日本経済

2018年11月29日

【小浜逸郎】水道民営化に見る安倍政権の正体

From 小浜逸郎@評論家/国士舘大学客員教授

「外国人労働者受け入れの拡大を目指した入管改正法案が衆議院で可決しました。
この法案は言うまでもなく事実上の移民解禁法案です。」ヨーロッパの移民国家化の惨状から何も学ぼうとせず、しかも起こりうる事態に対して何の準備も整えていないひどい法案ですが、それについては、すでに多くの人の指摘があるので、ここでは触れません。以前、このメルマガでも扱ったのですが(2018年1月投稿)、
https://38news.jp/economy/11527
水道民営化法案(水道法改正法案)は、現在すでに衆議院を通過しており、今国会で参議院での継続審議案件となっています。当然、どさくさに紛れて数の勢いで国会を通過してしまうでしょうが、マスコミは相変わらず、この法案の危険性について報道しません。

この法案の目的は、もちろん、フランスのヴェオリア社など、水や環境にかかわるグローバル企業の便宜を図るところにあります。

ちなみに、これまでも水道事業の多くの部分は、民間企業に業務委託されてきました。

しかし、それは今回立法化されようとしている管理運営権の売り渡しとはまったく意味が違います。

業務委託の場合は、自治体が公共的な観点から必要と判断された業務の一部を、その範囲内で業者に委託するので、契約更新は毎年度になります。

これに対して、今回の水道民営化法案では、運営権を丸ごと企業に譲渡するので、企業は企画から実行までをすべて行い、契約期間も15年以上まで可能です。

その間、運営に不満が出たとしても、消費者も自治体も原則として契約条項を変えさせることができません。

水道民営化法案の問題点は、次の六点に要約できます。
(1)今回のコンセッション方式(所有権は自治体、管理運営権は民間企業)では、運営権の売却は地方議会の議決を必要とせず、水道料金も届け出制で決められることになっています。
政府は上限を設けるなどと言っていますが、水道をめぐる状況は地域によって複雑で多様なので、それは無理でしょう。

(2)何か問題が起きた時の修復や後始末は、運営会社ではなく、自治体が解決することになっています。
https://www.facebook.com/gomizeromirai/videos/1947720121973442/UzpfSTE2MDc4MjYwODI6MzA2MDYxMTI5NDk5NDE0Ojc1OjA6MTU0MzY1MTE5OTotNDEzNjgzNzEwODg1MDg5MzUz/

(3)他のモノやサービスと違って、消費者には選択の自由が与えられていないので、企業間の競争が起こりえず、寡占化が進み、料金の高騰を招きます。

実際、世界の事例では、ボリビアが2年で35%、南アフリカが4年で140%、オーストラリアが4年で200%、フランスが24年で265%、イギリスが25年で300%上昇しています(堤未果著『日本が売られる』)。

(4)ビジネスは利益を出さなくてはなりませんから、そのぶん、料金が消費者に上積みされますし、利益は株主への配当に流れるので、現在のようなデフレ下では労働者の賃金低下を招きます。
また採算が取れないとわかったら、企業はさっさと撤退しかねません。

(5)一度民営化してしまうと、失敗した時に再公営化するためには、たいへんなコストと時間がかかります。

(6)一番の問題は、当の推進論者たちが、なぜ民営化するとこれまでよりサービスが「よい」ものとなるのかを、積極的な論拠をもって説明できないことです。

今年は災害が多かったので、彼らはそれに乗じて、「災害時に効率的に対応できるように」などとひどい屁理屈をつけていますが、「おいおい、そりゃ逆だろう!」と言いたくなりますね。

擬似ショック・ドクトリンとでもいうべきでしょうか。

じつはこの政策は、ずっと前から竹中平蔵を筆頭とする規制緩和論者たちの間で立てられていたもので、民主党政権がそれにまんまと引っかかったのです。

災害の増加とは何の因果関係もありません。

以上、水道民営化の問題点を見てきましたが、世界で実際に民営化した自治体はさんざんな目に遭っています。
先のメルマガでは、パリ、ベルリン、クアラルンプール、アトランタをはじめ、世界180の自治体で再公営化に踏み切っていると書きましたが、堤氏の前掲書によると、最新のデータでは、世界37か国、235都市で公営化に戻しているそうです。
要するに、この政策は、グローバル企業が儲けるためだけの政策なのです。

いまや、水も環境も電気も医療も農作物も、すべてが巨大グローバルビジネスの対象になっています。
安倍政権は、国民の命を犠牲にしても、グローバル企業の利益に奉仕する政策をずっととってきたのです。

売国政権と呼んでも過言ではありません。

労働者派遣法改正、農協法改正、混合診療解禁、発送電分離、種子法廃止、消費増税、移民(特に単純労働者)受け入れ、そして今度は水道民営化です。

こういう悪政を平然と行っている政権の最新の支持率がなんと10月から4ポイント上がって46%になっています(「支持しない」は37%)。
http://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu/
これはいったいどういうわけでしょうか。
日本以外の国なら、暴動が起きてもおかしくないでしょう。

現にフランスでは、マクロン大統領の支持率は26%で、パリをはじめとして各地で暴動が起きています。

日本の現政権が、内外に迫る危機を少しも解決できていないどころか、むしろひたすら国家的自殺行為に走っているのに、高い支持率を維持できている。

これには、次の理由が考えられます。

(1)もともと日本人は、政治、特に経済政策に関心が薄く、社会の悪化を自然現象のように見なしてしまう習慣を身につけている。

(2)移民問題、貧富の格差問題、文化摩擦問題などが、まだ欧米社会ほど深刻でない。

(3)政治の上部組織と国民の私生活との間に乖離感覚があり、誰がやっても同じというあきらめ感が強い。

(4)平和が続いたために危機に対する緊張感を喪失して、今日明日が過ごせればそれでよいという能天気状態に陥っている。

(5)高度成長期やバブルを経験したころの感覚がいまだに残っている。
(6)社会全体が複雑化したために、国民だけでなく、政治家やマスコミや学者が、個々の不全現象を個別バラバラにしか把握できず、統合失調症に陥っている。

