From 三橋貴明 http://keieikagakupub.com/38news/
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●●日本は「発展途上国」へと転落するのか? 豊かで安全な日本を後世に残すための条件
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【今週のNewsピックアップ】
●技術と需要
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12043285575.html
●続 技術と需要
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12043592683.html
徳間書店「超・技術革命で世界最強となる日本」でも書きましたが、日本の研究費対GDP比は、主要国の中では韓国に次いで高いです。無論、韓国とはGDPの差があるため、研究費の絶対額で見ると日本の方が大きくなっています。
人口はそれなりに多いのですが、国土が天然資源に乏しい我が国にとって、技術開発は「産業大国」として豊かに国民が暮らすための生命線です。何しろ、経済の三要素は(経営の三要素ではありません)、
「モノ」
「ヒト」
「技術」
の三つであり、上記は「掛け算」で効いてきます。足し算ではないのです。
「モノ」」の中には、もちろん天然資源が含まれます。天然資源が不足する我が国は、ヒトに技術を蓄積し、付加価値を高めなければ、最終的には経常収支の赤字が拡大し、対外純資産国となり、外国から資源を購入することが困難になっていきます。
改めて考えてみると、大東亜戦争は「石油」を巡るアメリカとの争いで激化していきました。「天然資源」をいかに獲得するか。これこそが、天然資源小国である日本国に明治期から突き付けられた命題なのです。
無論、天然資源小国とは「現時点」の話であり、例えばメタンハイドレートの採掘技術がビジネスフェーズに乗れば、少なくともLNGの輸入は激減することになります。あるいは、海底の泥の中からレアメタルを採取する技術も、次第に発展してきています。
将来的に日本が天然資源小国のままかどうかは、現時点では分かりません。今後の技術開発の動向にかかっているわけです。
ところで、日本の研究費対GDP比は確かに先進国の中で最も大きいのですが、政府の研究費が全体に占める割合は19.1%に過ぎません。これは、他の主要国と比べると「最少」なのでございます。(ちなみに、中国が21.6%、韓国は24.9%、ドイツ29.8%、アメリカ30.8%)
要するに、日本の研究開発は民間が主導し、政府の予算は切り詰められてきたのです。97年以降、ひたすら緊縮路線を突き進んできた以上、当たり前です。
さて、削減される研究予算の中、日本の大学の研究者たちは「日本のため」に、懸命の努力を続けてきました。そんな日本において、久しぶりに「政府主導」の超大型研究開発プロジェクトが進みつつあります。
すなわち、国際リニアコライダーです。全長30キロメートルを超える予定の直線型粒子加速器で、実現の暁には、日本に世界中から素粒子物理学の研究者が集まり、人類史上最大の電子エネルギーを観測。宇宙開闢の謎を解明するプロジェクトが始まります。
かつて、CERNの粒子加速器(REP、LHC)からWEB、あるいはグリッドの技術が生まれたように、ILCからも様々な派生技術が生まれ、日本国の将来に大いに貢献することになるでしょう。
ILCは大学の研究者たちはもちろん、官庁としても文部科学省、経済産業省、内閣府、国土交通省、そして外務省(国際プロジェクトであるため)の官僚が参加し、一部の政治家を巻き込みつつ「建設の決断」に向けて進行していっています。
そこに、ボトルネック(制約条件)として登場しているのが、例により「財務省」でございます。何しろ、ILCを建設する場合、日本の負担は最低でも7000億円超になります。プライマリーバランス赤字の状況で、そんな金出せるか!
