日本経済

2018年10月3日

【藤井聡】10%消費税増税の「凍結」:風は少しずつ、しかし「確実」に変わりつつある。

From 藤井聡@京都大学大学院教授

当方は安倍内閣誕生前から、一貫して、

「デフレ脱却までは、消費増税を凍結せよ」

と主張して参りました。
https://www.youtube.com/watch?v=MnUBGj-itBU

したがって
2012年の当時の「安倍衆議院議員」の総裁選の頃から、
その旨を「安倍議員」に繰り返し「説明」しておりましたし、
今日でもことあるごとに
「消費増税はデフレ脱却までは凍結すべき」
との旨を主張し続けてきました。

しかし残念ながら、
こうした主張にもかかわらず、
かの民主党の野田政権下でのいわゆる、
「消費増税についての三党合意」が交わされ、
それに沿う形で、2014年に消費増税が
断行されてしまいました。

結果、我が国の経済は激しく疲弊してしまったのは、
本メルマガ読者ならば、よくご存じのことと思います。

そうした状況を受けて、安倍総理は、
これまでに「二度」もの「消費増税の延期判断」
をしたのですが、
昨年の衆議院選挙ではついに、
自由民主党は、「10%消費増税」を公約に掲げ、
勝利する「恰好」となりました。

もちろん、多くの有権者は、
10%に消費増税をしたい「から」
自民党に投票したのでなく、
他の政党に政権を任せるくらいなら、
自民党にしておくことがまだ良いだろう―――
という判断で自民党に投票したに過ぎない、
というのが一般的な認識です。

だから誰もかの選挙結果を受けて、
「世論が消費増税を支持したのだ!」
なぞと本気では思っていないのが実態です。

しかし、少なくとも
先月の自民党総裁選が終わるまで、
霞ヶ関・永田町は、
「消費増税は既定路線だろう」
という空気に支配されていました。

実際、筆者がどれだけ、

「今、消費増税を断行すれば、
経済が腰折れ、
財政再建のために必要な
日本の財政基盤それ自体が破壊され、
かえって、財政が悪化しますよ!」

と、様々な客観データを用いて主張しても、
https://www.youtube.com/watch?v=DNXSugXq-jo

「藤井さん、確かにそうかもしれないけど、
与党公約だから、もう増税は既定路線だよ」

という「諦め感」たっぷりのレスポンスにさらされるのが、
「いつもの日常的風景」でした。

・・・しかし・・・

自民党総裁選で、
「安倍総理勝利、石破氏善戦」
の結果が得られてから、
にわかに霞ヶ関・長田町の空気が変わり始めました。

もちろん、安倍内閣の公式見解は
消費増税であることに変わりありません。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181001-00000582-san-pol

しかしそれでもなお、
大手新聞社の一つである産経新聞では、
田村秀男氏が、

『自民総裁選に物申す、「消費税増税中止」の議論を』
https://www.sankei.com/premium/news/180915/prm1809150006-n1.html

と明確に、消費増税に反対する議論を展開しておられます。

あるいは元財務官僚で安倍総理とも近い、
霞ヶ関・永田町ウォッチャーでもある高橋洋一氏は、

『二度あることは三度ある!?
消費増税「スキップ」あるか
改憲とデフレ脱却の切り札に』
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180922/soc1809220003-n1.html?ownedref=rensai_not%20set_newsList

『不祥事続いた財務省の「けじめ」なき消費増税、
国民感情が許すはずない
増税スキップなら、デフレ完全脱却への切り札に』

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/181002/soc1810020002-n1.html?ownedref=rensai_not%20set_newsList

という記事を立て続けに配信すると同時に、

『消費増税なら改憲は無理』

という点も現代ビジネス誌上で主張しておられます。
https://gendai.ismedia.jp/articles/57650?page=3

もしこの高橋氏の「政局判断」に、
一定の合理性があるとするなら、
この度の沖縄知事選における
反自民党系のデニー玉城氏の勝利は、
ますます政府・与党が、
消費増税「凍結」の決断を下す可能性を
上昇させる効果があると考えることができるでしょう。

