From 佐藤健志
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日本が国連に2億ドル払える理由
財政赤字国のどこにそんな大金が?
TVが放送を自粛する意外な真実とは
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じつは私、ゲームはほとんどやりません。
十年以上前、『I HAVE NO MOUTH, AND I MUST SCREAM』(おれには口がない、それでもおれは叫ぶ)というSF系のゲームを、ちょっとやってみたことがあるくらいです。
しかるに最近、ブログ(http://kenjisato1966.com)の読者より、あるゲームについて教えられました。
題名は『HOMEFRONT』(ホームフロント)。
日本語に訳せば「国内戦線」です。
2011年に発売された、近未来ものの戦記FPSゲームとか。
FPSは「ファーストパーソン・シューティング」、ないし「ファーストパーソン・シューター」の略。
ゲーム内の主人公の視点が、そのままゲームをプレイする人間の視点になる形で、戦闘や格闘を繰り広げるものを指します。
一人称で展開されるから、「ファーストパーソン」というわけですね。
さほど高い評価は得られなかったという話ですが、今年5月には続編『HOMEFRONT:THE REVOLUTION』(国内戦線:革命)が発売されましたので、けっこう人気があるのでしょう。
公式サイトはこちらをどうぞ。
http://www.spike-chunsoft.co.jp/hfr/
さて。
『ホームフロント』で注目されるのは、シナリオをジョン・ミリアスが担当していること。
映画監督・脚本家として知られた人物です。
主な監督作品は『風とライオン』『ビッグ・ウェンズデー』『コナン・ザ・グレート』『若き勇者たち』など。
フランシス・コッポラ監督のベトナム戦争映画『地獄の黙示録』の脚本も、コッポラと共同で手がけました。
『地獄の黙示録』は撮影が難航したことでも有名ですが、コッポラはあるとき、ミリアスにたいして「未完成のままオレが死んじまったら、代わりに完成させてくれ」という旨を告げたとのこと。
信頼されていたんですね。
反共主義者との定評もあり、タカ派と言われています。
で、そのミリアスによる『ホームフロント』の物語ですが。
基本の筋立ては以下の通り。
2013年、金正恩が朝鮮半島統一に成功し、「大朝鮮連邦」(GREATER KOREAN REPUBLIC, 略称GKR)を樹立する。
この功績で金正恩は、なんとノーベル平和賞を受賞。
これを受けてアメリカは、2014年に朝鮮半島から軍を撤収させます。
さらに自国の経済が悪化したせいもあって、2016年には日本を含めたアジア全域から軍を引き揚げました。
邪魔者がいなくなった大朝鮮連邦は、核テロの脅しをかけることで、2018年に日本を属領化。
2020年代初頭になると、アジアの多くの国を支配下に置くにいたります。
他方、アメリカは経済危機やら、新種の疫病の流行などで衰退一途。
そして2025年、大朝鮮連邦はアメリカに電磁パルス攻撃を実施したうえで、自国の「朝鮮人民軍」(KOREAN PEOPLE’S ARMY, 略称KPA)を侵攻させる!
アメリカの西半分は占領されたものの、自由を求める人々はレジスタンスとなって立ち上がった・・・
プレイヤーはレジスタンスの一員となって、KPAこと朝鮮人民軍と戦うわけです。
ここからすぐに連想されるのは、ミリアスが1984年に監督した映画『若き勇者たち』。
この映画、原題は『RED DAWN』(赤い夜明け)と言います。
ソ連(現ロシア)に占領されたアメリカで、若者たちがレジスタンスに立ち上がる話。
400万ドルの製作費にたいし、北米だけで3800万ドルの興行収入を挙げるヒットになりました。
いわば『ホームフロント』、21世紀版『若き勇者たち』とも評すべき作品なのですが・・・
何か気づかれた点はないでしょうか?
そうです。
ミリアスはなぜ、敵勢力を中国にしなかったのでしょう。
大朝鮮連邦が本当に誕生し、アジアに覇権を確立しようとしたら、中国が放置しておくとは信じがたい。
しかも大朝鮮連邦、日本を属領化する前に、特殊部隊を使って中国の原子力施設を破壊したことになっている!
