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2014年12月15日

【三橋貴明】誰も言わない問題

From 三橋貴明

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●『月刊三橋』12月号のテーマは「2015年の世界と日本はどうなる?」
世界はデフレ破局へと向かうのか? なぜ、マスコミの経済予測は信じてはいけないのか?

もし、あなたが、世界を正確に知り、嘘情報の被害に遭いたくないなら、、、

http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php

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【今週のNewsピックアップ】
●正しい物価の上がり方
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11963216165.html

●続 正しい物価の上がり方
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11963975707.html

正しい物価の上がり方とは、どのようなものでしょうか。当たり前ですが、国民の「所得」が増える形の物価上昇です。

吉野家が牛丼を値上げしました。結果、並盛が300円から380円に上がります。吉野家の値上げの理由は、新聞報道では「アメリカ産冷凍牛肉の値上がり」となっています。

吉野家がアメリカからの輸入牛肉の価格上昇分を、そのまま牛丼価格に転嫁したとすると、日本国民が生産する付加価値(=所得)は全く増えないということになります。増えるのは、アメリカの牛肉関連ビジネスで働く人たちです。

というわけで、単純に輸入価格が上昇するだけでは、日本国民の付加価値=所得が増えるわけではないため、「正しい物価の上昇」とは言えません。

もっとも、吉野家の牛丼値上げについては、「正しい物価上昇」のヒントが含まれています。(だから、色々なところで取り上げているのです)

アメリカの牛肉ビジネスにとって、吉野家への冷凍牛肉の販売は「輸出」です。すなわち、名目GDP支出面における「財・サービスの輸出」という需要項目の一部になります。

アメリカの天候不順で、牛肉価格が高騰しました。すなわち、「牛肉の供給能力<日本の牛肉需要」となったわけです。結果的に、アメリカ産冷凍牛肉の価格が二倍近くになりました。

需要が供給能力を上回る環境になって初めて、「所得が上がる形の物価上昇」が実現することになります。

吉野家の牛丼の例は、「供給能力が小さくなる形」で、「需要>供給能力」の関係となり、インフレギャップ状態になりました。結果的に、冷凍牛肉という「付加価値」の値段が上昇したわけです。

最も望ましい経済成長の環境は、「需要が大きくなる形」で「需要>供給能力」が成立することです。日本国民が一年間に食べる牛丼の数を増やすのは難しいかも知れませんが(不可能ではないですが)、「他の産業」における需要を拡大することで、人手不足が進み、吉野家の「牛丼を供給する能力」が「需要」に対し不足すると、「所得拡大を伴う牛丼の値上げ」を実現できます。

もちろん、吉野家の牛丼の市場単体を見れば、「供給能力が小さくなる形」で「需要>供給能力」の関係になっているわけですが、国民経済は繋がっています。日本全体で見れば、「需要が大きくなる形」で「需要>供給能力」の関係を成立させることは可能です。

しかも、
「アメリカ産連投牛肉の供給が不足し、吉野家の牛丼価格が上がった」
と、
「人手不足で吉野家で働く従業員の給料が上がり、吉野家の牛丼が上がった」
とでは、同じ「牛丼価格の上昇」であっても、前者が「アメリカ国民の所得が増える」のに対し、後者は「日本国民の所得が増える」わけでございます。

結局、何を言いたいかといえば、単純に「物価上昇」のみを目的としている現在の日本政府の手法は、色々と問題があるなあ、という話でございます。というわけで、三橋は「物価」と「所得」を組み合わせた「実質賃金」を重視するべきだと考えるのです。

【近況】
昨日、総選挙が投開票されました。とはいえ、一応、本稿執筆時点では結果が明らかになっておりませんので、本日は「民主主義の選挙」の問題、特に「一票の格差」について考えてみたいと思います。

一票の格差を2倍未満に抑えるため、13年6月に小選挙区定数を「0増5減」を実現する改正公職選挙法が成立しました。とはいえ、今回の総選挙でも13選挙区で2倍を超えていました。

