From 三橋貴明@ブログ
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本日発売の「WiLL (ウィル) 2015年 01月号 [雑誌]_ 」に、連載「反撃の経済学 消費税増税は有害だ」が掲載されました。
同書には、「移民大論争 移民が経済成長を妨げる」も寄稿しております。
上記「WiLL 2015年 01月号」に、元サムスン電子社員の高村忠美氏の「告発スクープ!」として、「泥船サムスン脱出の記」という寄稿記事が載っているのですが、物凄く面白いです。
短期的な利益のみを追求し、技術や製品を「育てる」ということはやらない。というより、短期的利益を追求するため、できない。
中長期的な製品開発、技術投資をしないため、当然ながら「パクリ」「つまみ食い」が横行。各国で顰蹙を買い、訴訟の嵐になっているのはご存知の通り。
さらに、各事業、各部課、各社員が孤立化し、誰もが「自分のため」に懸命に働き、競争し、「チームで戦う」ことはない。
高村氏は、「マーケティング強化」という大義名分の下、技術者を粗末に扱い、冷遇する経営者が増えてきている日本の現状について、
「日本企業全体がサムスン的経営に陥るのが目に見えている。業績がジリ貧になり、ついには企業の存続そのものが根底から揺らぐことになるだろう。サムスン的経営は企業の基礎体力を奪うだけであって、屋台骨を強化することは決してない」
と、懸念を表明されていますが、その通りだと思います。
四半期決算、ストックオプション、株主中心の経営の下では、地道な開発、長期的な技術投資等は軽んじられがちになります。何しろ、経営者は「三か月」で結果を出さなければなりませんので、結局は、
「無駄の削減」
といった、どこかの国の政府の政策そのままの経営を実施し、自らの屋台骨を「脆弱化」させていくことになるわけです。
企業が(国家もですが)「短期利益中心主義」に陥ると、「将来のための投資」がおろそかになり、最終的には滅びることになります。
「技術や人材? 他所から買ってくればいい。それよりも、コストカット。人件費削減。今四半期の利益を増やさなければ、私のストックオプションの価値が高まらないじゃないか」
経営者たちが次々と上記の「考え方」に染まっていくと、進歩は止まります。この手の「考え方」の元祖は、別に韓国でもサムスン電子でもなく、アメリカでございます。
そのアメリカが、とんでもない状況になっているのです。
『米株式市場、強気一辺倒にひそむ不安 (2014年11月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO80094580V21C14A1000000/?df=2
高金利がドル高を支え、海外投資家に米国株の購入を促す。仮に米国株の市場が落ち着いても、これを売却すればドル建ての利益が手に入る。しかし、ここで問題が生じる。ドル高は、米国企業が海外から得る(ドル建ての)利益を減らす。金融危機の間でドルが最も安かったときと比べると、米国の企業が海外で稼いだ利益は3分の1から5分の1に減った。
株式相場は、米国のひとり勝ちをすでに織り込み済みだ。銘柄ごとの株価は過去に比べて割高だし、ほかの国と比較すればとてつもなく高い水準だ。
■自社株買い、記録的水準に
現在の株価収益率は過去10年間の平均を大きく上回り、金融危機直前の07年の水準にある。リサーチ・アフィリエートによれば、ほかの先進国の株式市場では、長期の株価収益率が過去の平均を下回っている。米国市場には株価収益率が高い多くのテクノロジー企業が上場しており、これが相場を高くみせている。だが、銘柄ごとの格差は大きい。
収益に関わる企業評価における別の問題もある。S&P指数を構成する500社の第3四半期(7〜9月期)の1株当たり利益は、年率換算で過去最高の10%超えを記録した。だが、この利益は、量的緩和によるものだ。借り入れた資金による自社株買いなど、企業が金融手法を駆使できたからだ。企業はコスト削減、低金利、従順な労働力により、これからも持続するのは難しいかもしれないが、高い利益率を確保してきた。EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は、07年の水準まで回復していない。売上高は利益に比べ、随分と回復ペースが遅い。
米企業による自社株買いは記録的な水準である。今年はこれまでのところ、企業が発表した利益の90%以上が、自社株買いか配当という形で株主に還元されている。これは経営陣が有望な投資機会を得ていないことを示唆している。米国株の主要な買い手は米企業というのが実態なのだ。(後略)』
「今年はこれまでのところ、企業が発表した利益の90%以上が、自社株買いか配当という形で株主に還元されている。」
衝撃的です。アメリカ企業が稼いだ利益の九割が、自社株買いもしくは配当金に回り、その分だけ技術開発投資が実施されていないわけでございます。
まさに、「全ては株主のために」という話ですが、こんなことを続けていると、企業の競争力は高まりません。別に構わないよ、技術や人材は他所から買ってくればいいんだから、という話なのでしょうけれども。
日本の公共投資の削減や、サムスン電子の実状、アメリカ企業の自社株買いは、全て一本の糸でつながっています。すなわち、
「短期の利益(あるいは財政赤字削減)を目的に、将来のための投資を疎かにし、状況を却って悪化させるか、もしくは衰退する」
