From 佐藤健志@評論家・作家
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11月18日の本紙に、藤井聡さんが「巨大国益毀損を導いたであろう『学者の先生方』の責任問題について」を寄稿しています。
これは本年7月〜9月期のGDP統計が、年率で実質1.6%減(名目3%減)という厳しい結果になったのを受けたもの。
消費税を8%に引き上げたことは、想像以上に景気を冷え込ませているわけですが、藤井さんが問題にしているのは以下の二点です。
1)有名大学の経済学者や、著名なエコノミストの多くは、この事態を正しく予測することができなかった。それどころか彼らは、消費税率引き上げの影響は限定的なものと見なし、景気はいわゆる「V字回復」に向かうと主張した。
2)政府の担当閣僚も、消費税率引き上げの影響を軽視する大方の主張を受け入れ、増税が景気回復を深刻に阻害するという主張に取り合わなかった。そして実際に景気が冷え込んだ後になって、ようやく見通しの誤りを認めた。
専門家も政府担当者も「現実に巨大なダメージが発生するまで、自分にとって都合の悪いことを無視しつづけた」のです。
藤井さんいわく。
「彼らは、いかにしてその甚大な『責任』をおとりになれるのか・・・これからの経済政策の決定プロセスを適正化するためにも、この問題をおざなりにしては断じてならぬのではないか」。
(表記を一部変更)
おっしゃる通りです。
しかし甚大すぎる責任は、結局のところ取りようがありません。
つまり「現実に巨大なダメージが発生するまで、自分にとって都合の悪いことを無視しつづけた」とは、
1)自分の言動に責任が取れる間は、直面すべき責任があると自覚していないので取らない。
2)否応なく責任に直面させられたときは、もはや責任の取りようがないので取らない。
ということを意味するのです!
しかるに。
半藤一利さんは、著書「昭和史」(平凡社、2004年)で、昭和前半期の歴史から学ぶべき教訓をこう述べています。
最大の危機において日本人は(中略)自分にとって望ましい目標をまず設定し、実に上手な作文で壮大な空中楼閣を描くのが得意なんですね。物事は自分の希望するように動くと考えるのです。
(500〜501ページ)
ソ連が満州に攻め込んでくることが目に見えていたにもかかわらず、攻め込まれたくない、今こられると困る、と思うことがだんだん「いや、攻めてこない」「大丈夫、ソ連は最後まで中立を守ってくれる」というふうな思い込みになるのです。
(501ページ)
日本をリードしてきた人々は、なんと根拠なき自己過信に陥っていたことか、(中略)あらゆることを見れば見るほど、なんとどこにも根拠がないのに「大丈夫、勝てる」だの「大丈夫、アメリカは合意する」だのということを繰り返してきました。そして、その結果まずくいった時の底知れぬ無責任です。今日の日本人にも同じことが多く見られて、別に昭和史、戦前史というだけでなく、現代の教訓でもあるようですが。
(503ページ)
何も変わっていないと思いませんか?
1)「消費税率引き上げによっても大したインパクトは生じず、経済は着実にデフレ脱却に向かう」という望ましい目標をまず設定する。
2)その目標にあわせて、上手な作文で壮大な空中楼閣を描く。
3)税率を引き上げたあとは、「景気に冷え込んでほしくない」「今、冷え込まれると困る」と思うあまり、だんだん「いや、冷え込まない」「大丈夫、景気はV字回復する」と信じ込む。
消費増税をめぐる経緯は、敗戦にいたった経緯と瓜二つなのです!
戦後の日本では、「第二の敗戦」というフレーズが定期的に流行りますが、それも納得のゆく話と評さねばなりません。
今回のGDP統計については、政府筋より「(デフレを抜け切れていない段階で)消費増税を行うことの影響について学べた」といった趣旨のコメントが出ていますが、真に学ぶべき教訓は別にあるのです。
そちらの教訓を学ばないかぎり、日本を待ち受けているのは「戦後からの脱却」どころか、さらなる「敗戦」となるでしょう。
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日本経済は底割れへと向かうのか?
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【佐藤健志】GDP統計と「第二の敗戦」への1件のコメント
2014年11月26日 3:59 AM
佐藤先生の仰る通りかもしれません。 堂々巡りの悪循環に陥っていると思います。 しかし、悪循環というループは、あまり続くようなら、どこかで断ち切る方が良いのでしょう。 そこで、ループのどこを突破口として断ち切るか、という事になりますが、それが藤井先生の書かれていた記事の内容そのものだと私は思います。 (良くない言葉で恐縮なのですが・・)世の中をナメているような方々が、政治や言論に携わって、甘い見積もり故に失敗しても反省をして下さらず、問題点や改善点が示されないまま、うやむやになっている事が悪循環の一因ではないでしょうか。 それを見直して頂けるよう、間違った意見を言ってしまった方々に、結果に直面してもらい批判?する事は、辛い面もあるでしょうけれど、相手の方を本当の意味で救う事になると思っています。 きっと私が間違いをした時にも、誰かが批判したり教えて下さるに違いありません。 言論人の方が間違いを認めるというのは、とても勇気のいる事と思います。ですが、国に余裕があるうちはまだしも、余裕は少なくなってきておりますし、世界の秩序も乱れ始めている状況では、そうも言っていられないのかな、と。 「責任のとりようが無い」かもしれませんが、だからと言って責任を求めないのは、優しさではないと思うのです。無責任な言論や、己に利するための言論に歯止めをかけず、蔓延してしまうのを見過ごす事になってしまうのではないでしょうか。