日本経済
2018年10月10日
【藤井聡】「反緊縮」は「反グローバリズム」と共に進めよ ~第二回京都・国際シンポジウム『グローバル資本主義を超えて』に向けて~
From 藤井聡@京都大学大学院教授
「グローバル資本主義」(あるいは「グローバリズム」)とは、
「国境」にこだわらず、
あらゆる活動を拡大していく資本主義。
その象徴が、グーグル、アマゾン等の多国籍企業であり、
EUやTPPであり、移民の拡大です。
そしてこの「グローバル資本主義」と深く関連しているのが、
「政府の財政政策」。
グローバル企業はもちろん、
自らを支援する財政政策は歓迎しますが、
(IRや五輪はその典型です)
特に利のない財政政策は嫌います。
何にせよ、国家が強化されればされる程に、
自由な企業活動が阻害されるからです。
つまり彼らは基本的に、何も口出ししない
(しかし、自分にとって都合のよい改革等だけはやってくれる)
「小さな政府」が好きなのです。
だから彼らの勢力が強まる程に、
結局は「緊縮財政」が強化されます。
かくして、
「グローバル資本主義の嵐が吹き荒れるところでは、
緊縮財政が横行する」
わけです。
(※ もちろん、グローバル企業よりも「政府」の方が強力な
中国等はその限りではありません)
だからグローバル資本主義の嵐が吹きあれている
日本や欧米(EU・アメリカ)では、「緊縮」が横行しているので
ただし、日本と欧米の間には、
埋めがたい大きな相違があります。
欧米では、
「グローバリズム」や「緊縮」に対して辟易した庶民が反発する
「反」グローバリズム(anti globalism)の運動や
「反」緊縮(anti austerity)の運動
が盛んに生じている一方、
日本ではそういう動きはほとんど見られない、という点です。
その背景には、
欧米の「反緊縮」の動きは、
「反グローバリズム」の動きと連動してる一方、
日本では両者が連動せず、チグハグなものとなっている、
という本質的相違があります。
たとえば、米国のトランプは、
反グローバリズムの「保護主義」と同時に、
100兆円規模のインフラ投資を
進めようとしていますし、
欧州各国における「EU」への反発は
「反移民」運動と同時に、
「反財政」運動の双方を生み出しています。
ところが我が国では、
「反グローバリズム」を主張するサヨクは、
どういうわけか「緊縮」を声高に叫びますし、
「反緊縮」を主張する一部のホシュ勢力は、
「グローバリズム」を礼賛します。
つまり、我が国の反グローバリズムや反緊縮の流れは、
どちらかというと
半ば「おふざけ」の「なんちゃって運動」に過ぎず、
欧米のような、緊縮やグローバリズムによって
苦しめられている庶民からの「本気のレジスタンス」とは、
次元を異にしているのです。
本気で「反グローバリズム」を展開するためには、
国内産業を強化する「反緊縮」が不可欠です。
さもなければ、結局は、強力なグローバル企業に
経済的に侵略されることは避けられません。
同様に、本気で「反緊縮」を進めるには、
国内産業を守る「反グローバリズム」が必要です。
さもなければ、どれだけ国内が豊かになっても、
その果実をグローバル企業に
かすめ取られることは必定です。
・・・
こうした認識から、今週土曜日、京都大学にて、
下記シンポジウムを開催することとなりました。
■■ 国際シンポジウム・グローバル資本主義を超えてII ■■
『EU体制の限界』と『緊縮日本の没落』
日時:2018年10月13日(土)13:00-18:00
場所:京都大学 吉田キャンパス
主催:京都大学レジリエンス実践ユニット
&表現者クライテリオン編集部
詳細:https://the-criterion.jp/
このシンポジウムは、今から五年前の2013年、
エマニュエル・トッド氏らをお迎えして開催した
国際シンポジウムの第二弾、となるもの。
この五年間、ブレグジットや半緊縮、トランプ勝利など、
世界は驚くほどに、このシンポで議論した「通り」に展開したこと
5年前のこのシンポを(直接、あるいはネットを通して)
ご覧になった方々なら、よくご存じなのではないかと思います。
つまり、過去5年間、
グローバリズムはさらに広がると同時に、
それに対する「反発」がさらに深刻化したのです。
ただし、日本とフランスはいまだ、
その「反発」が十分な水準に届かず、
グローバル資本主義と緊縮主義に
好き勝手に蹂躙されています―――。
こうした現状を踏まえ、
今回のシンポジウムは、
昨年のフランス大統領選挙で、
「保守」の立場から「反EU」を掲げて戦った
経済財務省の財務上級監査官である
フランソワ・アスリノ氏をお迎えしつつ、
『EU体制の限界』と『緊縮日本の没落』
と銘打つことといたしました。
当日は、当方が概論を述べた上で、
東京学芸大学荻野教授からフランスの状況を解説頂いた上で、
アスリノ氏から「反EU」について論じていただきます。
そして中野剛志氏から「没落」について、
柴山桂太氏からは「地方の衰退」について、
それぞれグローバリズムの帰結という視点から
論じていただきます。
・・・・
ご関心の方は是非、
グローバリズムで疲弊し続ける「日本」と「フランス」
の状況を俯瞰いただきつつ、
「反グローバリズム」と「反緊縮」を日仏で連携しながら融合せん
とする試みに、是非ともご参加いただきたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
追伸1:
このシンポジウムで取り上げる「反グローバリズム」は、
「週刊ラジオ表現者」
にて30分間たっぷりお話ししています。
あわせて是非、こちらもお聞きください。
https://the-criterion.jp/
追伸2:
「反グローバリズム」についてはもちろん、『
・7月号:ナショナリズム https://the-criterion.jp/
・9月号:ポピュリズム https://the-criterion.jp/
是非、ご購読ください!
https://the-criterion.jp/
【藤井聡】「反緊縮」は「反グローバリズム」と共に進めよ ~第二回京都・国際シンポジウム『グローバル資本主義を超えて』に向けて~への1件のコメント
2018年10月10日 9:42 AM
日仏連携とは、とても面白い動きですね。
すごいです。
多国籍企業中心主義、いわゆるグローバル主義を日本から払拭させるためには合わせて反緊縮、と理解できました。
反対の言葉として、国内産業および労働者強化主義というところでしょうか。
富国強兵の富国ですね。
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