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2014年11月13日

【柴山桂太】中間層の没落が止まらない

From 柴山桂太@滋賀大学准教授

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●日本は<負ける戦い>に突入するのか?
三橋貴明公式チャンネルに最新Videoが登場
https://www.youtube.com/user/mitsuhashipress/videos

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T・ピケティ氏の『21世紀の資本論』が話題となって以後、不平等の問題に人々の関心が集まっています。

不平等にはさまざまな尺度がありますが、ピケティ氏らが重視しているのが、上位1%や上位10%の所得占有率です。この数字が増えているということは、人口のごく一握りの上位層に所得が集中しているということで、俗な言い方をすれば「お金持ちがますますお金持ちになる」現象が生じている、ということになります。

カリフォルニア大学のE・サエズ教授らが公表しているデータによると、アメリカでは1980年代から上位1%や上位10%の所得占有率が上昇する傾向にある(=富の集中が進んでいる)ことが分かります。

http://www.washingtonpost.com/blogs/wonkblog/wp/2013/12/31/emmanuel-saez-and-thomas-pikettys-graph-of-the-year/

最近の調査では、上位層の中でもとりわけ上位の層、つまり上位0.1%や0.01%の「超富裕層(メガリッチ)」の存在がクローズアップされています。

英エコノミスト誌が紹介している研究では、アメリカの上位0.01%(およそ1万6000世帯)の家計純資産は、国民全体の資産の11%を占有しています。0.1%(16万世帯)でみると、占有率は22%。これは下位90%の、いわゆる「中間層(ミドルクラス)」全体の占有率に匹敵する数字です。

http://www.economist.com/news/finance-and-economics/21631129-it-001-who-are-really-getting-ahead-america-forget-1

ちなみに、上位0.01%の資産は平均370億円。上位0.1%で73億円ですから、相当な額と言えます。こうした「超富裕層」に富が集中する一方で、中間層は80年代からゆるかかに没落を続けていることが示されています。

戦前からの長期推移を見ると、富裕層は大恐慌後のニューディール(特に富裕層への増税)と、戦争による混乱でいったん没落しました。40年代から70年代にかけては、中間層の所得が上昇し、持ち家比率も上昇しました。ところが、このトレンドは80年代に入って逆転します。富裕層の富が増え始める一方、中間層は没落しはじめたのです。

こうした上位層への富の集中と中間層の没落は、アメリカほど顕著ではないにせよ、現在の先進国で起き始めていることです。ではなぜ中間層は没落してしまったのでしょうか。

上記記事では、二つの理由が挙げられています。まず、所得の分配が変わりました。1986年から2012年にかけて、上位1%の所得上昇率は年平均で3.4%だったのに対し、下位90パーセントは0.7%。この期間、アメリカ経済は成長軌道にありましたが、経済成長の果実はほとんど上位層に分配されていたわけです。

二つ目に、この期間の経済成長は、家計債務主導型でした。中間層は、値上がりする住宅の取得に借金を重ねました。そしてリーマンショック後には、住宅価格は下落、借金は残るというかたちで、中間層の純資産が大幅に圧縮されることになりました。

リーマンショック後、物価や賃金は伸び悩んでいますが、株価は、金融刺激策の効果もあって伸び続けています。富裕層の資産は増える(減らない)のに、中間層は借金ばかりが残る。この構図が続く限り、国内の社会的対立は収まらないでしょう。

日本はどうでしょうか。サエズ教授らのデータを見る限り、上位0.1%や0.01%の「超富裕層」の存在は、日本ではまだそれほどでもありません。

ただし、上位10%の所得占有率で見ると、93年の33%から2010年の40%と、緩やかに上昇傾向にあることが分かります。この期間、日本はデフレ基調で、日本人の平均所得も下落傾向にありましたが、その減り方は上位層において少なく、中間層において多かったことが分かります。

先日の「黒田バズーカ第二弾」で、日本はまだしばらく金融刺激策を続けることになりそうです。株価の上昇や円安によって日本全体で恩恵を受けることになるとしても、その恩恵は上位層に分厚く分配されるという事実には注意が必要です。

富の集中は、いったん始まると自然には収まらないというのが歴史の教訓です。このままいくと21世紀には19世紀に匹敵するか、それ以上の格差・不平等社会になるというピケティ氏の説は、アメリカにとってだけでなく日本にとっても、無視できない警告となりそうです。

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http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=259103&userflg=0
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PS
日本は<負ける戦い>に突入するのか? 三橋貴明が無料Videoで解説
http://youtu.be/FYzYGcCtZpI

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【柴山桂太】中間層の没落が止まらないへの6件のコメント

  1. K.Yuriya より

    バズーカで打ち出したお札を集めるのが金融を握ってる富裕層だけぢゃ日本国民の気持ちが腐っちゃう。やっぱり財政出動をガンガンやらなくっちゃだめだ。

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  2. 日本晴れ より

    柴山先生の言う通り日本でも格差の問題というか富の偏在、一部の人に集中するというのは問題だと思いますこのまま新自由主義的な政策が進めばもっと格差は広がって固定化してしまうと思います。その前に中間層を底上げするような方向で行くべきだと思うしそれがアベノミクスだったように思います。

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  4. たかゆき より

    上澄み0.01%の寄生虫♪宿主の栄養をどんどん奪い取る寄生虫は駆除せねばならぬのはあたりまえのことですが、、、宿主になんら益することなく(たぶん)己の身の保身と国民の富を吸い上げることしか念頭にない寄生虫どもに対してその駆除方法はconservative なもので事足りるのかそれともradicalに徹底的にせねばならぬのか沈殿した泥の中で悪玉菌に対する怒りがグツグツと発酵しつつある今日この頃でございます。

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  5. 冬眠需要 より

     確か今年政府は公務員の所得の見直し(実質には削減方向なのでしょう)を五年?だったか、で検討?だかの報道がされていた記憶があります。 まだ、政府、マクロな大きな流れの考えとしては、需要を抑える、止められる施行にしか向いていないのでしょうか。 甘利にも国民のやる気を失わせる言葉かりで、言葉がありません。と言うかもう野垂れ死にしたい。アベさんは逆立ちしてでもベアを上げる思考を‥‥あり得ないか。ブラック企業諮問委員に口約束なんかしてる場合じゃない。 何もかも寒くなって来てしまった気がします。

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  6. Thomas Uttini より

    第一の矢、第二の矢、第三の矢、増税、減税、と5枚のカードがあるとして、カード自体に良いも悪いもなく、処方箋として使いこなせば良いと単純に思う。しかし現状は、第一の矢と増税がパワーゲームで優勢。部分効率重視、全体での最適化が無視の状態。(「ザ・ゴール」という有名なビジネス書でボトルネックについてとりあげているが、まさにその状態。)ではどうすればいいのか?この5枚のカードの効能と副作用を中学でしっかり教育される位であるなら、誠によろしいのではと思う。しかし急には無理なので、周囲にこの柴山先生の話をネタに、行き過ぎた新自由主義やグローバリズムの恐ろしさを話せばよいかと思う。そこが急所だと思うからだ。ハードルの低いところで言えば、映画で新自由主義を批判した作品を一緒に見るとか。

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