アーカイブス

2014年11月12日

【佐藤健志】裏窓とラブホテル

From 佐藤健志@評論家・作家

———————————————————-

三橋貴明公式YouTubeチャンネルでは最新動画を続々公開中
https://www.youtube.com/user/mitsuhashipress/videos

———————————————————–

本紙11月9日付の「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」で、平松禎史さんがアルフレッド・ヒッチコック監督の映画「救命艇」を取り上げ、秀逸な分析をされていました。

ヒッチコックは、何かを「見る」ということの意味合いを、とことん突き詰めた監督。
有名な「サイコ」の前半など、台詞が最小限に抑えられ、視線の組み合わせだけでサスペンスがどんどん高まってゆきます。

それどころか「見る」ことだけでドラマが成立してしまうのが、1954年の傑作「裏窓」。
脚を折って療養中のカメラマン・ジェフが、向かいのアパートで暮らす人々の様子を、退屈しのぎとばかりに、双眼鏡や望遠レンズを使ってこっそり覗いているうち、殺人事件に気づく・・・という話です。

じつは平松さん、この作品と関連して、私のブログにコメントを寄せてくださったことがあります。
10月30日の「政治とセックスの間」。

1990年代初頭、あるラブホテルのフロントさんが、やってくる若者(とくに高校生)たちの振る舞いがおかしくなっていることを根拠に、
「日本が豊かだなんて言っていられるのも、あと十年だ」
と語ったエピソードを紹介して、
性風俗から時代や社会の真実が分かることもあるのではないか?
と述べたのですが、
これにたいして、平松さんいわく。

風俗業ではないですが、ヒッチコック監督の「裏窓」を思い出しました。足を折った主人公宅へ通う皮肉屋の看護婦が自慢気にこう言います
「1929年の株の大暴落を予知したの。簡単よ。GM社長の看護をしてたの。病院の診断は腎臓病だったけど私は神経を疑った。何をそんなに悩むのか?…生産過剰で崩壊。GMが日に10回もトイレに立てば終わりよ。」

わりと冒頭の場面です。
いわゆる「経済指標」ではありませんが、「GM社長が一日にトイレに行く回数」も、経済の先行きを知るうえで有効なデータではないか、という話。

この台詞自体は、さほど真剣な意味合いを持ったものではありません。
しかし看護婦が、株価の変動に異常が表れる前に「生産過剰で崩壊」を見抜いていたとしたら、どうでしょう?

私が紹介したラブホテルのフロントさんにしても、日本の将来について、まだ世の中が楽観的だった時期(バブルは崩壊していましたが、数年もすれば回復するだろうという雰囲気でした)に、問題の発言をしています。
そしてGM社長のトイレと同様、「ホテルにやってくる若者の振る舞い」に基づいて国の将来を予想するのも、一見すると根拠がないようで、あんがいバカにできないものがある。

経済の動向は、国際情勢や自然災害などといった要因によっても左右されます。
たとえばの話、東京を直下型地震が襲ったらどうなるか?
あるいはイスラム国が生物兵器の開発に成功、中東ばかりか欧米でもテロに使い出したら?
予測が大きく変わるのは避けられないでしょう(そのような事態に起こってほしいというのではありません。念のため)。

とはいえ、今、20歳の若者は、何らかの理由で早死にしないかぎり、十年後には間違いなく30歳となります。
その十年後には40歳となるのです。
つまりは社会の第一線、さらには中核となってゆく。

となると、彼らが(文字通り)裸のつきあいをする場所で、どんな振る舞いをするかも、社会の将来を予想するうえで立派なデータたりうるかも知れません

少子化対策とは要するに「現時点での妊娠をしやすくして、次世代における国の衰退を防ぐ」ことですが、ならば「現時点のセックスから十年後の日本が見える」ということも考えられるのです。

