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2015年4月24日

【上島嘉郎】安倍談話に望むこと(その四)

From 上島嘉郎@ジャーナリスト(『正論』元編集長)

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●●憲法9条は日本の誇りなのか? 国家の危機の原因か?
月刊三橋最新号のテーマは「激論!憲法9条〜国家の危機に備えるために」

https://www.youtube.com/watch?v=4OQ4DnbgVS0&feature=youtu.be

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この3月9日に都内で開かれたシンポジウムのパネル討論で、安倍晋三総理に「“日本が侵略した”と言ってほしい」と語った「21世紀構想懇談会」座長代理の北岡伸一氏が、4月10日に都内で開かれたシンポジウムでは、戦後50年の村山富一談話に明記された「植民地支配」や「お詫び」の表現の踏襲にこだわるべきではないとの認識を示しました。

「戦後50年と70年で言うことが多少違ってくるのは当然」とのことですが、はてさて、この人は一体安倍談話をどのように方向付けしたいのか。

北岡氏の発言は、不用意ではなく、もしかしたら氏なりの目論見があっての計算づくで、「安倍談話」に関する国民の意識を、ただ「侵略」や「お詫び」といった言葉の有無や、そうした言葉に集約される歴史認識の単純化に向けさせようとしているのではないかという気すらします。

新聞各紙の社説も、「侵略」という言葉に焦点が当てられ、複雑な歴史の流れの中で日本がどれほど苦闘したかに、国民が思いを馳せることを求める調子はまったくありません。まるで第三者の歴史を糾弾する眼差しです。

たとえば読売新聞(平成27年4月22日付)は、
「戦後日本が侵略の非を認めたところから出発した、という歴史認識を抜きにして、この70年を総括することはできまい。(略)侵略の定義について国際法上、様々な議論があるのは事実だが、少なくとも1931年の満州事変以降の旧日本軍の行動が侵略だったことは否定できない」と書きました。

毎日新聞(同)も、「『先の大戦の反省』とは、国際的には侵略の事実を認めることと同義だと言ってもいい。(略)侵略という言葉は戦後50年の村山談話と戦後60年の小泉談話に盛り込まれ、国際的にも確立された日本の公的な認識になっている」という。

読売は、「侵略の定義について国際法上、様々な議論がある」と述べながら、その議論の中身に触れることはありません。

毎日も、侵略とはいかなる行為かという前提には一切触れず、日本は侵略をし、「侵略の事実」を認めることが先の大戦の反省だという。

この二紙に限らず、約めて言ってしまえば、日本のマスコミのほとんどが、日本は東京裁判史観を墨守するしかない、安倍談話もその範疇で出されるべきだと主張しているのですね。

しかし、日本国民が理解しておかねばならないのは、法の不遡及の原則で、先の大戦を含めそれ以前に国家による侵略が定義され、それを犯罪とみなすことが国際社会で成立していなければ、それを追及することは出来ないということです。
読売も毎日も、この点を、厳密に検討しようという誠実さを持ち合わせず、東京裁判史観を全き是としているわけです。

彼らは、日本糾弾のためなら、「法による正義とは何か」に関心はないのですね。

余談ですが、東京裁判の進行中に徳富蘇峰が東條英機の弁護人だった清瀬一郎に宛てた激励の手紙にはこんな件があります。

「今日において最も不愉快なるは本邦言論界の本裁判、特に尊先生(*清瀬一郎のこと)に対する態度なり。対手国側の言論界はともかくも、自国側の言論界は今少しく日本人らしくあるべき筈のところ、まるで他邦人口調では到底、箸にも棒にもかからぬとは此事と存候」

日本のマスコミの姿勢は、あの頃も、今も変わらないのですね。

さて、大東亜戦争以前にパリ不戦条約というものがありました。

第一次世界大戦を経験した国際社会で、国際紛争を解決する手段として、締約国相互での戦争を放棄し、平和的手段によって紛争を解決することを規定した条約です。

はじめフランスとアメリカの協議から多国間条約に繋がったことから、当時のアメリカ国務長官フランク・ケロッグと、フランス外務大臣アリスティード・ブリアン両名の名にちなんでケロッグ=ブリアン条約ともいいます。

昭和3年(1928)、米英独仏伊日といった当時の列強15カ国が署名し、その後、ソ連など63カ国が署名しました。

この条約の第一条と第二条を挙げておきます。

○第一条 締約国ハ国際紛争解決ノ為戦争ニ訴フルコトヲ非トシ且其ノ相互関係ニ於テ国家ノ政策ノ手段トシテノ戦争ヲ放棄スルコトヲ其ノ各自ノ人民ノ名ニ於テ厳粛にニ宣言ス

○第二条 締約国ハ相互間ニ起ルコトアルヘキ一切ノ紛争又ハ紛議ハ其ノ性質又ハ起因ノ如何ヲ問ハス平和的手段ニ依ルノ外之カ処理又ハ解決ヲ求メサルコトヲ約ス

どこかの国の憲法九条に似ていますが、それはここでは措くとして、この不戦条約は、侵略の定義のほかにも多くの不明確な点を含んでいて、あらゆる戦争を禁じる効力を期待する国はありませんでした。

