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2023年8月9日

【藤井聡】今年5月のコロナ死は1367名。でも5類へ移行。しかし過去の4回の緊急事態宣言は全てそれ以下で発出&継続。つまり過去の宣言に合理的基準があったとは到底言い得ません。

読者からこんなコメントを頂きました。

ーーーーーーーーーーーーーーー
お盆も近づき、週末は各地で夏祭り・盆踊りが開催されていましたね。今朝のニュースでもその様子が報道されていました。これらの報道は一様に、コロナで3年間開催できなかったがコロナを乗り越えて久しぶりに開催できた、やはり夏祭りは地域にとって大事、云々。。。報道の中でインタビューを受けている一般の方も、もちろんマスクなど一切せず「お祭りが帰ってきてくれて嬉しい」の一色。

 でもちょっと待て。

 いまも周りではインフルエンザやコロナに掛かっているひと、大勢いますよね?去年までと何が違うの?コロナが怖い病気じゃなくなったの??去年までのバカ騒ぎは何だったの?そんな反省や振り返りをする報道やコメントなど一切ありません。

「まあ、いいじゃない、日常が戻ったんだから。」

周りの人にこの疑問をぶつけると必ず返ってくるこの言葉。これを聞くたびに、あぁきっとこの国ではコロナバカ騒ぎと同じことが延々繰り返され、そのたびにこの国と国民は劣化していくんだろうな、と悲しくなります…細かいこと言いすぎでしょうか?
ーーーーーーーーーーーーーーー

いいえ。

決して細かいこと言い過ぎ、でも何でもありません。

むしろもっともっと言っていただかないといけない、と思います。

一連の「コロナ騒動」が始まったのが2020年の3月。

当方はリスク心理学、という学問に20年以上関わり、様々な研究を行い、辞典執筆なども担当してきましたが、その学問的見地に立てば、このコロナ騒動は、人類史上何度も何度も繰り返されてきた、極めて典型的な「社会心理学的パニック」に他ならないことが容易く分かります。

で、そういうパニックになれば、人々は合理的な判断ができず、かえって被害を拡大してしまう、だから、パニックを収め、冷静に合理的判断を促すことができれば、我々の社会は大きな経済的社会的精神的被害を大幅に減ずることができる…当方にはそういう「真実」がかの2020年3月の次点でクッキリと大局的、俯瞰的視座から、(リスク心理学の学問的視座も援用しながら)いとも容易く判断せざるを得ない…と考えていました。

ですので、できるだけ、人々のパニックが収まるような情報配信に努めました。

医学部、ウイルス学の専門家の意見にもとづきながら、大学のユニットから学術的提言を公表すると同時に、メルマガ、ラジオ、テレビ、Youtubeそして挙げ句の果てには、(記述情報のあまりの短さに)長い間忌み嫌い続けてきた「Twitter」を始め、それまで動員して、徹底的に情報・メッセージ配信を図らんと決意し、可能な限りそのように膨大な時間を費やして参りました。

が、多勢に無勢…あろうことか、こういう世論の不条理に戦いを挑み続けてきた言論人達もまたその「多勢」に加算する状況が生まれ、世間の「コロナ自粛」の波は一向に収まることはありませんでした…。

自らの圧倒的な力不足に、恥じ入る他ありせん…

ですが、あれから3年半、ようやく世間のコロナに対する認識は、当時の当方の認識に近づいてきたように感じます。

が、世論が大騒ぎし、8割自粛が叫ばれ、「緊急事態宣言」が出された2020年4月、5月の頃の死者数よりも、今の方が圧倒的に多くの方がコロナでなくなっているのです。

2020年の5月末までの数ヶ月間の累計コロナ死者数は、892名ですが、今年の5月のコロナ死者数は、たった一ヶ月で1367名だったのです。

にもかかわらず、当時は「緊急事態宣言だ!」という事になったわけです。

もちろん、これに対して「最初は未知のウイルスなんだから、安全側に対応するのが鉄則だ!」とおっしゃるのだろうと想像いたしますが、かなりの状況が分かってきた2021年の7月から9月にも緊急事態宣言が出されていたのですが、その時の死者数は、

2021年7月   409人
2021年8月   849人
2021年9月   1642人

となっており、今年の5月の死者数よりも低かった21年7月や8月でも緊急事態宣言が継続され、ステイホームが叫ばれ続けていたのでした。

ちなみに緊急事態宣言の発出時期は

1回目の緊急事態宣言:2020/4/7(火)~2020/5/25(木)
2回目の緊急事態宣言:2021/1/8(金)~2021/3/21(日)
3回目の緊急事態宣言:2021/4/25(日)~2021/6/20(日)
4回目の緊急事態宣言:2021/7/12(月)~2021/9/30(木)

