From 佐藤健志
アメリカで人気の高い深夜トーク・バラエティ番組に、『ザ・レイト・ショー』があります。
20年以上にわたってデイヴィッド・レターマンが司会をやってきたものの、2015年、コメディアンのスティーブン・コルベアが引き継ぐことに。
現在は
『ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーブン・コルベア』
が正式名称。
で、コルベアが毎回披露する時事風刺のトークが、YouTubeでも配信されているのですが・・・
11月7日に配信されたトークはこちら。
TRUMP CALLS JAPAN ‘A COUNTRY OF SAMURAI WARRIORS’
(トランプ、日本を「サムライの国」と呼ぶ)
題名からも分かるとおり、大統領の訪日がネタ。
ところがここに、なかなか痛烈なギャグが盛り込まれていました。
コルベアいわく。
(ハワイを出たトランプは)東京の近くにある米空軍基地に到着、アメリカの敵どもに断固たるメッセージを送った。
あくまで「米空軍基地に到着」であって、「日本に到着」ではないのがミソですね。
画面は横田基地でのトランプ演説(本物)に切り替わり、発言が紹介されます。
いわく。
ハッキリさせようじゃないか。
いかなる独裁者も、いかなる政治権力も、いかなる国家も、アメリカの意志を見くびるような真似をすべきじゃない。
歴史を振り返れば、そういう連中が時々出てきたこともある。
だが、結果は無残だったよな。
無残なものだったぜ。
(会場の一部から歓声)
なんか大統領というより、マフィアの親分に近い感じですが、ここでコルベアが再登場、トランプの口調を真似てこう言うのです。
オレたちに喧嘩を売ってくるような奴らは、痛い目にあうってことよ。
日本がいい例だろうが。
え? 何?
オレって今、どこにいるんだっけ?
あちゃ、やっちまった。ゴメンな。
https://www.youtube.com/watch?v=oFMQ-5s0f30&index=2&list=PLiZxWe0ejyv8DxlX0JnK11hmWXJ-BXGDL
・・・そうです。
トランプの論理にしたがえば、
〈日本はアメリカに逆らわないかぎりにおいて価値がある国にすぎない〉
のであります。
これぞアメリカ・ファースト。
わが国には昨今、アメリカが北朝鮮をつぶすことを期待し、「金正恩、ザマみれ」などと思っている方々がおられる模様。
しかしトランプがこのような発想でいる以上、それらの人々は
原爆投下も、
東京大空襲も、
降伏後の占領政策も、
すべて肯定しなければなりません。
アメリカを見くびった国が、痛い目にあうのは当然の報いなんですから。
だ・か・ら、
「右の売国、左の亡国」と言うのですよ!!
『右の売国、左の亡国 2020年、日本は世界の中心で消滅する』(アスペクト)
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実際、太平洋戦争で日本は(主として)どの国と戦ったか、キレイさっぱり忘れているというのでもないかぎり、
「金正恩、ザマみれ」系の人々は、こう主張しているにひとしい。
アメリカは、かつて日本を叩きつぶしたように、北朝鮮のことも叩きつぶしてくれるだろう。
やった、万歳! トランプさまさま! 日米同盟をもっと強化しよう!
もはや「自滅史観」としか呼びようがない。
いわゆる「自虐史観」など、これに比べればカワイイもの。
ついでにこの発想、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)で指摘した「知性のめまい」の見本のごとき例です。
だ・か・ら、日本は炎上すると言うのですよ!!
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総理との共同記者会見でも、トランプは見事にやってくれました。
ブルームバーグの記事をどうぞ。
トランプ米大統領は6日、都内で共同記者会見に臨んだ安倍晋三首相に、
日本経済は米経済ほど強くはないと述べた。
トランプ大統領は日本経済の好調をたたえた後、
「米経済ほど良い状態かどうかは分からない。違うと思う。この状態を維持するつもりだ。日本は2番目だ」
と安倍首相に語り掛けた。
安倍首相はややほほ笑んだが、両首脳が互いの友好と両国の強い同盟関係を強調した後だけに、やや気まずい空気となった。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-11-06/OYZIWR6JIJUR01
ただしこの記事では、発言のニュアンスが十分に出ていない。
英語版に基づいて忠実に訳せばこうなります。
こっちの経済ほど状態が良いかどうかは知らないね。そんなことはないだろう。
違うか?
で、オレたちは今後も、アメリカがトップの状態を維持してゆこうと決めたのさ。
あんたらは2番にしてやるよ。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-11-06/trump-boasts-about-u-s-economy-tells-abe-japan-can-be-no-2
「オレたち」にご注目。
アメリカ経済が世界最強の状態を維持することに、安倍総理も協力するはずだと、トランプは決めてかかっているのです!
続く記述も、忠実に訳せばこう。
安倍総理はかすかに微笑んだが、それは気まずい瞬間だった。
今回の訪日の間、安倍とトランプは、ことさら相手を友人と呼び合い、日米同盟の絆を強調していたのだ。
絆の強さはかつてないものだと、二人はそろって言明した。
その後に「日本は2番」発言が飛び出したのである。
いやあ、日米の絆は揺るぎないものだなあ!!
