政治

日本経済

2019年5月14日

【室伏謙一】政策評価は緊縮財政推進ためのものか?

いつも経世済民新聞をご購読いただき
誠にありがとうございます。
本日から新たな執筆者を
お迎えすることとなりました。

新たにご寄稿いただけるのは、
政策コンサルタントの室伏謙一さんです。

室伏さんは総務省に
キャリア官僚として勤務後、
商社、コンサルティング企業、
更には国会議員の政策担当秘書を経て

現在では、国会議員、地方議員の
政策アドバイザーや
民間企業向けの政策の企画・立案の支援、
政治・政策関連の執筆活動など
幅広くご活躍されています。

室伏さんの記事では、
一般的な政策分析を行うだけでなく、
『その背景では何が起こっているのか?』
『政治家や官僚が、どういう力学で動くのか』など

「政」「財」「官」に精通する
類稀な経歴をお持ちの室伏さんにしか
語れない内容となっています。

是非ご期待くださいませ。

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■

From 室伏謙一@政策コンサルタント/室伏政策研究室代表

皆様はじめまして。今回から新たにメルマガの執筆を担当させていただくことになりました、政策コンサルタントの室伏謙一と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 「政策評価は緊縮財政推進のためのものか?」、何を突拍子もないことをと思われた方もいらっしゃると思いますが、結論から言えば、政策評価は緊縮財政推進のために設けられたようなものなのです。

 なお、はじめに言い訳をしておくと、私はこの政策評価制度を所管する総務省の行政評価局にも在籍していましたし、政策評価制度そのものを否定するつもりはありません。ただその出自と使われ方がなんとも・・・というお話です。

 さて、我が国の政策評価制度は平成13年の中央省庁等改革、いわゆる橋本行革により新たに設けられました。無駄を無くして効果的、効率的な行政活動にしていこう、というもっともらしい大義名分で検討され、導入されたわけですが、「無駄」と「効率的」という言葉からも分かるとおり、無駄な財政支出をやめよう、予算は効率的に使おうということが根本的な発想としてあったわけです。

 政策評価は事前と事後に各府省が行うものと、政策評価制度を所管する総務省が第三者的な立場で行うものがありますが、いずれも法令の新設や改正、税制改正に加えて、予算の概算要求にも反映されることが想定され、実際にそうされています。とはいっても法令の新設や改正は直接・間接を問わず予算の執行と結びついているものがほとんどですし、税制は言わずもがなですから、政策評価の結果はすべからく予算要求に反映されるようになっていると考えてしまっていいと思います。

 ちなみにこの政策評価、霞ヶ関では、英語で“policy evaluation” とされることが多いですが、総務省で国際会議等に出席するに当たっては、私はOECD等での表現を参照して “performance measurement” という表現を使っていました。前者はそのような記述を見たことがなかったのもあり、そもそも直訳なので伝わらないだろうということで後者にしたわけですが、これは政策のパフォーマンスを測定しようということですから、悪ければその政策を止める=予算を削減するということが当然の前提になっているわけです。

 話を戻しましょう。政策評価の結果が悪いものであれば予算が減らされたり、場合によっては予算が措置されなくなってしまいます。それは各府省からすれば大いに困りますから、なんとなく上手くいっている、効率的にいっている、効果があるように評価の結果を記載する必要があります。要は政策評価が惰性で、その場しのぎで行われるようになっていったわけです。それでも一時期を除いて緊縮財政を続けてきたわけですから、その点では財務省側も政策評価の結果を都合よく使ってきたとも言えるでしょう。

 しかしそうも言っていられなくなったのでしょうか、財政支出を拡大しようとした麻生政権に替わって登場した民主党政権下で、世間の注目を集めて登場したのが、新たに設置された行政刷新会議による例の事業仕分けです。これは政策評価よりもあからさまに歳出削減を狙ったものでした。(つまり全ては財務省の「脚本」、「演出」だった、というわけです。ちなみに、何人かの事業仕分け参加者、いわゆる仕分け人と話しましたが、そのことを正直に言う人がいた一方で、こちらが聞いてもいないのに頭から否定する人もいました。)

 公開裁判で晒し者にされ、吊るし上げに遭う各府省の政策や担当者の姿は多くの国民の注目を集めましたが、大した削減額にならず、単なるパフォーマンスだったという批判の集中砲火が浴びせられました。もっとも標的となったのは民主党政権の方で、財務省に火の粉が降りかかることはなかったと記憶しています。なお、政策評価もこの事業仕分けの対象になりましたが、なんと予算の削減等ではなく、もっと頑張れ、しっかりやれ、との趣旨の結果になりました。削れるものを削ろうとした一方で、自分たちの緊縮財政に必要な事務については、シラーっと機能強化のお墨付きを与えさせていたわけです。

 この事業仕分け、民主党政権の終焉でお払い箱になったと思いきや、自民党政権に交替しても行政事業レビューとして看板と進め方を変えて、行政改革の一環という位置付けで生き残りました。そこに更に証拠に基づく政策立案、いわゆるEBPMが加わり、効果等を数値データを用いて証明できなれば予算はつけないと言わんばかりの勢いになってきています。(なお、不正統計問題で脚光を浴びた国の統計制度、直近の統計制度改革はこのEBPMの充実を主な目的として進められています。)

