コラム

2016年4月23日

【平松禎史】霧につつまれたハリネズミのつぶやき:第廿三話

From 平松禎史(アニメーター/演出家)

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 ◯オープニング
4月14日。平成二十八年熊本地震が起きました。
14日震度7、16日に震度6強の地震が起き、現在も強い余震がつづきながら地震の範囲が広がっています。

地震の広がりとともにマスメディアやネット言論でもある種の「断層」が露頭し広がりを見せています。
東北地方太平洋沖地震の時にも同様のことがありましたが、今回も繰り返され複雑化しているようです。

第廿三話「認知的不協和の誤った解消方法」

 ◯Aパート

震災対応に関して様々な必要性が見えてきています。

1)飲食料・医薬品など支援物資の供給増大
2)電気・水などの安定性確保
3)被災者の短期的緊急避難から中長期避難への転換
4)被災地支援のための法整備
5)破壊された公共インフラの復旧・復興の予算
6)全国の防災減災のための予算

数字はやや優先順ですが、そうとも限らないと思います。

このような
必要性に対して現在やっていることや必要だと思われる代表例は以下のものです。
カッコ内は端的な表現。
【グループA・テーマ】
1)自衛隊派遣・米軍のオスプレイ投入(国防・オスプレイ問題)
2)川内原発の運転維持(原発問題)
3、4)民間の集合住宅や施設を中長期避難のために使わせるための法的根拠(緊急事態条項)
5、6)緊縮財政を撤廃し長期的積極財政への転換(大きな政府の再評価)

1〜6のテーマ、必要性に対して反対している人たちがいます。
朝日新聞、東京新聞、共産党、民進党、自民党の一部、「市民団体」…など。
…それぞれ(共産党や「市民団体」は除いて)一枚岩じゃないんでしょうが、震災によって反対の論調が目立っています。

【グループB・反対論】
1)オスプレイ投入には「震災を利用した実績作り」だとする意見。
2)川内原発が事故を起こすから止めよという意見。
3、4)緊急事態条項は政府の暴走、独裁を許すという意見。
5、6)「国の借金」「財政均衡」を前提にした緊縮財政継続と政府の権能を小さくしたい意見。

グループAの認識は国民のためになることは全てやるということです。
現在の熊本や大分など被災地に必要で、将来的にも実際に役立つものばかりです。日本全国で。
慎重に考えれば、緊急時と平時を区別して選択的または限定的に行う必要性も含まれますが、全て必要なものです。

グループBの認識は特定のイデオロギーを満足させるものばかりです。
国民のためになるかどうかはイデオロギーによって歪められています。

グループBに特徴的なのは「反権力」「反体制」「現状維持」です。
「オスプレイは危険だ!」
「原発は危険だ!」
「国家の横暴を許すな!」
「大きな政府を作らせるな!」
こういった固定観念が国民の命より優先されている。

思想的な「断層」とでも言いましょうか・・・。

◯中CM

フィギュアスケーターの安藤美姫さんが、発災後に普段の生活を笑顔の写真とともにネットにアップして苦言を呈されていました。(被災地を心配するコメントも発信していたにも関わらずです…)
http://news.livedoor.com/article/detail/11424225/

拙ブログで先日『心の「断層」』と題した投稿で取り上げました。
http://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/entry-12151357633.html

一方で
モデルのダレノガレ明美さんが被災地を心配する意見を書くと「指で操作するだけじゃなくてなんか行動すればいいのに」と批判されたそうだ。
http://www.sanspo.com/geino/news/20160419/geo16041911560019-n1.html

それぞれ、擁護する意見もあるようですが、一種の「断層」が露頭しています。

普段通りにしてて批判され、心配すれば批判され、どうすりゃいいんでしょう?
黙ってれば良いのかな…(-_-)

 ◯Bパート

1)のオスプレイについて
開発時の試験運用期間の事故イメージでいまだに「危険だ」と言われています。
しかし、航空機などの試験運用時の事故はつきものですし、正式運用されて熟れてくれば事故は減っていくものです。
オスプレイは軍用機の中でも事故率は低い方なのです。
そして、運用実績は各地で積まれ、フィリピンの災害でも有効性が証明され、すでに確立されつつある。

オスプレイの特徴は、ヘリコプターより大量の物資・人員を高速で運べること、燃料あたりの行動範囲が広いことで、回転翼機と固定翼機のメリットを併せ持っています。
災害支援に極めて有効な機体であることが既に実績となっているのです。

「熊本地震を利用して実績を積むつもりか」との批判はあたりません。
というか、救難活動で実績が積まれることは被災者が助かることなんですから、喜ばしいことのはずなのです。

それに反対するのは国民のためではなく、特定のイデオロギーを満足させるために他ならないでしょう。

防衛省資料
http://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/osprey/pdf/dep_5.pdf

