From 小浜逸郎@評論家/国士舘大学客員教授
2020年東京五輪を控え、外国人観光客をもっともっと迎えようではないかという機運が高まっています。
実際、ここのところ訪日外国人数はうなぎ上りに増えています。
2014年と2016年とを比較すると、わずか2年間で、1340万人から2400万人、倍率にして1.8倍という目覚ましさです。
http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_tourists.pdf
また先ごろ、2016年の「旅行収支」が1.3兆円の黒字を記録したことがマスコミによって報じられ、一般国民を喜ばせています。
なかには、日本はこれから観光立国を目指すべきだなどという、いささかおっちょこちょいなことを言いだす人も出てくる始末です。
たしかに、多くの外国人が(移民としてでなく)観光のために日本を訪れ、「おもてなし文化」のような日本のよいところを知ってもらうのは悪いことではありません。
また、外国人がたくさんお金を落として行けば、観光資源の豊富な地域は儲かるでしょうし、新たに外国人誘致のための観光開発に力を入れることで、経済波及効果が望めるかもしれません。
しかし、です。
こういう議論が、果たしてどれだけこれからの日本経済全体や日本文化全体に資するものかどうかは、もっと慎重に考えてみなくてはなりません。
まず、訪日外国人といっても、すべてが観光目的で日本に来るわけではありません。
観光目的は、全体の約6割にとどまります。残りはビジネスその他なのです。
http://bit.ly/2hkBlYK
ビジネスでは、利にさとい中国商人などが、巧みに利益をかっさらっていかないとも限りません。
次に、外国人の内訳ですが、韓国、中国、台湾、香港の4地域で、全体の73%を占めます。
欧米加豪の合計はわずか14%にすぎません。
しかも、2014年当時、前者は、67%、後者は18%でした。
http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_tourists.pdf
つまり、増えているのは、東アジアからの訪問者であって、ヨーロッパや英米圏から日本を訪問する人たちの割合は、むしろ減っているのです(絶対数は増えていますが)。
数字を大きく押し上げているのは、近隣諸国だということがこれでわかります。
私たちは、外国人と聞くと、何となく西洋人を思い浮かべてしまう習慣から抜けきっていないのではないでしょうか。
そうして、そういうお客さんがたくさん来てくれることはウェルカムだ、とどこかで感じていないでしょうか。
そこには、近代以降の西洋コンプレックスが微妙に左右していると思いますが、それはともかくとしても、韓国や中国がいまの日本にとって、たいへん不安定で剣呑な関係にあるということを忘れないほうがいいと思います。
筆者は別に、この両国の国民一人一人に対して嫌悪感情や差別感情を抱いているわけではありません。それは、筆者の勤務する大学での留学生に対する対応の仕方を見ていただければわかると思います。
しかし、実際に長野オリンピックの際に来日した中国人は、ああいう乱暴な振る舞いに及んだわけですし、最近は少しおとなしくなったものの、訪日中国人観光客のマナーの悪さは有名です。
さらに中共独裁政権には、国防動員法という法律があって、国外に滞在している中国人はすべて有事の際に政権の命令に従わなくてはならないことになっています。
違反すれば厳罰でしょうから、彼らは「便衣兵」としてゲリラ戦を展開する可能性が大きい。
また慰安婦問題に限らず、韓国の反日感情は尋常ではなく、サッカー大会やフィギュアスケート大会などにおけるヒステリックな反応、仏像の窃盗、靖国神社の放火、落書きなど、数々の狼藉ぶりは私たちの記憶に新しいところです。
日本なら確実に犯罪行為とみなされることも、本国ではとがめられるどころか、「もっとやれ」と言わんばかりの調子です。
こういう人たちが「訪日外国人」としてうなぎ上りに増えているからといって、外国人観光客が増えることはいいことだなどと単純に言えるでしょうか。
訪日外国人が増えることを素直に喜べない理由のもう一つ。
じゃんじゃん高級ホテルの建設でも進むなら話は別ですが、実際には、サービスの悪い民泊の増加による料金低下競争が起きています。老舗旅館などが経営難で閉鎖されていきます。
デフレ不況期にこういうことが起きると、移民による賃金低下競争と同じで、日本の経済全体に悪影響を及ぼすのです。
さらに、次の点が重要です。
「旅行収支」が1.3兆円の黒字と聞くと、それだけで日本経済の復活に大きく貢献するかのように思ってしまいます。
観光のにぎわいというのは目立ちますし、外国からたくさんの人がやってきて日本の土地を踏んでくれることは、日本が国際的に認知されて何となく繁栄につながるかのようなお祭り気分に国民を誘います。
しかし、「旅行収支」とは何でしょうか。
要するに、旅行によって外国人が日本に落とすお金(収入)と、日本人が外国に落とすお金(支出)との単なるバランスを示す数字です。たとえば、日本人がお金がなくて海外旅行にあまり行かなくなったり、海外でのビジネス活動に消極的になれば、それだけで黒字幅は増えます。
つまり外国人が多少の金を日本に落としても、それだけでは、必ずしもGDP全体の増加には貢献しません。一方で、国内需要にもとづく財やサービスの生産が大きく落ち込んでいれば(いるのですが)、「焼け石に水」というわけです。
では、訪日外国人(インバウンド)は、どれくらいGDPに貢献しているか。
先に述べたように、訪日外国人と訪日観光客とは同じではありません。後者は前者の6割程度です。
