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2019年2月1日

【施 光恒】公平でバランスの取れた国とは


From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学

おっはようございまーす(^_^)/

今日から2月ですね。早いなあ。もうすぐ春ですね。

私は野球が好きなので(今晩のアジアカップの決勝戦(対カタール戦)も楽しみですが)、2月になるとプロ野球各球団は一斉にキャンプインということで野球のニュースが増えるのでうれしいです。

ヽ(^。^)ノハジマルンゴ

野球といえば、少し前に、春の選抜高校野球の出場校も決まりましたね。3月23日からということですのでまだ少し先ですが、こちらも楽しみです。

選抜高校野球の「21世紀枠」での出場校も選ばれました。今年は、石岡一(茨城)、富岡西(徳島)、熊本西(熊本)の三校です。その報道のなかで印象深い言葉がありました。

21世紀枠の選考委員の一人、あさのあつこ氏(作家)は、茨城県立石岡第一高校の選出理由として下記のように述べたそうです。

「文武両道の『文』を進学率や点数だけでなく広く多面的に求められる時代を感じた。それにふさわしい学校が選ばれたと思う」とコメントした。大学進学率とは違った、農業を通じた「新しい形の文武両道を示す可能性がある」と評価された。

(『日刊スポーツ』2019年1月25日)

https://www.nikkansports.com/baseball/highschool/news/201901250000861.html

石岡一校は、農学校を母体に開校し、普通科だけでなく、造園科や園芸科もある学校です。部員はいずれかの学科に属しており、実習で部員全員が揃いにくいなどのハンディキャップを、短時間ながら工夫を凝らした練習でカバーしているそうです。そういう点が、「農業を通じた『新しい形の文武両道を示す可能性がある』」と高い評価を受けたとのことです。

この観点、大切だと思います。

21世紀枠は、これまでもよく「文武両道を実現しているから」ということで選ばれることがありました。ですが、たいていの場合、選出校は進学校で、野球と受験勉強を両立しているからという理由が多かったように感じます。文武の「文」が進学のための勉強のイメージだったんですね。

当然と言えば当然ですが、「文」には進学を目指した学習だけではなく、農業や工業、商業、家政などの実業系の学習も含まれます。あさのあつこ氏の言葉は、「文」「勉強」「学習」のイメージが近年、偏りがちだったことに気付かせ、実業系の学習の大切さを再確認させてくれました。

そのほかの先進国でも同様ですが、日本でも、近頃、高学歴・高所得で大都市に暮らす人々の声が政治の場で大きな力を持ち、その反面、庶民の声、地方の声が反映されにくくなってきています。

最近よく本メルマガなどで言及しますが、英国のジャーナリストのデイヴィッド・グッドハートは、英国の近年の国民世論は「エニウェア族」(高学歴・高所得で都会に住んでいる根無し草的なグローバル・エリート)と、「サムウェア族」(比較的低学歴・低所得の地方暮らしの庶民層)との二つに分断されていると指摘します(Goodhart, The Road to Somewhere)。

そして、エニウェア族の人々は数で言えば英国民の四分の一弱と少ないですが、財界やマスコミをはじめとする有力な業界に属している者が多いので、彼らの声は政治に反映されやすいと言います。その一方、サムウェア族は、数としては国民の半数以上で多いのにもかかわらず、彼らの声は軽視されがちで、なかなか政治の場に届かなくなっていると論じます。

この国民世論の分断の姿は、英国だけでなく、先進各国で少しずつ違いはあるものの、ほぼ共通しています。

例えば、フランスの「黄色いベスト」運動の背景にあるのもまさにこの構図です。

エニウェア族の典型のようなマクロン大統領の政権が、パリなどの大都市に住む高学歴・高所得の利益に偏った政策ばかりどんどん進めています。「黄色いベスト運動」の背景には、庶民、特に地方暮らしの庶民のマクロン政権に対する反発があります。

日本の政治も、最近、大都市の高学歴・高所得の人々の声が次第に一方的に強くなってきています。対照的に、地方の声や学歴や所得がそれほど高くない人々の声は、通りにくくなっています。

例えば、今日(2月1日)から、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が発行します。「めでたいことだ」「悪しき保護主義に対する自由貿易の勝利だ」のように報道されることが多いですが、日本の農業、特に酪農などは大きな打撃を受けます。農業が重要な産業である地方の経済への影響は、あまり考慮されません。

