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2021年8月24日

【三宅隆介】[特別寄稿]地方交付税交付金は自治体の生活保護費ではない

From 三宅隆介@川崎市議会議員

今月3日、総務省から令和3年度(2021年度)の地方交付税交付金(普通交付税)の決定額が発表されました。
総額は16兆3921億円で、そのうち道府県分が8兆9276億円、市町村分が7兆4645億円です。

交付団体は道府県、市町村をあわせて1711自治体です。
川崎市も6年ぶりにようやく交付団体になりました。

これを、東京新聞が「(川崎市は)交付団体に転落した」と報道しています。(令和3年8月4日付 朝刊)
どうやらこの新聞社は、地方交付税制度を「自治体の生活保護制度」であるかのように誤解しているようです。

まるで、放漫財政により自主財源ではやっていけない自治体を国が救済している、みたいに。
そもそも日本全国において、完全な自主財源だけで行政運営できる自治体など首都である東京都以外にはありません。

むろん現実には、東京都でさえ地方債を発行していますし、国庫補助金による事業を行っています。
さて、川崎市の昨年度(令和2年度)の自主財源(市税収入)は、約3650億円でした。

それに対して歳出の総額は、一般会計だけでも9600億円です。
3650 − 9600 = マイナス5950億円

令和2年度の川崎市はマイナス5950億円分を、約3500億円の国庫支出金(国のカネ)、ほか市債発行や諸収入によって財源を賄っています。
それでも川崎市は、昨年度は交付税の「不交付団体」でした。

つまり地方自治体は「地方交付税交付金」以外をすべて自主財源で賄っているわけではないのです。
それを東京新聞は「地方交付税は自治体が自主性の高い財政運営をしているかを示す目安だ」とやる。

均衡ある国土の発展を実現していくには、国家による地方自治体間の財政調整が不可欠です。
その財政調整の手段の一つが、まさに「地方交付税交付金制度」です。

本来であれば、すべての自治体が交付税の「交付団体」になるべきなのですが、正しい貨幣観をもたぬがゆえに国は財源に制約をつけています。
地方交付税交付金の総額は、なにも地方財政の放漫度で決定しているわけではありません。

もしかすると東京新聞はそのように解釈しているのかもしれませんが…
地方交付税交付金の財源は、所得税、法人税、酒税、消費税となっています。

ゆえに交付金の総額は、その年の所得税、法人税、酒税、消費税、地方法人税の税収で決まります。
厳密に言うと、所得税・法人税の33.1%、酒税の50%、消費税の19.5%が地方交付税交付金の総額になります。

ゆえに景気が低迷し税収が減れば総額は減り、景気が上向いて税収が増えれば総額も増えます。
ただ、それだけです。
因みに、小泉内閣の構造改革以来、地方交付税交付金の総額は大幅に減っています。
このように総額に税収的上限があるからこそ、国は交付団体と不交付団体に分けているだけです。

国が定義する「基準財政収入額」を、同じく国が定義する「基準財政需要額」を上回ればその自治体は「交付団体」となり、下回れば「不交付団体」となります。
コロナ禍の自粛経済により景気が低迷すれば市税収入は減り、当然のことながら基準財政収入額も減ります。

それでもなお、市民の命を守り、市民の暮らしを守るためには自治体として収支を悪化させてでも歳出を拡大しなければなりません。
ゆえに結果として今年度は本市も「交付団体」になっただけの話です。

それを「転落」と揶揄する新聞社がいるのは誠に残念です。
もしかして東京新聞は「市民生活を犠牲にしてでも転落するな!」と言いたいのでしょうか。

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【三宅隆介】[特別寄稿]地方交付税交付金は自治体の生活保護費ではないへの8件のコメント

  1. ポンタ より

    >>それでもなお、市民の命を守り、市民の暮らしを守るためには自治体として収支を悪化させてでも歳出を拡大しなければなりません。
    ・とはいえ、自治体は通貨の発行なんてできないんだから自力で歳出拡大し続けるなんて無理な話。無制限にできるのなら夕張は破綻しないはず。「家計に例えるのはおかしい」というのは中央銀行や通貨発行権のある中央政府だからで自治体には当てはまらないはず。
    ・単式簿記の性質から起債年度はよくとも、それ以降では償還のために積み立てを要する訳でそのために各財政指標があるはず。地方債の日銀買取を言わせて自治体に起債させても、いざ日銀が買い取らなければ結局は償還費用賄うために歳出を減らすか増税の2択になるのでは。

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  2. この世は既にあの世 より

    新自由主義下では人であれ自治体であれ、企業であれ、自助が基本とされています。生活保護受給者が叩かれて自治体や企業が叩かれないのはおかしいですね。

    自治体であれ企業であれ「皆んなと同じように働いて、競争をし、初めて飯が食える」ということなのでは?

    BIに反対する人々もいるのですから、自治体が潰れたなら「努力が足りなかった」で済ませ、雇用の流動性で人々は引っ越すか生活保護へ。企業経営者も従業員も転職か生活保護へ。が正しい理屈だと思います。

    人も自治体も同じですから、自治体は何かに応募して、面接に受かり、仕事をし、競争をして、努力をして、国や社会のせいにせず、資本家や株主、政治家へ使うべき「働く者食うべからず」という言葉を潔く受け取るべきです。

    Aの自治体に支出するとBの自治体が「金よりも仕事」と言い出しても理屈上はおかしくないでしょう。実際に人に対してそう言って、あくまで自己保身を図ってる輩もいるんですから。