さて、日本の選挙制度をアメリカ方式に「人口比例選挙」にしてしまった場合、何が起きるでしょうか。当たり前ですが、都市部の国会議員の数が増加し、地方の国会議員数が減少します。結果、地方はインフラ整備などにおいて、中央政界で影響力を行使できなくなります。

日本の政治は、間違いなく勝ち組(都市部)に有利となり、地方は財源やインフラ投資が乏しくなり、ひたすら「負け組」の道を歩んでいくことになるでしょう。当たり前ですが、地方から都市部への人口流出がますます進みます。

我が国は「自然災害が多発する」国土を持つという特性上、都市部に人口を集中させて良い国ではありません。一票の格差を認め、地方の国会議員の数を人口比で都市部よりも多くすることは「都市部の安全保障」にも寄与するのです。

とはいえ、日本のマスコミで「一票の格差」について、「安全保障上の理由から、ある程度は認めざるを得ない」といった意見を聞くことはありません。政治家がどう思っているのか、気になるところです。

日本の政治家が「一票の格差は、安全保障上の理由から必要だ」と、堂々と発言できる日が来なければ、我が国の安全保障の弱体化は止まらないように思えてならないのです。

◆徳間書店から年末恒例(?)の「2015年 暴走する世界経済と日本の命運 」が刊行になりました。
http://amzn.to/11mrvZb

◆KADOKAWA/中経出版「原発再稼働で日本は大復活する!」が発売開始になりました。
http://amzn.to/1qCFM9j

◆経済界 2014年 12/23号に連載 深読み経済ニュース解説「安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由」が掲載されました。
http://www.amazon.co.jp/dp/B00PJ0N2GU/

◆夕刊フジで「斬り捨て御免 日中韓経済」が連載されていました。

【斬り捨て御免 日中韓経済】消えた北京の「APECブルー」 中国の大気汚染は「危険水準」
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20141206/dms1412061540002-n1.htm

【斬り捨て御免 日中韓経済】韓国、デフレ地獄に突入か 輸出に急ブレーキ、債務膨張が不可能なら…
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20141208/dms1412081140001-n1.htm

◆週刊実話 連載「三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』」 第105回「財政の崖」
なお、週刊実話の連載は、以下で(二週遅れで)お読み頂くことが可能です。
http://wjn.jp/article/category/4/

◆Klug連載 三橋貴明の「経済ニュースにはもうだまされない」 第284回 再デフレ化する日本
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2014/12/09/022866.php

◆有料メルマガ 週刊三橋貴明 〜新世紀のビッグブラザーへ〜 週刊三橋貴明 Vol290 潜在GDPのパラドックス(前編)
http://www.mag2.com/m/P0007991.html

今回は、平均概念の潜在GDPを用い、需給ギャップを計算すると、「生産不可能なはずのモノ、サービスが消費、投資されている」という、奇妙奇天烈な状況が生まれてしまう、というお話です。

◆メディア出演
12月14日(日) チャンネル桜「ニコニコチャンネル」「ネット生放送」総選挙特番出演します。
http://www.ch-sakura.jp/1428.html

12月17日(水) 文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」に出演します。
http://www.joqr.co.jp/tera/

12月19日(金) チャンネル桜「報道ワイド日本ウィークエンド」に出演します。
http://www.ch-sakura.jp/hodo.html

12月20日(土) チャンネル桜「日本よ、今…「闘論!倒論!討論!」 選挙結果とこれからの日本」に出演します。
http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1587

◆三橋経済塾
三橋経済塾第三期「第十二回講義(最終回) 「経済学と民主主義」の講義が、12月21日に開催されます。
http://members.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=888
今回はケーススタディを実施するため、ゲスト講義はありません。

◆チャンネルAJER 更新しました。
『なぜエコノミストは間違えたのか1』三橋貴明 AJER2014.12.9(7)
http://youtu.be/dEjf94XCB3U

PS
なぜ、民間エコノミストの経済予測は信用できないのか?
経済学の「嘘」を見抜いて世界と日本の動きを正確に知りたいなら、、、、
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php

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