From 藤井聡@京都大学大学院教授
台風19号は、東日本を中心に激しい被害をもたらしました。
決壊箇所は実に71の河川、128か所。
言うまでもなく、氾濫箇所
(決壊していないが越水して洪水になった箇所)
は何百か所に上りました。
たった一つの台風でここまで多くの決壊・氾濫が生じた事例は、
筆者の記憶にありません。
そして、死者、行方不明者は100名近く・・・。
犠牲者の冥福を祈念申し上げるとともに、
被災地で苦しい避難生活を強いられている
被災者の皆様にお見舞い申し上げます。
(1)被害は今回の何百倍にも達していた可能性がある
・・・ただ、誠に恐ろしい話ですが、
今回の台風は、
もう少し経路が違ったり、
あるいは、治水対策が少しでも遅れてたりすれば、
今回をさらに上回る、
より甚大な被害が生じていたこともまた、
間違いありません。
ほんの少し経路とスピードが違えば、
数万人の死者と、100兆円規模の被害を出す
巨大高潮が東京湾で生じていたかもしれません。
八ッ場ダムの建設が「後2週間」遅れていれば、
利根川の本流での大規模な堤防決壊が
あったかもしれません。
荒川の集水域(≒流域)でもう少し多くの雨が降っていれば、
荒川で堤防決壊が生じていたかもしれません。
これら三つの最悪ケースが同時に生ずれば、
その被害総額は、150兆円から200兆円という、
あの東日本大震災を上回る被害が
生じていた可能性もあったのです。
(※このあたりの詳細は、こちらで詳述しています。
是非、ご一読下さい。
『台風19号災害を真面目に考えない日本人は、早晩「地獄」行きです。』
https://foomii.com/00178/2019101811000059484)
その意味において、日本は、最悪中の最悪の事態は、
免れていたと考えることができます。
(2)投資によって、被害は防げていた
ここで、この地図をご覧ください。
http://ajimura2.blog.fc2.com/img/201910161843248a6.jpg/
これは(少し古いものですが)、堤防決壊箇所を示したものです。
ご覧のように、
北関東・東北地方には無数の「決壊」が見られます。
一方で、東京や横浜等、関東の
都心部には「決壊」は全く見られません。
こうした結果となったのは、偏に、
関東の都心部には、
様々に治水投資されてきた一方で、
北関東・東北地方への
治水投資は限定的であったからです。
そもそも、90年代から日本の治水投資は大きく削減され、
かつての半分程度の水準に落ち込んでいます。
軽く見積もって、この20年間で、
約8兆円の治水投資が削減されたのですが、
もし、その8兆円がそのまま、
治水投資に回されていたとすれば、
決壊箇所は、今回の128か所の半分の60か所、
あるいは、さらにそれよりも少ない、
3、40か所程度で済んでいたことも
十分に考えられるでしょう。
そうなれば、台風19号による経済被害も、
それに伴う税収の縮小効果も、
そして、復旧・復興費用も皆、
半分から三分の一程度に抑えられていたことでしょう。
つまり政府は、
8兆円の治水投資を「けちった」ことによって、
地方部における経済被害、財政被害を
さらに拡大させることになったのです。
そして、こうした台風は、
これからも何度もやってくることは避けられません。
そもそも、今回の台風の上陸時の強度は、
945ヘクトパスカルに過ぎず、
これは、戦後上陸した台風のトップ10にも
入らない程度の水準だったのです。
だから今、政府は、
最悪の事態を避けるため、
徹底的な治水投資を進めるべきなのです。
(3)現在の政府の「治水投資拡大」では全く不十分である
こうした背景を受けて、政府は今、一応は、
昨年度から来年度にかけての三か年、
年額「一兆円程度」の国費をかけて、
治水投資の「拡大」を行っています。
この投資に先立ち、政府は
全国のインフラをチェックし、
危険個所を洗い出し、その上で投資を行ったのですが、
そこで選ばれた「危険箇所」は、
「3年以内」に対策が完了可能で、かつ、
人口等が特に多い箇所に
限定されていました。
つまり、本来なすべき対策の内、
そのごくごく一部だけに
防災対策が成されたに過ぎないのです。
例えば、今回、特に大きな被害が出た千曲川は
対策すべき箇所からは漏れ落ちていました。
あの地点は、今回のような豪雨があれば
間違い無く決壊するであろうことが、
技術的に明らかであったにも関わらず、です。
つまり、政府の強靭化投資は、
圧倒的に不足しているのが現状なのです。
(4)2兆円の治水投資拡大を10か年続けよ
上記のように、政府は、今後の災害に備えるために
「年間国費1兆円×3か年」
という規模で、国土強靭化の「特別投資」を行っていますが、
今回明らかになったのは、その程度の規模では、
国土は全く強靭化できない、という一点でした。
ついては、この国土強靭化の特別投資枠とは「別」枠で、
「年間国費2兆円×10か年」
(事業規模にして、年間4兆円×10カ年)
の予算を用意し、
強靭化投資をさらに加速していくことが必要です。
これだけあれば、3か年の予算ではできなかった、
様々な対策が展開可能となるでしょう。
ただしこれは「治水」に関してのみの予算規模。
「地震」も見据えるなら、少なくとも、
「年間国費5兆円×10か年」
(事業規模にして、年間10兆円×10カ年)
規模の予算が、必要です。
(さらに、食料、エネルギー、国土構造分散化を見据えるなら、
10年で200兆円規模の投資が必要であることは、論を待ちません)
政府の英断を、強く要請したいと思います。
追伸1;
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追伸2;
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追伸3;
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【藤井聡】「2兆円」規模の治水投資拡大を「10か年」継続せよへの2件のコメント
2019年10月23日 8:53 PM
はたして 日本人に 知能は
あるのか ??
小生 おもふに ほとんど 白痴
JEWSどもも 同じ 考えかと、、
羊以下の知能しかない 家畜をどうしようと
それは
飼い主様の 自由自在 なのだ ♪
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2019年10月24日 2:38 PM
藤井先生がもう一度内閣参与に復帰して、公の場で議論できるように、応援しています!
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