次に、旅行収支1.3兆円の黒字というマスコミの報道ですが、これって、GDPのわずか0.26%にすぎませんよね。
この程度の黒字幅をもって、何か日本の経済が好転しているかのような幻想を振りまくマスコミの罪はたいへん重い。
こうした報道は、政府が本来やるべきことをやらない口実として利用され、不作為の事実を隠蔽する効果を生むだけなのです。
日本は、「観光立国」などという、できもしない浮かれ騒ぎにうつつを抜かすのではなく、一刻も早くPB黒字化目標を破棄し、政府債務の対GDP比という正しい「財政健全化」概念を採用すべきです。
そのうえで、分母であるGDPを拡大させるために、政府支出を惜しまず、大胆な公共投資に打って出るのでなくてはなりません。
【小浜逸郎】日本人よ、外国人観光客誘致などに浮かれるなへの7件のコメント
2017年8月3日 8:43 AM
外国人であれ、日本国内で消費しているのであれば、消費項目に計上できるのでは?できないのであれば、旅行業自体まるっきりGDP的に無意味な事になりますから、GDP増加を国益を考えるのであれば、国策として禁止にするべきではないでしょうか。旅行業につぎ込んでいる生産資源や労働力その他生産能力が(デフレ期とはいえ)無駄になってしまいます。というか旅行サービスって輸出入に入るんですかね?外国で生産され外国で需要されたものでは?もちろんお土産代や食事代などは日本国内で生産された財を買われている事になるでしょうが。
また、国内需要とは国内で消費された合計金額の事を指すのでは?国内で生産された額、であれば、国内で生産された財を海外に売っても内需ということになってしまいませんか?
ご享受のほどよろしくお願いします。
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2017年8月4日 1:40 PM
貴重なご指摘、ありがとうございます。
私が間違っていたようです。
訪日外国人が日本で落とした金は、GNPには入りませんが、GDPにはカウントされるようです。
訂正してお詫びいたします。
なお、必要な訂正と改稿を施したものを新たに投稿いたしますので、そちらをご覧くださるようお願いいたします。
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2017年8月3日 12:15 PM
日本は輸出大国だ、とか観光立国だ、「地球」温暖化や「世界」遺産なんていうのは個人的には皆嘘だと思うが。GDPの0.26%でも観光で成り立つ国、と主張するのは一部の事実なので間違いではないと思うが良識を疑う、自分に都合の良い事実しか頭に入らないのだろう。「地球」全体で温暖化してるのではなく、部分的温暖化寒冷化の緩急高低差の激しい同時進行、くらいのものだろうか(想像だが)。その国の文化遺産を「世界」遺産に格上げすることでその背景にある歴史や文化が忘れ去られるのでは、世界観光資源なら儲からないなら自然消滅するしかない、とならんか。高度なシンボル操作とか交換に慣れた人は世界化というファッションや権威や流行で呼び集まるのだろうがグローバル化とは格差の拡大であるから日本人の観光客は減らないのだろうか。マスコミが外国人観光客に日本語で吹き替えをつけるのが気に入らない、外国人に親近感を持って貰うための印象操作だと思う(個人的なマスコミ嫌いが反映してるが)。個人間で仲良くするのは結構だが「隣国を援助する国は滅びる」とも云う、国家間で仲良くしようなんて発想は間違いの元だろう。国内法の背景や前提には歴史や文化慣習、価値観善悪があると思うがその上位である国際法の常識とは(暴力の)自由や(底辺への)平等で、資本家は労働者からより多く収奪する自由、労働者は自分の都合の良い国の福祉をフリーライドする、そんな市場原理主義、ビジネスに都合の良い前提があるのでは。
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2017年8月3日 4:19 PM
観光立国、貿易大国、グローバル重視。
安倍シンガポール首相ですね。。とりまきブレーンもそのレベルかと。
シンガポールならばGDPの4%!?
>日本なら確実に犯罪行為とみなされることも、本国では
>とがめられるどころか、「もっとやれ」と言わんばかりの調子です。
皆が言いたいことをズバッとおっしゃってありがとうございます。
明治生まれの祖母は彼らを嫌悪していました。でも、黙っていました。いろいろ知っていたのでしょう。が、それも「耐えがたきを耐え」に含まれたのでしょう。
戦後の好景気とバブル。かりそめの豊かさとその罰の20年は必然です。ほんとうの好景気と豊かな社会、それは我々の手で、これから造るものである、べき、だと思います。
二本の矢。それは手段。ただそれをやることすら許されない。
宿題が、未来を手段で片づけるのを、許さないのかもしれませんですね。
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2017年8月7日 7:12 PM
いつも拝見させていただいてます。先日、伊賀忍者屋敷に家族で観光に行ったのですが中国人の多いこと…別に悪気はありませんが90年代からの対中直接投資の結果、向こうの一部人間が豊かになる一方で雇用、技術の流出、そして市場をも献上した結果、国内産業の淘汰、衰退を引き起こしたという事実をどれだけの人が理解出来ているのでしょうか?さらにここで移民受け入れ拡大に舵を切ろうものなら現代日本人は心底のアホです。どうぞこれからも事の真相を暴き我々衆愚を啓蒙していただきたいと切に願います。
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