From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学
——————————————————-
●マスコミが語ることができない亡国への道
<無料>経済解説
「なぜ地方議員は党執行部に逆らえないのか?」
https://youtu.be/8GGn_ZgqiCA
もし、あなたが、子供や孫たちに安全で豊かな日本を引き継ぎたいなら、、、
この不都合な現実を知って声をあげてください。
——————————————————-
おっはようございま〜す(^_^)/
最近、本当に変な政策が多いですよね。
9月14日付の本メルマガで三橋さんが列挙なさってましたが、日本の社会を弱体化させる下記のような各種の「構造改革法」が今国会だけで成立しています。
「発送電分離を義務付ける改正電気事業法」、「外国人家事労働者(家政婦)の受け入れを解禁する改正国家戦略特区法」、「JA全中を一般社団法人とする改正農協法」、「派遣労働の常態化を進める改正労働者派遣法」(参院は未通過)
他にも、事実上の移民解禁に向かうといってもよい外国人労働者の受け入れ拡大策が、数日前も報じられていました。
「法務省、外国人受け入れ拡大を検討 労働者不足に危機感」
『東京新聞』2015年9月15日夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015091502000254.html
以上のように、最近は、家事労働者を含む外国人労働者の受け入れ、派遣労働の常態化推進、あるいは拙著『英語化は愚民化』で問題にしたような英語偏重の教育改革など、普通の国民感覚では、なかなか受け入れがたい政策が、どんどん決まっていきます。
(_・ω・`)
これはなぜなのでしょうか。
一つの大きな要因は、「近年、グローバル市場で活動する(日本の)グローバル企業の利益と、日本国内に生活の基盤を持っている大多数の国民の利益との間に、大きなズレが生じるようになっているのにもかかわらず、財界団体が以前と変わらず大きな政治的影響力を保持したままであるから」と言えるでしょう。
1990年代後半以降、「グローバル・スタンダード」を目指すという名目で各種の構造改革が行われた結果、日本経済は急速にグローバル化が進みました。
例えば、東証上場企業の株式の外国法人による保有率は、1990年はじめごろまでは5%程度に過ぎませんでしたが、現在では、31%を超えています。
また、日本の大企業の多くが、約20年続く日本のデフレ不況に嫌気を差し、国内市場ではなく、海外市場で商売をするようになっています。
経済のグローバル化の進展以前は、「日本の大企業の利益」(財界の利益)と「日本の国民一般の利益」は、かなりの程度、一致していましたが、グローバル化の進んだ現在では、この二つの利益は、大きく乖離するようになったのです。
かつては、多くの企業が国内市場で主に稼いでいましたので、例えば、国内の賃金引き上げに企業は比較的容易に同意しました。賃金の定期的上昇や雇用の安定は、国内の需要を増進する効果があるため、労働者のみならず、企業側の利益でもあったからです。
しかし、グローバル化以降の日本の大企業は、デフレの続く国内市場を重視しないところが少なくなく、賃金を引き上げる動機づけはあまり生まれません。国内の人件費はなるべく安くし、また、好不況に応じて柔軟に雇用を調整できることが好ましいと考えられるようになりました。
したがって、1990年代以降、派遣労働の規制が次第に緩和され、非正規雇用が大幅に増えていきました。今回の派遣法改正は、専門職以外の派遣労働はあくまでも一時的措置に過ぎないものだという建前も取り除き、派遣労働の常態化を実質的に進めるものです。
派遣法の改正は、グローバル企業の影響力の強い財界にとっては有利でも、国民一般の観点からみれば、雇用の不安定化や低賃金の固定化につながり、あまり望ましくありません。デフレ不況をさらに深刻化させるものでもあります。
労働市場への女性の取り込みを狙う「女性の活用」の一環としての外国人家政婦の解禁など、外国人労働者の受け入れ策も同様です。
その他、発送電分離などの電力市場の自由化や、三橋さんが新著で論じている農協改革などの「岩盤規制の打破」の政策も、規制を緩和することによって、デフレ下ではなかなか得難いビジネスチャンスを開放するという点で財界からみれば歓迎されるものでしょう。
しかし、国民一般にとって、「岩盤規制の打破」なるものは、メリットよりもデメリットがはるかに大きい政策だと言えます。エネルギーなどの社会的インフラや食料は、国民生活の基盤です。それらを直接的にグローバル市場の論理に晒すことは、多くの人々の生活基盤を不安定化させ、国民の長期的利益が損なわれる危険性が高いからです。
このように、奇妙な政策が連発される一因は、グローバル化以降、「財界の利益」と、「国民一般の利益」との間のズレが拡大したことです。
「国民一般の利益」とは異なる他の団体の利益が政治に過度の影響を与えることは、どうにかして避けなければならないと考えられるのが普通です。
例えば、いわゆる「政教分離」の原則は、特定の宗教団体の利益が政治に強い影響力を及ぼすことを禁止するのが目的の一つです。
ほとんどの場合、ある宗教団体の信者は、国民全体のごく一部に過ぎません。また、外国にも多数の信者がいる場合もあります。その場合、その宗教団体が政治に関われば、国民一般の利益ではなく、それとは異なる「信者の利益」のほうが優先されてしまう恐れがあります。
