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2014年11月11日

【藤井聡】「真剣」に国土強靱化・地方創生を目指すのなら・・・・・・

From 藤井聡@京都大学大学院教授&内閣官房参与

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三橋貴明公式YouTubeチャンネルでは最新動画を続々公開中
https://www.youtube.com/user/mitsuhashipress/videos

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9月の内閣改造で、石破大臣を中心に「地方創生」行政が始められました。そして現在の臨時国会にその基本法を提出すべく、様々な議論が重ねられています。

地方創生の目玉は、なんと言っても、「東京一極集中の緩和と、人口と活力の地方分散化」。

政府が策定予定の総合戦略では、

「東京一極集中に歯止めをかけるため、地方への企業移転、地方居住の推進、子育てしながら働ける環境づくりなどの具体策を示し、これらを促すための税制優遇や、自治体向けの新たな交付金創設などを検討」

する予定であることが報道されています。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201409/2014090500813

この「地方分散策」は、まさに「国土強靱化」が目指す方向そのものです。

今年6月に策定された国土強靱化基本計画には、その基本方針として、
「東京一極集中の緩和」と「自律・分散・協調型国土の形成」
が明確にうたわれています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokudo_kyoujinka/kaisai/dai3/siryou1.pdf

このことはつまり、「国土強靱化を『真面目』に行いさえすれば、自ずと地方創生が果たされていく」ことを意味しています。そしてそれと同時に、「地方創生を『真面目』に行いさえすれば、国土はどんどん強靱化されていく」という事もまた意味しています。

つまり、両者の間には、大変強力でポジティブな「相互連関関係」があるわけです。

(※ なお、国土構造以外のミクロなプロセスについても、両者の間には実に多様かつ強力な相互連関関係があります。その点については例えば、下記資料をご参照ください。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/resilience/dai16/siryo3B.pdf )

こうした認識から、地方創生行政が始められることにあわせて、政府の国土強靱化の行政でも、地方創生との連携を図るための議論が始められました。

その第一回として、先月10月24日、内閣改造後の最初の国土強靱化の有識者懇談会にて、地方創生と国土強靱化の連携方針が議論されました。

この懇談会では、外部有識者として本メルマガの執筆陣のお一人でもある柴山桂太先生に話題提供いただきました。

柴山先生からは、グローバル化が進展や公共事業が大幅な削減が東京一極集中をもたらしていること、そしてその東京一極集中が、首都直下地震等に対する国家的脆弱化を大きく肥大化させていると同時に、地方社会の疲弊を導き、各地域のあらゆるリスクに対する脆弱性を同じく肥大化させていることが指摘されました。

かくして、国家全体、ならびに、各地域の強靱化を果たすためには、一極集中の緩和と、地方分散化策が是が非でも必要である──ということを、データを踏まえながら、説得力ある形で改めてご提言いただきました。

(柴山先生の資料はこちら↓
・レジメ:http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/resilience/dai16/siryo2.pdf
・参考資料http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/resilience/dai16/siryo2B.pdf )

・・・

こう考えますと、国土強靱化や地方創生のためには、
「東京一極集中の緩和と地方分散化」
を具体的に考え、効果的な対策を進めていくことが不可欠であることが分かります。

一極集中緩和と分散化を具体的に進めるための方法については、ちょうどこの度、ある専門誌に寄稿した原稿の中で、簡潔に論じましたので、そちらの内容(抜粋)をご紹介いたしたいと思います。

『東京一極集中緩和を図りつつ、自律・分散・協調型国土を目指すためには、それを促す税制や補助、支援のあり方から、様々な次元の仕組みを見直すなどの「ソフト対策」が必要でると同時に、それを促す「ハード対策」も重要となる事は論を待たない。

それでは、そうしたハード対策としてどのような対策が必要となるのかについては、様々な要素を総合的に勘案した国土計画、あるいは国土のグランドデザインを考えていくことが必要不可欠である。

