日本経済

2018年5月23日

【藤井聡】「財政健全化投資」こそが、財政再建のために必要である。

From 藤井聡@京都大学大学院教授

みなさんこんにちは、
内閣官房参与、京都大学の藤井聡です。

21世紀の日本の命運は、大袈裟でも何でも無く、
まさに来月の閣議決定される
  「骨太の方針」
で決せられる―――
というお話はこれまで何度も申し上げた通りです。
https://38news.jp/politics/11890

そして、これが大袈裟でも何でもないのは、
当方が編集を仰せつかっている
  「表現者クライテリオン」 https://the-criterion.jp/
でも、同じく何度も論じた通り、
今の日本は、とてつもない
  「危機」
の時代にあるからに他なりません。

(※ なお、表現者でも『無料メルマガ』を配信しております。
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ご関心の方は是非、下記よりご登録下さい。
http://www.mag2.com/m/0001682353.html

さて、この「骨太の方針」で最も重要なキーワードは、
「プライマリー・バランス」
だという点は論を待たないのですが、
もう一つ絶対に記述されなければならない重要ポイントは、
「投資」(investment)
についての議論。

そもそも日本は「資本主義」の国家。

資本主義とは、「資本」(capital)を形成し、
それを通してその国家と国民を支えていこう、という主義。

そして、「資本」というものを形成し、
維持していくために絶対必要不可欠なのが、
「投資」(investment)
です。

だから、投資がストップした国家は、
確実に衰退し国際競争の中で凋落していくのです。

・・・そして今、日本は「投資」を著しく
縮小させています。

民間は「デフレ」だからビジネスチャンスがないために、
そして政府は「緊縮財政」のために、
それぞれ「投資」を縮小させていきます。

だから、このままでは、
我が国の「衰退」「凋落」は必定なのです。

そして、「我が国が衰退」していく過程で、
必然的に不健全なものとなっていくのが、
「財政」
なのです。

つまり、

1)投資をしなければ、国家は衰退し、
2)税収が縮小し、
3)最終的に「財政が不健全化」する

のであり、そうしたプロセスは、

「水が高いところから低いところに流れゆく」
程に、当然中の当然の現象

なのです。だから、

「財政健全化」や「財政再建」のためにも、
「投資」が必要なのです!

そうである以上、
財政健全化のための議論を重ねている

自由民主党の財政再建に関する特命委員会や、
政府財務省の『財政制度審議会』や、
内閣府の『経済財政諮問会議』では、

「財政健全化/財政再建のための投資のあり方」

すなわち、

「財政健全化投資」

を考える責務が、絶対に必要不可欠なのです。

ところが・・・・
今日の我が国では、財政再建と言えば、
「税制改革」や「歳出抑制」の議論が主流で、
財政健全化投資について論ずる機会が、
あまりにも限られてきたのでは無いかと思います。

もちろん、
「歳出改革」や
「ワイズスペンディング」
というキーワードは、これまででも取り沙汰されてはきましたが、
「資本主義国家において絶対必要な、政府投資」
に特化した議論が余りにも限られてきたのです。

さて、そんな「財政健全化投資」とは、
一体どのようなものなのかと言えば、例えば・・・

1)将来の「成長」=「税収拡大」を導く
「科学技術投資」

2)将来の「成長」=「税収拡大」を導く
「生産性向上インフラ投資」

3)将来の「成長」=「税収拡大」を導く
「資源・エネルギー開発投資」

4)将来の「財政基盤被害」=「税収縮小」を「回避」する
「防災投資」

5)将来の「財政基盤被害」=「税収縮小」を「回避」を導く
「国防投資」

等です。これらは全て

「財政構造を強化する投資」。

そして、このような「財政構造を強化する投資」こそが、
「財政健全化投資」なのです。

もちろん、
こうした「税収拡大」や「税収縮小回避」
のための「財政健全化投資」には
  「リスク」
があります。

だからこの「リスク」故に、
投資を避けよう
という消極的議論が存在するには存在します。

しかし、そうした消極的論者は、
次の「リスク」を失念しています。それは、

「財政健全化投資を『しない』ことで、
財政が悪化するというリスク」

です(!)。

そもそも資本主義とは、
未来が不確実だということを前提として、
投資をしたりしなかったり、
投資するならその内容を選定したりして、
運営していくもの。

だから、資本主義の国家は、

「投資する可能性」

を常に見据えながら、
その是非を考えるべき責務を負っているのです!

