From 藤井聡@京都大学大学院教授
過日もご紹介しましたが、表現者クライテリオン最新号の特集は、
「孫子のための財政論~中央銀行の政治学」
https://www.amazon.co.jp/dp/B095GRW59C/
これはもちろん、積極財政こそが日本が、デフレやコロナや災害や中国の脅威の全てを乗り越えて蘇っていく上で絶対に必要であり、それをこそが次世代の私達の「孫子」(まごこ)のために成さねばならぬ責任なのだという特集です。
ただし今回の特徴は、そうした積極財政を議論するにあたって特に必要なのは、
「中央銀行という国家権力に裏打ちされた強力な政治的存在」
であるという点を中心に論ずる、という点。
そもそも、巻頭に掲載した当方と浅田統一郎教授との対談「ケインズ革命を加速せよ!」の中で議論したのが、既存の経済理論の中には貨幣を供給する強烈な力を持った「中央銀行」というものが想定されておらず、その結果、緊縮財政が当たり前の様に展開されるに至っている、という「真実」です。
その一方で、現実には、国家権力によって設置されている中央銀行が存在し、それが貨幣を自由自在に産み出し続けることができる。だからこそ経済理論の中に「中央銀行」という強烈な貨幣供給能力を持った存在を明確に位置づけ、その上であるべき経済政策を語らねばならないわけです。
そして浅田教授が指摘する様に、こうした「中央銀行を経済理論の中に明確に位置づける」という試みこそ、イギリスの経済学者であったケインズがおおよそ100年前に始めた「ケインズ革命」だったわけです。
今日にはMMT(現代貨幣理論)と呼ばれるものがありますが、それはそうした「ケインズ革命」の一環だったわけです。
MMTの理論体系の中には、JGPや貨幣循環論、信用貨幣理論や国定貨幣論、ビルトインスタビライザー論等実に様々な要素が含まれていますが、それらの中でもとりわけ大切なのが、「経済理論の中に、強烈な国家権力に裏打ちされた中央銀行を定位する」という一点。
これこそが、MMTがしばしば「コペルニクス的転回だ!」「天動説から地動説への転換だ!」とさえ言われる根拠になっている訳ですが、実を言いますとこの一点はMMTという言葉を用いずとも「ケインズ革命」あるいは「ケインズ経済学」の範囲だけで十分に説明できるものなのです。
したがって、これまでケインズ経済学に基づいて物事を考えてきた人々にとって、MMTという言葉をことさら利用する必要性はさして感じないわけです(繰り返しますが、それはMMTに独自性などないと主張しているのではありません)。
だから当方は、「他者を説得」する上でMMTという言葉が有用である限りにおいていくらでもMMTという言葉を使いますが、そうで無い限りMMTという言葉を取り立てて用いようとは思わないのです。当方の目的はあくまでもなすべき財政政策を展開すること以上でも以下でもないからです。
というかそもそも、20世紀後半にMMTが提案されるずっと前から、まっとうな政府は積極財政を展開し、それぞれの国家を救い出してきたのですから、とりたててMMTに頼る必要も無い、という次第です。
とは言え、MMTが「新しい」言葉であったが故に多くの人々が「なんだなんだ!?」とばかりに話題になり、積極財政論を世論で喚起するには大いに役立ったと言うことはできるでしょう。
そして、今回のクライテリオンでは、そんな背景もあって今日注目が集まっている「積極財政論」に着目し、そしてそれをしっかりと理解するためには「政治学」的な要素を考えることが必要不可欠なのだ、と議論することを試みたわけです。
いわば、MMT、さらにはコロナ不況を通して盛り上がりを見せつつある経済財政論の国民理解を、さらにもう一歩展開することを企図したという次第です。
そもそも、国家というものは、凄まじい権力を有した存在です。
戦争を始めることも、犯罪者を捕まえて自由を奪ったり、場合によればその命を奪う(=死刑)ことすらできる存在です。国内の色々なルールをきめることもできるし、そのルールに違反した人から罰金を取ったり、捕まえたりすることもできます。
さらには、「税金を払え!」と命じて、好きなだけ国民からカネをむしり取ることすらできるのです!
そんな超絶に強大な力を使って、政府は(中央銀行という仕組みを通して)「おカネ」を「つくって」いるのです。
だから、政府がおカネを国民から借りたからといって、容易く「破綻」なんてする筈もないわけです。
・・・こう言う世界観を持てば、緊縮財政という思想が如何に馬鹿馬鹿しいものであるのかを容易くご理解いただけるものと思います。
でも、緊縮財政派にとって、国家はそんな恐ろしい存在でも何でも無く、その辺の大企業の一つくらいの存在だと「勘違い」してしまっているのです。
単なる一企業だから、何かの事業をやろうとすれば、カネを「つくる」なんて事は当然できず、せいぜい「稼ぐ」か「借りる」かしなければならなくなり、「借りた」以上はひょっとすると、返せなくなる、つまり、破綻するかも知れない……とビビってしまうのです。
だから、緊縮財政論を完全に破壊するために必要なのは、
「国家は貨幣を供給する存在である」
(国家は貨幣の供給者である=国家には貨幣の発行権がある)
という一点を、納得させればそれで事足りるのです。
そしてそれを納得させるには、「国家というのは、その辺の大企業とは全然違った、途轍もない権力を持った政治的存在なんです」という一点を理解させればよいわけです。
・・・しかし、抽象的な存在である「国家」の偉大さを理解することは、抽象的概念を操作することが難しい人間達にはしばしば難しく、したがって、雨後の竹の子のように、いつまでたっても「緊縮論」が世界にはびこり続けてしまっている、というのが実態。
・・・そうした情けなき実態を打破すべく、「政治学」を重視した財政論の特集を企画したわけですが、果たして我々編集部の意図は功を奏するのか否か……そのあたりを見極めるためにも是非、本メルマガ読者だけでも、本誌クライテリオン
「孫子のための財政論~中央銀行の政治学」
https://www.amazon.co.jp/dp/B095GRW59C/
をしっかりご一読いただきたいと思います。
では是非、よろしくお願い致します!
