アーカイブス

2014年12月3日

【佐藤健志】「この道」について問うべきこと

From 佐藤健志@評論家・作家

——————————————————-

●日本はなぜ、負ける戦いへと突き進むのか?
月刊三橋の最新号「消費増税特集」を聞けるのは12/10まで
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php

※月刊三橋メンバー限定「三橋貴明の情報の読み方」を発売中。
政治家、御用学者、マスコミの「嘘」を見破る具体的なテクニックを公開。

——————————————————-

今回の総選挙は、ひたすら「経済」がポイントになりそうです。
自民党は「まっすぐ、景気回復」とか、「景気回復、この道しかない」と謳っていますし、野党は野党で「アベノミクスの失敗」を説くでしょう。

現在の日本をめぐる国際情勢を思えば、外交や安全保障も、もっとポイントになってほしいところ。
ついでに安倍政権は、むしろこれらの分野で成果を挙げているように思われるのです。

しかし、そうなりそうにはありません。
攻めるも景気回復、守るも景気回復という感じです。
集団的自衛権や特定秘密保護法などについて、(批判的な立場から)争点にしようとする人々もいないことはないものの、広がりを見せているとは言いがたい。
パターン化された「反戦・平和」論の繰り返しにとどまっているせいもあると思いますが、やはり有権者の関心が「経済」に集中しているためでしょう。

さて。
「この道しかない」は、安倍総理の好まれるフレーズなのだそうです。
イギリスのマーガレット・サッチャー首相がしばしば使った「There is no alternative」(他に選択肢はない)の日本語訳とか。
もとのフレーズは、頭文字を取って「TINA」とも呼ばれます。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130629/plc13062912000023-n1.htm

良く言えば、強力なリーダーシップで国を導こうとしている。
悪く言えば、「結論先にありき」になっている。

中野剛志さんはこのフレーズについて、「あなたが(他の選択肢を)知らないだけで、いくらでもあるだろ!」とツッコミを入れたことがありますが、これは脇に置きましょう。
http://amzn.to/1lXunmr

だとしても「他に選択肢はない」と断じるからには、「この道」がいかなる道なのか? という点はハッキリしていなければなりません。
困るのは、まさにそこがよく分からないこと。

藤井聡さん(「一体、どの<アベノミクス>なのか?」、本紙11月25日配信)や、三橋貴明さん(「全部乗せ」、同11月28日配信)が指摘されている通り、総選挙にあたって自民党が掲げた経済政策には、方向性の矛盾が目立ちます。

積極財政によるデフレ脱却を謳う一方、新自由主義的な構造改革も謳い、ついでに2017年の消費税増税は既成事実化、という調子。

「この道しかない」と言うものの、肝心の道が三叉路か何かになっているわけです。
となると藤井さんにならって「この道って、どの道?」と聞き返すしかありません。

しかし見方を変えれば、「景気回復、この道しかない」が意味するところは明快でもある。
問題のフレーズ、「デフレ脱却が果たされていない以上、とにかく景気回復にポイントをしぼることで、有権者の支持を集めるしかない」とも解釈できるのです。

有権者の関心が「経済」に集中しているのを思えば、もっともな話。
けれどもこれは、「日本を、取り戻す」とか「日本再生」といったスローガンの内実が、「景気さえ上向けばそれでいい」というものに移行する可能性も暗示します。
国のあり方全般を見直すはずだったのに、もっぱら経済のテコ入れになってしまう次第。

今に始まったことではありません。
石油危機によって高度成長が終わった1970年代半ばいらい、戦後日本のあり方を見直そうとする動きは何度も生じましたが、決まってこのパターンをたどってきました。
すなわち、

1)見直しの動きが生じる背景には、経済の低迷にたいする不安がある。
2)したがって、景気回復が最優先課題ということになる。
3)景気回復が達成されると、(1)の不安が解消されるので、それ以外の見直しを行う気運が(とくに国民の側で)なくなる。
4)回復が達成されないと、(1)の不安が解消されず、「景気回復が最優先課題」という状態が続くので、やはりそれ以外の見直しを行う気運が(同じく、とくに国民の側で)なくなる。

