From 三橋貴明
【近況】
相変わらず、「おカネの話」がマイブームになっています。本日は「超マニアック」な話なので、読み飛ばされても結構です。
福本伸行の「賭博破戒録カイジ」において、主人公のカイジは帝愛の地下施設に落とされ、労働を強いられることになってしまいます。地下施設では、労働の対価として「ペリカ」という紙幣が使われています。
一カ月働き、地下落ちした「劣悪債務者」たちが得られる給金は、90000ペリカ(約9000円)。
もちろん、外出不可能であるため、放っておくと地下施設に「ペリカが溢れる」状況になります。
というわけで、地下では同じく債務者である「ハンチョウ」が、仲間と共に「ビール」「焼き鳥」「柿ピー」「ポテトチップス」などを販売し、他の債務者たちからペリカを「回収」します。
ちなみに、ビールは一本5000ペリカ(約500円)。地上と比較すると、二倍以上という阿漕な値段がつけられています。
一体全体、ハンチョウたちはどのように物品を仕入れているのかと、以前から疑問だったのですが、「1日外出録ハンチョウ」で明らかになりました。ハンチョウたちは、1日外出券(50万ペリカ)を使い、外出。外の卸売業者から、物品を仕入れていたのです。
無論、外の世界ではペリカは無価値なので、帝愛側に依頼し、ペリカを日本円に両替(両替手数料があるかどうかは不明)。日本円で物品を仕入、地下施設に配送してもらっていたわけです。
ハンチョウの手取りは、物品を売るという「小売サービス」で創出された付加価値(粗利益)の半分(残りは帝愛が徴収)。博打での収益(債務者間のペリカの移動)もあり、ハンチョウの手元には何と2000万ペリカ(!)が貯まっていました。
とはいえ、よくよく計算してみると、不思議です。帝愛の地下施設に落とされた劣悪債務者は、少なくとも100人はいます。月に一人、90000ペリカが支払われるとすると、一年間の帝愛のペリカ発行額は、90000x100x12で、何と1億800万ペリカ(日本円で1080万円)。ハンチョウたちが仕入れる物品には限りがあるため、放置しておくと、とんでもないインフレーションになりそうです。
というわけで、インフレを防ぐためには、まずはハンチョウたちが「需要を満たすに十分な物品を仕入れる」ことに加え(在庫管理が大変そうですが)、何らかの手段で高額のペリカを帝愛側が回収しなければなりません。
つまりは、売りオペレーション(日銀の国債売却)に近いシステムで、ペリカの価値を一定に保つ必要があります。
まさに、そのために用意されたのが「1日外出券」というエンターテイメント、あるいは「サービスの供給」なわけでございますね。1日外出券の販売価格は、一枚50万ペリカ。
カイジたちには「高根の花」あるいは「阿漕なやり口」に思える1日外出券の高額販売は、実は帝愛の地下施設の「経済」を健全に保つために、必要不可欠なのです。1日外出券は「高くなければならない」のでございます。
1日外出券がなければ、ハンチョウもあそこまで懸命にペリカを貯めこむことはないでしょう。何しろ、2000万ペリカを貯めこんだところで、それを消費する先がないという話になってしますのです。
実際に福本氏がそこまで考慮し、上記のシステムを組み立てたのかどうかは分かりませんが、「賭博破戒録カイジ」を読み、改めて「おカネとは何なのか?」について考えさせられたというお話。
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◆週刊実話 連載「三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』」 第226回「プライマリーバランス目標と経路依存性」
なお、週刊実話の連載は、以下で(二週遅れで)お読み頂くことが可能です。
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【三橋貴明】ペリカの経済学への2件のコメント
2017年6月18日 6:50 PM
ペリカの経済学
地下社会での給与に対する付加価値創造が言及されていませんね。生活保護のような単なる通貨発行によるバラマキなのか、農業生産、製造業、サービス産業、地下資源発掘等の付加価値を生み出す勤労なのかどうかが鍵ですね。もう一つ、ペリかを日本円に換金した地上社会に溜まるペリカは使えぬ通貨という事になるのか、説明がありません。結論としては新規通貨発行可能量は、新たに生み出された付加価値量と、災害、戦争等に依る資産の減損額との足し算になるのでしょう。現状米国ドルがその基本となっている国際社会なのですが、それを作り出す為の戦いが先の第二次世界だったのではないでしょうか。
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2017年6月19日 10:41 AM
架空通貨 ♪
ペリカ ガバス ゴールド ギル ベル ゼニー メセタ カノッサ など
さまざま あるようですが、、、
一言で申せば 「薬物」
快感を得るための道具かと。。
政府日銀の有する「オカネ」は 「アブラ」
経済の歯車を円滑に回すための 潤滑油
アブラが市中に出回ると 「ヤクブツ」になるのか しら ん ♪
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