だったら同国との全面衝突は、いよいよ不可避だと思うのですが。
調べてみたら、面白い経緯が分かりました。
『ホームフロント』の敵勢力は、当初、中国に設定されていたのです。
それが諸般の事情で、大朝鮮連邦に変更されたとのこと。
制作会社の重役ダニー・ビルソンは、変更理由を以下のように語ったと報じられます。
1)中国とアメリカは友好的な間柄である。アメリカ人が買う物は、何から何まで中国でつくられている。だから中国を敵勢力にしても、あまり怖さが感じられない。
2)中国を敵勢力にしたまま発売すると、制作会社の重役たちは全員、ずっと同国に入国できなくなる恐れがあると忠告された。
http://news.livedoor.com/article/detail/5271520/
二つの説明は、どうも矛盾している気がするのですが、それは脇に置きましょう。
『ホームフロント』の筋立ては、「中国は敵に回さない」という判断の産物だったのです。
ところがお立ち会い。
『若き勇者たち』は2012年、映画でもリメイク版がつくられました。
監督はミリアスから、ダン・ブラッドリーに交代。
2013年には『レッド・ドーン』という題名で、日本でも公開されています。
で、今度はどの国がアメリカを占領するかというと・・・
やはり、当初は中国だったんですね。
「アメリカ政府が財政破綻に陥ったせいで、債権を保持していた中国が施政権を獲得する」という設定になっていたそうです。
けれども仕上げの段階になって、またもや北朝鮮に変更されることに。
財政破綻をめぐるくだりも、キレイに消えてしまいました。
http://www.vulture.com/2011/12/red-dawn-china-invades-america-because-of-debt.html#
こちらでも、「中国は敵に回さない」という判断がなされたわけです。
ただし400万ドルの予算で、3800万ドルの北米興収を稼ぎ出したオリジナル版とは対照的に、『レッド・ドーン』は6500万ドルの予算をかけたにもかかわらず、世界全体で4800万ドルの興収しか挙げられない結果となりました。
それはともかく。
ご存知のとおり、本年6月16日には、上海でディズニーランドがオープンしています。
片や6月9日には、尖閣諸島周辺の接続水域に中国海軍のフリゲート艦が進入。
6月15日には、やはり中国海軍の情報収集艦が、鹿児島県沖の領海を侵犯しました。
アメリカの反応は抑制的と伝えられます。
『ホームフロント』や『レッド・ドーン』のたどった経緯を踏まえるとき、なかなか意味深長ではないでしょうか?
現実の世界でも、アメリカは中国を敵に回さないかも知れませんよ。
ではでは♪
<佐藤健志からのお知らせ>
1)8月20日(土)、「表現者シンポジウム」の第一部に登壇します。
・時間 19:00〜21:30(18:30開場)
(※)これはシンポジウム全体の時間です。
・場所 四谷区民ホール
・会費 2000円
参加ご希望の方は、郵送ないしファックスで下記宛にお申し込み下さい。
西部邁事務所
〒157−0072 東京都世田谷区祖師谷3-17-22-303
03-5490-7576
お申し込みの際は、お名前、ご住所、電話番号、参加人数を記入していただきたいとのことです。
2)アメリカと中国が手を結んだら、どう転んだところで、戦後は属国化で終わるのではないでしょうか。
『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』(徳間書店)
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3)となると、日本の保守とは何かも、根底から問い直さねばなりません。詳細はこちらを。
『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
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4)わが国が現在のような状態になるにいたった過程についてはこちらを。
『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
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5)映画やゲームのようなポップカルチャーから見えてくる、政治的な真実についてはこちらを。
『夢見られた近代』(NTT出版)
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6)「(革命派には)戦争をめぐる権限のあり方を見直すことを勧める。王に戻さぬまでも、何らかの修正を施して、外国勢力の影響が及ばぬようにしておきたまえ」(242ページ)
安全保障は、特定の国家との同盟関係を緊密化するだけで事足りるものではありません。
『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
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7)「イギリスの支配がもたらす恐怖を暴くのも、復讐を叫びたいがためではない。現実に目をつぶり、アメリカが危機に瀕しているにもかかわらず、軟弱な眠りをむさぼろうとする傾向を阻止するためである」(138ページ)
アメリカの歴史は、独立戦争という「ホームフロント」から始まったのです。
『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
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8)そして、ツイッターはこちらをどうぞ(ブログURLは記事中にあります)。
http://twitter.com/kenjisato1966
ーーー発行者よりーーー
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