日本経済

2016年1月5日

【藤井聡】「財政均衡乗数」から考えれば、「税の増収分」の全額支出は当然である

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

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2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

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新年、おめでとうございます!

今年は去年よりもますますいろんな問題が顕在化、深刻化してくる年になるだろう……と想像していたところ、正月早々、さっそく予想通りの暗いニュースが相次いでいますね。

中国経済は案の定、一気にヤバい状況になっている様ですし、
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/735579143209698?pnref=story

三橋さんがおっしゃるように、中東でも南シナ海でも、事態が抜き差しならないような状況になりつつあるようです。
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/735769886523957?pnref=story

そんな状況では、まずは経済を立て直し、わが国だけでもグローバル不況や諸外国の紛争激化経済被害を最小化すべきところ……

なのですが、経済学者の政府与党に対する重要なアドヴァイザーは、景気を低迷させ、二度と成長と財政再建ができない状態に日本を追い込みかねない「財政再建のためには消費税増税は待ったなし!」という説を主張しておいでです。
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/735558953211717?pnref=story

曰く、
「10%超の消費増税もタブー視せず、議論すべきだ。」
とのこと。

おそらくは一部「素晴らしい勇気ある発言だ!」とほめそやす方もいるのでしょうが、これは蛮勇以外の何ものでもありません。

こんな論調にわが国が翻弄されている様では、様々なグローバル危機による被害を受ける前に、わが国経済は「自滅」せざるを得なくなるでしょう。

これは本当に困った状況です。

ちなみに、今の日本は、次のような袋小路状況、です。

(1)「主流派経済学者が間違っている」ので、経済政策が間違っており、デフレが続いている。

(2)だから、一部の学者、エコノミストはデフレを終わらせるために、「主流派経済学者が間違っているよ」と言うことを、あれこれと、実際のデータなど
を示しながら、政策担当の先生方を説得しようとする。

(3)だけど、「主流派経済学者が間違っているよ」と言われても、多くの政策担当の先生方は学者でもないのだから、何が間違ってて、何が間違ってないかを判断することができない――

(4)そんなところに、件の「主流派経済学者達」がやってきて、次のようにささやき始める。

「いやいや、僕たちが正しいんですよ。そもそも、僕達は有名大学の経済学部教授で経済学会でも権威があるし、経済学者のほとんどすべてが僕たちと同じ意見です。僕たちが間違っているといっている人たちは邪説を言ってる一部の人達だけ。それに僕たちが言ってることは『教科書』にも載ってるんです!どっちが正しいか分からないんだったら、僕たちを信用しなさい!」

そうなると、学者でもないから何が正しいか判断つきかねる多くの政策担当者は、最終的に「権威」や「学者の世界での多数決」を頼りに、結局は「間違った経済政策」を継続することになる―――

こうやって、日本のデフレは継続しているわけです。

……この現状を打破するのにどうすればいいか――あれこれを悩むところなのですが、ささやかな一つのアプローチがあります。

こうなったら致し方ありませんから(少々心外ではありますが)、多くの人々が信用する「教科書」をそのまま使って論戦を挑む!という方法です。

そのうちの一つが、「財政均衡乗数」という、教科書に載っている一般的な概念です。

この概念、次の様な議論に決着をつけるのに役立ちます。
http://jp.reuters.com/article/abe-amri-aso-idJPKBN0U50OP20151222?pageNumber=1

今政府では、「景気がよくなって、税収が増えた分(=上振れ分)を借金返済に使うか、政府支出に使うか」が重大な議論となっています。

安倍内閣は今、「成長を通して財政再建を果たす」と主張しているのですから、上振れ分を借金返済に回すなどあり得ない選択肢で、「ワイズスペンディング」(かしこい支出)の理念に基づいて、政府支出に回すべきであることは、議論以前の「当たり前」の問題といって差し支えありません。

ですが、この「当たり前」がなかなか通らないのがつらいところ―――なのですが、実は、この「当たり前」をサポートする教科書の記述があるのです。

それが、「均衡財政乗数」という概念なわけです。

これは、「税収をそのまま政府が支出すれば、結局、GDPはどれだけ増えるのか? という乗数」です。

つまり、例えば、この乗数が2であれば、「10兆円の税収をそのまま支出した場合、日本のGDPは(10兆円_2の)20兆円増える」ということになります。

で、この乗数は、教科書では「1」だという事が書かれています。
(※ 1となる理由は、例えば下記をご参照ください
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/today/rt130118.pdf

つまり、教科書通りで考えるなら、「10兆円の税収があれば、それをそのまま使えば、日本のGDPは10兆円増える」のです!なぜそうなるのかというと、次のように説明されています。

