日本経済

2017年11月30日

【島倉原】企業の投資意欲の実態

From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)

最近、景気良さげな報道をよく目にします。
リーマン・ショック以来停滞していた
世界の貿易量が昨年後半から急回復し、
日本でも、輸出主導の景気回復の構図が
出始めているんだとか。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2390973025112017EA3000/

そうした背景もあってのことでしょうか。
内閣府試算の日本経済の需給ギャップも、
2017年に入って3四半期連続でプラス、
すなわち需要超過なんだそうです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23941140X21C17A1EE8000/

過去最高益の日本企業が、国内設備投資を
増やしているとのこちらの記事もその1つ。
その中で、2013年度の設備投資が
16年ぶりに減価償却費を上回り、
その構図が現在まで続いている事実が、
設備投資回復の動きを示すものとして、
グラフ付きで示されています。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO23904130V21C17A1EA2000/

上記の事実は2014年度、すなわち
消費税増税で景気が後退していた時期にも
成立していました。
してみると、そもそも設備投資回復や
景気回復の指標として適切なのでしょうか。

上記記事には「企業はITバブル以降、
現金収支を確保するため設備投資を
減価償却費の範囲内に抑えてきた」とあり、
それに続いて上記事実が指摘されています。
確かに「借入=通貨の創造」であり、
一定の成長が続いている経済の下では
企業全体の現金収支はマイナスが正常。
こちらのグラフもそのことを示しています。

とはいえ、設備投資と減価償却費だけでは
現金収支は決まりません。
現金収入は利益動向に左右されますし、
投資支出の対象には設備以外の要素、
例えば土地なども当然含まれます。

すなわち、上記日本経済新聞記事のような
議論をするのであれば、
それらも含む真の現金収支をたどるべきで、
私が作成した上記グラフもその1つです。
日経と同じ「法人企業統計」に拠るのなら、
こちらのようなグラフになるでしょう。

【企業の実物投資と「純利益+減価償却費(≒営業キャッシュフロー)」の推移(兆円)】

土地への投資も含む「実物投資」に対し、
現金収入あるいは営業キャッシュフローに
ほぼ一致するのが「純利益+減価償却費」。
後者に対する前者の比率が100%以上なら
企業部門の現金収支はマイナスで正常、
100%未満ならプラスで異常という訳です。

当該比率はこの5年間低下傾向で、
直近2016年度のそれは過去最低水準。
当然、100%を下回っています。
しかも、リーマン・ショックが起きた
2008年度のそれをも下回っていて、
到底明るい兆しは見出せません。

これに対して、日経に準拠した
「設備投資÷減価償却費」は100%超。
確かに過去最高益だけあって、
設備投資「額」はそれなりに増えています。

とはいえ、金額ベースで見ても所詮は、
過去20年間のデフレ不況期の範囲内。
しかも、明らかに国内需要が不振な中で
両比率の乖離が拡大する現状が示すのは、
海外需要によって利益が拡大したとしても
国内投資にはさほど波及しないという構図。
その分海外投資に向かっていると考えれば、
目先で国内投資が幾ばくか増えたところで、
長期的な結果としてもたらされるのは、
国内産業の競争力低下に他ならないのです。

〈島倉原からのお知らせ〉
1)こうした状況を立て直すのが、
国内需要を拡大する積極財政政策。
その裏付けをまとめたのがこの1冊です。
↓『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』
http://amzn.to/1HF6UyO

2)メルマガ『島倉原の経済分析室』では、
経済や金融のタイムリーな話題について
独自の観点から分析しています。
以下は直近記事のご紹介です。

ゾゾタウンを運営するスタートトゥデイ。
先週新戦略を発表した同社の今後について
考察しています。
↓「スタートトゥデイの新戦略とITバブルの循環」
http://foomii.com/00092/2017112600000042550

既に日本にも進出している、
アメリカの新興電子決済企業スクエア。
株価が好調に推移する同社の今後について、
CEOインタビューも参考に考察しています。
↓「ツイッターの時価総額を超えたスクエアの今後」
http://foomii.com/00092/2017111901501042444

↓その他、バックナンバーはこちらをご覧下さい。
http://foomii.com/00092/articles

3)ツイッター/フェイスブックページ
/ブログでも情報発信しています。
こちらも是非ご活用ください。
https://twitter.com/sima9ra
https://www.facebook.com/shimakurahajime
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/

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