日本経済

2023年6月5日

【三橋貴明】弊社の顧客が支出を削減すると

【今週のNewsピックアップ】
誰かの支出は誰かの所得。
政府の歳出は国民の所得
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12805770967.html
2023年6月1日 財政政策検討本部の提言
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12805924159.html

三橋は、言論活動を始めた当初から、
以下の「国民経済の五原則」を
主張し続けてきました。

◆国民経済において、最も重要なのは
「需要を満たす供給能力」である。
◆国民経済において、
お金は使っても消えない。
誰かの支出は、誰かの所得である。
◆国民経済において、
誰かの金融資産は必ず誰かの金融負債である。
◆国民経済において、
誰かの黒字は必ず誰かの赤字である。
◆現代世界において、国家が発行する
貨幣の裏づけは「供給能力」である。

「誰かの支出は、誰かの所得である」
我々の所得は、誰かが財やサービスに
支出してくれることで創出されます。
あるいは、財やサービスの生産無しで、
貨幣が移転されるのでも構いません。

いわゆる、所得移転です。
働いて稼いだ所得にせよ、
移転された所得にせよ、
「手元に入ってくる所得
(あるいは貨幣)が減る」
ことは、我々にとって負担です。

政府だろうが何だろうが、
誰かが支出をすれば、
我々の手元の貨幣は増える。
誰かが支出を削れば、
我々の手元の貨幣は減る。
手元の貨幣が減ることを
「負担」と呼ぶのです。

岸田内閣の諮問機関、未来戦略会議は、
少子化対策「財源」について、
「公費節減」を中心にするとしています。
この時点で、国民の負担は増えている。
政府が支出を削れば、我々の所得が減る。
これは負担増じゃないのか?

少子化対策にならない子育て支援を、
支出削減(=国民の所得減)でやる
と言っているにもかかわらず、
岸田総理は、
「実質的に国民に追加負担は生じない」
と主張しているわけですね。

結局のところ、我々国民の多くが、
「政府が支出を削減すると、自分が得をする」
と、非ロジカルな理解をしているのが
問題なのだと思います。

何しろ、上記は
「弊社の顧客が支出を削減すると、
弊社は得をする」と言っているのも
同然(というか、そのまま)なのです。
「政府」を「弊社の顧客」に置き換えると、
上記がどれだけ狂った
レトリックであるかが分かると思います。

幸いなことに、
財政政策検討本部の提言を見る限り、
自民党の議員の多くは
貨幣観を修正されつつある。

自民党政調の正式な組織から、
「国債を発行すると、信用が創造される」
といったまともな信用貨幣論に基づく
提言がされるとは、
コロナ禍前は思ってもみませんでした。

もっとも、自民党の議員が正常化しても、
国民が、
「政府の支出は自分の得」
と、認識していると、
「歳出改革で少子化対策」という
最悪の路線を進む羽目になってしまう。

誰かの支出は、誰かの所得。
誰かの支出削減は、
誰かの所得減になるのです。
そして、政府が支出を削減する(=歳出改革)と、
国民が所得減になる。
この当たり前の事実を、
我々は早急に共有しなければならないのです。

◆小学館から「日本経済 失敗の本質:
誤った貨幣観が国を滅ぼす」
が刊行になりました。
https://www.amazon.co.jp/dp/4093888973

◆経営科学出版から
「歴史教科書が教えてくれない
古代日本「帝国」の誕生」が刊行になりました。
https://in.38news.jp/38nike2_980_teika

◆週刊実話 連載
「三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』」
第517回 歳出改革という国民負担増

◆メルマガ 週刊三橋貴明
Vol735 「ムダなバラマキ」を考える
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
政府支出について「ムダなバラマキ」という
レッテル貼りをする人がいますが、
その定義を示してくれたことはありません。
というわけで、代わりに考察してみました。

◆メディア出演

重大発表!高家さんがっ!!!
[三橋TV第708回]三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/Iec2w8B7wt0

もはや人間じゃないっ!
またもや潜在GDPの定義を変えた
内閣府の執念
[三橋TV第709回]三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/ungxMnTykEs

電力会社は国営に戻せ!安全保障は
「自由競争」に優先する
[三橋TV第711回]三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/heJWxWRYTXw

特別コンテンツ配信中!