それゆえ、「国民一般の利益」が、宗教団体の利益に脅かされることがないよう「政教分離」の原則が重視されるのです。
(ちなみに日本国憲法では、次のように書かれています。「…いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」(第20条第1項))。
また、言うまでもなく、外国人に参政権や政治家に対する政治献金を認めていないのも、あるいは放送法などで外資の出資規制が定められているのも、「国民一般の利益」が、利益を異にする外国人や外国の団体の政治的影響力によって脅かされないようにするためです。
前述のとおり、現在は、グローバル企業の影響力の強い「財界の利益」は、「国民一般の利益」と必ずしも一致せず、少なからぬズレが生じている場合が多いのです。
だとすれば、政府は、財界ともっと距離をとる必要があります。「政教分離」ならぬ、いわば「政財分離」(政治と財界の分離)の必要性を意識しなければなりません。財界の言い分が国民一般の利益にかなうものなのかどうか、政府は、厳しく吟味・検討する必要があります。そして財界の主張が国民一般の利益と乖離している場合は、国民一般の利益がビジネスの論理に侵食されないよう、適切な規制を講じる必要があります。
強い政治的影響力を持った場合、政治が国民一般の利益を目指すものではなくなってしまう恐れが生じるという点では、現在の財界団体は、宗教団体や外国人集団とさほど変わりません。
もう数年前ですが、中野剛志さんが、経済産業省の今後のあるべき姿を問われ、経産省は「経済安全保障省」であるべきだと回答していました(「耕論 どうした経産省」『朝日新聞』2011年11月22日付朝刊)。
グローバル化した現在では、「先進国では輸出が伸びても国内賃金が上がらず、輸出企業の利益と国民の利益が一致しなくなった」。こういう時代では、「産業を所管する官庁は、企業の利益と対立してでも経済を規制し、国民の長期的な利益につながる事業や地域共同体にお金が回る仕組みを作る必要がある」。「これから経産省が果たすべき仕事は、国内市場の防衛と、エネルギー安全保障や安全対策の強化、お金を国民の長期的な利益になる方向に回すことです。グローバル化を推進するのではなく、国民の利益を守る「経済安全保障省」であるべきなんです」。
つまり、経済のグローバル化の進む現在では、グローバル企業に主導された財界の利益と、国民一般の利益が齟齬をきたす場合が往々にして生じる。その際、経産省は、あくまでも国民の長期的利益の保護という観点に立つべきで、その結果として、財界の主張と対立する場合もありうるし、必要があれば、そうしなければならないということです。
私は、中野さんの見解はまったく正しいと思います。
さらに言えば、当然ながら、経産省以外の他の省庁も、経済のグローバル化が進む現状では、「政治と財界の分離」の必要性を明確に意識し、自分たちの役割とは、国民の長期的利益の保障であることを肝に銘じてほしいものだと思います。
つまり、農林水産省であれば、「グローバル化の時代だから、農協は改革し、農業は輸出産業にしなければならない」などと簡単に言うのではなく、国民の食料安全保障や日本の国土保全という長期的観点に立ち、政策を練るべきでしょう。
あるいは、文部科学省であれば、「グローバル化・英語化は不可避的な時代の流れなので、小学校での英語正式教科化や大学の授業の英語化を推進すべきだ」などと安易に考え、やみくもにグローバル化路線を推進するのではなく、児童・生徒の心身の健全な成長、日本の学術や文化、科学技術の発展、伝統文化の保護・継承のためには、いかなる文教政策が求められるのか、そのなかで諸外国の言語や文化の学習、あるいは諸外国との交流はいかに位置づけられるべきか、などの問いを真剣に考察してもらいたいものです。
いつもながら長々と失礼しますた…
<(_ _)>
<施 光恒からのお知らせ>
拙著『英語化は愚民化──日本の国力が地に落ちる』(集英社新書)
よろしく〜 (^_^)/
http://shinsho.shueisha.co.jp/se/
**** メルマガ発行者よりおすすめ ****
●農協改革は単なる不動産ビジネス・・・?
●なぜ、日本の農業は強くならないのか・・・?
●この改革で誰が儲けるのか・・・?
●月刊三橋最新号のテーマは「農協改革」。
マスコミや国会議員も語ることができない「亡国」への道とは?
<無料>経済解説
「なぜ地方議員は党執行部に逆らえないのか?」
https://youtu.be/8GGn_ZgqiCA
*****************************
【施 光恒】「政財分離」の必要性への1件のコメント
2015年9月19日 11:23 PM
グローバル化とはルール(規制)無き競争では。多くの国民は生活のために競争しているのであって、競争は生活のための一手段でしかないだろう。ルール作りとか交渉を謳いつつ妥協しまくりのTPPや国際的な交渉が大事と謳いつつ国内の話し合いのルールすら守れない野党。何がしたいのか。グローバル化のためのグローバル化とか交渉するだけで大喜びとか止めて欲しい。流行じゃなくて常識(共約可能な国民同士による秩序維持とか安全保障)に基づいて政治して欲しい。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
コメントを残す
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です