【財出ケース】
・10兆円徴税すると(消費性向というものを0.5と置いた場合)、日本のGDPはその徴税で10兆円縮小する。
・一方、その10兆円を使うと(消費性向というものを0.5と置いた場合)、日本のGDPはその財政政策で20兆円増える。
・したがって、GDPは差し引き10兆円が増える」

さらにこの話、徴税した10兆円を使わずに借金返済をした場合、日本のGDPは10兆円も減ってしまう! ということが予測されます(計算プロセスは下記の通り)。

【借金返済ケース】
・10兆円徴税すると(消費性向というものを0.5と置いた場合)、日本のGDPはその徴税で10兆円縮小する。
・一方、その10兆円を借金返済にまわしても、日本のGDPには何の影響もない。
・したがって、GDPは10兆円減ってしまう」

つまり、政府が10兆円の税収を使うかどうかで(消費性向0.5の場合には)、差し引きで、「20兆円」のGDPの格差が生じるのです!

ちなみに、20兆円のGDPの格差があるということは、税収で言えばその内の約1割の「2兆円」税収に格差が生ずる、ということです。

で、これも加味して、「累積債務/GDP」の比率がどうなるかを計算すると、次のようになります(単純に現時点での累積債務を1000兆円、GDPを500兆円とします)。

現状      ⇒「累積債務/GDP」=2.00 (=1000/500)
財出ケース   ⇒「累積債務/GDP」=1.96 (=999/510)
借金返済ケース ⇒「累積債務/GDP」=2.02 (=991/490)

皆さん! そもそも財政再建で最も大切な尺度は「累積債務/GDP」なのですが、それは、

財出ケースでは、GDPが伸びることで2.00よりも1.96へと「4%改善」しているのに、

借金返済ケースでは、GDPが小さくなることで2.00よりも2.02へと「2%悪化」しているのです!

つまり、安倍内閣の「成長を通して財政再建を図る」という方針を貫きたいのなら、この教科書の「財政均衡乗数」の議論を踏まえるなら、明らかに「財出ケース」の方が有利なのです!(※ ちなみに、消費性向を異なる水準でおいても、結論の方向は全く同様です。)

なお、当方としては、

(注1) 財出をすればデフレータがかわり、それを通して、「税収/GDP」比が改善するので、現状では、税収上振れ分は2兆円でなく、4〜6兆円程度上振れする可能性もあり、そうなれば、上記結論はより顕著なものとなりますが……

(注2) しかも、当方としては、この理論は単純すぎで、本来なら、消費税と所得税、法人税では、GDPへのネガティブインパクトのサイズが全然違う、という点や、支出項目でも、より裾野の広い産業への投資の方がよりポジティブインパクトのサイズが大きい、等を加味したくなるのですが…..

・・・という様な話をするたさらに複雑になりますし、基本的な結論の方向は変わりませんから、ここは一旦、脇に置いておくことにしたいと思います。

ちなみにこの理屈、あの、ノーベル経済学者のスティグリッツ先生も採用しておられ、「均衡財政乗数」の理屈に基づいた積極インフラ投資を主張しておられるのですから、心強い限りですw
http://www.project-syndicate.org/commentary/great-malaise-global-economic-stagnation-by-joseph-e–stiglitz-2016-01

さらに言うと、この理屈を踏まえるなら、5→8%へと消費増税した3%分の増収分は、そのまま「財出拡大」に活用しない限り、GDPも財政再建も悪化し続けている、という事になるのです! だから、今からでも追加補正予算などで、この3%分の財出拡大をさらに検討することは、本来ならば必要なのだ、という事が、この論理から導き出すこともできるのです。

ついては、是非皆さんも、教科書の理屈から言っても、少なくとも「税収上振れ分は支出に使うのが正当だ」「さらに言うなら、増税分はそのまま財政拡大に活用すべきだ」という事を是非、ご理解いただきたいと思います。

では、本年もこういう情報、メッセージを少しずつ配信して参りたいと思います。どうぞ、よろしくお願いします!