2)の川内原発については三橋先生もブログで述べていましたが、九州の電力事情からして川内原発止めるデメリットのほうがはるかに大きい。
原発が地震で大事故を起こす可能性はゼロではありませんが、女川原発が事故を起こさずに冷温停止できたことは評価すべきです。
福島第一原発の事故は大津波による全電源喪失でしたが、今回の地震では大津波が起こる可能性は低いのです。
今現在もそうですが、これから復興をしていくにも電気は不可欠です。
原発を止めても命を救うことになりません。むしろ危機が増します。
細心の注意を払いながら発電を続けるべきと思います。

それに反対することは国民のためではなく、特定のイデオロギーを満足させるために他ならないでしょう。

3)の緊急事態条項について
様々な論点があると思いますが、憲法を根拠にした法律によって緊急時の対応を阻害してしまうことが問題になります。
平時の法律のままでは、自衛隊などが私有地に入って活動するのに許可を得なければならないなど、一刻を争う事態に迅速な対処ができません。

車内泊で死者が出てしまいました。避難者の生活を改善しないと関連死が増えてしまいます。
民間施設への移転を行政が指導するためには法律の壁が邪魔になり得ますから、緊急時には一定の制限が必要だと思います。

それから、マスコミの活動が問題になっています。
発災から救難活動が落ち着くまではマスメディアの現地入りを制限することも必要です。
完全にシャットアウトしてはいけないと思いますが、救難活動を阻害したり、被災者の食料や燃料を消費してしまう(自衛隊は自前で活動できます)ことを避ける必要がある。

などなど、平時の法律が緊急事態の対処を阻害してしまうので憲法に規定されている「権利」を一部制限する必要が出てきます。
もちろん、緊急時ならなんでもできるわけではなく禁止規定も作られます。ネガティブリストですね。
発動期限も設けられます。
緊急事態には平時と考え方を変えなければ救える命も救えなくなります。

それに反対することは国民のためではなく、特定のイデオロギーを満足させるために他ならないでしょう。

4)以降については、常日頃から経済問題として当メルマガの諸先生方が述べておられますので割愛して要点だけ。
デフレ時に緊縮財政を継続することは日本全体の経済を縮小させることになる。
被災地を救うためには、他の地域の活力を削ぐことは絶対に避けなければいけません。
公共部門を解体して民営化を進める構造改革、小さな政府論は、緊急時に力を発揮するまっとうな「国家の力」を弱体化します。

長期的な財政出動、国土強靭化を猛烈に加速する必要があります。

それに反対することは国民のためではなく、特定のイデオロギーを満足させるために他ならないでしょう。

 ◯エンディング

とにかく、国民の命を守るために、現状で考えられる全てのことをやるべき時なんですよね。
躊躇するとしたら、特定のイデオロギーが思考を阻害していないか、疑ったほうが良いのです。

政府の震災対応は適切だと思いますし、自衛隊も国民の命を救うため黙々とがんばっています。

それに反対することは国民のためではなく、特定のイデオロギーを満足させるために他ならないでしょう。

地震国日本は、全国どこでも、常に緊急事態だと認識すべきです。

 ◯後CM

テレビシリーズ「ユーリ!!! on ICE」にキャラクターデザインで参加しています。
男子フィギュアスケートを題材にした日本初のアニメ作品。
http://yurionice.com/

テレビシリーズ「クロムクロ」のエンディングアニメーションを担当しました。
本編の画コンテでも参加しています。
戦国時代の武士が異形のメカニックとともに近未来の日本に現れる。
富山県を舞台にしたアニメ作品です。
http://kuromukuro.com/

平松禎史の個人ブログです。
http://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/

↓↓発行者より↓↓

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5年連続貿易赤字を続け、政府債務が
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【平松禎史】霧につつまれたハリネズミのつぶやき:第廿三話への2件のコメント

  1. 稲美弥彦 より

    緊縮財政を行うとドイツみたいな弊害が現れるのは間違いないです。ドイツは欧州中に緊縮財政を行った影響で難民を受け入れたにも関わらず難民問題では何も出来ない状況になっているのは間違いありません。ドイツは理想主義が強いが、それを対処するリスクが非常に引くように思えます。ルールは守るが、リスク対処が出来ないから理想主義が強くなると思います。『ドイツリスク』と言う本と、エマニュエル・ドットさんの『シャルリとは何か?』で今の欧州の病巣を見る事が出来る本だと思います。権力批判は重要だが、まずは欧米のダブルスタンダードには批判する姿勢は持っておく必要があると思います。

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  2. docholiday より

    今回の震災で、様々な日本の患部が露呈されました。その中でも、マスメディアの質が如何に低いが、露わになりました。こんなもの日本にいりません。緊急時に人の役にたたないのですから。日本は阿保病とでもいう、病に罹っています。現実を見ずイデオロギーに奉仕する連中が跋扈しています。官民問わず。橋下維新の時も、そうでしたが、一定の方向に国民を誘導しようとしています。

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