日本経済

2016年3月8日

【藤井聡】「ゼロ金利」活用戦略 ~「政府プロジェクト」「ゼロ金利融資」「ゼロ金利投資」の三大作戦を推進せよ!

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授 

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2016年2月4日、日本はTPPに署名した。

まだ国会での批准手続きが残ってはいるものの、これによって日本はグローバル投資家の狩場となることがほぼ決定してしまった。「月刊三橋」では、以前からTPPに潜む数多くの問題点を指摘してきたが、いまだにTPPの恐ろしさを理解していない(できない/しようとしない)人たちも多い。

伊藤元重氏をはじめ、多くの人はTPPの内容を知らずに議論している。自動車の関税が撤廃されて、日本の自動車メーカーの輸出が増えるだろうと期待する声もあったが、蓋を開けてみれば、アメリカはSUV車の関税を29年間維持するなど、日本が期待する経済効果はほとんど見込めない内容になっている。

TPPはアメリカの巨大グローバル企業に日本という市場を差し出すための条約だったことが明らかになったのだが、そのことには目を瞑り、「これでアメリカとの安全保障が強化された」などと意味不明な理解でTPP賛成を叫ぶ寝ぼけた人たちに、三橋貴明が目覚めの鉄槌を振り下ろす。

『月刊三橋』最新号
「TPP大検証〜日本を貧困化させる新たなる不平等条約なのか?」
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php
※このテーマを聞くには3/10までにお申込みください

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(1)今こそ、「“ゼロ金利”活用戦略」を!

黒田日銀総裁の「マイナス金利」策には賛否両論が出されていますが、「長期金利」がゼロ近辺をさまよっている、という状況そのものは否定しようのない現実です。

一方で消費増税以後、日本経済のGDP成長率、実質消費、実質所得が下がり続ける中、強力な景気刺激策が求められるに至っています。

そうした国内状況に呼応するようにして、国際的にはG20が世界経済のために強力な財出による景気刺激策を求め、
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016022701001798.html

IMFもそうした財出による景気刺激策を強力に支持し、

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201602/2016022500147

OECDが日本に名指しで「緊縮財政」の見直しと「積極財政」を提唱している今日―――
http://jp.reuters.com/article/oecd-outlook-idJPKCN0VR157

日本は今、大規模な財政政策に基づく景気刺激策が是が非でも求められています。

折しも中国は、「年34兆円を5か年で、交通インフラ投資を行う!」という、筆者の主張である「国土強靭化で10年で200兆円の財出」という構想を、はるかに上回る「デフレ下での正しい経済対策」である公共投資プランを発表する状況にも至っています。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM05H6T_V00C16A3MM8000/

この中国のプランは、アメリカとの協調…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM29H65_Z20C16A2FFB000/

の下進められようとしていますから、このまま我が国だけが何もしなければ、世界経済牽引のアメリカのパートナーは「日本」ではなく「中国」(!)となってしまうことすら危惧されます。

こうした、国内外の状況、そして、「日本の外交戦略的状況」を全て踏まえれば、好むと好まざるとに関わらず、今、マイナス金利政策によって創出されている「ゼロ金利」の状況を活用し、「政府」が10兆円、20兆円規模で大量資金を調達し、それに基づいた景気刺激策を図ることは極めて理性的な方針である―――と筆者は考えています。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/02/23/fujii-184/

つまり、この様なゼロ金利、マイナス金利の状況で、政府が大量の資金調達を躊躇し、中途半端な景気刺激策をしか実施しないという「緊縮」的方針には、何ら理性的な合理性など存在しないと、筆者は確信しています。

ついては本日は改めて、このゼロ金利の状況を活用した「景気刺激」を図る戦略を、

「ゼロ金利」活用戦略

と呼称して、そのための「3つの作戦」を簡単に解説したいと思います。

(2)作戦1:政府プロジェクト推進作戦

景気刺激策の王道は、「公共投資」です。

つまり、「収益性」を考えることを宿命づけられている民間主体にはなかなか手が出せない、「収益性は乏しいが、公益を増進させる事業」を、「政府」が短期的な採算性は一旦さておき、公益増進のための投資、すなわち「公共投資」を行うことが、民間投資が冷え込んだデフレ状況下では、最良の景気刺激策となります。