【4日間限定公開】
徳川家康VSスペイン国王
戦国最大の戦い”関ヶ原”の裏で進む
覇権国の日本滅亡計画
https://youtu.be/GNfRfrqpzmI

日本は経済成長していない。
確かにその通りです。
ならば、日本経済を成長させるためには
どうしたら良いのでしょうか。
日本経済の成長に
本当に必要な指標、考え方、そして政策を、
わたし、シンガーsayaと共に
学んでいただくのが
「シンガーsayaの3分間エコノミクス
第二巻」です。
さあ、私と共に経済成長について
「ゼロ」から学んで下さい。
特別コンテンツとして、
三橋貴明&saya
「シンガーsayaが三橋先生に
ひたすら聞いてみた 第一回」
の全編もご視聴いただけます。
https://keiseiron-kenkyujo.jp/economics/

◆三橋経済塾

三橋経済塾第十二期
第六回対面講義の
お申込み受付を開始致しました。
https://members12.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=2147
ゲスト講師は中野剛志先生です。

◆チャンネルAJER
「日本国民の可処分所得と
実質賃金を引き上げるには」
(前半)三橋貴明 AJER2023.5.30
https://youtu.be/vbliAx2tzoU

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【三橋貴明】弊社の顧客が支出を削減するとへの3件のコメント

  1. 利根川 より

    <財政破綻のプロセス レバノンの例>

    1、複雑な宗教勢力による政治闘争や内戦などで治安が悪い(いつ何時、政府が消し飛ぶか分からない)

    2、そんな危ない所にわざわざ工場建てたりしないので、生産能力が低い

    3、生産能力が低いので国民が必要とする品物を国内で生産できない

    4、国内生産できないので国民が必要とする品物は海外から買う(輸入する)

    5、外国の輸出業者はレバノンに住んでいるわけではないので支払われたレバノンポンドをドルに両替する

    6、レバノンポンドがどんどん外貨に両替されていくので、レバノンポンドがケツを拭く紙の代わりに使ってもいいくらい余る

    7、余りまくってるレバノンポンドの価値が下がる

    8、最初、1ドル1500レバノンポンドで交換されていたものが、レバノンポンドの価値が下がったことで15000レバノンポンドださないと1ドルと交換してもらえなくなる

    9、昔は輸入物の1ドルチョコレートは1500レバノンポンドで買えたのに、15000レバノンポンド出さないと買えなくなる(インフレ率急騰)

    ※輸入に頼らざるを得ない国なのに輸入価格が上がる

    10、インフレを抑えるためレバノン政府は手持ちのドルを使って余りまくってるレバノンポンドを回収して1ドル1500レバノンポンドを維持する(固定為替相場制)

    11、手持ちのドルが尽きる

    12、手持ちのドルが無くなってしまったのでドル建て国債を発行する(外国からドルを借りる)

    13、レバノン政府はドルを発行することはできないので、借りたドルでレバノンポンドを回収する作業を続けると借りたドルを返せなくなって財政破綻する

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    ということで、どうして財政破綻するのかというとその国の生産能力が低いから。自国民が必要とする商品やサービスを自給できる国、つまり、供給能力が高い国(かつ、変動為替相場制の自国通貨建て国債の国)は財政破綻しないということでした。
     で、現代における貨幣というのは大半が「銀行預金」の形で存在していて、その銀行預金はキーボード操作で簡単に増やすことが可能です。ところが、供給能力はそうではない。

