From 柴山桂太@滋賀大学准教授
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●世界を動かす力の正体とは?
https://www.youtube.com/watch?v=xSpcGUoATYk&feature=youtu.be
※※月刊三橋『激流グローバルマネー』より
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TPP交渉が大詰めを迎えていると報じられています。これで何回目でしょうか。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150218/k10015566411000.html
ただ、今回は妥協案の具体的な中身が出始めていますので、交渉は以前よりはだいぶ進展しているものと思われます。近いうちに日米で、何らかの動きがあるかもしれません。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS24H25_U5A120C1MM8000/
ただ、相変わらずアメリカ側の譲歩案が出てきません。コメ、牛肉・豚肉などで日本が譲歩するという報道が正しいとして、アメリカの側にも何らかの譲歩(例えば自動車関税撤廃)がなければ、フェアとは言えません。
オバマ政権はいまだ議会から、必要な交渉権限を取り付けていません。米議会は、「日本が円安誘導して勝手に対米輸出を増やさないように、TPPに為替操作を禁止する条項を導入しろ」と言っています。
為替条項が導入されれば、日銀に限らず加盟国の金融政策がTPPで制約されることになります。最悪の主権侵害というべきで、そんな条件を日本が飲めるはずがありません。
もっともアメリカの議員も、為替条項に実現可能性がないことが分かっているのかもしれません。それでも日本に圧力を掛けているのは、交渉をアメリカ有利に進める意図があるか、アメリカが安易な妥協をしないようオバマ政権に圧力をかける意図があるのか。おそらく両方でしょう。
背景には、アメリカの貿易赤字があります。このところアメリカの景気は良くなっていますが、英エコノミスト誌はふたたびアメリカの対外赤字がひどくなっていると警告しています。2014年の経常収支赤字はGDPの3%で、リーマンショック前の4%にふたたび近づいているとのこと。
http://www.economist.com/news/leaders/21643188-world-once-again-relying-too-much-american-consumers-power-growth-american-shopper
背景には原油安やドル高で、個人消費が刺激されているという事情があります。上記記事には「アメリカの家計債務の対所得比率は、危機前の120%から100%に下落したが、それでも消費者は新たな借金をする意欲に溢れている」とあります。今後、グローバル・インバランスに家計債務という、リーマンショック前の状況がふたたび回帰してくるかもしれません。
いずれにせよ、対外赤字が増えればアメリカ議会は為替問題に敏感になりますし、TPPなど貿易交渉においても態度をさらに硬化させることでしょう。
そんな中、面白い記事を見つけました。「TPPは本当に必要か」をアメリカの側の視点から論じた記事です。
http://jp.reuters.com/article/jpUSpolitics/idJPKBN0LM0JT20150218?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0
過去の自由貿易協定によってアメリカの雇用は減った。製造業からサービス業に労働者が流れ込んだことで、サービス業の実質賃金も減った。消費財は値下がりしたが、中間層の賃金減少分は補えていない。TPPは本当の中間層に必要なのか、という内容です。「所得格差と戦い、中間層の雇用喪失に努めること宣言しているオバマ大統領が、TPPを推進しようとしているのは、おかしな話だ。」たしかにその通りです。
中間層の復活は、日本も他人事ではありません。いったい何のためにTPPが必要なのか、アメリカの側でも議論が起きています。日本国民も引き続き、この交渉に注目していくべきでしょう。
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PS
世界を動かす力の正体とは?(月刊三橋『激流グローバルマネー』より)
https://www.youtube.com/watch?v=xSpcGUoATYk&feature=youtu.be
【柴山桂太】TPPはアメリカのためにもならないへの3件のコメント
2015年2月19日 11:18 PM
>近いうちに日米で、何らかの動きがあるかもしれません。 先日、外資系ニュースサイトに、「オバマにTPA(でしたか?)を与える」との報道がされていました、決まっちゃうのでしょうか。明治初期を取り戻すに等しいのでしょうか。軍事力を取り戻すにもマイナス成長且つ緊縮財政、先には3年殺しも待っているし、10%で6年殺し‥‥
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2015年2月21日 8:12 AM
つまるところ、2国とも現状維持をしたいという願望の表れではないか。TPP交渉にあたり、日本政府が譲歩するのは米国追従を続けるに都合がよいから。自国民に米国のプレゼンスを強く見せる事が何よりもその素地になるからであろう。しかし交渉の結果、米国が弱く自国の繁栄に資さないという話になると、次に追従するのは中露どっちだ(あるいは独立か)という話になり、かつて社会主義化を避ける為に米国追従を決めた戦後政治の否定になった上、政治的混乱が生ずる問題がある。米国にとっては保護国状態であった日本が分離する事で、中東ウクライナの一件で失墜した威信をさらに失墜させる事になりかねない。加えて、自由貿易協定が自国経済にプラスで無いかも知れないという事実がより鮮明になり、これは米国の理想主義戦略の否定になった上、政治的混乱が生ずる問題がある。結局、TPPは交渉する内にお互いに都合が悪いのが明らかになったが、打ち切ってもお互いに都合が悪いので、交渉中という現状維持が協定になっていると言う事なのか。
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2015年2月21日 9:42 PM
大多数の日本人と大多数の米国人が反対するTPPを、少数の日本人と少数の米国人が決めようとしているわけですね(雑だな〜と思いつつ)。民主主義社会では妥結するはずのない協定が大詰めを迎えていると…。無関心?反TPPでまともな政党が存在しない?どこまで日本が譲歩しても、米国がさらなる要求を突きつけるという状況が、永遠に続くことを祈るしかないのでしょうか?
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