となっているのっですが、この期間を含む月で、今年5月よりもコロナ死が少ない月は、

1回目の緊急事態宣言 の2020年4月
1回目の緊急事態宣言 の2020年5月
2回目の緊急事態宣言:2021年3月
3回目の緊急事態宣言:2021年4月
4回目の緊急事態宣言:2021年7月
4回目の緊急事態宣言:2021年8月

と実に6つもあります。

これは、緊急事態宣言が発出されていた時期を含む11の月の半分以上にも及びます。

しかも、上記のように第1回目から第4回目の「全て」の緊急事態宣言が今年の5月の死者数「以下」でも発出されていました。

だとするなら、緊急事態宣言の発出の「基準」を踏まえれば、今年の5月だって、緊急事態宣言を発出す「べき」だという事になる筈です!

ところが、政府がやったのは、その正反対の対策。「感染症法での5類への移行」だったのです!

僕は、緊急事態宣言の度に、「こんなもの何の基準も無い、極めて非科学的な政治決定だ!もっと科学的に合理的に判断すれば、こんな緊急事態宣言なんて意味は無い!基準を示せ基準を!!」と主張しつづけたのですが、一部の保守言論人達も含めたそれは全て無視なさったのです。

それどころか当方のそういう主張に対して、実に多くのご批判…というよりもむしろ「誹謗中傷」と言わざるを得ない言説を公表なさり続けたのです。

以上の顛末、すなわち、

(1)今は、「月累計1367名(5月)」でも緊急事態宣言ナシ。それどころか政府は5類に移行し、それに対する激しい反発論ナシ。

(2)しかし、かつては(コロナ上陸から1年以上が経過した時期でも)緊急事態宣言。

(3)そして、政府系医療関係者、政府、言論人がそれらの緊急事態宣言を是認すると共に、反対論者に対して激しく批難。

という「3つの事実」は、次のように説明する他有りません。

「政府、政府系医療関係者、徹底自粛を唱えた言論人には、緊急事態宣言の発出について合理的基準が無かった」

そしてこのことは、

「緊急事態宣言発出による社会的・医療的・精神的被害について特に頓着することなく、お合理的基準以外の<雰囲気><空気>に基づいて緊急事態宣言を徹底指示し、それに対するあらゆる批判を、特に明確な合理的基準なく、<雰囲気><空気>に基づいて、批難していた」

という事を示唆します。

なんとおぞましい人々なのでしょう…

ホントに、酷い話しです。

既に時間は過ぎ去ってしまいましたが、せめて本メルマガ読者だけでも、彼らの<罪>をしっかりと記憶にとどめておいていただきたいと、思います。

追伸:本記事は、『クライテリオン編集長日記』https://foomii.com/00178)で、昨日(8月8日)配信した記事を、一般公表用に調整したものです。オリジナルにご関心の方は是非、下記ご一読ください。
https://foomii.com/00178/20230808194800112476

その他、『クライテリオン編集長日記』https://foomii.com/00178)では、下記記事を配信しています。ご関心のものがありましたら是非、ご一読ください。

【最大500万人分の氏名&マイナンバー情報流出問題】このままでは、マイナンバー制度が全く信頼できない制度であるという「事実」が確定する。
https://foomii.com/00178/20230807133741112410

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【藤井聡】今年5月のコロナ死は1367名。でも5類へ移行。しかし過去の4回の緊急事態宣言は全てそれ以下で発出&継続。つまり過去の宣言に合理的基準があったとは到底言い得ません。への4件のコメント

  1. 過則勿憚改 より

    愚かな小生
    コロナの コのジも ワクチンの ワのジも
    存じ上げませんでした 恐悦至極 もとい

    恐縮至極 とでも おっしゃるのかと 思いきや、、

    尾身 くろん

    柳の下に泥鰌は何匹いるのか
    濡れ手で粟やら 泥鰌やら

    とにかく コロナは カネになる 
    って か 。。。

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  2. 利根川 より

     中国で何やら感染症が発生しているとかなんとかいう話が出ている中、WHOのテドロスさんが

    テドロスさん「これはパンデミックではない。人・人感染はない」

    などと言ってみたり、一方で、人工呼吸器がないと呼吸もできなくなるほど深刻な健康被害が起きているという話もあったり、情報が錯綜していく中、当時の安倍政権は

    安倍政権「習近平国家主席を国賓として招くにあたり、中国からの渡航を制限するわけにはいかない」

    という選択をしました。
     そうこうしているうちに、日本国内でも感染者と思われる者がでてきたり、ダイヤモンドプリンセス号での集団感染がおこったりしました。
     2020年3月には、当時、自民党の衆議院議員であった安藤裕前衆議院議員は