    ・産業のコメである半導体の工場。かつては日本に多く存在していましたが、一度なくなるとそれを取り戻すには莫大な時間がかかる

    ・文字通り国民の生命線である農業。いちど無くなるとそれを取り戻すには多大な時間がかかる。

    ちなみに、一度工業用地にすると土壌汚染の問題で農地には戻せないのだそうですが、現在の日本政府は農地をつぶして外国の半導体工場を誘致しているそうで、食糧自給率の改善が叫ばれる中、用地選定基準をバグらせてる場合じゃないと思うんですが…まあ、外国の半導体企業に補助金だけ食われて撤退なんてパターンにならないといいんですけどね。
     話を戻しますが、現代における貨幣はキーボード操作で簡単に増やせるが、生産能力は一度失うとなかなか元には戻らない。ここ30年あまりの日本は簡単に増やせるおカネをケチって、失うと戻せない供給能力をボロボロにしてきたわけでして、馬鹿なんじゃないのと。
     更に言えば、

    「売れないものは作れない」

    供給能力を維持するためには、国民が商品やサービスを積極的に購入できるだけの収入(需要)が必要なわけだが、

    <総務省家計調査>

    世帯主収入→消費税後の実際の手取り

    1998年:474万円→384万円

    2021年:533万円→366万円

    これですからね。人間は食わないと死んでしまうのに食う量まで減らしているのが今の日本。食う量を減らすということは、その分だけ食品が売れなくなるということで、食品の生産能力も棄損されるということ。では、どうして日本国民の収入は下がり続けているのかといえば、財務省がひたすら増税を繰り返してきたから。
     前・明石市長の泉房穂は失われた30年の責任は財務省にあると指摘していますが、実際にそうなんですよね。
     

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  2. 利根川 より

     ザイム真理教、そんな言葉が流行っているそうですが、なかなか言い得て妙だなと。
     

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    元大蔵省(現財務省)事務次官の齋藤次郎氏が、『安倍晋三 回顧録』の中で安倍元首相が財務省について批判したのに対して、反論している(『文藝春秋』5月号)。

    斎藤次郎氏「入省して(注 1959年)、徹底的に教え込まれたのは、財政規律の重要性でした。『財政の黒字化は当たり前のことでなければならない』、『赤字国債は絶対に出すな。』……毎日のように先輩から言い聞かされました。
    (中略)
    私も予算査定の際には、主計局の上司や同僚にしょっちゅう議論を吹っ掛けられていました。そうやって厳しく教育されながら、大蔵官僚たちは「財政規律の大原則」を脈々と受け継いできたわけです。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    中野剛志さん「斎藤さんが入省した1959年以前の状況(ドル固定為替相場制)であれば、財政規律にも意味がないわけではなかった」

    中野剛志さん「1ドル360円で固定するために、景気が良くなったり悪くなったりして1ドル360円から外れそうになったら常に為替介入や財政政策で調整しなければならなかった」

    中野剛志さん「なんでそんなこと(固定為替相場制)やってたのかということは置いておいて、当時であれば財政規律にも意味がないわけではなかったわけですが、今はもう変動為替相場制に移行していますからね」

    ということで、時代が変わって状況も変わって、財政規律に意味なんかなくなっても

    財務官僚「俺はそうやって先輩から教わったから」

    とやっているのは勉強不足なのか、それこそ新興宗教のようにそれが不変の原理原則であると信じ込んでいるのかということになります。
     なので、ザイム真理教というのはなかなかうまいこと言うなあと。
     森永康平さんと森永卓郎の親子対談がビズアップチャンネルで繰り広げられていて「じいじ」にほっこりしたりしましたが、対談の中で

    「緊縮増税派は『人間は追い込まれれば眠らせた力を覚醒させてイノベーションを起こすからもっと厳しく追い込んだ方がいい』という」

    「積極財政派は『当たりの馬券だけを買うことはできない。イノベーションにつながるような当たりの研究というのは、様々な研究をやる中で生まれる。様々な研究をやるためには余裕が必要』という」

    「緊縮派の言っていることは頭の悪い根性論にすぎないけれど、緊縮派の学者を見ると『見た目がイケメン』『身なりが良い』『立派な肩書』な人が多い」

    「逆に、積極財政派は見た目にあまりこだわりがない人が多い。だから、緊縮派の言うことの方が説得力を持って人々に受け入れられる」

    というお話がありました。
     
    国民と経済 フリードリッヒ・リストに学ぶ

    でも指摘されていましたが、権力者(財務省)に与する者は当然ながらその恩恵にあずかっているわけで、経済的にも余裕があるでしょうし『身なりが良い』のは当たり前。くわえて、財務省に忠実に「財政破綻論」を提唱していれば政府の諮問会議の座長にお呼ばれしたりするし、TVにも出版社にも取り上げてもらえるのだから『肩書が立派』なのも当然ですね。
     権力者(財務省)に与しない者はフリードリッヒ・リストのように売文で細々と生計を立てながら最後はどこにも行けなくなって自殺をするだけ…積極財政派の身なりが劣るという指摘は

