日本経済

2018年10月2日

【三橋貴明】北海道の復旧、復興、発展のために(後編)

From 三橋貴明@ブログ

台風24号が
沖縄から北海道まで、
まさに日本列島を
縦断していきました。

『台風24号が列島縦断
首都圏JR在来線は運休
https://www.sankei.com/affairs/news/181001/afr1810010001-n1.html

非常に強い台風24号は
30日午後8時ごろ、
和歌山県田辺市付近に上陸し、
東海から北陸、東北に抜けて
列島を縦断するコースを取った。

影響は広範囲に及び、
鉄道や空の便は
運休や欠航が相次いだ。

東海道新幹線は計画的に
運転を見合わせ、午後5時以降は
全列車を運休。

JR東日本は、
首都圏の全ての在来線で
あらかじめ運転を
取りやめる異例の対応で臨んだ。

「非常に強い勢力」の
台風が上陸するのは9月4日、
台風21号が徳島県南部、
神戸市付近に上陸して以来。

この勢力の台風が年に2回
上陸するのは統計がある
平成3年以降で初めて。(後略)』

昨夜、マンションから運河を見てみると、
まさにうねりを伴って逆流していました。

物凄い轟音で、別世界に来たかの
如くでございました。

特に、台風21号や
北海道胆振東部地震の影響で
甚大な被害を受けた北海道は、
二次災害等に厳重な注意が必要です。

さて、2018年Q1の
大手電力会社の決算を見ると、
中国電力、四国電力、九州電力、
沖縄電力の四社が赤字になっています。

理由は全社とも同じで、
原発停止や原油価格の上昇による
火力発電の燃料費増加の影響になります。

北海道電力は黒字を確保していますが、
泊原発を動かせない状況で、
かつ自然災害が多発し、
老朽化した発電機や震災被害を
受けた発電機を動かしつつ、
厳冬期を迎えることになります。

泊原発が稼働すれば、
老朽化発電機の大々的な
メンテナンスに入れるのですが、
現状ではそれはできません。

老体であろうとも、フル稼働です。

もう一つ、北電並みにピンチに
陥っているのが、JR北海道です。

16年度、17年度と
二年連続の赤字に落ち込んだ
JR北海道は、資金ショートで
列車運行が不可能になるとして、
30年度までの長期支援を
政府に求めました。

国土交通省はJR会社法に基づき、
政府の経営監視を強化する
監督命令を出すと共に、
19年度、20年度の二年間で
400億円超の財政支援を
行うことを決定しました。

そもそも、人口が少ない
(というか人口密度が低い)
北海道や四国までをも独立させる形で、
「国鉄の分割民営化」を行ったことが
間違いなのです。

上下分離の民営化なら
巧くいったかと問われると、
諸外国の失敗例を見る限り
「不明」としか言いようがないのですが、
いずれにしても
「分割」民営化は最悪でした。

それはまあ、
JR東海やJR東日本のように、
絶対に儲かる地域は良いです。

とはいえ、鉄道という
公共インフラは「そういうもの」
ではないでしょう。

東海や東日本の利益を
北海道や四国に注ぎ込み、
国家全体で鉄道ネットワークを維持する。

本来、公共サービスとは
そうあるべきなのですが、
例により「カネ、カネ、カネ」
というわけで、JR東海やJR東日本は
「不採算部門の切り離し」に成功し、
儲かる会社となったわけです。

見捨てられた形になった
JR北海道やJR四国は、
遅かれ早かれ赤字が始まり、
存続が困難になるに
決まっていました(初めから)。

さて、現在の北海道。

北海道は相次ぐ自然災害により、
鉄道ネットーワークが揺らぎ、
同時に「電力不安定」という
重しまでをも背負って
しまっています。

道民の方々(わたくしも元道民)には
気を悪くして欲しくないのですが、
現在の北海道は日本国の先頭を切って
「発展途上国化」して
しまっているのです。

日本国は東南アジアの途上国
(あるいは「元」途上国)に
ODAで支援を重ねてきましたが、
具体的に何をやってきたのか。

ずばり、インフラの整備です。

鉄道ネットワーク、
電力ネットワーク、港湾、飛行場、
ガスパイプラインといった
インフラを整備することで、
途上国の成長を助けました。

今や、日本国は北海道に
同じ考え方の「支援」を
しなければならないのです。

具体的には、
まずは北海道開発庁を復活させる。

その上で、国務大臣たる
開発庁長官の下で、

1.
北海道を「特区」とし、
発送電分離など余計な
規制緩和について適用除外とする

2.
JR北海道と北海道電力を
「国有化」し、泊原発を再稼働。
鉄道ネットワークと
電力ネットワークの強化を
「政府の予算」で推進する

3.
津軽海峡を渡る高速道路
(トンネルでも橋でもいいです)
の整備を開始する

4.
北海道を日本の「食料基地」とし、
本州以南に大災害が起きた際には
「大型トラック」で食料や備品を
運び込むことを可能とする

5.
ロシアとの間にガスパイプラインを繋ぎ、
北海道を起点として日本全国の
ガスパイプライン網を整備する

「予算」さえつけば、
上記は全て十年以内に達成できるでしょう。

一番時間がかかるのが
「第二青函トンネル」
もしくは「津軽海峡大橋」ですが、
現在の工期見積もりは15年なので、
政府が本気になれば
(要はおカネがつけば)
工期短縮は可能だと思います。