    安藤議員「急いで『粗利補償』をする準備をすべきです」

    と提言書を自民党本部に出しましたが、取り合ってもらえず、ならば消費税を時限的にでもいいから廃止してくれと願い出るも、そのことで上層部の不興を買って次の選挙では公認をもらえませんでした。自民と組んでいる公明党も

    公明「今から『粗利保障』の準備をしても来年になってしまう、それでは意味がない」

    ということで、誰にも対応してもらえなかった。そのコロナ禍は3年以上にわたって続いています。
     感染症対策の基本は「隔離して広げないこと」ということで、基本に忠実に

    緊急事態宣言

    が実施されました。愚かなことに私も2020年5月までは隔離政策に賛成していた口です。藤井教授の話をもっとよく聞いておくべきでした。

    世界中に広がっちゃったあとで隔離政策やっても意味ねーだろ

    って話なわけで、実際、渋谷の街から人が全く居なくなるくらい厳しい隔離政策を行ったにもかかわらず、感染が0になるどころか緊急事態宣言の最中でも陽性者数は増加に転じてしまっていました。社会インフラの維持や国民生活も考えれば次善の策を考えねばならんのに、専門家を名乗る者ほどそれができなかった。
     さて、長い時間がかかってようやくウィズ・コロナしか方法がないということになりましたが、当然、免疫力が弱いお年寄りや、あるいは疾患を抱えている人はいる。現場の者としては

    「弱い奴が死ぬのは仕方がない」

    では済まないので、なんとかウイルスに弱い人達を隔離しようと試みるわけですが、介護や医療の現場では度々集団感染が起こってしまった。

    「どこからウイルスが入り込んだのか、感染経路がわからない」

    そうしたケースも多かった。TVでは飲食店ばかりが叩かれていましたが、集団感染は医療介護施設の方が多かった。世界中に拡散した状況で、特定の集団だけ隔離しようというのが、そもそも無理があったのだと思います。「無駄削減」のために感染症病床の数や国立病院の数、保健所の数を減らしていた状況ではなおさらでしょう。感染症対策は初動が重要と口を酸っぱくして言われた意味が身にしみてわかりました。ちなみに、我が家は年寄りが多いので、今でも変わらず人が多い場所で会話する際にはマスクを着けていますし、手洗いも徹底しています。むろん、暑さ対策も行っていますよ。
     さて、今回の新型コロナ感染症、初動でミスって次善の策もミスって、今どうなっているかというとコチラ⇓

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    東京商工リサーチ2023年8月8日発表

    7月の企業倒産件数(負債総額1000万円以上)

    前年同月比53.4%増 758件

    16ヶ月連続で前年を上回った。増加率は2020年初めにコロナ禍が始まって以降最大

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    健康被害のみの話ではなく、国民生活の面でも失敗に失敗を重ねてしまっている。
    去年の段階で森永康平さんも「これから倒産件数が増えていくので対策をしておいた方がいい」とラジオ番組で忠告していましたし、令和新選組の山本太郎議員も国会で

    山本太郎議員「ゼロゼロ融資、これチャラにしてもらえませんか」

    と陳情していましたが、自公政権は何も対策をしてこなかったようです。既に倒産件数がこれだけ増えてしまっているわけですが、

    ゼロゼロ融資関連の倒産を救済するような<雰囲気><空気>にはどうやったらなってくれるものなんでしょうね。

    やっぱ自公政権を下野させないとダメかな~。別にしっかり救済してくれるならそのまま政権を握っててもらっても構わないんですが、財務省の狗であるところの自公政権じゃな~、無理だろうしな~

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      1. 利根川 より

        ちなみに、コロナ禍初期の段階から5類にしろという話はありましたが、その話の出どころは自民党…というか保守界隈、もっと言うと財務省からの圧力があったという話も聞きますが、どうなんでしょうね?要は、療養費やワクチン接種を「国費」でやるのは嫌だから自費でやってもらいたいって話だったと思うんですが…
        国民の健康のためとか、国民生活のためというわけではなく、財務省が経費をケチりたいという話だったような?

        返信

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  3. うたか より

    重症者が減って死者が増えてるのが不思議
    重症者が20分の1で死者が2分の1で相対的に10倍
    重症者700人で死者500人なんて日もあった
    最初は重症者の死者のみカウントしてたが中等症とか軽症の死者もカウントするようになったんじゃないのかと疑っている

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