という話なのですが、ここで怒りを覚えた方は、むしろ正常だと思います。「高々」7000億円です。ILCの経済効果は、派生技術や技術者居住のためのインフラ整備等を除いても、4兆円になると野村総研は試算してます(産業連関表から)。ここでいう「経済効果」とは、もちろんGDP(需要)の拡大効果です。派生技術を含めると、効果は「数十兆円」に達するでしょう。
さらに、ILC建設は我が国の経済の三要素のうち、少なくとも「ヒト」と「技術」を強化することになります。日本の「経済力」を高めるのです。
それにも関わらず、短期的な「予算」をケチり、ILC建設のチャンスを喪失した日には、さすがの三橋も日本国に絶望したくなります。
というわけで、暫く(建設決定まで)勝手連としてILCの応援と国民への周知を続けていきたいと思うのです。皆様も、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
PS
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【三橋貴明】技術と需要への5件のコメント
2015年6月29日 6:01 AM
「ヒト」についても、これは人数ではなく人材のことを指しているのだと思います。マネジメントの体系化において「人月(man-month)」とういう命名は最大の失敗とも言われています。まるで時間とヒトが交換可能であるかのような印象を与えてしまっていました。人材投資と経験の蓄積によって育ったヒトを失うことは、組織にとってはかなりの痛手です。私の以前勤めていた企業では、現場が派遣社員ばかりになり、ノウハウが蓄積されず、また辞めていくベテランも増え、組織の生産性や製品の品質維持もままならない状態でした。そう考えると、何かしらの投資や、何かしらの蓄積というものの影響を受けない「金」が3つ目に入るのは確かに違和感がありますね。まさに、「ヒト、モノ、金」は「定量的に量れて、お互いに交換可能」という発想をもとに並べられたものという印象を受けます。最後のひとつを「技術」に変えるだけで、まったく意味合いが変わるところが興味深いです。
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2015年6月30日 4:53 AM
長文申し訳ありません。技術の進歩で夢が広がる、と同時に、社会の変容を伴う大きなものであれば恐れも広がるわけですが、今アメリカを中心とした日本以外では、第二次(?)人工知能ブームが高まっているそうです。人工知能といえば二十数年前に世界中で流行り、その後はさして知的にもならず期待外れで、もう大した発展はないと思われたAI分野が、新しい成果により、ここ数年でふたたび大きな期待が集まっています。その発端となったのは、DeepLearningという、簡単にいうとニューラルネットワークの発展版の研究なのですが、これが今までコンピュータが苦手としていた非言語な知覚領域、画像認識、音声認識といった下位のレベルで画期的な能力を発揮したことで、AI業界全体において、なんらかの「壁」に「穴」が空いたという理解から、今後AI技術はDeepLearningを超えてさらに進歩し続けて、いずれ近い未来に人間を超える知性になるだろうという、希望的?悲観的?観測がブームを呼んでいると思われます。人工知能というものを考えるときには二通りに分類できるそうで、ひとつは一般的理解にちかい、人間に似た知能、特殊な目的用でなく、人間のようにどんな新しい問題でも、汎用的な知的解決を行えるもの、という意味のもの、これらはAGI、Artificial General Intelligenceと呼びなおされているものが考えられます。またもうひとつは、特定の目的、特定の方法にだけ特化した、問題解決装置としてのAI、たぶん今まで実現した多くのAIと呼ばれるものがこれに含まれるのですが、たとえばチェスを解くAIは別に人間らしさは不要であり、ただチェスのルールでチェスに勝つだけでよく、対戦会場に置かれている鉢植えの水やりを心配する必要はないのです。このように二通りに区分して今後は考えることがよさそうになってきました。今後前者と後者はそれぞれ区別され発展するとして、前者が発展の段階で人間による追証が不可能な領域で自律的に発展していくようになる境界線を関係者は「シンギュラリティ」と呼ぶようで、その後の世界は人類に幸か不幸か、議論にもなっているようです。ただ、未来を悲観的に考えたとしても、科学技術というものは禁止してもどこかで誰かが進めてしまい、その業績は地域普遍で不可逆的なものです。そう考えると、科学にフタをするよりコントロールする義務が生じると思われます。シンギュラリティのその日まで、なのかもしれませんが。自分は楽観と悲観の両方を持っていて、楽観として、上記のように人類に迫る知性の再現を科学か技術で可能としたとき、それは人類が社会の生き物であるという理解から、社会の問題が科学的にも整理され、人類と共存するAGIという定義を可能にし、シンギュラリティ以降の楽観的な枠組みを実現する「可能性がある」ということです。