    そうならざるを得ない

    というところもあるのですよ。
     安藤裕さんも指摘していますが、最近の日本の政治は「気に入らない奴は粛清」という方向に行っているそうなので、お話で出てきたようにイケメンを捕まえてきて積極財政を宣伝してもらっても、早々にそのイケメンさんは潰されることになるでしょうね(苦笑い
     

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  3. 利根川 より

     三橋TV第712回 視聴しました。今回はマズローの欲求段階説を使って「どうして日本国民は選挙に興味がないのか」を解説されたということで…

    <マズローの欲求段階説>

    飲食睡眠などの「生理的欲求」が満たされた状態でないと、他の欲求を求める状態にならない

    生理的欲求が満たされた状態で、それが安定的に続くことを願う「安全についての欲求」が高まる

    生理的欲求・安全欲求が満たされた状態で社会に所属したいという「社会的欲求」が生まれる

    生理的欲求・安全欲求・社会的欲求が満たされた状態で社会から認められたいという「承認欲求」が生まれる

    これらすべてが満たされてはじめて「自己実現欲求」が生じる

    ということでした。
     で、現在の日本は「貧困化」が深刻化しているわけです。20年以上にわたって実質賃金が低下し続けている国など日本ぐらいなものでしょう。「生理的欲求」や「安全欲求」が満たされていない人が大勢いる中で

    自称保守「皇統の重要性がウンヌン…憲法改正がウンヌン」

    リベラル「弱者を守る!LGBTQ!夫婦別姓!」

    非常に高尚な政策を掲げて選挙戦を展開しているわけです。生理的欲求や安全欲求が満たされていない多くの国民にそんな高尚なことを言ってもまったく響かないというわけですね。
     令和新選組の山本太郎代表や森永康平のビズアップチャンネルに出演したパク・スンジュン教授も指摘していましたが、

    「弱者を守るとか言いながら、多くの貧困層(弱者)をほったらかしにしていて支持が伸びるわけがない」

    ということでしてね。ごもっとも(苦笑い
     自民党の積極財政派の方々は財政政策検討本部に提言を出したそうですが、その提言には消費税に関することは書かれていないそうですし、

    「成長分野に投資すべし。頭のいい俺達にはどの分野が成長するのかあらかじめ未来が見えるのだ!」

    なんて書いてあるそうで…君らはどこのニュータイプなんだ。時が見えちゃってる人なのかと小一時間ツッコミを入れたくなります。
     まあ、消費税に関しては自民党の中ではもうタブー視されているそうで、口には出せないのだそう。(専制国家かな?
     そのタブーを冒して当時の安倍総理や甘利幹事長に消費税廃止を訴えた安藤裕さんがいかに真剣に政治に取り組んでいたのかがよくわかりますね。真剣に政治に取り組む人ほど干される日本って何なんだと小一時間問い詰めたい。
     いずれにしても、野党も与党も国民の生活を良くする気はサラサラなくって、それを分かっているから国民も選挙に関心がない。すると、組織票の重要性が増すので、政治家は新興宗教参りにいそしむようになるわけですね(苦笑い
     
    ・国民を貧困に叩き落し、国民からいろいろ考える余裕を奪って選挙に関心を持たせない(それによって財務官僚や政商はやりたい放題

    ・政治や官僚に批判が来ると困るので、国民同士をいがみ合わせてヘイト(敵対心)の向かう先をコントロール(例:インボイス制度

    これ、計算してやっているのならたいしたテロリストっぷりですよね。無意識にやってるのだとしても、それはそれで凄いですが。

    ナチュラルボーン・テロリスト 
     

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