「2→3」のパターンが目立ったのが1980年代で、「2→4」のパターンが目立ったのが1990年代だったと言えるでしょう。
2000年代は両者の中間だった気がします。
詳細はこちらをどうぞ。
http://amzn.to/1lXtYQM

となると現在、われわれがすべきは
「この道って、どの道?」という問いかけと、
「この道って、もう何度も通った道じゃないの?」という問いかけを、
同時にしてゆくことではないでしょうか。

争点がないと言われる今回の選挙ですが、なかなかどうして、そうでもないのです。
http://chokumaga.com/magazine/free/152/11/
http://ch.nicovideo.jp/k-chokuron/blomaga/ar672975

ではでは♪(^_^)♪

<佐藤健志からのお知らせ>
佐藤健志ブログ「DANCING WRITER」はこちら!
http://kenjisato1966.com

ツイッターはこちら!
http://twitter.com/kenjisato1966

PS
「この道」の中味を数字を基に具体的に検証するなら、
「月刊三橋」が参考になります。12/10まで。
http://youtu.be/FYzYGcCtZpI

関連記事

アーカイブス

【島倉原】グローバリズムとリージョナリズム

アーカイブス

【三橋号外】続・パックマンの口が開いていく

アーカイブス

【藤井聡】昭和恐慌下も同じだった

アーカイブス

【三橋貴明】ギリシャに関する「頭の悪い」話

アーカイブス

【三橋貴明】日本の正しい貧困対策

メルマガ会員登録はこちら

週間ランキング

  1. 1

    1

    【三橋貴明】ステファニー・ケルトン教授の出演

  2. 2

    2

    【藤井聡】「事を荒立てず、仲良くしようとする」だけの、情けな...

  3. 3

    3

    【三橋貴明】MMTと民主主義、経済移民

  4. 4

    4

    【藤井聡】元内閣官房参与として、「令和日本・再生計画」を出版...

  5. 5

    5

    【角谷快彦】ドラッグ・ラグで岐路に立つ国民皆保険制度(後編)

  6. 6

    6

    【室伏謙一】数値目標に振り回され、自縄自縛になる霞が関の愚

  7. 7

    7

    MMT(現代貨幣理論)とは、「現代社会の実態に即した、貨幣に...

  8. 8

    8

    【三橋貴明】思想の対立

  9. 9

    9

    【藤井聡】吉川洋氏の「地震に備えて消費増税を」論を完全撃破し...

  10. 10

    10

    【三橋貴明】MMTと政府の選択と集中

MORE

月間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】近い将来、リーマンショック級の危機が「絶対」起こる

  2. 2

    2

    【藤井聡】吉川洋氏の「地震に備えて消費増税を」論を完全撃破し...

  3. 3

    3

    MMT(現代貨幣理論)とは、「現代社会の実態に即した、貨幣に...

  4. 4

    4

    【三橋貴明】思想の対立

  5. 5

    5

    【三橋貴明】MMTと政府の選択と集中

MORE

最新記事

  1. 日本経済

    【小浜逸郎】アメリカの「安保破棄」に備えよ!

  2. 日本経済

    【藤井聡】「事を荒立てず、仲良くしようとする」だけの、...

  3. 日本経済

    【室伏謙一】数値目標に振り回され、自縄自縛になる霞が関...

  4. 日本経済

    【三橋貴明】MMTと民主主義、経済移民

  5. 日本経済

    【三橋貴明】ステファニー・ケルトン教授の出演

  6. 日本経済

    【角谷快彦】ドラッグ・ラグで岐路に立つ国民皆保険制度(...

  7. 政治

    日本経済

    【藤井聡】元内閣官房参与として、「令和日本・再生計画」...

  8. 日本経済

    【角谷快彦】ドラッグ・ラグで岐路に立つ国民皆保険制度(...

  9. 政治

    日本経済

    【三橋貴明】ピボット(軸)のモーメント

  10. 日本経済

    【三橋貴明】思想の対立

MORE

タグクラウド