    そいつらに言わせると金はいらないそうです。

    その様な人々の論理ならば自治体であれ、先に金をもらってはダメです。先ずは土建仕事をし経済成長をしてからです。

    資金が無いとかそういうのは一切通用しません。「生活保護があるじゃないか」で済ませ、役所に行くと「あなたは困っていない」と高市から言われたらいいと思いますよ。そういうシステム、社会概念ですから仕方ありません。

    高市氏は片山さつきと同じですが、彼女のこれがいいらしいですから、自助、自己責任で仕方ないですよね。

    ・過度の依存心を煽る政策廃止
    ・福祉制度の不正利用徹底防止
    ・脱税許さない不正受給許さない、そのためのマイナンバー、

    と言いますか、この様な犯罪者一味を野放しにして、嘘の供述を性善説に立ち、「正しいことを言ってるようだ」と無罪放免で支持し、熱狂し、罪人一味に権力者になってくれと何回も繰り返しお願いするから仕方ないでしょうね。

    政策や方法論ではなくて、罪人一味を何か知らんが担ぎ上げるからイカンのです。

    当然、罪人は弱い者虐めをします。

    自分達が罪人を選び、罪人のやり方に同意しといて、毎回後から「嫌だ、違う、そうじゃない」は無いでしょう。嫌なら順番としては罪人一味に期待するのではなくて牢屋に入れるのが筋ですね。

    まして確信犯に「そうじゃない、財政破綻しないんだあ」は見当違いでしょう。そうじゃないと言いたいのはこっちの方で、罪人一味を選ぶからダメなんだと。

    ここを間違うから最初の一歩目で躓いてばかりで一歩も前に進まないのです。

    あれこれコップの中で言ってみても、我々は属国ですからムダですけどね。

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      1. 日本晴れ より

        長文書いて何言ってるか分からないし 日本語も怪しいし
        荒らしみたいな事しないでください。三宅議員の言ってる事を理解できない読解力も無くて 文章が支離滅裂すぎます

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  3. 大和魂 より

    私の親も含めた肉親たちもみんなメディアの戦略により至極残念な平和ボケした始末だからその為にも我々大人が、しっかりと学習してより良い社会と向き合うべきなのです。

    それで先日の横浜市長選挙結果を受けるまでもなく、常識的に林のヨボヨボのオバハンと松沢の出戻りボケナスに投票しているようでは、神奈川県民は大阪と同じく論外の思考形態なんですよ!

    そして大人も大人として常に上昇志向を意識して貰わないと、我々にも火の粉が飛び火してくるのです。

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  4. 日本晴れ より

    三宅隆介議員の言われる通りだと思います。三宅議員こそ本当に市民生活を考えた議員だと思いますが 何故かメディアはこういう議員を叩く有様 それと新自由主義や構造改革馬鹿も同じでこういう
    議員を叩く。これを問題だと捉えるのがおかしいと思います

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  5. この世は既にあの世 より

    パンダも長生きしてるだけあってたまには良いことを言う。

    「安倍とか麻生とかDSは、高市とかみみちぃ希望を与え、ふりまくんです、高市は安倍派なんです」

    www

    みみっちぃ希望にいちいち熱狂する奴は馬鹿。

    ネトウヨ全会一致の反対がだいたい正しい、これ常識。

    ま、今回はパンダは正論ですね。個人的見解ですが正論から外れたことを、嫌味や皮肉ではなく毎回熱狂したりして言ってる輩は私欲が入ってますね。

    www

    わっはっはっは!わー、はっはっは!

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  6. この世は既にあの世 より

    工藤会が摘発されましたが、やっぱ小泉で自民党をぶっ壊したから道路族がいなくなり、ピンハネで食っていたヤクザも摘発され地下に潜らなければならなくなった。

    そのかわりに出てきたのが、そいつらの手先の土建推しの連中だろうか?

    理論と現実は異なるわけだから、世の中の流れから言って、土建仕事やヤクザに支出してはならんだろうね。

    政治とは「利権の奪い合い」でしょう。

    「工藤會は建設業者から、どれだけのみかじめ料を取っていたのか。

     十社会と呼ばれた工藤會・田上理事長の関係企業にも、情報班は何度も足を運んだ。当時は20~30社程度に膨れ上がっていた。

     元請けの一部ゼネコンも、その存在を認識した上で、工藤會関係企業が二次、三次の下請けに入るのを黙認していた。工藤會関係企業を下請けに入れれば、工藤會はもちろん、地元とのトラブルも発生しないからだ。

     一次の業者は、下請け工事の作業を水増しするなどして、工藤會へのみかじめ料をあらかじめ組み込んでおく。結果的に、公共工事であれば税金を払う市民が、民間工事であれば発注者が、その分を多く負担させられることになる。

     当時、工藤會へのみかじめ料は、建築工事が1%、土木が1.5から2%、解体工事が5%と言われていた。解体工事が高いのは、解体の際に出る鉄骨などを売ればその分の利益が出るからだ。

    これら工藤會関係の建設業者は、北九州地区の大型工事を工藤會と自分たちの都合の良いようにねじ曲げていた。これらの企業は、多くの大型工事の下請けを次々に受注し、真面目にコツコツ仕事をしている大多数の業者は、それらの工事から弾き出されていた。」

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      1. この世は既にあの世 より

        もう一つ、現実社会で医療関係者に直接聞いた話し。

        「コロナで儲かっている病院も実際ある。我々は守られているから仕事が安定している、ではそれは何でか?健康保険で守られているんですね」と、とある医療関係の企業の幹部が私に言った。

        その方が認識してるように、MMTとか認識してなく現実社会では関係無いのではないか?

        私など年に一回くらいしか病院に行かない。今まで払った分を合算すれば相当払ってますよ。

        別に長生きはしたくはないが、高齢になり痴呆症になり、否応無しにチューブで繋がれたら医療費かかるよね。

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