例えば、堤防や一般道路、そして、教育等の諸事業は、必ずしも収益性は高くありませんが、公益を増進すると同時に、長期的な「経済成長」を促すものです。

そのためにも今、一般的な国債(建設国債、および、特例国債)を大量に発行し、こうした事業を迅速に推進していくことが求められています。

一方で、こうした「ゼロ金利状況」では「短期的には使い切れないくらいの水準」で例えば、10兆円、20兆円規模で調達し、残った資金を「基金化」して、数カ年かけて執行していく事も合理的になります。

なぜなら、金利が仮に「2%」しかなかったとしても、「10兆円」を30年間借りてしまえば、「約18兆円」を返さなくなってしまいます。

しかし、金利が「0%」だったら、30年たっても返す金額は10兆円で済むのですから、ゼロ金利の内に10兆円借りれば、政府は「8兆円」も、得をするのです!

だからこそ!!

ゼロ金利の内に大量の資金を調達し、それを数カ年かけて執行していくことは、極めて合理的な財政政策となるのです。

だからこそ筆者は、このゼロ金利の内に10〜20兆円規模で資金を調達し、ワイズスペンディングで合理的な公共投資を理性的に進めていくことを、強く推奨したいと思います。

(3)作戦2:ゼロ金利「融資」作戦

ただし、全ての事業を政府が行う必要は、ありません。

日本国内には、「公益性の高い大規模投資・事業を行う民間主体」が様々に存在しています。

例えば、リニア新幹線を8兆円規模で整備しようとするJR東海や、上越や東北の新幹線を1兆円規模で維持補修しようとしているJR東日本を筆頭として、民間で空港を運営しようとしている企業や、エネルギービジネスのために大規模な「投資」をしようとしている民間企業などがそれに該当します。

そうした企業は、もちろん、できるだけ低い金利で資金を調達したいと考えています。

そうした企業に対して、政府が「ゼロ金利」で資金を調達した上で、その資金を「融資する」(=貸し出す)というアプローチを採用すれば、それら企業は、「ゼロ金利」で資金が調達可能となりますから、短期的な投資を、民間主体が大量に推進していく状況となります。

ちなみに、民間企業であれば、どれだけの大企業であっても、かつ、この現状であっても「ゼロ金利」でカネを借りることは容易ではありません。

だからこそ、政府がいわゆる(プライマリーバランス問題の対象外となる)「財投債」を発行して資金調達をして、その資金をそれら企業に貸し出していけばよいのです。
(※ http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/02/23/fujii-184/ を参照ください)

そうすれば、短期的な大規模投資が「民間主導」で(政府支援の下で)推進されていく事となります。

ここでポイントとなるのもやはり、「ゼロ金利」という状況です。

そうした状況がなければ、政府の「財投債」の発行を通して、そうした大規模な民間投資を促していくことなど不可能―――なのですから、こうした「ビッグビジネス」を、官民協調で(それこそ、数兆円〜10兆円規模で短期的に)進めていく事を、強く推奨したいと思います。

(4)作戦3:ゼロ金利「投資」作戦

ただし、「作戦2」に該当する「公的事業」に携わっている企業は、限られているのが実情です。

とはいえ、そうした「公的事業」よりはさらに「リスク」は高いものの、「ハイリターン」の技術的可能性を持つ企業は、「技術水準が高い日本国内」には潜在的には大量に存在しています。

そうした「企業」には、民間の金融企業は、なかなか「リスク」の存在のために大量に資金投資ができない――というのが現在のデフレ状況です。

そこで、日本国内で最強の基礎体力を持つ「政府」が、作戦2でも採用した「財投債」の発行を通して、「ゼロ金利」の状況を活用して大規模に調達し、そうした「リスクはあるものの、極めて有望な(研究開発やイノベーションに携わる)企業」に、融資ではなく、