そもそも、霞が関で「消費増税路線は盤石」だ
と思われていた、昨年10月の時点でも、
消費増税に「反対」の国民は「44%」であり
「賛成」の「35%」を大きく上回っていたのが実態です。
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171016/k00/00m/010/129000c

そうである以上、
「今年の秋、消費増税を断行します!」
と「党」として主張する政党は、
「参議院選挙の大敗リスク」
を抱え込むことになります。

そして何といっても、
本当に消費増税が断行されれば、
実際に景気が大きく後退し、
国民の不満が爆発してしまうリスクは、
明白に存在します
(――というより確実にそうなるでしょう)。

もちろん、現政府は、
その悪影響を最小化するための
様々な取り組みを同時並行で行う、
とは主張しています。

しかし、消費増税による破壊的インパクトを相殺する対策など、
(少なくとも現状の「財政当局」の緊縮的姿勢下では)
不可能であるというリスクもまた明確に存在するのです。

(※ 筆者は本当に消費増税を断行するなら、
10~15兆円の経済対策を最低でも五カ年は継続する
必要があると、推計していますが、
消費増税を断行する緊縮的勢力が、
そんな対策を許容するはずはないだろう―――
と想定することも可能なわけです。
https://jp.reuters.com/article/c-tax-fujii-idJPKCN1LM0XM

こうした状況を踏まえると、
安倍政権であろうがなかろうが、
「時の政権」がそこまで大きな「リスク」を冒してまで
消費増税を断行しようとは「しない」可能性は、
十二分以上にあると考えるのが、
当たり前の政局判断だと言うこともできるのです。

こうした状況を受けて今、
「増税は延期されるのではないか?」
「増税は延期すべきである」
といった言説が、「言いやすい」空気が
確実に国内にできあがりつつあるのであり、
それが、先に紹介した、
総裁選後の数々の記事だったわけです。

・・・・

もちろん、政治は空気で行うべきではありません。

しかし、空気がまっとうな議論を「抑圧」するような状況は
異常事態としか言い得ません。

だからそうした抑圧的な空気が希薄になり始めたとするなら、
それは日本がこれ以上衰退し続ける悪夢を回避できる
「好機到来」を意味しているのです。

そうであるのなら後は、心ある国民が
可能な限りの力をつかって、
理性と事実に基づくまっとうな議論を展開していくことが、
強く求められているのです。

追伸1:
良きにつけ悪しきにつけ、政治は「空気」で動きます。そして空気を適正なものに変えていくのは「言論」です。そんな言論に関心の方は是非、「表現者クライテリオン」をご購読ください。
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【藤井聡】10%消費税増税の「凍結」:風は少しずつ、しかし「確実」に変わりつつある。への9件のコメント

  1. たかゆき より

    飛べない豚

    安倍某は ただの豚だったって ことですね(ジュウジュウ承知でしたが)

    あとは 糸の切れた凧のように

    風まかせですか、、、

    凧のぼり きのふの空のありどころ (蕪村)

    返信

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      1. 反孫・フォード より

         せっかく今まで3年殺しを延期してきたのに6年越しの今したら倍倍6年殺しじゃないですか!ほんと「やめてーっ!」ですよ。
        何かと物品税を次々と繰り出すのに更に畳み掛けて延々と消費税なんて・・・ほんとどうかしてまっせ!
        ふと思いました。正に消費税ならぬ、超卑税ダァーッ!
        すみません、押韻を踏みたかったんです。政府はグローバル資本家の踏み絵を踏むべきやろもんっ!Denny’sを沖縄に開業させてる場合カァーッ!っとしてぇ、gooっと来てー・・・アハハハハハハハハ脱線ToshiちゃんDeーnny’s?。

        金は政府が(発行し)回すもの。吸い上げてばかりでどうすんの?。頼むから吸い上げるなら台風にしてクレヨンっ!晋ちゃん。
        すみません、無茶苦茶ですね。
        「どっちがぁーっ!」

        (間違えて返信に書き込みました。これは独立したコメントDenny’s)

