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2017年8月9日

【佐藤健志】支持率変動と認知的不協和

From 佐藤健志

6月から急落していた内閣支持率ですが、8月3日の内閣改造を受け、とりあえず持ち直しました。

具体的には、
毎日新聞(8月3日・4日実施)・・・35%(+9%)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170804-00000040-mai-pol

共同通信(同)・・・44.4%(+8.6%)
https://this.kiji.is/266119158398566403

日本テレビ+読売新聞(同)・・・42%(※)
http://www.news24.jp/articles/2017/08/04/04368944.html

(※)読売新聞が7月に行った調査での内閣支持率は36%だったので、単純に比較すれば+6%となります。

「さすが安倍さん、危機を乗り切った!」
・・・なんて声が、いわゆる保守派界隈から聞こえてきそうですね。

し・か・し。
喝采するのは、6月~7月の支持率急落期に、どのような反応が見られたかを振り返ってからにしませんか?
それらの反応には、認知的不協和の形跡が如実に見られたのです。

さて。

『対論「炎上」日本のメカニズム』の第三章で、共著者の藤井さんは以下のように論じました。
いわく、炎上に際しては、何らかの「不都合な真実」が必ず隠蔽される。
ゆえに当の真実が明るみに出そうになるや、無理やり抑えつけようとする動きが表面化せざるをえない、と。
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早い話、認知的不協和をめぐるゴマカシが始まるわけです。
で、70~71ページにおいて、藤井さんは代表的なゴマカシ方のパターンを3つ挙げました。

順番に・・・
1)不都合な真実が、そもそも存在しないことにする。
2)不都合な真実を指摘するヤツは「悪人」だということにする。
3)不都合な真実は(渋々)認めるが、「より本質的な問題」を別に持ち出すことで、不都合な真実の重要性を否定する。

藤井さんは触れていませんが、ゴマカシ方(2)については
〈不都合な真実を信じるヤツは「バカ」だということにする〉
バリエーションも存在します。

しかるに安倍内閣の支持率急落をめぐって見聞きした「保守派の反応」には、この3パターンがすべて見られました。
具体的に言えば・・・

「支持率急落は倒閣をもくろむマスコミの捏造であり、実際には起きていない」
と構えるのがゴマカシ方(1)。

「支持率急落をあげつらうのは倒閣をめざす反日勢力(=悪い人々)であり、それを真に受ける者は連中のプロパガンダに引っかかったバカである」
と構えるのがゴマカシ方(2)。

「支持率急落は確かに起きたが、現在の日本が置かれた危機的状態を思えば、総理は安倍さん以外にありえない」
と構えるのがゴマカシ方(3)となります。

何というか、あまりにパターン通り。
まともに取り合う価値がないのは明らかと思われますが、面白いので少し検討してみましょう。

たとえば(1)。
内閣支持率が一ヶ月で10ポイント以上下落する現象は、7月24日に発表されたものだけでも、
・毎日新聞
・日経新聞+テレビ東京
・産経新聞+FNN
のすべてで報じられました。
https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0724/jc_170724_6209799873.html

してみると、政権に好意的と見られる産経新聞すら、じつは倒閣運動をもくろむ反日勢力だったのでしょう(おいおい)。
油断も隙もない世の中ですが、となると新たな疑問が湧いてくる。

マスコミがかくも信用できないとすれば、彼らが「内閣支持率は高い。安倍一強だ!」と報じたとき
なぜ保守派は疑ってみようとしなかったのか?!

そうです。
安倍一強報道こそは、政権を慢心させて気を緩ませ、スキャンダルを誘発させようという
高度に洗練された政治的謀略だったに違いない。

保守派のみなさんにしても、よもや「褒め殺し」をご存じないことはないでしょう。
それを見抜けなかったおのれの不明を、まずもって恥じるようでなければ、新たな支持率急落が待ち受けているだけとは思いませんか?

次は(2)。
まことに遺憾ではありますが、安倍晋三総理ご自身も、菅義偉官房長官も、支持率急落を客観的事実として受け止めました。

総理など7月24日の衆院予算委員会で、支持率急落について
「国民の声であり、真摯に受け止めたい」
と語られたのですぞ。

「支持率急落をあげつらうのは倒閣をめざす反日勢力であり、それを真に受ける者は連中のプロパガンダに引っかかったバカである」
というのが正しいとすれば、
それは総理、および官房長官について何を意味するでしょう?