「投資」

していくというアプローチを採用すれば、(失敗するビジネスもあるでしょうが)トータルとして、大きな投資効果が得られることとなります。

もちろん、この「投資」にあたっては、有能な「目利き」、すなわち、「ファンドマネージャー」の存在が必要になりますが、それについては、政府であらゆる情報を集めながら選定していくことが必要となることは論を待ちません。

・・・

以上が、当方が想定する「ゼロ金利」活用戦略の主要3大作戦、すなわち、

(作戦1)政府プロジェクト推進作戦
(作戦2)ゼロ金利「融資」作戦
(作戦3)ゼロ金利「投資」作戦

の概要です。

もちろん、この3大作戦を効果的に推進していくためには、日本国民が持つ最高の「英知」を、官民問わず結集する事が必要不可欠です。

そして国民の英知の結集の「中心核となるべき存在」は、内閣であり、その中心たる内閣総理大臣をおいて他にありません。

この国民全てに関わるチームジャパンによる大国家プロジェクト「“ゼロ金利”活用戦略」が最良のリーダーシップの下、果敢に推進され、成功を収め、日本経済を、そして世界経済を救う契機とならんことを、心から強く、祈念いたします。

PS 本稿で論じた発想こそ、単なる防災事業を超越した、筆者が考える真の「強靭化論」です。
http://www.amazon.co.jp/dp/4166608096
http://www.amazon.co.jp/dp/4062175029

ーーー発行者よりーーー

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2016年2月4日、日本はTPPに署名した。

まだ国会での批准手続きが残ってはいるものの、これによって日本はグローバル投資家の狩場となることがほぼ決定してしまった。「月刊三橋」では、以前からTPPに潜む数多くの問題点を指摘してきたが、いまだにTPPの恐ろしさを理解していない(できない/しようとしない)人たちも多い。

伊藤元重氏をはじめ、多くの人はTPPの内容を知らずに議論している。自動車の関税が撤廃されて、日本の自動車メーカーの輸出が増えるだろうと期待する声もあったが、蓋を開けてみれば、アメリカはSUV車の関税を29年間維持するなど、日本が期待する経済効果はほとんど見込めない内容になっている。

TPPはアメリカの巨大グローバル企業に日本という市場を差し出すための条約だったことが明らかになったのだが、そのことには目を瞑り、「これでアメリカとの安全保障が強化された」などと意味不明な理解でTPP賛成を叫ぶ寝ぼけた人たちに、三橋貴明が目覚めの鉄槌を振り下ろす。

『月刊三橋』最新号
「TPP大検証〜日本を貧困化させる新たなる不平等条約なのか?」
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  1. 學天測 より

    う〜ん。忙しいので先生に申し上げる事は一言。アメリカはかつては日本に関空の様なまともな国際空港が少ない事を非関税障壁と言ったそうです。つまり宗主国様が望むのは我が国の内需拡大です。新幹線も含めまして、公共事業の内需拡大効果を沖縄県知事の様に頭を飛び越しアメリカ側にアピールする事は出来ないのでしょうか?もはや、なりふり構っていられなないでしょう。そういう観点から、媚米派の連中に外圧をかける事は出来ないのでしょうかと言う事ですw

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  2. 拓三 より

    つまり、この数年前までどれだけ建設業界がブラックだったのか理解してくれました? これでもまだ職種別賃金でみたら平均よりまだまだ低いのです。貴方は数年前までの建設業界が正しい事を前提に考えていませんか?そうならば貴方はデフレ脳に侵されています。

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  3. 日本晴れ より

    藤井先生の提案は至極真っ当な物で夢のある話だと思います今こそ財政出動すべきだし、金融緩和だけじゃデフレ脱却も成長率もとも不十分です。自民党や安倍政権の財政出動拒否は全く持っておかしいと思います。藤井先生の案が自民党や安倍政権で採用される事願ってます