という話なのでございます。
このまま「短期の利益」ばかりが重視され、「長期の投資」が軽んじられる状況が続くと、人類の未来は暗澹たる状況になることになります。現在の日本国民が、それなりに快適で豊かな生活を送れるのは、過去の先人たちがきちんと投資をしてくれたおかげです。それにも関わらず、我々は「株主資本主義」や「新古典派経済学」といった「考え方」に引きずられ、将来に対する投資を疎かにしています。
大げさでも何でもなく、これは「人類の危機」だと思うのです。
PS
もしあなたが「人類の危機」を回避したいなら、このVideoは必見です。
http://youtu.be/FYzYGcCtZpI
【三橋貴明】人類の危機への6件のコメント
2014年11月27日 8:04 AM
消費税増税8%の影響により事実上リセッションになったことで、今後中小企業は経営の見直しを迫られるところが出てくるのではないでしょうか?またしても「コストカット、リストラ、非正規雇用」で更なるデフレへの道を突き進んでしまうのでしょうか?最悪です。マスコミは大企業しか見ない傾向ですけど、国内の全就業者の7割は中小企業に勤めていることを忘れてますね。
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2014年11月28日 7:53 AM
久しぶりに覗いたら「人類の危機」(苦笑)極まれりといった感じですね。もちろんココのことですけど。
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2014年11月29日 3:22 PM
本当の今日のエントリーが全てですよ。本当に株主資本主義って呈の良い植民地政策ではないのでしょうか?暴力から金融(株式)と言う名の統治が始まっただけで。そんなデフレ株安で弱った日本経済を買いに買い捲った三角合併等の悪の規制緩和を進めてきた小泉やその後続の安倍。こいつら、また同じ事、やろうとしてませんか?安倍信者は何でも竹中のせいにして安倍総理を擁護する傾向にありますが、城内実議員が郵政ロスチャ化に反対した時に、最後まで国会で説得したのって誰でしたっけ?ちう話どすわよね。本当に日本の自称保守には吐き気がしますよ。左翼の方がよほど真面目に株主資本主義(欧米金融屋による欧米アジアの蚕食ぶりに対する怒り)の事を考えてますよ。なんで、日本の保守とやらは、米国の左翼の言葉にもう少し耳を貸そうとしないのでしょうか?
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2014年11月30日 4:01 AM
諸行無常はワガヨダレゾツネンランのことですが、「諸行無常」という法は不無常。これに対して株主資本主義や新古典派経済学の捉えた法則はは諸行の方で産業革命以来現代まで続いてきた工業化社会に咲いた無常の花。今はピ−タ− ドラッカーの言うところの これまでの工業化社会とは全く違うがまだなんだかよく分からないネクスト ソサイエティの入り口に立ったところなのでしょう。株主資本主義や新古典派経済学は妥当性を失っているが次のネクスト ソサイエティのイデオロギーやそれに見合った経済理論が見えてこない。動揺に企業も何に投資してよいかわからない。 そうすると株主は 「遊ばしてる金なら俺によこせ」と言う話になってしまう。上のたかゆきさんのコメを皆が理解すれば バカはいなくなるんですがね。ソクラテスのバカの定義は無知が自覚できないことなので、人事を尽くして天罰が下るのを想定内に入れておく以外にないですね。てか想定どころか天罰はすでに現実としてどんどん降り注いでる状態だから 「なんてこった」になっているのです。
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2014年12月1日 5:11 PM
>このまま「短期の利益」ばかりが重視され、「長期の投資」が軽んじられる状況が続くと、人類の未来は暗澹たる状況になることになります。コスト競争で相手を駆逐し市場を寡占化することしか考えていない現代企業群に任せておくと加熱しすぎて統制が取れなくなる典型ですね。本来なら企業の上位概念である国家同士が連携して統制をとらなければならない話ですが最近流行のグローバリゼーションとやらが政府関係者にも浸透してしまい法的にも規制がかけられなくなりつつあることは極めて問題だと実感します。税や人件費はその国の市場に対する投資でもあるので全てをコストとして捉え利益だけをむさぼるやり口は市場に対する背信行為とも考えられますが、一部政府関係者が権力を手放す行為だと自覚しつつ彼らに協力していることに失望しか覚えません。
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2014年12月1日 6:16 PM
これが民主主義だ♪バカに無知を自覚させることがいかに困難なことか。。。バカは死ななきゃ治らないあるいは、、死を経験しなければ永遠の生命は得られない毒を仰ぐときのソクラテスの心境を少しでも味わうことができるのならそれはそれで一興かとぞんじます。人事を尽くして天罰が下る最悪の事態を想定しつつ暮らしております。
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