政治

日本経済

2021年10月7日

【藤井聡】岸田新総理には是非、『財務主導の財政健全化が日本の新自由主義を産み出した』という真実を理解頂きたいと思います。

From 藤井聡@京都大学大学院教授

 

 

岸田文雄内閣がこの度、「新自由主義との決別」を高らかにうたいあげつつ、誕生しました。

新自由主義とは、一言で言うと「これまで民間企業がビジネスできなかった領域(例えば行政や社会)において、民間企業に自由にビジネスしてもらう」という、新しいタイプの自由主義です。

だから、小泉純一郎氏や竹中平蔵氏、さらには菅義偉氏や「維新」の政治家らの「新自由主義者」達は皆、水道や空港や郵政や高速道路や地下鉄など、あらゆる政府の事業の「民営化」を進めようとします。

これが日本経済、日本社会に大きな打撃を与えてきたのですが、こうした新自由主義を転換すると言っているのですから、当方はその点において、岸田内閣を強く支持しています。

しかし、今のままでは、岸田内閣は、新自由主義の決別に「失敗」するであろうと強く懸念しています。なぜなら、岸田内閣は「緊縮」財政を継続する疑義が濃密にあるからです。

そもそも、日本における新自由主義は、企業主導で進んだというよりもむしろ、財務主導で進んだからです。

先に触れた様に、新自由主義の本質は、様々な事業を 

「官から民へ」 譲り渡していくというもの。

この流れは、アメリカ等の諸外国では主として、民間企業側からの働きかけによって、作り出されました。つまり、ビジネスでカネ儲けしたい民間企業が政府から仕事を「引っ張る」という動きによって、「官から民へ」の流れができあがりました。  つまり諸外国では、民による「プル(PULL)」の力学で「官から民へ」の流れが作られたのです。

しかし、日本ではそれとは逆に、「政府の支出を抑えたい」という大蔵省・財務省の意図の下、政府の仕事を外部に「押し出す」ことを通して経費節減を図ろうとした事が、「官から民へ」の流れを作りだしたのです。  つまり、日本の場合は、官による「プッシュ(PUSH)」の力学で「官から民へ」の流れが作られたのです。

もちろん、一旦その流れができれば、民間企業がその流れに群がってくるのは洋の東西を問わず同じなのですが、その官から民への流れを作りだす最初のきっかけが、日本の場合は民間では無く、緊縮政府=大蔵・財務省だったのです。

当方は、岸田総理は、この根本的なメカニズムを理解されていないのではないかと、大変に危惧しています。  なぜなら岸田総理は、入閣直後から次の様な「緊縮」思想丸出しのご発言を公的に繰り返す鈴木俊一氏を、財務大臣=デフレ脱却担当大臣に任命したからです。

まず驚いたのは、年内に編成する経済対策について問われて、

「財政健全化は堅持していかなければいけない」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA050Z90V01C21A0000000/  と発言されたこと。

岸田総理が、年内のコロナ禍という国難に対する経済対策については財政規律を度外視すると既に発言しているのですが(https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1445273735464845313)、この発言はその岸田発言をいきなり覆す驚くべき発言です。

また、政府と日本銀行が掲げる2%物価目標について問われた 時には、

「日銀が物価安定の目標の実現に向けて努力されることを期待する」 https://shikiho.jp/news/0/460460  と、デフレ脱却は日銀の仕事であって、財務省の仕事ではないと言い放ってもいます。

なお、この時に鈴木大臣が財政政策について唯一語った発言として報道されているのが、  「現在のゼロ金利環境を最大限に生かし、財政投融資を積極的に活用する。」 https://shikiho.jp/news/0/460460  というもの。

当方はこれを見たとき目眩がしそうな程落胆しました。そもそも、財政投融資というのは、政府による「貸し付け」の事であって、広い意味における「金融政策」であって、本当の意味での「財政政策」とは言えないものなのです。

このように、鈴木氏の発言は、一貫して「緊縮」主義に貫かれており、彼の差配の下では、十分な政府支出が行われないリスクが極めて高いのです。 

本当にそんな緊縮財政が進められるのなら、様々な政府事業の

「官から民へ」

の流れは止まらないどころか、むしろ加速していくことは必至です。

果たして岸田新総理は、こんな発言をする鈴木氏を財務大臣=デフレ脱却担当大臣に任命しておいて、ホントに、 新自由主義の転換にあたって絶対に必要な「緊縮財政から積極財政への転換」を果たすことができるのでしょうか?