そして(3)。
支持率が落ちた内閣は、求心力を保てなくなります。
片や最近、政権を悩ませてきた問題は〈国家的危機〉と呼ぶにはいささか矮小なものがほとんど。

ところが安倍内閣は、その程度の問題すらスマートに解決できなかった。
だからこそ急落が起きたのです。
そんな政権が、日本の置かれている危機的状況にたいし、的確に対処できるとはとうてい信じがたい!!

現に内閣改造後、テレビに出演した安倍総理は、
「(景気の現状は)デフレマインドを払拭するには至っていない。デフレから脱却すれば税収が安定的に増えていく」
と語り、デフレ脱却を最優先とする姿勢を見せる一方で、2019年の消費税10%引き上げについては
「予定通り行っていく考えだ」
と明言しました。
http://www.sankei.com/politics/news/170805/plt1708050017-n1.html

積極財政への方向転換もしないまま、消費増税に踏み切って、どうやってデフレ脱却が達成されるのでしょうか?

だいたい〈デフレから脱却すれば税収が安定的に増える〉旨を主張しつつ、デフレ脱却を妨げる消費増税に固執するのは、
それ自体が認知的不協和なのですが、この点は脇に置きましょう。

以上の点を総合しますと、支持率急落期に見られた政権擁護論からは、次のような結論が導き出されます。
すなわち・・・

1)保守派はメディアの「褒め殺し」にコロッと騙されていた。
2)政権中枢は、倒閣運動のプロパガンダを真に受けるほどのバカである。
3)現内閣は、日本の置かれた状況に的確に対処する能力を持っていない。

だ・か・ら、
『右の売国、左の亡国』と言うのですよ!
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とまれ6月~7月に政権を擁護された方は、
今回の支持率回復についても、以下のような認識で接するのが道理というものでしょうね。

1)倒閣をめざしていたはずのマスコミが、いきなり方針を変えるはずがないので、この調査結果も捏造に違いない。
「危機を乗り切った」という安心感を政権に与えることで、さらなる失策を誘発するのが狙いであろう。

2)同様、反日勢力がいきなり親日に鞍替えするはずがない。
ゆえに支持率回復の報道を真に受ける者は、連中のプロパガンダに引っかかったバカである。

3)支持率回復が確かに起きているとしても、現在の日本には、もっと重要な問題が多々あるはずだ。

・・・要するに
「支持率回復など信じるヤツはバカだ!
あんなものは捏造で、国民は今でも安倍さんを支持していない!!
マスコミと反日勢力による〈褒め殺し倒閣〉を許すな!!!」
と叫んでこそ、真に首尾一貫した姿勢と評しうるのです。

これができなければ、
〈自分に都合の良い情報は何でも鵜呑みにするが、都合の悪い情報は何でもデマ扱いする〉
憂国お花畑状態と批判されても仕方ないのですよ。

最後にひとつ。
かのフランス革命においても、政府歳入の激減という事態が生じました。
革命前に比べ、三分の一以上も減ったとか。

革命派はどうしたか?
消費税の導入、ないし引き上げを主張したか?
いえいえ、国民議会でこう高らかに宣言したのです。

「われわれは民衆の税負担を軽減することに成功したのだ!!」

詳細はこちらを。
『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
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左翼革命、もとへ構造改革を推進するのであれば、これくらいの度胸が欲しいところです。
ではでは♪

<佐藤健志からのお知らせ>
1)8月16日発売の『表現者』74号(MXエンターテインメント)に、評論「米兵が見えなかった女」が掲載されます。

71号・72号に続いて、こうの史代さんの漫画『この世界の片隅に』について論じました。
傑作の誉れ高い同作品にひそむ、ある興味深い欠如とは?
その欠如から見えてくるものとは?
ぜひご覧下さい。

2)戦後脱却をめぐっても、お花畑的発想が幅を利かせています。詳細はこちらを。

『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』(徳間書店)
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3)今やお花畑は、左翼・リベラルの専有物ではありません。保守も「憂国お花畑」や「日本再生お花畑」といった楽園を、しっかり手に入れるにいたりました。

『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
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4)戦後日本は「ファンタジーの戦後史」というお花畑の中で、堂々めぐりを繰り返してきたのではないでしょうか。

『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
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5)保守主義とは本質において、お花畑的発想を否定するものでなければなりません。詳細はこちらを。

『本格保守宣言』(新潮新書)
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6)「矛盾はあまりに明々白々、気づかぬことなど不可能だ」(252ページ)
認知的不協和は、トマス・ペインの時代にも見られたようです。

『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
http://amzn.to/1AF8Bxz(電子版)

7)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
ツイッター http://twitter.com/kenjisato1966

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