日本経済

2019年12月2日

【三橋貴明】PB黒字化目標という悪夢から目覚めるために

From 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】

緊縮の王国
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続 緊縮の王国
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プライマリーバランス黒字化目標は、
本当に「悪夢の目標」で、国民の豊かさ、
安全を犠牲にし、とにかく基礎的財政収支を
プラス化するという発想になっています。

しかも、PB目標がより「悪夢」なのは、
最近、MMTにより広まりつつある恒等式、

◆政府収支+民間企業収支
 +民間家計収支+海外収支=0

により、海外収支をゼロと仮定すると、
政府の収支を黒字にするためには、
民間企業か民間家計、もしくは双方を「赤字」
にする以外に方法がないという点です。

無論、そもそも民間企業の収支は赤字に
なるべき(負債+投資拡大により)ですが、
安倍政権は「企業優先」の政策を続けています。

民間非金融法人企業の現預金は、
恐ろしいペースで増え続け、
すでに270兆円規模。
安倍政権が始まった2012年12月時点と
比較すると、一般企業の現預金は80兆円
近くも拡大しました。

無論、安倍政権が正しいデフレ対策、
すなわち「需要拡大策」に転じ、企業が
負債・投資の拡大を決断すれば話は別です。
その場合は、企業の赤字が政府の黒字分を
引き受けることになります。

(※ここでいう「企業の赤字」とは、
 キャッシュフローの話であり、
 損益計算書ではありません。
 企業の投資は減価償却されるため、
 キャッシュの収支が赤字でも、
 損益計算書上での黒字は確保できます)

とはいえ、そもそも安倍政権は
PB黒字化目標に縛られ、
「民間企業収支の赤字」に至るまでの
財政拡大策は打てません。

また、海外の収支は、
何しろ米中派遣戦争やユーロ(特にドイツ)
失速、ブレグジットによる混乱の影響で、
すでに「需要縮小」が明確化しています。

つまりは、海外収支の赤字
(日本の経常収支の黒字)を拡大することで、
政府のPB黒字化を受け止めることも
できません。

一応、財務省はPB黒字化目標に際し
「民間を赤字化します」とは言えないため、
海外収支の赤字が、リーマンショック前の
06年のペースで拡大することを想定して
いますが、もはや信じる者は一人も
いないでしょう。

となると、PB黒字化目標というか
「政府のPB赤字削減」のツケは、
民間家計収支に押し付けられることに
なります。

具体的には、さらなる消費税増税、
社会保障費(医療費など)の負担増、
そして社会保障支出の削減です。

と、予想していたところ、
消費税増税直後から、実際に
「家計の負担増」の議論が始まりました。

経団連が、「財政・社会保障改革」と銘打ち、
消費税について
「10%超への引き上げも有力な選択肢」
と提言。

経済同友会の桜田謙悟代表幹事は、
「財政規律」の観点から、
「消費税率は2025年には14%以上が
望ましい」
と発言。
2025年とは、
まさにPB黒字化目標達成の年です。

さらに、財務省の官僚が副専務理事をはじめ、
数十人が出向しているIMF(国際通貨基金)
から、

「日本は医療や介護などで増える
 社会保障費を賄うため、2030年までに
 消費税率を15%に上げる必要がある」

とのレポートが発表されました。
IMFが他国の「税制」に口を出すなど、
内政干渉もいいところですが、実際に
レポートを書いたのは日本の財務官僚です。

消費税再増税への下準備をしつつ、
反対側では社会保障の負担増と
支出削減が進んでいます。

財務省は、

「現役世代の保険料負担を軽減しつつ、
 高額な医療費を保険で支えるには、
 広く少額の負担を分かち合うべきだ」

と主張し、
七十五歳以上の後期高齢者の窓口負担が、
現在の原則一割から二割に引き上げられる
ことになりそうです。

さらには「国民負担抑制」を旗印に、
診療報酬の引き下げが議論されています。
加えて、厚生労働省が、

「病院や過剰なベッドの再編は、
 公立公的病院を手始めに、
 官民ともに着実に進めるべきだ」

と、病院やベッド数の削減を提言。
提言を受け、安倍総理は
「持続可能な地域医療体制を構築するため」
というお題目で、病院の再編、「過剰な」
ベッド数の削減などを進めるよう
関係閣僚に指示しました。