ちなみにこの発言、アドリブの可能性が高いとのこと。
トランプは土壇場になって、安倍総理、ないし日本を見下さずにはいられなくなったようです。
のみならず。
記者会見でトランプは、「日本はさまざまな兵器をアメリカから買うことになるだろう」という旨を発言、総理もこれを肯定しました。
ところが同発言、ニューヨーク・タイムズの記者が、安倍総理に行った質問にたいして、返事を横取りする形でなされたものらしいのです!
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171122-00000005-withnews-n_ame
「彼らの受けたパシリ扱いは、かつて誰も受けたことがないものと言わざるをえない」
──エドマンド・バーク
『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
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(※)引用した語句は242ページに登場します。
話を『ザ・レイト・ショー』に戻せば、
安倍総理がトランプへのお世辞を並べ立てたことについて、コルベアはこうコメント。
All right Shinzo, leave a few of the strokes on the golf course.
直訳すれば
分かった分かった、だがゴルフコースでも少しはストロークを決めてくれ。
英語の「stroke」には「(相手を)くすぐる、おだてる、なだめる、あやす」という意味があるので、
それをゴルフのストローク(=ボールを正しく打とうとしてクラブを振ること)とかけているのですが、
日本語にすると洒落が成立しなくなる。
正しく訳せばこうでしょうね。
失礼ながら、イバンカとバンカーの区別をつける方が先では?
ではでは♪
<佐藤健志からのお知らせ>
1)産経新聞の総合オピニオンサイト「iRONNA」に寄稿しました。
「韓国が『慰安婦の日』をわざわざつくった裏事情」
http://ironna.jp/article/8263
(※)タイトルは編集部の意向によるものです。内容的にはトランプ訪韓の際、元慰安婦のイ・ヨンスさんが晩餐会に出席したことを扱っています。
2)日本文化チャンネル桜の番組『FRONT JAPAN 桜』で、キャスターを務めました。共演は佐波優子さんです。
トピックス
・若者が政治に求めるのは「結果」である
・トランプ大統領は慰安婦に関心があったのか?
・国連の本質と本音~国連人権理暫定報告書
・左翼リベラル「改憲」への目覚め
https://www.youtube.com/watch?v=vsEUk5GMDn8
3)戦後脱却も、今のままではわが国のパシリ扱いを強める結果に終わるでしょう。
『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』(徳間書店)
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4)アメリカに喧嘩を売った国が、その後いったんは繁栄をつかみながら、堂々めぐりに陥って衰えていった記録です。
『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
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5)自滅史観や自虐史観の背後にあるもの、それは保守もリベラルもすっかり自己矛盾をきたしているという厳然たる事実にほかなりません。
『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
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http://amzn.to/1CbFYXj(電子版)
6)政治の目的は経世済民の達成です。社会を保守するとは、この状態を保ちつづけることなのです。物事が総崩れの様相を呈しているときこそ、基本に立ち返りましょう。
『本格保守宣言』(新潮新書)
http://amzn.to/1n0R2vR
7)「今後われわれは、みずからを守る必要に迫られる。ならばどうして、自分で自分を守ろうとしない? なぜ他国に依存したりしようとするのだ?」(186ページ)
今の日本は、お世辞にも「サムライの国」とは呼べませんねえ・・・
『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
http://amzn.to/1AF8Bxz(電子版)
8)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
ツイッター http://twitter.com/kenjisato1966
【佐藤健志】「米国に逆らうと日本のようになるぞ!」への3件のコメント
2017年11月29日 10:56 AM
いつも勉強させて頂いております。
その中で今回の記事について少しだけ、私が思ったことをただお伝えしたくコメントさせて頂く事にいたしました。
私ニューヨークに滞在している者なのですが、ニューヨークではコルベアの番組(コメディセントラル)がとても人気があります。彼はずっと、アメリカ共和党の政治家をコケにして笑いにして番組を作り上げてきました。
コメディアンとしてはとても面白い人と私も思います。でも今回のこのビデオに関しては私はトランプ大統領の横田基地でのスピーチを全て聞きましたが、特に不快感はなく、がしかしコルベアの方にむしろ不快感を抱きました。
アメリカが日本にしたことを許すわけではありませんが、やはりアメリカ民主党支持派の行動や言動を見ていると、どうしても同意は出来ません。
鯉のえさやりもアメリカのメディアで一時話題になり、結局はCNNの捏造だったこともわかっています。その画像も彼は使っていたので。。
お読み頂き有難うございます。長々と失礼いたしました。
2017年11月29日 1:30 PM
球筋
トランプさんのゴルフスイング、、
決して左に引っかけないように意識的にフェードボールを打つスイングをなさってますね。。
まあ 鷹派といわれる彼の球筋が左寄りなら クスッとしちゃいますけど、、、
ちなみに晋三君はトランプさんのキャディーがお似合いかと
そうそう
バンカーといえば
トランプさんが バンカーバスターなど使用する事態にならぬよう 祈念する今日この頃で ございます。。。
2017年12月1日 10:46 AM
まさに佐藤さんの右の売国左の亡国は今の日本を表してる本だと思います。日本にまともな戦略家がいないのが問題ですな。国外で頑張ってる戦略家はいますが。。
絶望的な状況の中で明るい兆しもあるそうで、ロシア政治経済ジャーナルの北野幸伯さんが久々に本を出されるそうです。
斬新的な内容で多くの日本人の心に刺激を与えた”クレムリンメソッド”から3年ぶりだから相当濃い内容になりそうだし、必読書になりそうな予感がしますね。