日本経済

2016年1月4日

【三橋貴明】政府の借金返済が国民を貧乏にする?

FROM 三橋貴明 http://keieikagakupub.com/38news/

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2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

『月刊三橋』最新号はこちら
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【今週のNewsピックアップ】

2015年を振り返り
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12112133463.html
2016年を迎えて
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12112559246.html

いきなりですが、人間は「経験」に縛られる生き物です。結果、国民経済というマクロな環境について、自らの経験に基づき判断してしまい、話が混乱します。
「節約」や「借金返済」は、もちろん個人という「人間」にとっては善です。何しろ、節約をすれば利益が増えるし、借金を今、返済すれば「将来の所得からの返済」が減るわけです。

というわけで、政府というマクロをコントロールするべき組織の「政策」までもが、個人の「経験」に基づき判断され、デフレ下であるにも関わらず、
「政府の節約や借金返済は善」
といった間違った考え方が蔓延してしまいました。政府が借金返済(国債償還)を優先し、支出を削減すると、必ず「誰か別の国民」の所得が減ります。つまりは、誰かが貧乏になります。

ところが、多くの国民は政府の支出削減(緊縮財政)で「誰か別の国民の所得が減る」ことを、経験として実感することができません。デフレ国の国民が政府に対し、

「俺たちも苦しいんだ! 政府も節約しろ!」

と叫び、実際に政府が緊縮財政を推進し、誰もがますます貧乏になったとしても、多くの国民は「仕組み」が理解できません。それどころか、

「政府に節約させたのに、なぜ自分たちが貧乏になるんだ! 政府はもっと節約するべき!」

といった、意味不明な方向に突っ走ることになります。理由は、「誰かが支出を削ると、誰かの所得が減る」という所得創出のプロセスについて、個人として経験することが不可能であるためです。人間は一個人として「支出を削る人」と「所得が減る人」を同時に兼ねることはできないのでございます。

もちろん、本メルマガ読者の皆様は、「誰かが支出を削ると、誰かの所得が減る」という当たり前の事実を理解していらっしゃるでしょう。とはいえ、多くの国民は未だに思考が「自らの経験」に縛られ、所得創出のプロセスやデフレの正体について理解できていません。結果、国民を貧困化させる緊縮財政が支持されるという歪んだ環境が出現しています。

もっとも、人間というのは「理を尽くした説明」を聞けば、未経験のプロセスや仕組み、概念であっても理解できるものです。だからこそ、「言論」には一定の価値があるのだと信じます。

2015年は、2014年よりも「所得創出のプロセス」など「国民経済の仕組み」について理解した国民が増えたでしょう。とはいえ、まだまだマスコミの論調は「経験」に訴えかける家計簿理論が主流です。

2016年こそ、個々人の「経験」ではなく正しい仕組み、概念に基づき、国民経済について議論がなされる状況を作り上げなければなりません。
正月から辛気臭い話で失礼いたしました。

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2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

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【三橋貴明】政府の借金返済が国民を貧乏にする?への2件のコメント

  1. lemoned@F-NAK より

    仕事で「システム思考」という考え方に関する本を読んでいます。(ピーター・M・センゲ『学習する組織』)組織は「分かれたることのない全体」としてはじめて機能する。しかし、この当たり前の原則を守れない組織がほとんどです。その原因と解決策を見つけるために読み始めました。(まだ途中ですが。)組織教育の本ですが、本稿の内容とリンクするなと感じました。「人々は原因と結果を時間的・空間的に近い場所で探そうとする」「お互いに相互作用を及ぼしあっていることに気付けない」「ゆっくりとした変化には気付けない」この3つの性質を見るだけでも、組織やプロジェクトにおいて、教育を行わずに放置すると、必ず瓦解するのだと感じます。・何か問題が起きると対処療法が行われ、一時的に改善したように見える→ 原因は取り除かれていないので問題は繰り返し起きる→ 問題は徐々に深刻になってくるが同じ対処療法が繰り返される→ 修復不可能になった問題と、継続的な対処療法のコストが残る・対処療法が、実は隣のグループや後工程に作業者に負担を押し付けているだけのケースがある→ 隣のグループでも対処療法がなされる→ 各グループは「自分たちは問題を解決している」と思っているが、実は足を引っ張り合っているそして、「同じ構造のシステムに組み込まれた人は、同じような結果を残す」のだそうです。ただし、教育を受けた人を除いて。経験を通じた学習では、これらの問題を解決することは難しいそうです。私もそう思います。組織全体を見て意思決定を行う経験は、ほとんどの人は積めません。逆に言えば教育次第とも言えます。仕事以外にも経済の勉強にとってもよい知見が得られそうなので、この本は読み進めたいと思います。ただ、「人々は原因と結果を時間的・空間的に近い場所で探している」という性質と、「短期的な利益を追求し、個人主義的な考え方」(≒グローバリズム)というのは、ある意味相性がよく、多くの人がグローバリズムを好んで受け入れてしまう要因なのかな、とも思ったりしました。

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  2. 神奈川県skatou より

    本年も三橋先生のご活躍をあつく応援いたします。卑近な話ですみませんが、サラリーマンの短い冬休みはいろいろ建設的なこともやらず、自分はとあるマイナーなシミュレーションゲームに大ハマりしていました。1939年9月、ノモンハン事件の決着から始まるゲームで、重油1トン、鉄1トン、兵は分隊単位で生産配置使用を管理する、つまりは数字ばかりいじるものです。最終目標は対米戦で有利な講和、なのですが、そのためには軍事的に勝利を重ねること、そのためには軍備と運用を計画し着実に実現すること、そのためには軍需工場や製鉄、精油、アルミ精錬、鉄道敷設など国力を増強し準備することに行きつきます。でもゲームバランスが良くできていて、全てを強化することができず、重点を絞ったり、偏重を避けたり、前倒し、先送りしたりと、見極めと選択を吟味した、終戦までの物量計画が明瞭に具体的に見えてこないといけません。ゲームをやりつつ、つまづきつつ、上手くいく10年計画を見直していく。その計画がだんだん自分にも見えてくる。これが楽しくてしょうがありませんでした。ようするに相当ながい先の勝利の日の青写真から、それを支える具体的な姿かたち、そしてその姿を実現するまでの段取りを全部明らかにしていくのです。でもこれは、もしかして国政そのものなのかなと。今日明日の株価上下を、為政者もそうですが、有権者もうるさく言うべきでなく、いったいどんな未来を我々は掲げて、そのために今からなにを選ぶのか、なには確保するのか。もっと議論になっていくことが、豊かな国、豊かな暮らし、豊かな人生を助けるのだと思いました(景気というのは、本来そういうものかと)。そのために大勢の知恵を集めて洗練していく、そういう言論にしたいなと思いました。文化による世界大戦で勝利するには当然日本語による文化発信、ルール作り(明文も暗黙も、条文も寓話も)。そのための政府組織、公共施設、そのための国内教育、そのための国内経済支援、そのためのリーダー作り。そんな話を初夢にしたいです。そうそう、戦争での下策は完全勝利と無条件降伏。若造米国の常套ですね。ほどほどの勝利と妥結か、あるいは不戦が、きっと最高なのだと付け加えて。

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