「過剰な」ベッド数とは、平時の話であり、
自然災害やパンデミックなどの非常事態は
全く考慮されていないことは、今更、
言うまでもありません。

PB黒字化目標の達成に向け、
容赦なく進む緊縮財政。

この「悪夢」から覚めるには、
「PB黒字化とは、国民貧困化」という
現実を幅広く政治家に訴えかけ、
議論をさせなければなりません。

幸いなことに、与野党の一部の議員に
「PB黒字化は国民貧困化」という
「統計的な事実」が共有され始めています。
とはいえ、急がなければなりません。

◆一般参加可能な講演会のお知らせ。

年末特別講演会「京都大学大学院教授、
元安倍内閣・内閣官房参与 藤井聡様」
2019年12月4日(水) 18:45~ 
東京都新宿区
【MMT (現代貨幣理論)を学び、
日本経済を展望する】
https://yobo.co.jp/seminar/seminar_event.html

◆週刊実話 連載
「三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』」
第47回 道徳的に正しい経済
なお、週刊実話の連載は、以下で
(二週遅れで)お読み頂くことが可能です。
http://wjn.jp/article/category/4/

◆メルマガ 週刊三橋貴明 Vol549 
MMT(現代貨幣理論)の三つの論理基盤
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
「スペンディングファースト」
「キーストロークマネー」「貨幣恒等式」
という三つのMMTの基本理論が、
「革命的」なインパクトを世界に
与えつつある理由について解説しました。

◆メディア出演

11月25日(月) チャンネル桜
「Front Japan 桜」に出演しました。

1/2【Front Japan 桜】
国民のメモリーである『歴史』を守る /
三島由紀夫「憂国忌」とある青年将校
[桜R1/11/25] https://youtu.be/DmXRQTBSpzY
2/2【Front Japan 桜・映画】
『全裸監督』の真実~映画
『M/村西とおる狂熱の日々 完全版』
[桜R1/11/25] https://youtu.be/lxQGi5_5X-4

12月2日(月) チャンネル桜
「Front Japan 桜」に出演します。
http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1651

◆三橋経済塾

令和元年11月28日(木)三橋経済塾第八期
第十二回対面講義申込開始致しました。
https://members8.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=790

今回の第八期最終回も、昨年同様に、
塾生の皆様に持ち時間10分でプレゼンを
して頂く機会を設けたいと思います
(最大五名ほど)。
テーマは自由で、
パワーポイントを使って頂きます。
「我こそは!」と思われる方、是非とも
以下のアドレスに「プレゼン希望」の
タイトルでメールして下さいませ。
keizaijuku@mitsuhashi-takaaki.jp

◆チャンネルAJER 

『歴史という国民のメモリーを守り伝える
 ー前編(1)』三橋貴明 AJER2019.11.26
https://youtu.be/GKpQxyC7aVw

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【三橋貴明】PB黒字化目標という悪夢から目覚めるためにへの3件のコメント

  1. たかゆき より

    政治 経済 歴史

    ある程度の 知恵がついたら

    己の頭で考えることが 肝要 かと、、

    しからば

    御用「学者」あるいは「学者」工作員が

    どのような 破壊活動をしかけてきても

    防御可能(たぶん)

    ちなみに

    司法 行政 立法に 従事する国家公務員の 過失 あるいは工作活動が

    罪に問われないのは 何故か?

    「戦後レジーム」という言葉を用いて

    30字以内で述べよ

    という 夢を見た。。。

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      1. 解答例  より

        戦後レジームを行う公務員を
        弾劾する法律が制定されていない
        から

        ⁑日本国憲法第15条第1項では
        『公務員の罷免権』を保証しているが
        国民がそれを行使するための
        『個別法』は存在しない。。。

        返信

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  2. 大和魂 より

    財務省と、その関係者の魂胆は末代物のために経済を優先させてますが、それにも限界が伴います。それは、臆病が当たり前に定着すれば、国家の滅亡は避けられないので、元も子もないないわけですよ!それに、何よりも最優先事項の責任の所在は二の次ですから 、それを正当化する姿勢は実に卑劣極まれり。なので、この状況を改め打開を図るためには一刻も早く、その膿である財務省と安倍政権は解体させるべきです。それが我が国に殉じて散華された方々と歴史と伝統に対する国民の使命です。

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