 政策や国の行政機関等による事務事業について、評価をして、予算配分にメリハリをつける、真に必要なところに十分な予算を配分する、無用の長物に予算を配分するようなことはしない、そのための参照情報として政策評価や昨今のEBPMを活用するというのであればいいですが、予算削減、要求額の削減ありきで、その目的達成の道具とし使うというのは、いかがなものかと思いますが、情けない話ですが、実態はこんなところで、その傾向は強化されこそすれ、適正化される兆候は今のところみられませんね・・・

—発行者より—

御代替わりを迎え、新たなる時代において
日本人が正しい「歴史」を知ることのできるよう、
『経世史論』を開設しました。
「現代」を読み解くには、過去の歴史を
正しく理解する必要があります。
正しい歴史を子どもたちやその先の世代に語り継ぐために、
まずは私たち自身が正しい歴史を学びませんか?
こちらから詳しい内容をご覧ください。
http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/

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【室伏謙一】政策評価は緊縮財政推進ためのものか?への5件のコメント

  1. たかゆき より

    大本営 発表

    昨今は 政策評価やら EBPMで予算配分ですか、、

    帝国海軍が 作戦立案するばあいの 兵棋演習

    自軍 敵軍の損害予想を

    賽の目で算出していたとのことです

    が、、、

    自軍に不利な賽の目は統裁官が無視

    そして 惨敗

    でも大本営発表は 大勝利

    作戦を立案した高級将校は 責められることもなく

    出世コースをまっしぐら。。

    (米軍なら アラスカの僻地に左遷)

    政策評価にしろ EBPMにしろ

    誤摩化そうとおもえば

    賽の目と 一緒

    先の大戦に勝利した一等国アメリカと

    敗戦して四等国降格 の日本

    「上級」官僚の資質を含め

    その差は永遠に縮まらない もの なのか

    しら ん。。。

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  2. たかゆき より

    政策評価の戦果

    「内田樹の研究室」

    小学校教員の採用試験の倍率低下について
    2019-05-10 vendredi

    より 引用

    けれども、日本の教育行政の政策立案者たちは「どうすれば教員たちが機嫌よく働けるようになるのか?」という問いをたぶん過去に一度も立てたことがない。反対に、教員たちを管理し、恫喝し、査定し、無意味な労働を強い、屈辱感を与えることに政策的努力の過半を投じて来た。
     確かに、そういうプレッシャーを与え続ければ、最終的には上位者が命じる無意味なタスクに抵抗しない「イエスマン教員」だけが生き残り、教育現場に政府や自治体が政治的に介入することはきわめて容易になるだろう。
     組織の効率的な管理ということを優先すれば、これは正しい政策である。
     そして、たしかにこの教育政策は「大成功」を収めたのである。
     文科省はそのことを認めるべきだろう。
     これは政府が自覚的に進めて来た政策の帰結なのである。それが所期の成果をあげた姿なのである。
     問題は「こんなことをずっと続けていたら、いずれ教師になりたがる若者がいなくなり、学校に行きたがる子どもがいなくなり、学校が知的活動の場ではなくなるのではないか?」というリアルな疑念が教育政策の立案者たちの脳裏に一瞬も浮かばなかったということである。

    引用終わり

    どう考えても惨敗、、

    でも

    大本営にとっては

    敵空母3隻撃沈クラスの戦果?

    いずれにしろこの戦果で

    「上級」官僚の出世は 
    間違いなし ってか ♪

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  3. たかゆき より

    始末の極意

    日本国「上級」官僚様 は

    己は超優秀 なので
    国家に 不可欠な存在と錯覚

    なさって おられるの では、、

    ちゃう でせう、、、

    一番無駄な存在は 己と 自覚し

    自殺なさる これが
    落語の オチでございます

    ではでは おあとがよろしい ようで ♪

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  4. たかゆき より

    「上級」官僚様 たち

    彼等は 
    ミヒャエル・エンデの小説
    『モモ』に登場する

    「灰色の男たち」に そっくり だ。。

    お可哀想に。。。

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  5. 拓三 より

    観覧注意 R18指定(下品な表現が含まれます)

    わたくしの「チンチン論」で簡単に説明しますと !

    * (1精巣=金融 2ちんちん=財政 3子宮=国家 国民 国土 など)
    1と2は男 3は女

    これを踏まえ財務省 政治家(男)が言っている事の意味は、
    「お前に魅力が無いから俺のチンOンが立たんのや。お前が変われば立つかもしれん。お前が俺を立たせろ ! そしてお前が勝手に動け !」と同じ意味。(どっかのポンコツ元知事もよく似た発言しております)

    で、この男、精巣が以上に膨らみ(金融緩和)それを他の女に振り撒いてる状態。つまり浮気。浮気だけならまだしも色んな病気も貰ってくるので始末におえない。そしてその病気が子宮に感染しているのが現状。

    女性の皆様、これで良いの ?

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