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      1. 多治見国長 より

        「消費税増税であなたの生活は豊かになると思いますか」とか「消費税増税に賛成ですか、反対ですか?」とかいった見え透いたアンケート調査をやって、自民党にプレッシャーをかけるなんていうのもいいかもしれませんね。

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  2. 拓三 より

    言いたいことは山ほどある ! …..でも目の前の危機から…..一歩ずつ….ですね。

    ただこの女々しい奴らが増税見送って財出するかな …? これまでの流れで ?
    こ奴ら増税と財出セットで考えてるやろ。そこ切り離す事出来るか?
    安倍は増税のケツ拭きレベルでしか財出のこと考えてないやろし。
    国土強靭化を何故増税見送りの時しなかったの ? 2回も ?
    その間何をやった ? どんな法案通した ? 今度は何 ?
     高橋洋一 ? 「安倍さんは財出するよ。次の補正で、次の本予算で、次の補正で…..」何回繰り返した ? 何年経った ? その間どんな法案推進してた ? 次は何を推進するのかな?  糞憲法改正案 ? 

    どっちに転んでも消滅のような…..私は絶望が足らんかな…..

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  3. ぬこ より

    郵政をシティバンクに売り渡す片棒を担いだ高橋を盲信するのが保守派に多いんですよね。
    ロバート・フェルドマン先生の様にイエズス会関係者なのでしょうか?(笑)
    そういえば、高橋のマブダチの上念はイスラエルに行ってましたよね。

    イエズス会そのものの上智大学の故渡部昇一さんも、
    ユダヤが問題なのではなく、ユダヤを操ってる者達が居る。渡部家とロスチャイルド家は懇意にしている。
    とおっしゃってました。

    最近では、お花畑左翼以上に世界主義(NWO思想)なのが自民党に代表される保守派だと思う次第です。

    ジミヘン殺したのも奴らみたいですね。

    もう、なんとかしてくださいよ、藤井先生(笑)

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  4. 日本晴れ より

    安倍政権は当初デフレ脱却や野田政権の増税を批判してきたはずです、やっぱり有言実行してほしい。最近日米FTAをTAGっていったり移民なのに移民じゃないと言ったり、言葉をすり替えている自民党政権にちょっとがっかりです。日本経済はデフレだし名目成長率もそんなよくありません、増税しなかったらもっといいはずですし。安倍総理には言葉の誤魔化しじゃなくて有言実行して貰いたいです。

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  5. 神奈川県skatou より

    空気の確認、という意味で、このMLに過去参加されていた渡邉哲也氏が、先日BS東京の番組に出演されたので録画して丹念に観てみました。おもに番組キャスター、解説員の反応具合を、ですが。(病気で寝ていたから暇だったという事情もありますが)
    これが日本国民の多数と、当ML界隈の我々との距離感かなという意味でです。

    直感的な印象でいえば、認識の差として、中共は基本的人権を認めていない抑圧国家であること、ドル基軸体制というヘゲモニーに、日本はこれまでもこれからも当分合意であること、中共の基本姿勢は世界支配であり、日本にとって米中は同類ではないこと、などなどが共通理解になっていないようだ、と感じられました。

    またキャスターはなにか先行きに感じられるものがあったのかもしれませんが、言葉を持っていなかったようです。

    我が国の立ち位置について認識が乖離していては、なにも議論にならないように思われますが、税の是非についても同様の距離感だとすれば、会話が広がらない可能性がありそうです。

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  6. 日本晴れ より

    ぜひ安倍政権や麻生財務相には増税凍結という判断をしてもらいたいです、むしろ減税すべきだと思います。藤井先生も増税凍結に
    総理や政治家を説得して貰いたいです。

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  7. […] 追伸: 毎週水曜日には、今回取り上げた「貧困」や「経済」の問題を中心に論ずるメールマガジン「新経世済民新聞」(無料)を配信しています。未購読の方はぜひ、この機会にご登録ください。 登録はコチラから→ https://pages.keieikagakupub.com/opt-in_mag2/ (先週号の記事はコチラ→ https://38news.jp/economy/12467) […]

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