政治

日本経済

2021年11月25日

【藤井聡】「岸田内閣の55.7兆円の経済対策」、前から決まってたものが大半で新たに決めたものは「ほぼゼロ」である。

巷では、岸田内閣による「55.7兆円」の巨額経済対策!と騒がれています。そして、いくつかのメディアは、かの矢野事務次官論文と同じ論調で「単なる(無意味な)バラマキだ!」「ここまで大きく膨らんでしまった……」という論調の批判を繰り返しています。

https://digital.asahi.com/articles/ASPCM6SMGPCKULFA011.html

https://news.yahoo.co.jp/articles/022856632687d4d7cccabed3e22906be7962e09a

しかしながら、そういうバラマキ批判、政府支出肥大化批判は単なる「濡れ衣」なのです。つまり、岸田さんは、支出は全然肥大化してないし、バラマキなんてな~んにもしてないのに、バラマキだとか政府支出が肥大してるとか責められているのです。

こういう状況になっているのは、政府支出を拡大したくない財務省が、岸田内閣が、内実が無いにも拘わらず巨大経済対策をやっていると見せかけて、それをマスメディアに批判させ、それを通して政府支出をさらに圧縮していこう、という「作戦」を考え推進しているからに他なりません。

ホンットに財務省の小役人共は、その優秀な頭脳を日本の国益のためには一ミリも使わず、「国債発行額を一円でも減らす」という財務省の省益目的のためにその優秀な頭脳達をフル活用しているんだなぁ、と改めて感心してしまいます(無論、本人達は、それが国家のためなのダ~!と表面的に確信しているのだと思いますが、そういうところが正真正銘のクズだってところなんですね 苦笑)。

さて、以下、詳しく解説いたしましょう。

(1)真水は55.7兆円でなく31.9兆円。つまり、政府は1.7倍に膨らませて公表している。

内閣府資料を精査すればいわゆる国費としての真水は、

 31.9兆円

であると明記されています。なぜならこの55.7兆円には、

 ・支出でなくて後で返せよという融資(貸し出し)である財政投融資が 6兆円
 ・自分自身(中央政府)でなくて、地方自治体に出させる 6兆円

が含まれているからです。しかも、

 ・既に「官邸の金庫」に入っているオカネ(=予備費の積み残し)が 6.8兆円

も含まれています。こうしたものを全て差し引くと31.9兆円になる、という次第です。
(詳細はこちらをご参照下さい。https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1462558630662664194

昔(例えば麻生政権時代)なら、経済対策総額は31.9兆円と言われているところなのですが、その他諸々を加えて55.7兆円に「粉飾」して見せかける、という変な風習がここ5,6年の政府発表において見られるようになってきてしまった次第です。

ちなみに、その粉飾率は1.74倍! 実に74%も過大に経済対策を見せかけているわけです。

こうして、積極財政派にいい顔を見せると共に、緊縮派のメディア等に批判をさせようという魂胆が、財務省にあるわけなのです。その魂胆、もろ、見え見えですね。

(2)昨年度予算の「残り」は、岸田作成予算とほぼ同水準の30兆円
ところで、この31.9兆円を、岸田内閣はどうやって調達するのでしょうか?

この点についてあれこれ調べて見ると、その大半が実は、昨年度、菅内閣が策定した三回に及ぶ補正予算約73兆円のうち約4割にも及ぶ、30兆円もの「使い残し」であると考えられるのです。
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00606689

具体的に、この31.9兆円の内、いくらが、「使い残し」に対応するのか今の所不明なのですが、政府関係者に内々にきいてみたところ、

「既に執行中/執行済みのものも、この31.9兆円の中に入っていると思いますよ」

という驚くべき話を耳にしました!こうした事も含めて考えますと、多くの国民は、岸田さんが言っている55.7兆円は、「岸田さんが努力をして、初めて決まったもの」と認識していると思いますが、そうではなくて、次の様な事をしているのです。

(a)岸田さんは、菅さんが決めた補正予算の内、未だ使い切っていないものに対して、それをそうとは言わずに、ドヤ顔で「僕が新たに決めたものです!」という体裁でしれっと「55.7兆円の経済対策」の中に組み込んでいる。

(b)岸田さんは、現在執行中の予算項目の内、まだ、執行が完了していない項目に対して、それをそうとは言わずに、ドヤ顔で「僕が新たに決めたものです!」という体裁でしれっと「55.7兆円の経済対策」の中に組み込んでいる。

これはもう、詐欺紛いの話ですね。

特に(b)については、既に執行している予算も「55.7兆円」の中に入れているっていう話ですから、それが本当なら、詐欺紛いどころか、完全な詐欺といっても良いような滅茶苦茶な話です。

いずれにしても、使い残しが約30兆円で、岸田さんが決める予算が約30兆円なんですから結局、

「岸田総理が財務省に新たに出させるカネは実質ゼロ!」

という事になりますね。つまり、この55.7兆円の経済対策というのは、岸田さんが新たにやるというものではなく、実質上は、「菅さんが決めた事を、引き継いで僕もやります」と言っているに過ぎないのです。

にもかかわらず、岸田さんは、
「史上最大規模の経済対策ダ~!」
とドヤ顔で言い募っているわけですから、ホント恥ずかしい話だとしか言いようがありません。

しかも、そうやってドヤ顔で言うから、多くのメディアが「バラマキだ!」「これ以上カネを使うな!」って言う形で政府に対する緊縮の圧力を加速してるんですから、我々積極財政派にしてみりゃもう、良い迷惑以外の何ものでも無い!!!!