岸田氏は、「新自由主義からの転換」という素晴らしいビジョンを掲げられた、日本最初の総理大臣です……

ですから、当方としては岸田総理に是非、その初志を貫徹いただきたいと心から願っています。

ついては、当方個人としては、こうした財政と新自由主義との関係についての「真実」をしっかりと岸田新総理にもご理解いただけるよう、できるだけの事を致して参りたいと思います。

岸田新総理の知性と胆力、そして「人の話を聞く力」を、心からご期待申し上げたいと思います。

追伸:岸田内閣について現状入手できる情報に基づいて、岸田氏は一体どんな経済財政政策を展開するのか、そして日本経済はどうなるのかについて、改めて約1万字にわたってじっくり、分かり易く、論じました。

下記是非、ご一読下さい。 「岸田内閣で、日本経済はこうなる!」 https://foomii.com/00178/2021100410412185669

 

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【藤井聡】岸田新総理には是非、『財務主導の財政健全化が日本の新自由主義を産み出した』という真実を理解頂きたいと思います。への6件のコメント

  1. 拓三 より

    日本は戦後、自主独立(国家)を放棄したのです。

    なら国家を放棄した国が求めるものは全世界、国家を放棄させれば侵略されることもありません。
    国家を否定すれば「これだけ素晴らしい地域が出来る」が戦後日本のアイデンティティー…これが現実。
    こんな馬鹿げたパヨク思想と言うでしょう。でもこれが日本において現実主義なの。(インテリさんの頭の中)

    一つ例をあげれば、安倍がやった金融緩和「だけ」の政策は、

    「世界の金持ちが日本で儲かれば日本を大切にしてくれるはず。その為に日本がお金も用意いたします。是非皆様! 日本を買って下さい。国民は貴方達の為に奴隷になります。平和の為に!」政策ですw

    「改革だ!」「イノベーションだ!」「グローバルだ!」とか何とか言ってる人達って、作られたレールに乗ってるだけ。己の力でレールを「作る」事の出来ない左翼(男)なの。

    革新? 片腹痛いw 鳥籠作るだけやんw
    未来は保守(女)が作るんよ。

    国家は国民が「作る」もの。国家も作れない国民が地球国家を作るって、ギャグにもならんわw それも作られたレールに乗ってw

    私は安全保障の無い政策は耳を傾けません。どんな素晴らしい経済政策でも!

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  2. 昔 陸軍 今 財務 より

    行政官風情が
    政治に 介入すると

    常に このザマ

    あいつらには 「話せば 解る」
    と 言ったところで

    返事は

    「問答無用」
    で ございませう 。。。

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  3. この世は既にあの世 より

    藤井くん、自民党には下野してもらうんで岸田がどうとか自民党に財政出動とか関係ありませんよ。

    君はどうしてただ飯食いの自民党にこだわり売国奴の自民党を応援するのかね?

    何か君個人にメリットがあるの?

    あのね、日本は氷河期世代、ロスジェネ世代を見捨てたろ?おまけに低賃金化の増税や。

    だからいくら金を積んでもスキルある人が少ないのよ。OK?低賃金化でヤル気もそんな無いわけよ。

    だから「失われた20年」って言うでしょう?

    あっちが壊れた、こっちが壊れた言うても予算ではなくて人員と技術力不足ね。そうなったんだよね。ガードマンなら1ヶ月くらいで誰でも出来ますわな。

    私もあなたも誰も土建仕事は?やらないよね?

    大卒も?やらない。俺の同級生も今更土建仕事はやらない?

    誰にやれと期待してるわけですか?

    大型ドライバーも高齢化。

    賃上げ、減税、竹中式ではないベーシックインカム。社会に出たことのないニートが机上で考え計算しても現実は見えませんよ。日本はコンパクトにやるしかありませんよ。

    他人にああせいこうせい言うのではなく、明日からでも土建業者やダンプの運転手でも応募して面接に行き自分が先ず汗をかいてやること、これに尽きる。

    何様か知らんけどやらねえヤツがピーチクパーチク通用しませんよ。

    本当に危機を感じているなら明日から自分からスコップやツルハシ持つ筈だ。

    ただ飯食いの自民党議員も新自由主義者も口先だけで飯を食うのが染み付いてるんだよね。

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      1. 拓三 より

        お前よ、これだけ何日も張り付いてダラダラ長文書く暇がある奴が世間の代弁してるつもりか? (数台の画面が並んでいる部屋でポテチ食いながらキーボード叩いてそうw)

        内容もそこらに転がってる愚痴レベルを並べてるだけで筋も通ってないし、誰もが1つ2つ同感出来る愚痴並べて同情惹いて何がおもろいねん?

        お前のやり方、安倍と一緒。

        誰もが共感出来る政策(愚痴)並べて、感心を寄せる…まさに安倍w

        安倍を批判するならちょっと位、方法変えれよ…

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  4. 大和魂 より

    私の解釈とすれば、藤井先生の仰りたいことの真相は逝去されたけども藤井先生や私の脳裏には厳然と刻み込まれた西部イズムだと考えていますね。

    そしてその核心部分とすれば最後の西部ゼミナールでの収録で表現なされていた、日本の国民性を代弁されたメッセージと受け止めており、今回の藤井先生が考えていらっしゃる方向が同じテーマと感じるからですね。

    そもそも、国際社会の金融経済システムが健全で無く腐敗して根腐れを起こしているから国際社会全体について逝去された西部先生は孤軍奮闘され学者や大人として常識ある異論を展開されていらっしゃっただけなのです。

    ちなみに先ほどの金融経済システムの根腐れの波及効果により日本社会の中枢部に位置する政治と行政も浸食されているから、バカげた個人主義が栄え寝ぼけた少子高齢化を生み出しているわけですよ。

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