—発行者より

2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

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  1. はっちゃん より

    いつもありがたく読ませていただいております。今回の主なお話からは少し外れていますが、「10%超の消費増税もタブー視せず、議論すべきだ。」と論じておられる土居氏の論説について思ったことを書かせていただきます。私のような一般人には専門的に見えてわかりにくいので、うっかりすると丸め込まれてしまいそうです。それでも土居氏の文章で私なりに疑問に思ったことをいくつか書かせていただきます。・・・事業税付加価値割と消費税の違いは「前者は加算法で後者は控除法という違いだけである」とし、「(土居氏が良いとする)控除法である消費税にシフトすべきだ」と言っていますが、少なくとも他に、事業税付加価値割は資本金一億円以上の企業が課税の対象であることに対し、消費税は全商品が対象であるという違いがあるのではないでしょうか?穿った見方かもしれませんがわざと無視しているようにも見えます。もしかして資本金一億円以上の会社の税金を上げるぐらいなら消費税を上げろと言いたいのではないかとも見えます。次に、「法人税減税は国民に恩恵がないという反論は誤解だ」と言うから『この続きに何か法人税減税の方が消費税減税よりも国民に恩恵があるという話があるのかな?』と思いきや、「法人税負担により株主や給料が増えないから減らせば国民に恩恵がある」一方「消費税は日本で売る限り外国で作った物にも日本で作った物にも平等に税負担がかかるのでこちらを増やしたほうが日本企業にだけ不利にはならないから良い」と書かれています。これでなぜ法人税から消費税にシフトしたほうが国民に恩恵があるのかわかりません。前半には法人税が減っても企業が給与を上げるとは限らないのではないかという疑問がありますし、後半は「消費税が増えても国民の負担が増えるわけではない」論拠が来るところだと思うのですが、「日本企業だけが不利ではない」なんて無関係な話が来ているように見えます。法人税は企業の利益に課税されたり、外形標準課税は資本金一億円以上の企業が負担するものなので一般的な国民にとっては相当回り回った負担である一方消費税は当の国民が買い物するときに負担するものです。また、国民は生産者であったり商売人でもあったりするのですが、消費税を増税すると当然消費は減退するので国民の消費を(企業の消費や投資も)対象とする大小含めた企業にはマイナスインパクトが大きいと思います。ですから土居氏の論説を読んでもやっぱり私は国民にとって消費税増税のマイナスインパクトの方が法人税減税のプラスインパクトよりも大きいと思います。ところで、お正月期間何人かの人とおおさか維新について話をする機会がありました。例によって私が維新を応援しないことを文句言われたりする場面もありました。そこでそのような人について以下のようなことを感じました。1 嘘に慣れてしまっている。(明らかな嘘に気づいてすらいない)2 そのくせこちらが言うことはいちいち疑った上、結局全て否定する。3 言葉や論理が非常にいい加減。4 プライドが高く、冷静に話しているように見えても中身は感情的。5 ルサンチマンにまみれた話を平気でする。それに気づいていない。6 3ゆえに、関係のない話を始めたり話がそれたりする。このうち、せめて3だけでもなくなればなんとか話は出来るのかなとも思いました。今年も何卒よろしくお願いします。

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  2. 學天測 より

    藤井先生や三橋さん、釈迦に説法ですが。土木や建築って、あまり自分らでアピールしませんよね。マスコミとかに金出して、そういう大事だよっていう広報番組やるとか、CMやるとか、何か政治のせいばかりにして、自分たちの自助努力はしているのかという疑問が湧くばかりですね。やはり主張しなきゃいかんのではないでしょうかね?

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  3. 拓三 より

    そろそろ日本は自分の足で立たなアカンで。今年は去年迄の様にチンタラしているヒマはない。去年迄は日本をどれだけお得に外資に売るかで、インフレを妨げて来たけど買うてくれる外資が無くなったら自分の足で立たんとしゃあないやろ。ッて言うか、ここ迄来んと解らんか!ここ迄来ても解らん奴は『テロリスト』や!今こそ『国土強靭化』を柱にして国家を組み立てろ!この意味を解らん奴は解るまで勉強せえ!

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  4. ぬこ より

    郵政シティバンク化極右の米元財務長官のルービンも、日本の緊縮財政を後押しする事を言ってた様な気がしますよね(笑)。

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  5. penname より

    アメリカに反緊縮を唱える大御所はいる。スティグリッツ教授やサマーズ教授らの理論的背景にミクロ経済学的基礎付けがある。GDPギャップ議論するにもミクロ経済学的に供給側も焦点当てた反緊縮論ゆえ意見違えど理論的には通じる。オールドケインジアン式に供給放置し需要しか見ない反緊縮論と似て非https://twitter.com/takero_doi/status/684424816615493632↑このツィットも興味深いです。

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  6. ぱなとりん より

    >>「いやいや、僕たちが正しいんですよ。」「まだ議論の余地があり、そこは政治判断になります。」ではなく、「いやいや、僕たちが正しいんですよ。」と断言している学者たちは、仮に間違っていた時に腹を切る覚悟があって言ってるんですかね。寄らば大樹で言ってるのなら、余計に罪深いです。

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  7. きらきら より

    交渉の手段として、ふっかけてきているので、30%は必要だとか、適当なこと言ってる人が多すぎます。まともな数字を出すと、足して2で割った値にされてしまい、結局増税ということになってしまいます。そこで、消費税増税により、景気が悪くなり、税収が減った。なので、消費税でなく、今後は10%の還付金を付けるべきだ。くらい主張するべきかと思います。

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