From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)
先々週は青木泰樹さんより、「内閣府への助言「全要素生産性(TFP)を上昇させる方法」」
と題して、潜在GDPの算出要素である全要素生産性も、そして資本や労働の投入量も、結局は総需要によって決定されているという議論が提起されました。
https://38news.jp/economy/10190
本稿ではそれを踏まえ、資本や労働の投入量が総需要によって決定される実態と、その帰結として導かれる、政府支出の動向が一国の経済成長を規定するメカニズムを、データと共に解説してみたいと思います。
青木泰樹さんは「経営者であればだれでも、需要予測をして、生産計画を立て、そして諸資源の投入量を決めているのです」と述べられました。
そもそも、なぜ企業は生産活動を行うのでしょうか。
端的にいえば、生産した財やサービスを販売することで、お金が儲けられるからです。
主観的には「自分の事業目的は金儲けではない」と思っている経営者であっても、利益が得られなければ資金繰りが続かなくなり、事業の存続自体が困難になることから、最終目的ではないにせよ、結局は相応の利益獲得を目指さざるを得ないでしょう。
では、想定していた販売額が実現しなくなったらどうなるでしょう。
これまで通り設備投資や雇用にお金を投じていても、見込んでいたほどの売上は得られず、残った利益は事業存続には不十分で、場合によっては倒産の危機に瀕してしまう。
背に腹は代えられず、おのずと設備投資や雇用の縮小に向かうことでしょう。
経済全体がこうした状況に陥ったのが、名目経済成長が止まった1998年以降の日本。
名目GDPとは金額ベースでの国民全体の所得であり、企業の利益もその一部に過ぎません。
名目経済成長がないところには、利益のパイの奪い合いこそあったとしても、全体としての利益成長の機会は存在しないのです。
そうした状況では売上の見通しと共に、企業の設備投資意欲が低下します。
稼いだ利益以上の実物投資により、損益は黒字でも資金収支は赤字だったのが1997年以前。
ところが名目経済成長が止まり、デフレに陥った1998年以降は負債の返済が優先され、「貯蓄投資バランス」と呼ばれる企業部門の資金収支は、大幅な黒字に転じています。
https://twitter.com/sima9ra/status/844459507996643329
対して一時的な不況期を除き、資金収支が概ね赤字で推移しているのがアメリカ企業。
アメリカ企業というと自社株買いはじめ、「実物投資よりも金融投資」といったイメージをお持ちの方もおられるかもしれませんが、それは個別企業毎の、いわばミクロレベルの話。
経済全体では利益以上の実物投資を行うことで、産業の新陳代謝が進んでいます。
むしろ(他者から見れば金融資産である)負債への資金充当(いわば投資)を優先し、実物投資を怠って産業力を衰退させてきたのは日本企業の方なのです。
そして1998年といえば、名目賃金・実質賃金とも長期的な下落トレンドに転じた年。
こちらは企業の労働投入意欲、言い換えればヒトへの投資意欲が低下した結果。
そうなれば家計所得が伸び悩み、民間消費は必然的に停滞します。
https://twitter.com/sima9ra/status/844534208504639488
このように、民間投資や民間消費を決定するのが企業の生産意欲であり、その生産意欲を決定するのが(民間投資や民間消費もその一部である)総需要だとすると、経済全体への貿易のインパクトが小さいという前提に立ち、論理的、構造的に考えれば、経済における残りの需要項目である政府部門の支出、すなわち財政支出の伸び具合が、一国の経済成長率をほぼ決定してしまう、と結論せざるを得ないでしょう。
そのことを端的に裏付けるのが、拙著『積極財政宣言』にも掲載した下記図表なのです。
https://twitter.com/sima9ra/status/844461887446306816
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