だから、

財政健全化を論ずる委員会や審議会は
「財政健全化投資」
のあり方を常に論じなければならないのです。

つまり、
あらゆる民間企業の投資に「損益分岐点」(※)
があるように、

「財政健全化投資」にも「損益分岐点」があるのです。

(※ 損益分岐点=これだけの儲けが見込めるなら投資するが、見込めないなら投資を回避する、という分岐点)

その「損益分岐点」が何処にあるのかを見極めることこそ、
国家運営=政治の仕事です。

是非、我が国の「財政債権」「財政健全化」の議論においても、
そんな「損益分岐点」を見据えた
「財政健全化投資のあり方」
を理性的に考える議論が展開されんことを、
心から祈念したいと思います。

追伸1:
「投資」が「発展」においてどれだけ大切なものだったのか――
その歴史のご関心の方は、
当方の久々の大石久和先生との新しい共編著書
『歴史の謎はインフラで解ける』
をご一読下さい。
http://amzn.asia/72rDzul

追伸2:
「投資」をストップするのは、「若者達」にカネを使うことを辞める、というある種の若者いじめ。そんなことを「週刊ラジオ表現者」で『気付かなアカン、若者世代をいじめるニッポン!』と題して、柴山桂太さんとお話しました。是非下記より、お聴き下さい!
https://the-criterion.jp/radio/20180521-2/

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【藤井聡】「財政健全化投資」こそが、財政再建のために必要である。への6件のコメント

  1. 神奈川県skatou より

    財政健全化投資というのは、先生の造語でしょうか。

    だとすれば、すばらしいイノベーション、またはその種ですね!

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  2. ぬこ より

    政府部門における損益分岐点の 益 は何を以て判断するんでしょうかね。
    当該地域における民間企業の投資増加や業務効率増加(道路やITインフラ増に伴い)や雇用者数増加等だけでなく、
    自殺数減少、健康寿命増加、国内外防衛力増にともな治安向上、幸福度増加等々の曖昧だけど、大事な要素も含まれてそうですよね。

    数値化できるものとそうでないものがありそうですね。

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  3. ぬこ より

    政府部門における損益分岐点の 益 は何を以て判断するんでしょうかね。
    当該地域における民間企業の投資増加や業務効率増加(道路やITインフラ増に伴い)や雇用者数増加等だけでなく、
    自殺数減少、健康寿命増加、国内外防衛力増に伴う治安向上、派遣会社中間マージン規制による幸福度増加等々。

    曖昧だけど、大事な要素も含まれてそうですよね。

    数値化できるものとそうでないものがありそうですね。

    ユダ金課税とか(笑)

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  4. 日本晴れ より

    藤井先生の頑張りに期待してますが
    安倍総理のこれまでの経済政策見ると、経団連の言いなりな感は否めないので。その経団連が増税しろとか移民入れろとかもっと増税しろとか下らない提言ばっかしてるので正直不安ですね
    安倍総理には経団連より日本の未来を考える勉強会の人達の意見や藤井先生の意見の方取ってほしいと思います。

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  5. クンメル より

    前にも言ったが 自分のやるべき仕事 ( 研究をして論文を書いてある程度レベルの高いジャーナルに論文を掲載するという努力 ) をしないなら 大学を辞めるべきだと思う

    「 論文を書け さもなくば滅びよ 」 は個人的には正しいとは思わない
    しかし 「 講義 と 研究 ( ジャーナルに研究論文を掲載するという努力 ) 」 は 研究者の義務だと思っている
    本当に研究をしていたら 本を書く時間はないし テレビやラジオに出演する暇は絶対にない

    空前絶後の大天才 ガウス は 友人の オルバース への手紙の中で 「 研究で頭が一ぱいで眠れない夜が明けた午前中 , こういうことは度々ですが , 新鮮な頭脳でもって講義の内容を学生に話さなければならない , それが済むと直ちに家に帰って再び研究に集中しなければならない . 」 と言っている

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