん「前半は『銀行法改正』の話だったんですけど、後半はベネチアで行われたG20の財務省中央銀行総裁会議で法人税について最低は15%に規制しようという合意がなされた話」

    三橋さん「今まではアメリカとイギリスの主導で法人税の引き下げ合戦が行われていたの」

    三橋さん「すなわち、法人税を引き下げて外国からの投資を呼び込もうと言うもの」

    三橋さん「東ヨーロッパ諸国が法人税引き下げて投資を呼び込み始めると、アメリアとイギリスはさらに下げると、そういうことをやってたわけ」

    三橋さん「この流れを受けて日本も法人税の引き下げを行ってきた」

    三橋さん「これってね、(リストラして派遣に切り替えて人件費削って)純利益を増やして株主への配当金と自社株買いを増やしたいだけなんですよ」

    三橋さん「それ以外なんの目的もない。だけど、そんなこと言えないから『企業の投資を誘致する』とか言ってたんですけど」

    三橋さん「これをもうやめましょうと」

    三橋さん「アメリカとイギリスはもう法人税を引き上げることを決めてます」

    三橋さん「すごいですよね、自分達ではじめたことを自分達が真っ先に翻すんだから。いい意味でですよ」

    室伏さん「しかもね、法人税の引き下げ合戦をやめようという話が出た時に、アメリカは最低21%を主張していたんですよ。でも21%だと無理なところもあるからとりあえず15%から”はじめましょう”と」

    室伏さん「15%から下げましょうじゃなくて15%から上げていきましょうと言うこと」

    室伏さん「実はこれに関しては緊縮の権化の麻生財務大臣も『歴史的な合意だ』と称賛をしている」

    三橋さん「いや、あいつの頭の中は法人税増税&消費税も増税にきまってますよそんなの」

    三橋さん「バイデン政権の政策を見ると、まず法人税は増税。所得税の累進性強化。配当金の分離課税廃止となっていて」

    三橋さん「面白いなと思ったのが、MMT的な財政拡大をやって共和党に『財源はどうするんだ』と聞かれると『じゃあ、法人税増税します』と答えるんですよ」

    三橋さん「表向きそのように答えているけど、べつにこれは財源にする目的でやってるわけではないですよね」

    三橋さん「格差を縮小するというミッション思考の税制改革と財政拡大をくみあわせてるんですよ」

    室伏さん「少なくとも法人税増税を引き上げることによって従業員に給料を払っちゃえば法人税は下がるでしょ」

    室伏さん「給料を上げる圧力としても働きうるわけですからね」

    三橋さん「法人税減税も結局はデフレ化政策なんですよね。企業に費用を削減させる。一番削られたのが人件費ですよね(苦笑い)」

    室伏さん「あとはね、海外では四半期決算の義務化をやめるといった動きも出てきている」

    室伏さん「僕はまだ全部は読んでいないのですがEUの方の話が出ていて、一応は規定はあるんだけどもイギリスとフランスは既に義務化をやめているはずですね」

    室伏さん「それを踏まえて日本でも関西経済連盟が四半期決算をやめてほしいと」

    室伏さん「四半期決算をやめてもらえると、3ヶ月という短いスパンで利益を伸ばさないといけないから『この研究要らない』『あの研究は3ヶ月経っても利益出てないから要らない』とかそういったことが減るのかなと」