追伸:
今、多くの国民は「ワクチンを打つべきか打たざるべきか」の問題に意識が奪われているようです。とりわけ非高齢者にとってはワクチンリスクは全く無視できるものではありません……そんなリスクを公表データに基づいて考えてみました。是非ご一読ください。
『「非高齢者」はワクチンを打つべきなのか、打たざるべきなのか? ~ワクチン・リスクがコロナ・リスクよりも高くなるリスクを考える~』
https://foomii.com/00178/2021070316273482057
【藤井聡】MMT/ケインズ革命を理解するための最大要点:「強大な政治力を持つ国家だから貨幣を供給できる」への3件のコメント
2021年7月8日 1:43 PM
おっしゃる通りで、藤井先生だからこそ説得力があるのは、内閣官房参与として活動なされた実績から、当時のしがらみの中で蠢いていた大きな圧力による抵抗感と矛盾した苦悩に裏打ちされた結果が、現在の偽りの無い藤井先生の率直な活力による言説に繋がっていると解釈しています。
そこで、ふと思ったのが先の大戦による高学歴者の掌返しと、役人時代に矛盾を抱えるも自身の宿命に尽くし絶望の淵で散華した三島由紀夫の心情は、比例していることで、当時と現代社会の構図もまた差ほど変わらぬ陰険でみっともない社会に我々は存在しているということなのです。
だから日本会議関係者は元より読売グループの傀儡オバチャンと、その界隈の偏向雑誌で暗躍している関係者もしかりで、また虎ノ門ニュース関係者や、以前に三橋先生を妬みで訴訟まで起こしながら、いつの間にか財務省様のポチ化に豹変した奴等なんて現在では維新関係者と親しい間柄の手柄乞食ズブズブで、自分たちに不都合なことは知らん顔ですから、まあ竹中平蔵や大阪の乞食弁護士と同様に恥知らずですよ。
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2021年7月9日 12:18 PM
やはり、政権は反社勢力であり、MMTとか政策とか関係無いですよね。
国民は3歳児。
滅茶苦茶、支離滅裂。真面目にやったり考えたりするとまともならノイローゼになってしまう。
水島の何と幸せな生き物よ。「俺は反日勢力、親中派と戦う親米保守だ、右翼だ、愛国者だ、そいやそいや!命は要らず名も要らず、飯をモリモリ食べて飯盛衆!そいや!そいや!便所論でアヘしかいない」
歳下から馬鹿にされ嫌われて彼はずっと誰と戦ってるのでしょう?
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2021年7月9日 9:21 PM
元NHK大越健介さん、「報ステ」キャスター就任 10月から」らしいのですが、コイツはダメですね。虫唾が走る。何でこう虫唾が走る輩をテレビに出して来るのだろう?上っ面だけの偽善者ばかり出しても意味無かろうて。ジジババが死ねばテレビ要らないですけどね。
もうさ、世の中あちこちクレーマーだらけで仕事なんかやっとられへんよ。運送業界の430問題、休憩するとこあらへん。一般道を制限速度50キロを60キロで行っても10キロオーバーなのに一般ドライバーからは「お前ら遅い」とクレーム、会社は「お前ら60キロデジタコで見張ってるが、荷を持って来るの遅いじゃないか」と怒られるって矛盾してるよね。
酒飲みながら運転はどうかと思うけど、前の晩、晩酌も禁止してドライバー不足、ドライバーの高齢化と言われてもそりゃなり手いないでしょう。
アホな世論なんか聞かないことやね。
ま、政治家は聞かないならクビになるだけやけど。
コロナ自体は風邪ですからどうでもいいですが、政治のやってることが矛盾だらけ。
世の中クレーマーだらけでそれを気にする上役や会社、タバコ吸うたくらいで文句言われる公務員なんかも、上役も下っ端もやっとれへんよ。余計な仕事や建前が増え、仕事なんかやっとれへん。何かあった時に言い訳立つ様にそんな事ばっかり考えてる世の中を生きてたってつまらんだけ。
テレビ点けてもネットニュース読んでも大概ウンザリ、金は生活に必要なだけで金をいくら儲けても別に嬉しくない。カッコいい人はいなくなり、馬鹿と気狂いと臆病者と加齢臭ばかり。俺なんか別に明日死んでも良いですもんね。
インチキトンチキ、馬鹿間抜け、クソ、ゴミ、目くそ鼻くそみたいな国。
この星が 何処へ 行こうとしてるのか
もう誰にも わからない
権力と権力の See-Saw-Game から
降りることさえ出来ない
人は一瞬の刹那に生きる
子供は夢見ることを知らない
週末に僕は彼女とドライブに出かけた。
遠く街を逃れて、浜辺に寝転んで
彼女の作ったサンドイッチを食べ、ビールを飲み、水平線や夜空を眺めて、僕らはいろんな話をした。
彼女は、彼女の勤めてる会社の嫌な上役のことや先週読んだサリンジャーの短編小説のことを話し、僕は、今度買おうと思ってる新車のことや二人の将来のことを話した。
そして、誰もいない静かな海を二人で泳いだ。
あくる日、僕は吐き気がして目が覚めた。
彼女も気分が悪いと言い始めた。
それで僕らは朝食を取らず、浜辺を歩くことにした。
そして、そこでとても奇妙な情景に出会った。
数え切れないほどのジャップが、波打ち際に打ち上げられてたのだ。
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