っていう話なのです。ホンット滅茶苦茶な話です。

(3)GDP押し上げ効果5.6%という話は、さらに酷い詐欺である
にもかかわらず、政府は、

「経済対策のGDP押し上げ効果、政府5.6%」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA195240Z11C21A1000000/

と喧伝してるのですが、これはさらに酷い詐欺です。

なぜならこれは、「岸田対策55.7兆円をやった場合と、やらなかった場合とでは、GDPは5.6%分(おおよそ30兆円分)違う」という事を言っているからなのですが、この55.7兆円は実は、上述の様に、菅内閣が決めた補正予算の未執行分を全部やります、と言っているだけにすぎない話なんですから、それは、岸田対策でもなんでもないんです。

だから、「やらなかった場合」なんて事を考えること自体、あっちゃ、ならんのです。

政府が菅政権時にやるといったんだから、岸田内閣であろうがなかろうが、兎に角やりゃぁいいだけの話なんですから、それをあえて「やらない」というのをベースラインにして、普通にやることの経済効果を計算するなんて、許し難い話です。


それはまるで、現在、身長179センチの僕が、「もし僕が身長150センチなら、現状179センチだから、今僕が生きていることの「身長伸張効果」は29センチもあるんです!」とか何とか言ってるのと何も変わりません。
それってもう、殆ど「基地の外」のような話、ですよね。

にもかかわらず(まぁ、数兆円くらいはいくらなんでも岸田さんのお陰で支出が拡大した部分があるのだとしても、それでもやっぱ)ドヤ顔で出てきて「僕の対策でGDPが5.6%あがるんだぞ~!」なんて言ちゃぁ、絶対の絶対の絶対にダメなんです…

果たして、岸田さんはこの問題の構造を理解されているのでしょうか、されていないのでしょうか…?

…岸田内閣…できてスグなのにもうホント、もう既に相当ヤバイ、ですね…

……ということで、また来週…

追伸:財政を巡ってはこういう不道徳・不埒が日常茶飯事に繰り返されているのですが…それもこれも、財務官僚の倫理水準が、極刑に値する程に凋落しまくっているからです…誠に残念ですが是非、その実態を知って頂くためにも是非、下記、ご一読下さい。
『長州出身の矢野財務次官がバラマキ批判において吉田松陰の「やむにやまれぬ大和魂」という言葉を使ったことこそ、許されざる「大罪」である。』
https://foomii.com/00178/2021112122080187668

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  1. 拓三 より

    参院選まではもう少し出すかなと思てたけどなw

    維新が出てきてから選挙パターンが同じやね。
    口先だけの抽象的な言葉で保守を喜ばせ、選挙が終われば「はい、さよなら」

    ほんで保守は「○○は、やりたくても出来ないんだ! 財務省が悪いんだ!」
    と言ってる間に取り返しがつかない法律バンバン通され、the END…

    ここまで来るとジャップ.com達は身代金を要求。

    「BI 配れば支持したる」…

    国家が分からない人は貨幣も分からんわなw

    BI を推進する人は自国通貨の理論を主張するも自国通貨の「自国」が無いし…
    こいつらの頭の構造は未だ金本位制なんよ…大国様本位制かなw

    もうインテリさん達の強がりは聞き飽きた…正直に言えば?

         
         「主権」を持たないと何も出来ません。っと…

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  2. 人は 見た目が全て より

    猫背で ガニ股歩きの アホ面

    岸田風情に 何を 望む、、

    所詮は 己の 財布を重くするためにだけ

    総理になりたかった 輩だべ ♪

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  3. この世は既にあの世 より

    藤井先生も施さんも老けたというより、白髪が多くなりましたな。

    私もお二方とあまり歳が変わらないので時間が経つのは早いなあ、と。

    私は疲れてるのか虚無感からか口から魂が出そうですね。

    キッシンジャー早苗ですね。

    雇用保険の負担増らしく増税の話ししか聞こえてきません。

    国民に納税の義務を果たさせる環境を整備しない日本政府は取るばかりで呆れます。アホな国やなあ、と。

    増税ばかりしても僕らには金ありませんけどね。日本政府は僕らに金がいくらでもあると思ってるのでしょうか?ちょっとずつ増税しようが入って来るものが増えないと払えません。

    とあるスーパーでは惣菜とか刺身、肉類を入れるビニール袋が撤去されたんですよ。ビニール袋に入れないと汁がこぼれますよね。

    袋といえばコンビニ、日本はアホな政治家のせいで台湾のコンビニ化しましたが余計なことをしてくれたもんです。

    台湾は、
    タイツ!と言わないと袋に入れてくれないんですよね。えーっと当時は思ってたんですが。

    日本は黙っててもレジ袋に入れてくれるし楽だなあ、と思ってたんですが今は買わなくちゃいけないし、弁当とかコンビニで温めてもらい袋をケチると熱くて持てないです。

    あっつ!アチチー!アーチー、燃え尽きたろかい!

    「やっぱり袋に入れてください」と言うのも面倒臭い。

    疲れて、この前、自動レジの札を入れるところに硬貨を入れてまして、日本も終わったけど俺も終わったなあ、と思いました。

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      1. この世は既にあの世 より

        日本政府、自民党って、前振りだけで決して振り向かない GO!ピロミですよね。

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