From 佐藤健志
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先週の記事「演劇の『足し算プロデュース』」
ここでは、わが国の演劇界(の大部分)において
総キャパ(公演に来て下さるお客様の数の最大想定値)=
という公式が成立していることをご紹介しました。
しかるにこれは、以下の前提なしには成立しません。
ある公演にたいする観客の期待(=観に行きたいと思うかどうか)
よって、このような姿勢は「スター主義」と呼ばれます。
けれどもスター主義は、本来正しいものではありません。
演劇の魅力は、まずもって作品自体の魅力。
どんな素晴らしいスターでも、
同時にスター主義に頼っていては、ロングラン公演は不可能。
演劇の公演は週8回が基本です(休演日1回、
いいかえれば一年間のロングランをやった場合、
劇場の客席数を1000とすれば、総キャパはなんと40万人強!
スターの動員できるファン数は、
つまりスター主義は、演劇本来のあり方に反するだけでなく、
芝居の芸術性がどうこうと、
冷静にソロバンを弾いてみれば、
スター主義に基づく「足し算プロデュース」をやめて、
という結論が出るのです。
けれども、このような「作品本位プロデュース」に徹したのは、
あとは一部の大型海外ミュージカルが上演される場合に限られます
後者の場合、ロングランしないことには到底、
とはいえ、変な話ではないでしょうか?
すでに述べたとおり、作品本位プロデュースのほうが、
にもかかわらず、
じつはここにも、それなりの理由があるのです。
作品本位プロデュースで成功するには、
なぜなら優れた作品であればあるほど、
とくに役者は、脇役やその他大勢まで含めて、
要するに「舞台表現のインフラ(=基盤)」
しかしこれは、公演組織の構築に始まり、
一朝一夕にやれることではありません。
相当な規模の投資と、十年単位の時間がかかるのです。
くだんの整備ができていないまま、
ところがスター主義なら、インフラが整備できていなくとも、
「作品がつまらなかろうが、表現のレベルが低かろうが、
スター主義は「インフラ整備の手間を省いたまま、
ただしこれには、以下の3つの弊害がつきまといます。
1)スターの基準は「人気があるかどうか」であり、「
2)同様、観客が「好きなスターが出ていれば良い」
ゆえに「作品本来の魅力で観客を集める」という、
3)スターの人気に頼っている以上、
インフラが悪化し、
需要は喚起されないか、下手をすれば冷え込み、
格差が広がる。
どこかで聞いたような話だと思いませんか?
そうです。
スター主義の弊害は、
考えてみれば、当たり前の話。
現在の日本で新自由主義を唱えるのは、要するに
1)経済が「放っておいたら、拡大どころか縮小しかねない状態」
2)積極的な財政出動によって「成長のためのインフラ」
3)
けれども演劇界におけるスター主義は、要するに
1)観客数が「放っておいたら、
2)作品本位プロデュースを可能にするための「
3)
ちなみにスター主義のもとでは、「
「人気スターが主演しているだけで、
これらはさしずめ「規制緩和によって自由化を進めれば、
なるほど、そんな事例も出てくるに違いない。
しかしその背後には「インフラが悪化し、需要は喚起されず、
ついでにベンチャー的なビジネスは、えてして不安定なもの。
となると、真にしっかり儲かるのは、
演劇界で目下、真にしっかり儲かっているのが、
演劇は社会全体の縮図。
「経済再生」や「日本再生」をめざすのであれば、
ではでは♪
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