また、昨日(1月31日)、総務省が公表した2018年の人口移動報告によると、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)は転入者が転出者を14万近く上回ったそうです。前年よりも1万4千人ほど多く、一極集中がますます拡大しています。

(「東京圏の一極集中拡大、転入超過」「市町村の7割、人口流出」『共同通信』2019年1月31日配信)

https://this.kiji.is/463590480486368353?c=39546741839462401

一極集中が加速しているのは、地方の声が政治にあまり反映されなくなり、地方が衰退し、暮らしにくくなっているからにほかなりません。

他にも、これは「大都市 vs. 地方」というよりも、「投資家や企業 vs 労働者」という構図ですが、外国単純労働者受け入れ問題でも同様です。受け入れ推進派が第一に挙げる理由は「人手不足」ですが、三橋さんがよく指摘しているように、労働者にとって「人手不足」とは、深刻な社会問題どころか、本来、賃金上昇や正社員化が見込まれる望ましい事態なのです。

ですが、近年の報道では、「人手不足」だから外国人単純労働者受け入れは必然であるかのような報道ばかりが目につきます。改正入管法の議論も、結局、受け入れ反対派の声は十分に吟味されず、非常に短い審議時間で可決されてしまいました。投資家や企業の側の声ばかりが代表され、彼らの利益にのみ都合のいいようにルールが不公正に変えられてしまうのです。

消費税率の引き上げ問題でも類似した構図が見られます。政府や財界は、財政危機だから消費税は上げざるを得ないと言いつつ、法人税は下げるのです。これも、グローバルな投資家や企業関係者など、エニウェア族の声が強く、庶民の声が弱くなってしまった結果の一つです。

グッドハートは、サムウェア族と比べ、エニウェア族の声ばかりが過度に政治に反映されてしまう偏った状態を是正しなければならないと述べ、いくつかの政策提案を行っています。

例えば、現在の英国では、若者への援助は、大学進学者に偏りがちです。大学には多くの助成金が国から投入されるなど、学費が比較的安く済んでいる一方、高等学校を卒業したあと、専門学校で学ぶ者や就職する者への助成はあまりありません。

グッドハートは、この不公平な状態を変えるため、大学に進学する者、専門学校に行く者、就職する者に平等な支援がなされるべきではないかと主張します。

あるいは、家族に関する政策でも、次のように指摘します。

「家族政策では、エニウェア族の共働き夫婦の利益が支配的であり、そのため、児童手当の拡充や職場での平等という政策に重きが置かれてきた。しかし、調査が明らかにするところによれば、子どもが小さい時、ほとんどの女性は働きに出ることをのぞまない、少なくともフルタイムで働くことを望まない」(p. 231)。

ですので、グッドハートは、税制における家庭の意義をかつてのように重視するようにし、子育て中の女性(あるいは男性の場合も少数ながらありますが)を援助するようにしたらどうかと提起します。つまり、配偶者控除を認め、拡大すべきだということでしょう。

そのほうが、低所得家庭の金銭的負担を軽くしたり、少子化の流れを止めたりすることにつながるのではないかと論じます。

このあたりのグッドハートの議論、面白いですね。

日本では、最近、大学無償化の政策が大きな話題となりますし、配偶者控除や家族手当なども撤廃すべきだとよく論じられます。グッドハートは、正反対の提案をし、そのほうが公平、かつ安定した社会を作ることができるから良いというのです。

昨夏の甲子園で、金足農業高校の活躍があれだけ注目され、話題になったのは、もちろん、選手自体の魅力や試合の面白さもありましたが、そのほかにも、多くの日本人が、最近の日本社会はどこか偏ってきているのではないか、正しいあり方ではなくなっているのではないか、と感じているということも一因ではないかと思います。

地方経済が元気で、農業などの一次産業も活発でなければ、国としてのバランスが悪い、どこかおかしくなってしまう、と多くの日本人が半ば直観的に感じているからではないでしょうか。

こういう素朴な感覚をもっと大切にすべきではないかと思います。

野球の話から長々と失礼しますた…

<(_ _)>




<施 光恒からのお知らせ>

明日、「学ぶカフェ」という勉強会で講師を務めます。

お時間がございましたら、ぜひお越しください。

【第28回 学ぶカフェ】

日時:2019年2月2日(土)15時~17時

場所 :千鳥饅頭総本舗 呉服町本店 一階会議室

(福岡市博多区上呉服町10-1 

博多三井ビル1F)

