日本経済

2026年3月19日

【三宅隆介】大阪副首都構想は成立するのか―地盤・水・歴史が示す都市の条件

from 川崎市議会議員 三宅隆介

 

国家の中枢機能は、どのような条件を満たす都市に置かれるべきでしょうか。

この問いは、都市政策の根幹に関わる問題です。

2026年3月、大阪市北区の路上で、異様な光景が出現しました。

下水道工事中の巨大な鋼製ケーシングが、地中から突如として突き出し、その高さは最大で13メートルを超えました。

アスファルトを突き破り、まるで橋脚のように現れたその姿は、多くの人に衝撃を与えました。

原因は、ケーシング内部の水を排出したことにより、地下水による強い浮力が作用したためとみられています。

すなわちこれは、偶発的な事故ではありません。

地下では水の力が支配的に働き、その影響がそのまま現実として表面化した事象です。

したがって、これは単なる工事事故として片付けられるものではありません。

都市の成り立ちと自然条件が、現代のインフラにどのような影響を及ぼすのかを示すものです。

こうしたなか、日本維新の会は、大阪を「副首都」と位置づける構想を掲げています。

これは、かつて住民投票で否決された「大阪都構想」の延長線上にあるものであり、西日本の中枢機能を強化し、東京一極集中の是正を図るというナラティブのもとに推進されています。

一見すると合理的にも見えるこの構想ですが、問うべきは、その都市が持つ条件と担おうとする機能が整合しているのかという点です。

都市政策は理念だけでは成立しません。

最終的に制度のあり方を左右するのは、地盤・水・地形といった避けることのできない自然条件だからです。

ここで、大阪という都市の成り立ちに立ち返る必要があります。

大阪は、もともと広大な内湾――河内湾の一部でした。

現在の市街地の多くは、長い年月をかけた堆積と人為的な埋立によって形成された土地です。

このことは、地名にもはっきりと刻まれています。

難波(なにわ)は、古くは「波速(なみはや/ななわ)」と記されました。

『古事記』には、神武天皇が東征の途上、船でこの地に至り、生駒山へ向かったとする記述が残されています。

当時、この一帯が海と直結した水域であったことを示すものです。

また、梅田という地名も、「埋め田(うめた)」に由来するとされます。

すなわち、湿地や干潟を埋め立てて形成された土地であることを意味しています。

これらは単なる歴史的知識ではありません。

地名とは、その土地の構造を記録した言語です。

そして、その条件は現在も基本的に変わっていません。

例えば、次のような特徴があります。

・地下には水を多く含む軟弱地盤が広がる

・地下水位が高く、常に浮力が作用する

・低平地であり、水害の影響を受けやすい

今回の事故は、まさにその条件が現代の都市の上に可視化された現象です。

そもそも、副首都とは、単なる経済拠点ではありません。

国家機能の一部を担い、有事においても行政・通信・インフラを維持し得る、高度な持続性と復旧性を備えた都市である必要があります。

その観点から見たとき、大阪という都市はどう評価されるべきでしょうか。

水と軟弱地盤という制約を抱えるこの都市において、広域災害時に中枢機能を安定的に維持できるのか。

地下構造物ひとつをとっても、浮力という基本的な物理法則に強く制約される環境のなかで、安定的に都市機能を支え続けることができるのか。

繰り返します。

問われているのは、理念ではなく現実です。

大阪副首都構想は、政治的には魅力的なナラティブを持ち得ます。

しかし、国家の中枢機能をどこに置くかという問題は、本来、最も安全な場所はどこかという問いから出発しなければなりません。

その意味において、大阪は、防災上の観点から副首都の要件を十分に満たす都市であるとは言い難いと私は考えます。

国家中枢の立地は、政治的ナラティブではなく、国土の自然条件から出発して検討されるべき問題です。

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