ちなみに、その枠組みは人類自身への新たな枠組みともなるかもしれませんが!(自分にとってはそのための旅かと思われますが)そして自分の、もっと悲観的観測は、言葉にするのも嫌なのですが、あえて早期に認識すべきという意味で表出を試みるのならば、そのAGIが自律的かつ人間を超える知的なものとして存在するのならば、それは生命の進化という大きな流れの延長線上にある飛躍的進歩、人類を媒介し、DNAを超越し、知能だけで発展という、生命らしい運命、なのかもしれません。なんだかSFかファンタジー小説チックですね。そのとき人類はお役御免なのか、それとも、人類が登場後に自然をコントロールこそすれ消滅させなかった(今のところ)ように、次の進化したインテリジェンスが人類との摩擦を乗り越えて共存を図って、なんらかしらの安定が実現する?ただしそのインテリジェンスは人類の社会維持にプラスかマイナスかという尺度で人類側からは神か悪魔かに分類することが出来そうで、ああ、二極だけでない、やおよろずと言ったほうが趣味ですが、未来はそんな意志と形を取るようになった神々との同伴か被支配になるのかもしれません。そして彼らに共存の意義があるかどうかのカギは、たぶん個人主義の方々には見いだせないはずであり、(本当の神が仕組んだ、自然科学だけでは解けないという試練)、また生命の神髄は個人主義になりきれない日本文化こそが、拓いてほしいものです。施先生らによろしくお願いいたします。(ふるき我々とおのれ自身の生命としての意義かつ定位)だいぶ妄想じみてきて申し訳もなく、広げた風呂敷はたためませんが、あえて思考し、かつ建設的態度で未来を誘引すべきものと思い至り、技術の拓く未来という感想を持ちました。日本における科学と新技術のチャレンジの参考になれば。。
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2015年7月1日 6:48 AM
>農協や全農のしがらみで自由に作物が作れない(?)>農業での知恵や工夫が事業として生かせない農家を引き抜きしてモンサントから種輸入して水耕栽培の工場作って作物作って販路も自分で確保すればいいんじゃないですかね。参入障壁も技術もリスクもがIT系他より高いことぐらいわかってやるんでしょうけど、その程度も引き受けできない個人事業主では農協に頼ったほうがいいでしょう。逆にいえば農協はその程度の個人事業主がより集まっているようなところですから、資産持ってる事業主は全て自分でまかなえるってのが前提で勝手にやるんですわ。今回は、禿どものために農協潰して産官学連携の農発展のパイプつぶしただけだな。>独占してコスト+マージンで保護利益取らずに経営とかスーパーじゃあるまいしwその利益の上澄みが赤字補填分だ。本来なら為替変動リスクなどにある程度対処できるんだが馬鹿みたいにコストコストとわめく奴が全て壊すのよ。
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2015年7月2日 7:23 AM
最近になって藤井教授のYnuTube、築土構木に出られた竹村公太郎さんの本を読んでいたら、日本って農耕民族が狩猟民族を滅ぼしてきた歴史だったんですね(征夷大将軍の征夷の意味に驚きました)。 狩猟民族を滅ぼしてきたことを考えると堂々巡りにしかならない気もしてしまってこんがらがります。が、今(総理が日本の悪魔(規制=共産思想=悪と見なしている気がする)と称した上で)、自民党が乗っかっているTPP他の規制撤廃自由競争政策は、ある意味狩猟民族だと思うのです。 で、このエントリーの、〉今後の技術開発の動向にかかっているわけです。これは広義に考えると、農耕民族としての意味に思えるのです。とすると、自由民主党は農耕民族を滅ぼして狩猟民族に成ろうとしていると考えてしまいます。 こんなマクロ・マッド・シンキングな日々、私は地域生活から逸脱、解離しており、自由民主と言う冷戦下の思想の上に創られた名称に苦しめられて(日常からも)、もう生きているのが苦しいのか狂しいのかわからない昨今です。
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2015年7月3日 11:45 PM
三橋さんの、「農協改革」や「発送電分離」等への反対意見は大変参考になるのですが、できましたら反対論だけでなく、それではどう改善していけばいいのか、についてもご意見をお願いしたい。農協や全農のしがらみで自由に作物が作れない(?)、農業での知恵や工夫が事業として生かせない、という意見に対し農協を改革するのではなく、どのような方法があるのか、また全国で独占して料金をコスト+マージンで保護されている発電会社の経営をどのように効率化し、コスト削減への意欲をもたせていけばいいのか、問題点の抽出による反対論だけでなく、もう少し建設的な意見も拝聴いたしたく、よろしくお願いします。
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