テーマ :「日本語が危ない――ことばの大切さを改めて考える」

概要:

「学ぶカフェ」では、以前も英語教育の問題、

日本語と日本文化とのつながりなどを扱ってきました。

今回も、あらためて、言葉の大切さを考えてみたいと思います。

 子どもたちが言葉を身に付けるのに大きな役割を果たす

学校での国語教育を取り巻く現状は、あまりよくありません。

例えば、来年4月から小学校での正式教科としての英語がはじまります。

「日本語よりも英語」という風潮は今後、さらに高まるでしょう。

新しい学習指導要領のもとでは、高校の国語科で文学を扱う時間は大幅に削減されます

(その代わり、契約書や法律の条文を読むような国語の授業が増えそうです)。

学生の読書時間も、近年、減ってきています。

そのようななかで、日本語の大切さをあらためて認識し、

言葉や文化を次世代によりよきかたちで残す方策について考えてみたいと思います。

講師:施 光恒(せ てるひさ) 九州大学大学院 准教授

会費:一般 2500円(お茶、お菓子代含む)、 学生 無料(筒井学生奨学金のため)

申し込み:

manabucafe@gmail.com

お名前、連絡先、学生であるかどうか、を書いてお申し込み下さい。

fbイベントページからのお申し込みも可。

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【施 光恒】公平でバランスの取れた国とはへの4件のコメント

  1. たかあき より

    公平でバランスの取れた社会
    多様性を認める社会
    軍国主義の時代を経験してきた日本にとっては重要ですよね
    ほっこりしますた

    返信

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  2. ぬこ より

    日本の政治やメディアを大きく動かすエニウェアの在日を動かすのが、エニウェアの改宗したユダヤでしょ?
    昔GHQ、今CSIS
    いい加減にしてはどうなんですか?
    日本人ってユダヤ批判できない何かあるんですか?
    ナチスのホロコーストからアシュケナジを救ってきたのは日本でしょ?
    そのお礼がマンハッタン計画やリップルウッドの長銀買収や郵政民営化や三角合併や派遣解禁等の規制緩和に伴う自殺量産なんですか?
    日本人は奴らの事をタブーにする必要のない唯一の民族なんじゃないですか?
    ロスチャイルド家と懇意にしていた渡部昇一さんも言ってましたけど。
    日本のエリートは彼等を批判できない何かがあるんですか?

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      1. N.Yorifuji より

        施 先生の「英語化は愚民化」読みました。

        僕も小学生以下への英語教育に絶対反対です。「週刊東洋経済」にも「有害無益」という厳しいタイトルが踊ったことがあります。

        抑も自国語の語彙が貧弱な状態で外国語なんか勉強したら「適切な訳語」がなかなか見つからず、上手く行く訳が無いのに、「気違い沙汰」だとすら思います。

        ワープロソフトに依り難しい漢字がじゃんじゃん画面に出る時代、逆に同音異義語、類義語対義語の教育こそ強化しないと「怖い」のではないでしょうか?

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  3. 神奈川県skatou より

    遅レスですみません。
    先生の長文待ってました~!

    人を測るって、難しいですよね。
    文武の文を進学率でなく、農業を通じた新しい形の、というお話、とても重要かつ、未来を感じさせる判断だと思いました。

    昨今は大学入試改革だか高大連携の見直しだか、学ぶこと、評価することを見直す動きがあるようで、そんな大きな変化に、むかし点数比較を容易にするために某学習塾が編み出した偏差値なるものに匹敵する、新時代の客観評価を求める動きもあるようです。

    でも、客観評価という(実は見当ちがいな)こだわりが、ひとつのものさしですべてを測ってしまうという哲学的?問題を取り残して再び推進しようとしているのならば残念なことであり、あるいは人の学ぶ力というものに対して、本質的矛盾をはらむ危険性があるとすれば、膨大な取り組みも失敗に終わるやもしれません。

    そんな不安を感じている今、今回のような選定の姿勢は、実はどこかで大事なことが、みなうすうす分かっているのかなと、ちょっと素敵な気持ちになりました。

    都合、いろいろ下を向く日々でありますが。

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