    三橋さん「四半期はやっぱおかしい」

    高家さん「短期で見るって言うのがまずいと言うことを皆が気がつき始めてるってことですか?」

    室伏さん「そうそう」

    三橋さん「だって3ヶ月で利益伸ばせって言われても無理ですよ。だから人件費カットしてその分を純利益として水増しするしかない」

    室伏さん「どっかを売るとか、どっかから買ってくるとか、人件費削るとか、あとは内部の組織改編とかね(苦笑い)」

    三橋さん「やるやるやるやる(笑)」

    高家さん「なんですか?何?」

    三橋さん「四半期決算だと短期で評価されちゃうから、四半期ごとに組織を改編してた」

    高家さん「組織を?」

    三橋さん「なんかやった感じがあるじゃないですか(笑)」

    高家さん「ああ、やった感(笑)」

    三橋さん「何の意味もないんですよ。ていうか逆効果なんですけど、なんかやらないと株主に怒られちゃうから」

    三橋さん「いま、日本政府も同じ事やってるじゃない。子供庁とかデジタル庁とか。とりあえずやってる感が出るから」

    室伏さん「あれは、そうですね(苦笑い)」

    室伏さん「菅内閣のキーワードとして『縦割りの排除』っていうのがあるでしょ」

    室伏さん「でね、縦割りの代表例って何だろうって探して子供庁とかデジタル庁とかになったわけですけど、アレかなりこじつけでやっててね」

    室伏さん「元役人からすると、子供に関しては元々内閣府でやってたんでもしやるんであれば内閣府のこともに関する総合調整機能を高めればいいだけの話なんですよ」

    室伏さん「組織作るって言うのは物凄い時間と手間がかかるものでね、後発でまた子供に関する別の問題が出てきたらどうするんですかと(また新しい組織作るんかいな)」

    室伏さん「申し訳ないですけど、子供庁を提案して引っ張っている某参議院議員。僕もよく知っている人なんで彼を悪く言うわけじゃないですけど彼の主張って完全にこじつけだし霞が関のことをよくわかっていない」

    室伏さん「とりあえず縦割りを排除する政策を何かしら提案したというと官邸から評価されるという悪しき風習があってね」

    室伏さん「『それ縦割り関係なくね』ってものでも縦割り排除の名目で提案して自分の出世委につなげるっていうね」

    三橋さん「だいたい、縦割りを完全になくすことなんかできないでしょ。それじゃ専門職否定してるようなものじゃない」

    三橋さん「国土交通省と経済産業省は仕事違うんだからある程度縦割りにならざるを得ない」

    三橋さん「ようは組織を作ったり潰したりしてやった感だしてるだけですよ(苦笑い)」

    室伏さん「組織論から言っても縦割りの先端組織と横割りの官房系統機能をうまく組み合わせることで組織というのは動かすわけですよ」

    室伏さん「これ役所だけじゃなくて民間企業もそうですよね。なんでそんな当たり前の事が分からないんだろうと」

    三橋さん「ああ、でもね。2000くらいは大企業も縦割りはダメだ。横軸のマトリクス組織だとか言ってた」

    高家さん「その流れってどっから来てるんですか?」

    三橋さん「80年代、90年代くらいからかな」

    室伏さん「バブル崩壊後くらいから『~経営』とかそういったキーワードが登場して、それに振り回されてきた」

    室伏さん「そういった悪しき傾向がまだまだ続いてるってことなんですよね」

    室伏さん「そろそろ、そういうの意味ないって役所の人間がきずいてもいい頃だと思うんですけど、役所に気がつく人間が居なくなっちゃってるんですよね」

    室伏さん「むしろ、それに乗っかった方が俺は評価されるし、退官した後も儲かるよね。みたいになっちゃってるんじゃないかと」

    三橋さん「当たり前だけど、全てのソリューションって、たまたまある時期のある国でうまくいきましたってことで、普遍的にいつ何時どこの国でも使えるソリューションなんてないんですよ」

    三橋さん「でも、バブル崩壊の日本人はそういうのがあると思っちゃったんですよ」

    三橋さん「だから皆がそれに喰いついて自分の会社を弱らせてきた。富士通何か典型ね」

    三橋さん「一番最初に成果主義っていうのを取り入れたの」

    三橋さん「仲間と握手できないくらい血みどろの殺し合い(成果主義)をやらされるわけで、元々日本企業の強みであったチームワークがバラバラになっちゃったの」

    室伏さん「社内カンパニー制とかね」

    室伏さん「結局、同期がとれなくなってバラバラになっていったという(苦笑い)」

    ※施教授「何でもかんでも取り入れようというのは悪質な輸入業者だ。取り入れるとしても自分に合うものと合わないものを取捨選択した上で日本化して取り入れるべき

    高家さん「結局、分割して弱くなっちゃったと」

    室伏さん&三橋さん「そうそう(苦笑い)」

    室伏さん「こことそこが連携してやれば済んだ話なのに社会カンパニーは独立採算だからいがみ合うようになっちゃうでしょ。むしろ、縦割りを強めちゃったわけです」

    三橋さん「私は何が正しいとか言うつもりはないんです。その企業とか国家に正しいソリューションというのはそのタイミングによっても変わるから」

    三橋さん「時期が変わったらまた適切な対応というのは変わるから」

    三橋さん「普遍的なソリューションなんかねーから。これ常識ですから」

    室伏さん「常識とあと平衡感覚」
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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