無論、上記がそのまま実現できる
とは思いませんが、少なくとも、

「北海道はJR北海道や北電を再国有化し、
政府の関与を強め、
インフラへの『支援拡大』を
することなしには、
衰退する一方である」

という現実を国民が、
あるいはせめて政治家が
共有するべきだと思うのです。

北海道を失うことは、
日本の「食料基地」を失うことです。

日本国の将来の繁栄は、
北海道の発展なしではあり得ません。

インフラ整備を中心とした北海道の
「再開発」が必要なのです。

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【三橋貴明】北海道の復旧、復興、発展のために(後編)への3件のコメント

  1. たかゆき より

    素敵な民主主義

    北海道知事を選出なさったのは 道民

    道議会議員を選出なさったのは 道民

    知事も議員も 泊原発再稼働を要請なさらないのも 

    また 民意の反映かと、、

    彼等には凍死を選択する自由がございますから。。

    そしてJR北海道

    国有化して空気だけを運ぶ路線に出すカネがどこに ある??

    と、、

    被災地に寄り添う 優しい声が聞こえてきそう

    弱者に寄り添う まともな気持ちが あったなら

    原発は とうの昔に再稼働しているでしょうし

    20年以上も デフレを加速させて 自殺者を出すような 愚かなことは しないっしょ。。。

    ちなみに小生
    元道民でございます ♪

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  2. あまき より

    シナは粛々とこれをやる。

    やくざもドン引く超強引、大借金も大失敗もするし、各国から非難も浴びるけれど、それでも荒蕪に高山に道路作って、鉄道作って、原発も作る。ダムも作る。建国祖国、保衛祖国、前進、前進!前進!進!

    各位の期待通りにシナがなかなか斃れてくれないのは、おそらく良くも悪くも新興実験国家の強みともいうべきこれらの経験の蓄積が作用しているからでしょう。チャルメラみたいな車内広告を打っている我が国の保守各誌は、せっかくシナの専門家?を登場させながらこのことを書かせないし載せない。

    ひところ、ある経済評論家が、日本の新幹線技術を某メーカー経由で盗んだシナはけしからんと、東海の葛西さんの受け売りのようなことを説いていました。ご存じE2系電車のことですが、このE2系に関する詳細な分厚い専門書が、シナでは当時すでに市中の一般書店で販売されていたんですよ。日本でも一般には手に入らないものがシナで簡単に手に入れられる。これはいったい何を意味するか。

    ネトウヨの皆さん等しく否定されるけど、安全性能走行性能、日本製とさして劣らない、しかも格安な新幹線電車の量産にシナが成功し、それを我が国が購入することによって、公共事業費圧縮と新幹線網整備の要求いずれも満足させよう、という時代が間もなくやってくるということなんじゃないか、とリフレ派のお話を聞くたびに私などヒリヒリと危惧するわけです。シナと対決と言いながら外患誘致に加担しているのではないかと。我が国が国産メーカーを喪いinspire the nextのジャベリンやあずまを歓迎するイギリスのような変態国家に堕ちることを自分は望みません。

    偉大なるシナに倣って、いまのうちに、自前の高くていいもので北海道を復興し、保衛し強靭にしておこう。自民党は安倍外交でロシアにただで持って行かれた恥と責任を明確に取るべく、財務省に厳命し、同じ3000億円で北電とJR北を黙って補強すべきです。2年で400億円なんて老朽車両更新にほとんど回せませんよ。青函は漏水が半端ないから一般にいわれる耐用年数に届かないかも知れない。いまのうちに調査費用を予算計上して第2策の検討に入った方がいいです。

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  3. 水鳥川 より

    北海道に公共サービスとしての鉄道を取り戻すことは大いに賛成です。

    ただ、電力については大いに誤解があります。泊原発を再稼動したところで遠方に向けた電力のほとんどは送電経路内で失われます。電力会社が言う電力損失率が数2~3%などというのは嘘であり、これは意図的に消費者にも知らされていません。ブラックアウトなどという、電力会社の言い訳ともとれる非科学的理論を基に論理を構築されては、せっかくの三橋先生の志が活かされないと思います。

    電力送電の効率化という観点から、小規模発電所を地域毎に建設する、家庭内自家発電を資金補助することが、災害に向けたリスク分散という意味でも有効だと考えます。

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