たとえばアメリカは条約批准に際し、自衛戦争は禁止されていないとの解釈を打ち出し、自国の勢力圏とみなす中南米に関してはこの条約は適用されないと宣言しました。

さらに米英両国は、自国の利益にかかわることであれば国境外で軍事力を行使しても、それは侵略ではないとの留保を行っています。

興味深いのはケロッグ国務長官の、条約批准の是非を審議する議会での答弁です。
概略ケロッグは、「戦争が出来ない条約ではなく、侵略戦争を防ぐための条約である」と答え、
侵略戦争の定義についても、「他国が軍隊をもって国境を越え攻めてくることだけが侵略ではなく、経済的に重大な被害を受けることも侵略に晒されたことになる」と述べ、侵略に対する自衛戦争は認められると断言しました。

イギリスも同様の考え方でした。

このケロッグの解釈を日本に当てはめれば、当時のABCD包囲網、石油の全面禁輸のような経済封鎖も「侵略戦争・戦争行為」に当たります。

日本経済、国民生活がアメリカからの石油輸入に依存していたことを考えれば、まさに日本が米英との開戦に踏み切ったのは、「自存自衛」のためと言って詭弁ではないのです。

日本は米英他から甚大な被害を受け、ケロッグの定義にしたがえば、日本はすでにアメリカとの戦争状態にあった。したがって、自衛のための軍事力は行使できる、ということです。

これは、戦後のいわゆるマッカーサー証言と符合するものです。

「日本は絹産業以外には固有の産業はほとんどない。(中略)
綿がない、羊毛がない、石油の産出がない、錫がない、ゴムがない、その他実に多くの原料が欠如している。もしこれらの原料の供給を断ち切られたら、一千万から一千二百万の失業者が発生することを彼ら(日本)は恐れていました。
したがって、彼らが戦争に飛び込んでいった動機は、大部分が安全保障(自衛)の必要に迫られてのことだった」
(1951年5月3日、上院軍事外交合同委員会で行われたアメリカの極東政策をめぐる公聴会での発言)

A級戦犯の代名詞のように言われる東條英機は、東京裁判における「宣誓供述書」でこう述べました。

「私は最後までこの戦争は自衛戦であり、現時承認せられたる国際法には違反せぬ戦争なりと主張する。私は未だかつてわが国が本戦争を為したことをもって国際犯罪なりとして、勝者より訴追せられ、敗戦国の適法なる官吏たりし者が個人的な国際法上の犯人なり、また条約の違反者なりとして糾弾せられるとは考えたこととてない

これは、戦勝国が受容しようがしまいが、日本の戦争動機として、歴史の事実を踏まえた正当な主張と言うべきです。
この裁判で、日本人被告全員無罪の判決を書いたパール判事は、こうした経緯に鑑み、不戦条約を破ったとして日本を断罪することはできないと主張したわけです。

ケロッグやマッカーサーの発言、それに符合する東條英機の発言、これらを日本国民が自らの歴史の検証のために顧みることは、けっして先の大戦の反省に矛盾するものではないでしょう。

新聞もテレビもこれに全く触れることなく、安倍談話の歴史的意味を「侵略」や「お詫び」の言葉の有無に矮小化し、敗戦国のままの意識にとどめようとするのは、東京裁判史観に侵されたまま、自らの頭で物事を考え、主張することを放棄した者の姿勢と言わざるを得ません。

PS
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【上島嘉郎】安倍談話に望むこと(その四)への2件のコメント

  1. たかゆき より

    L'espoir♪上島さまの仰せのとおりです。当時の世界常識に鑑み日本国は当然の行動を選択したのであり東京裁判に正当性はなく日本国に戦犯など存在しない。 と毅然として宣言なさる総理大臣が現れるであろうその日を心の底から待ち望んでおります。

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  2. 神奈川県skatou より

    現状ネットが素晴らしいと感じられるのは後に残る素早い言葉のメディアだということです。テレビやラジオ、新聞まで、その場限りの書き捨て、流し捨ての、音のように消えていく情報であることに対して、今日このような先生の記事は文章として残り、インターネットで随時、即時、日本中(世界中)から繰り返し、なんども検索され、参照されるということです。今の世代の若者、気づいていて、でも上手く説明できない、そんなお話を、先生の文章を読んで具体化、記憶、引用、再利用することができます。そして我々の会話が少しずつ変わり、やがて大きくも静かな、潮のような盛り上がりになるのだと信じております。自分は自分の祖父、祖母らが、悪逆非道の旧日本人だとは到底信じられなく、むしろ戦後平和教徒らの、理屈で人の価値を切るような心貧しい人よりも上等だったと考えます。そして消えていく彼らの「戦争はもういやだ」というコトバの裏には、もしかすると、こんな平和宗教家しか残せなかった親世代である自分たち自身の行いへの反省、戦前戦後の断絶による、自分たちの過去の奮闘の人生の完全否定という残念さが、集約しているのではないかと、今さらながらにさびしく思われます。私の恩師のことば「戦後の日本人は別の日本人のようだ」が忘れられません。「溶け行く先をどうするか」は君たち世代だよと諭されました。

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