From 三橋貴明@ブログ
さて、日本銀行の資金循環統計(16年末 速報値)が出ましたので、国債保有者内訳をアップデートしたいと思います。果たして、日本銀行の保有の割合は、どこまで増えているのか?
【2016年末(速報値)日本国債保有者別内訳】
http://mtdata.jp/data_55.html#2016JGB
というわけで、2016年末(速報値)段階で、日本国債の38.71%が日本銀行保有となっています。17年春頃(今だけど)には、四割を突破していると予想します。
それよりも、気になることがあります。
2016年9月末(速報値)の日本国債の発行残高は971兆円。そして、16年末(速報値)が958兆円でした。
国債発行残高が減っている!
速報値同士の比較なので、確報値では多少のズレは出るでしょうが、16年9月末からの四半期で、日本政府が「借金返済」をやった事実は動かないでしょう。
国債発行残高が減ると、十分な財政出動が行われていないことに加え、パックマンの口が開き、日銀のXデイが早まってしまうという問題が深刻化します。
2016年9月末(速報値)で、預金取扱機関(銀行)の保有国債残高は215兆円。それが、2016年末(速報値)には203兆円にまで減ってしまいました。
四半期で10兆円強の国債が、預金取扱機関のバランスシートから消えた。
ということは、一年で40兆円。一年後、日本の預金取扱機関の保有国債残高は150兆円前後にまで縮小し、強制的な量的緩和の終了、すなわち日銀のXデイが金融市場的には「見えてくる」事態になるのではないかと予想します。
もちろん、政府が国債を金融市場に供給すれば済む話ですが、今のところその兆候は見えません。
興味深いことに、安倍総理大臣は昨年秋、複数の与党議員を前に、
「デフレ脱却を考えると国債を返し過ぎだ。国債は実質的には日銀が全部引き受けている。いまはマイナス金利だし、実質的に借金は増えない」
と、語ったことが、3月7日の日経新聞で報じられています。
『描けぬ出口(2)シムズ理論の甘い誘惑 消える?「20年度黒字」看板
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO13744900X00C17A3MM8000/
「デフレ脱却を考えると国債を返し過ぎだ。国債は実質的には日銀が全部引き受けている。いまはマイナス金利だし、実質的に借金は増えない」。昨年秋、安倍晋三首相は複数の与党議員を前にこう漏らしていた。
年明け1月20日の施政方針演説。第2次安倍内閣発足以来4年続いた「約束」は消えた。2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化だ。(後略)』
上記の発言が正確だとすると、総理は正しい認識をお持ちという話になります。後略部には、
「政府と日銀は親会社と子会社みたいなもの。連結決算で考えてもいいんじゃないか」
という、総理の発言が載っています。
それにも関わらず、16年10-12月期も「国債を返した」可能性が、速報値の数字を見る限り濃厚なのです。
結局、一部の政治家が「正しい認識」を持ったとしても、実際の政治は動かない。むしろ、逆方向に突っ走るというのが、現在の日本の宿痾なのでしょう。
日本経済新聞の記事にしても、もちろん日本政府と日本銀行を統合的に考える統合政府に「批判的」な論調になっていました。今更、
「日本銀行は日本政府の子会社なので、日銀が国債の四割を保有する以上、日本政府に財政問題などないのですよ」
と言われても、戸惑う国民が「圧倒的多数派」でしょう。
だからといって、言わなければ何も変わりません。正直、わたくしが「国の借金問題の嘘」を指摘し始めた十年前(もう十年!)と比較すると、状況は間違いなく「改善」の方向に向かっています。
とはいえ、解決には全く至っていません。
それでもまあ、十年前と比べると、随分と状況は改善したのは間違いありません。この流れを止めない限り、やがては「解決」に届くと信じ、進むしかないのです。
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