(7)政治現象を右か左か、保守かリベラルか、の軸で解釈しようとする習慣から抜けきっていない。

まだあるでしょうが、いずれにせよ、こういう日本の状態をそのままにしておいてよいはずがありません。

単に移民政策や水道民営化政策だけでなく、安倍政権が採っている経済政策が、みな国民生活を犠牲にしてグローバル資本に奉仕する性格のものであること、まずはこのことに気づく必要があります。

個々の社会問題は、それ一つだけで切り取られるものではなく、ほとんどすべての原因が、一つの間違った政治運営に収斂するものなのだという統合された視野を、ぜひとも回復しなければなりません。

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「安倍政権の『新自由主義』をどう超えるか」
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「消費増税の是非を問う世論調査を実行せよ」
●『正論』12月号(11月1日発売)
「デジタルよ、さらば?!――スマホ一極主義の陥穽」
●ブログ「小浜逸郎・ことばの闘い」
http://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo

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【小浜逸郎】水道民営化に見る安倍政権の正体への9件のコメント

  1. 日本晴れ より

    >単に移民政策や水道民営化政策だけでなく、安倍政権が採っている経済政策が、みな国民生活を犠牲にしてグローバル資本に奉仕する性格のものであること、まずはこのことに気づく必要があります

    全くです。もう安倍政権は保守の政権じゃなくて
    完全にそっちの方にシフトしたとみるべきです。前からその下地はありましたけど、最近はもう完全にそっちにシフトしたなと思います。

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  2. ぬこ より

    ゴーン 水道事業民営化 麻生娘の婿 ロスチャイルド家

    はい終わり!!

    日本の貧困って、この程度の事ですよね(笑)

    派遣会社や銀行や大企業の大株主の日本マスタートラスト信託銀行の株主も欧米の王族貴族ですよね。
    竹中あれこれ指示してるのも。

    そこを直球で批判しないと無理です

    そこは、トランプやプーチン追随すれば良いのに。
    政治家や官僚は、変に小金で使われてるから追求の手が鈍る。

    知識人さまはそんなこと無いでしょうけどね(笑)

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  3. たかゆき より

    濡れ手で 粟

    こんなにも 簡単に 

    日本から 富を吸い上げる制度を 完成できるんですね。。。

    権利の上に眠る者は保護に値せず とか

    所詮は騙される者が アホ

    うつら うつら 寝ぼけてる アホどもから

    小狡く 富を吸い上げて やる

    ズラ ♪

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      1. たかゆき より

        タワケとは

        とっちゃん 坊やの あの お顔
        半音ずれてる あの お声

        そして 底知れぬ 痴呆

        まさに 安倍某こそが いまの日本人を象徴

        よくぞ ここまで なさってくださいました

        で、、

        憲法改正でしたっけ、、、

        やれるもんなら やって みなはれ ♪

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  4. あまき より

    ハトの糞公害に悩んだ病院が業者に駆除を依頼したらハトが来なくなった代わりにカラスが来て、縁起でもないと怒って病院がやり直しを命じたら今度はハゲタカが集まって来たという、むかし筒井康隆が書いた小話をひしひしと思い出さずにはいられない昨今です。

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  5. komiyet より

    他人の銭を扱うやつは自分の保身を最初に考える。

    失敗しても銭がもらえる奴らはそうなる。

    自分の金を扱うやつは必ず自分に有利なルールを作る。

    民間が一枚も二枚も上手なんだよ。

    学歴の立派な人は、先のことが自分はわかると錯覚する。

    そして何かしないといけないといけないという義務感から

    平時ではこちらの方が効率がいいと契約書を交わす。

    バカだよな~。99回成功しても1回の有事ですべてをなくす。

    我が国は自然災害大国なんだよ。

    他人の金を扱うのは、いつも学のあるバカだ。

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  6. 神奈川県skatou より

    安くて安全な水道水。日本人の生活だけでなく、産業のためにも重要な水道。とても不安ですね。

    ところで水道水の産業利用として、最近自分が知った事例で、陸上養殖、というのがあるそうですね。

    養殖、つまり魚貝の養殖なのですが、海水魚の場合、入り江に網を設置したり、沿岸に水槽を作って育成する養殖が通常ですが、適地の問題、排泄物の問題で施設拡張はおのずと限界がありそうです。(すでに限界?)

    で、最新の技術では、ろ過、水質管理の技術の発展で内陸でも海水魚の養殖が可能になっているそうです。

    海から海水を調達する必要はなく、塩水である必要もなく、水道水から最低限の成分だけ混ぜれば可能とのこと(好適環境水)。
    この技術により、養殖の適地が海と関係なく、安全な水道水さえあれば、あとは養殖する生物の必要な水温を確保しやすい立地ならば日本全国どこでも(過疎でも原野でも)OK、ということです。

    陸上養殖の利点は、気象、環境変化、病気などを管理がしやすい点で一般的な海面養殖よりも低リスクのようです。
    コストの点では、設備費用はともかく、ランニングコストとして温度維持のための電気代と、安全低価格な水道代が大きいようです。

    電力、水道を民営化(短期的視野の合理化)する政権には、日本人の日本人による日本人のための産業を支援するインフラ整備という理解も乏しく、あまり識者は居ないのかもしれないですね。

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