そんな中で東京一極集中を促す本質的原因の一つである「東京とそれ以外の地域との間のインフラ格差」の是正は、極めて重要である。

例えば、全国新幹線整備計画の中で、東京に接続するものとして計画された5本の新幹線は全て、供用、あるいは着工予定となっている一方で、大阪に接続する5本の新幹線のうち開通しているのは東海・山陽新幹線1本のみであり、それ以外の北陸新幹線、山陰新幹線、四国新幹線、中央リニア新幹線はいずれも整備未決定あるいは未着工である。この「超絶な新幹線の整備格差」が東西格差をさらに拡大させていることは火を見るよりも明らかである。

同様に、日本海軸や第二国土軸はいずれも未整備であり、これが地域間の格差を肥大化させている事もまた明白である。

例えば、筆者の研究室の計算によれば、総計12兆円程度の財源に基づいて北陸、山陰、東九州、羽越の各新幹線の基本計画が全て整備されていれば(そして、たったそれだけのことで)、東京23区に集中している人口は現在よりも14%程度は低い水準に押さえることができ(1017万人⇒877万人)、その分の人口(140万人)が整備新幹線沿線を中心とした全国各地に分散化していたであろういう結果が示されている。

今後はこうした諸点を見据えつつ、国土強靱化の基本法に基づいて迅速かつ効果的に東京一極集中を緩和し自律・分散・協調型の国土を形成するための諸対策を推進し、それを通して来たるべく巨大災害に対して抜本的に強靱な国土をつくりあげていくことが強く求められているのである。」

なお、こうした「一極集中緩和と地方分散化」については、安倍総理が石破大臣に対して「バラマキ型の対応を絶対にしないよう」とご指示されたと報道されていますが、
http://www.sankei.com/politics/news/140909/plt1409090024-n1.html

上の原稿で言及しましたインフラ事業はいずれも、膨大な時間をかけた議論や調査、研究に基づいて計画されているものであり、定義上、断じて「ばらまき」とは解釈できぬものであることをここに申し添えておきたいと存じます。

後は。。。。我が日本国家が、一極集中緩和と地方分散にどれだけ「真剣」に取り組むかの一点にかかっていると言えるでしょう。

万が一にも、我が国にその態度が不在であったとすれば、東京一極集中はそのまま放置され、地方分散など何も進展せず地方は疲弊し続け、早晩訪れる巨大災害によって我が国は二度と立ち直れぬ程の巨大被害を受けることは、避けがたい現実の未来となることは間違いないものと考えます。

以上、ご紹介まで。

PS 強靱で豊穣な「国土のあり方」にご関心の方は、是非、こちらをどうぞ。
http://amzn.to/1zDT52T

PPS
「集中」戦略は何をもたらすのか?
レイプと放火と自殺が多発する隣国の経験から何を学ぶべきか?
https://www.youtube.com/watch?v=e9f7FntISwU&list=UUza7gpgd6heRb8rH4oEBZfA

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【藤井聡】「真剣」に国土強靱化・地方創生を目指すのなら・・・・・・への9件のコメント

  1. タカ より

    「7つの事実」の7番目は「東京の発展の原因は一極集中である。」と説いている藤井教授が「今年6月に策定された国土強靱化基本計画には、その基本方針として、『東京一極集中の緩和』と「自律・分散・協調型国土の形成」が明確にうたわれています。」だそうです。大笑い

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  2. 藤田昭仁 より

    <> の算出の仮定はどんなものでしょうか。今年は東海道新幹線開業50周年ですが、その間に東京集中は進行するばかり。大阪への分散すらすすんでいないように思えます。 同様に東北新幹線開業してから東北地方への人口分散は進んだのでしょうか。 新幹線で都市間を短時間に移動できて便利になると、たとえば東京には必要なときに出張すれば良い、東京に常駐る必要はないので人口の地方分散が進むという仮説は理屈としては妥当でしょう。しかし 企業にとっては短時間であろうと移動はコストですから一極集中のほうが短期的コスト節約になることは明らかです。もちろん地震などで東京が壊滅した場合の損害のコストは莫大で短期的コストとは比較できませんが、現時点ではリスクの範囲です。企業にとっては目の前のコストと将来生じるかもしれないリスクは背に腹は変えられない関係です。実証的なデ−タは持ち合わせませんが、山陽新幹線と瀬戸大橋で関西と直結した香川県の高松市は新幹線と瀬戸大橋で短時間に大阪東京から日帰り出張できて便利になったため高松駐在の転勤族が激減して商店街が廃れているというニュ−スや知人からの情報があります。新幹線整備だけでなく地方創生の具体的戦略が必要と思います。