ちなみに「裏窓」、性風俗とは関係ないものの、なかなかきわどいギャグが盛り込まれています。
映画が展開するにつれ、ジェフが覗きに使う道具が変わってゆくのです。
一言でいえば、太く、長くなってゆく。

ついでにジェフは、リサという女性から結婚を迫られてもいるんですね。
しかし彼の脚は折れていて、包帯で巻かれている。
このすべてが意味するところは明らかでしょう。

セックスの持つ社会的・政治的な意味合いについては、以下もどうぞ。
http://ie.to/?17345976
ラブホテルのフロントさんの予想が、どんな形で的中していったかはこちら。
http://ie.to/?17345482

何を見るか、見たものをどう解釈するか、それが問題なのです。
ではでは♪(^_^)♪

佐藤健志ブログ「DANCING WRITER」はこちら!
http://kenjisato1966.com

ツイッターはこちら!
http://twitter.com/kenjisato1966

PS
なぜ、現在の韓国を見ると、日本の危機が見えるのか? その答えは、このVideoにあります。
https://www.youtube.com/watch?v=e9f7FntISwU&list=UUza7gpgd6heRb8rH4oEBZfA

関連記事

アーカイブス

【三橋貴明】〔三橋実況中継〕「たかじんの、、」にて

アーカイブス

【三橋実況中継】夢を持たない国は、夢を持つことが不可能な国に落ちぶれる

アーカイブス

【島倉原】景気循環と第二の敗戦

アーカイブス

【三橋貴明】PB黒字化目標撤回の提言

アーカイブス

【三橋貴明】日本再建を阻む3つの壁

メルマガ会員登録はこちら

週間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】終戦記念日に考える、「戦後レジームからの脱却」と「...

  2. 2

    2

    【三橋貴明】黄金の氏族の婿たち

  3. 3

    3

    【三橋貴明】安藤裕衆議院議員と対談しました

  4. 4

    4

    【三橋貴明】「国の借金」プロパガンダを打破せよ!

  5. 5

    5

    【三橋貴明】スウェーデン・ショック

  6. 6

    6

    【竹村公太郎】都市の下に住む大蛇 ―なぜ「決壊」と書くのか―

  7. 7

    7

    【三橋貴明】治水の後れは国家の怠慢

  8. 8

    8

    【三橋貴明】“人間の屑”がいるとするならば

  9. 9

    9

    【三橋貴明】消費税軽減税率の拡大を!

  10. 10

    10

    【藤井聡】「強靭化目標」は「プライマリーバランス制約」でなく...

MORE

月間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】防災に「国債」を発行しない政治家は、馬鹿の誹りを免...

  2. 2

    2

    【藤井聡】吉川洋東京大学名誉教授が『詭弁』を弄して、『防災を...

  3. 3

    3

    【藤井聡】政府は「異常気象緊急対策」を速やかに推進せよ。

  4. 4

    4

    【三橋貴明】“人間の屑”がいるとするならば

  5. 5

    5

    【藤井聡】政府の「東京一極集中」対策、未だ成果まったく見られ...

MORE

最新記事

  1. 政治

    【三橋貴明】民主主義の国民であるならば。

  2. 日本経済

    【三橋貴明】粒子加速器、なるか産業ビッグバン

  3. 欧州

    【三橋貴明】スウェーデン・ショック

  4. 日本経済

    【三橋貴明】治水の後れは国家の怠慢

  5. 日本経済

    未分類

    【藤井聡】終戦記念日に考える、「戦後レジームからの脱却...

  6. 日本経済

    【三橋貴明】「国の借金」プロパガンダを打破せよ!

  7. 政治

    【三橋貴明】安藤裕衆議院議員と対談しました

  8. アジア

    【三橋貴明】黄金の氏族の婿たち

  9. 日本経済

    【竹村公太郎】都市の下に住む大蛇 ―なぜ「決壊」と書く...

  10. 日本経済

    【三橋貴明】消費税軽減税率の拡大を!

MORE

タグクラウド