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  4. penname より

    >「公共投資」を行うことが、民間投資が冷え込んだ・・消費税増税後、個人消費資質の落ち込みにより、景気は良くないものの、企業設備投資はまずまず、建設に関しては、2015年暦年、官民全体では建設受注は増えており悪くはない。民間土木や民間賃貸住宅は大きく伸びているのではないかと思います。賃金も5年スパンでは製造業0.4%の伸びに対し、建設業7.1%の伸びを示している一方で、年末年始辺りの労働需給は低下はしていたものの、昨今、有効求人倍率ベースで躯体工事8%前後、土木3%前後とやや高めであり、首都圏マンション前年比25%高などの問題も。(因みに製造業技術者、機械組立の有効求人倍率、0.5前後)

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  5. penname より

    まとめると、個人消費中心に日本経済は落ち込み景気は良くない状況ではあるものの、建設業全体では決して景気は悪くはなく、果たしてこの状況下で、公共投資のうちでも、道路・建物などの建設を行うのがベストの対策であるのかは、私には解らないといった状況であります。政府プロジェクト、公共投資でも、防衛、航空・宇宙、IT、サイバーテロ対策、ロボット、医療・バイオなどを中心で!?

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  6. penname より

    >一方で、こうした「ゼロ金利状況」では「短期的には使い切れないくらいの水準」で例えば、10兆円、20兆円規模で調達し、残った資金を「基金化」して、数カ年かけて執行していく事も合理的になります。同じ内容でも「基金化」ではなく、「ファンド化」とした方が、一般受けするのではないかと思いました。

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  7. 学生支援に大胆な施策を! より

    ゼロ金利の下で、政府指導の大規模な施策が要求されるが、従来型の天下りの先の為の公共投資では問題である。ここで藤井先生の主張される交通インフラや国土強靭化のための積極投資の必要性を粘り強く主張する必要がある。それと共に、今回は、教育インフラ(育英資金給付制度)の整備も必要である。具体的に言えば、育英資金の無利子化、給付型への大胆な移行である。教育における受益者負担主義の徹底による教育資金の高負担により、子供のいる家庭と子供自身が置かれた現状は厳しいものがある。塾代や模擬試験など公教育を補完する教育関係諸費の負担や大学等高等教育(多くの分野における社会参加の為の条件)を受けるための授業料等の教育ローンの負担の為、実質賃金低下の中で、多くの家庭(特に、シングルマザーの家庭等)や若者は逼迫している。格差拡大の中で、貧困家庭の教育環境は劣悪で、これが学力低下や学校の荒廃、問題行動の深刻化の背景となっている。この現状は、特に大都市地区では、大阪府等に著しい。大阪では、不況の中、大手電機企業の衰退により、地場の中小企業や町工場にまで深刻な将来不安の中にある。大阪府の奨学金の制度はまだ不十分で、支援機構の育英資金も無利子の枠が狭く、進学を目指す場合も、将来、高額なローンが世帯形成世代を襲うこととなる。少なくとも無利子型の育英資金を早急にこの期に拡大、充実させてほしい。政府は、ある意味、簡単なことで、数年後の世帯形成の増加や家計の消費拡大につながるを考えてほしい。

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  8. 拓三 より

    今、日本に必要なのは、「カリスマ」や「強いリーダー」でもなく、日本を主に考える当たり前の日本人であります。今、支那と米国が日本を取り合っている状況であります。米国側から見れば、このままでは日本が支那に取られるので日本の大金融機関を自国でコントロール出来る状態をいち早く作る状況が急がれる。つまり郵貯、共済、などの改革が米国主導であります。一方、支那は昔から土地の支配と人の移動による政治支配であります。これは日本の共同体の破壊を目的とした政策、つまり道州制、移民政策、農地法などが支那主導で行われている状況であります。ちなみに大阪維新は支那一色であります。絶望的ですが日本を主に考える政党が一つもないのが現状です。どの政党もヒモ付です。(ただのバカかもしれませんが)それが証拠にどの政党からも財政出動の話が本筋に出てきません。財出が日本を復活させる事を米中は解っています。安倍晋三内閣総理大臣、あなたはどの国の内閣総理大臣なのですか。私たち国民はこの状況を貴方に託す事しか出来ないのです。

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