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  3. 適度 より

    エネルギーについてのインフラ整備こそ、まさに未来の成長産業ですね。青山繁晴氏が日本海側のメタンハイドレートは土木工学の見地からの開発の必要性を唱えていらっしゃいますし。青山氏が常に主張されているエネルギーのベストミックスを考えても、日本の資源産業は国土強靭化の思想に入らないのでしょうか?

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  4. 拓三 より

    仰る通りでございます。しかし、我が国家は真剣に取組まない様な気がするのではないかと心痛めて日々すごしております。(負け犬根性ですみません)ワタクシ個人といたしましては、今の日本政府と86年から02年までの阪神タイガースがダブって見えてしまうのであります。(お解りの方はお解りかと)その頃の気持ちと今の気持ちが同じであるかの様な錯覚に陥る今日このごろでございます。

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  5. 神奈川県skatou より

    だれかのお話に乗っかってコメントだけする。ちょっとズルですよね。そういう方向に、一歩ずつでも歩きます。

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  6. きらきら より

    メディアの報道も、東京近辺とそれ以外で凄い温度差があるように思います。死人の出ていない、福島の原発事故はずっとやっていたが、御嶽山の噴火や広島の洪水はさらっと終わった。しかも、御嶽山の噴火については、CNNやBBCの方が速報は早かったという印象です。そんなメディアが世論と称して東京の一極集中を後押ししている気がします。そのため、メディアの地方分散も同時に行う必要があると思います。

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  7. 月姫のアルクェイド より

    神奈川県っていつもコメント寄越してるけど、そんなに熱い想いを持ってるなら、自分で言論活動してみてはいかがでしょうか。なめ猫やカツトシもそうやって大きくなっていったのですよ。

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  8. 神奈川県skatou より

    そういえば別紙資料には「新産業の創出」ということで、イノベーション(?)にも言及されているようでしたが、イノベーションは計画して推奨して起こせないからイノベーションのように思われますが、それでもあえて促進策として確かと言えそうなのは、「その分野や市場にニーズがある」ということではないでしょうか。試行錯誤ができる、チャレンジができる、そういう余裕。効率や合理化や理屈っぽい市場のギスギスからは生まれず、無駄っぽいバカっぽい、でも可能性があるなら買っておくぐらいの土壌が、唯一イノベーションを誘発するのではと、帰れないサラリーマンは思うわけです。イノベーションと、サイエンスまたはテクノロジの進歩とは別物、という認識においてですが。

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  9. 神奈川県skatou より

    藤井先生のお話、また別紙の関連図もなかなか読みごたえありました。「民間企業等の取組」として中古住宅のリフォーム等とありましたが、少なくとも昭和56年の建築基準法改正より前の建物については、耐震基準が古く、時代がら断熱性能も低くてエネルギー消費が大きく(床下に断熱材が入ってない時代!)、築40年以上も経っておりますので、これらは集中的に建て替え促進策をしたほうがよさそうです。(建て替えが条件、というところがミソ・・・)そういえば日本の建築業界といえば、サッシについては米欧はおろか、中韓よりも低レベルの断熱性能だそうですね。行政指導も前時代的のようで、これでエコを語るのは随分かなと思います。※住宅の熱貫流の約70%が窓、ドアだそうで。住宅といえば、日本の銀行にとって最も安全な投資のひとつが個人の住宅ローンだそうですが、審査においては所得額もさることながら、勤続年数が重要な指標となっているようです。つまり、雇用の自由化、流動化の今、住宅という巨額商品にもデフレ圧力がかかっているというわけで、こちらも逆の風向きになってほしいものであります。

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