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2014年11月14日

【施 光恒】「リカちゃん人形」と「いただきます」

From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学

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●日本は<負ける戦い>に突入するのか?
三橋貴明公式チャンネルに最新Videoが登場
https://www.youtube.com/user/mitsuhashipress/videos

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おっはようございま〜す(^_^)/

今日は、ちょっと文化ネタを…。

2週間ほど前のNHKのテレビ番組で面白いことを話していました
http://www4.nhk.or.jp/masakame/x/2014-11-01/21/30135/

タカラトミーが出しているおなじみの「リカちゃん人形」ですが、今年で発売47年になるそうです。

このリカちゃん人形ですが、47年間、変わらない特徴があるとのことです。

リカちゃんの眼です。リカちゃんの眼は、まっすぐに前を見つめておらず、少し左上に視線が行くように作られています。

なぜかと言えば、子どもがリカちゃんで遊ぶときに目が合ってしまうと、圧迫感を感じてしまうので、それを避けるためだそうです。

タカラトミーは、いかにも日本の企業ですね。

アメリカのバービー人形は、まっすぐ前を見つめています。画像検索して、バービー人形の画像をみてみましたが、なるほど目が合いそうです。私なんかは、バービー人形で遊ぶ子どもは、確かに人形の目から圧迫感を感じてしまいそうだと思いますが、アメリカ人の子どもは別に気にしないのでしょう。

日米の文化の違いですね。

文化の相違といえば、先日、大学院のゼミの時間に学生と「いただきます」についての話をしました。私のゼミは、一応、政治理論・哲学のゼミなのですが、その日はカナダのあるベジタリアン(菜食主義者)の政治哲学者のことが話題に上りました。

その関係で、食事の際に何に感謝するかという話になりました。

日本では、「いただきます!」というときは、料理をしてくれた人とともに、これから食す食べ物(肉や野菜など)にも感謝をします。つまり生命を提供してくれた魚やトリ、ブタ、ウシ、野菜、穀物、果物などに感謝の意を込めて「いただきます」と言うわけです。

欧米では、「いただきます」とは言いませんが、食事の前に祈る場合があります。この際、個々の食材ではなく、キリスト教の神に感謝の念を捧げるのが普通のようです。

私は、キリスト教の中学校に通っていたので、中学時代、たびたびキリスト教のお祈りを唱えさせられました。いまでも覚えているのですが、「我らの日用の糧を今日も与えたまえ」という一節がありました。食物を与えてくれるのは神だと理解するわけです。

生命を捧げてくれた個々の食材に感謝する日本と、万物の創造主としての神を想定し、その神に感謝する欧米。この相違の根底にあるものは、食前の儀礼以外でもさまざまな面で見出すことができ、非常に興味深く感じます。

論者によって詳細は異なりますが、日本と欧米の文化の違いについて、よく次のような指摘がされます。

日本では、状況における他者の気持ちや期待、人々の関係性や社会的役割に注意を払う「関係重視の道徳」が優勢である。他方、欧米文化では抽象的な原理や非人格的なルールを尊重する「原理重視の道徳」が優勢である。

「リカちゃん人形」の件も、「いただきます」の件も、このような文化差から説明できるのかもしれません。

日本社会では、他の人々に敬意を払い、他者の気持ちを大切にしなさいと教えられます。あるいは、「もったいない」の精神に表現されるように、「万物に感謝の心を持ちなさい」などともよく言われます。

こう教えられるため、日本人は他者の気持ちに配慮するようになりますし、他者の視線に敏感にもなります。モノを大切にする文化も形成されますし、「いただきます」と食前にいう習慣も生じます。

当然ながら、日本と欧米の文化のどちらが優れているかという優劣の問題ではなく、文化の違いの問題です。

ただ、日本人は弱気なことが多いですよね。自分たちの文化の論理をうまく説明できず、主張されるがままに欧米の理屈を受入れてしまうことが少なくないようです。

このメルマガでよく取り上げる言語学者の鈴木孝夫氏が、ある本で次のように書いていました(鈴木孝夫『日本人はなぜ英語ができないか』岩波新書、1999年)。

アメリカ人の英語教師が、日本の学生たちによく要求することの一つに、人と話すときは相手の目を見つめながら話しなさいということがあります。会話の最中に目をそらすことは何か心にやましいことがある、何か良くないことを企んでいる、と解釈するのがアメリカの文化だからだそうです。

しかし、日本人の感覚からすれば、人の目をじっと見続けることは、失礼なことです。「ガンをつける」という言い方があるように、日本では相手の目を注視すれば見つめられる方は不快な気持ちになってしまう場合が多いでしょう。

ですが、日本人は、アメリカ人の先生に「相手の目を見て話しなさい」と言われると、照れくささや違和感を覚えながらも、おとなしく従うことがほとんどだと思います。

鈴木孝夫氏は、ここで黙って従ってしまうのはおかしい、それでは本当の国際的な相互理解は果たされないとします。国際的な相互理解という観点からすれば、この場合、日本人学生は、アメリカ人教員に日本の文化的見方をきちんと説明すべきだと鈴木氏は論じます。つまり、「相手の目を正面から見据えて話すことは、アメリカと異なり日本では相手を威圧することにつながりかねず礼儀正しいことではない」とはっきりと述べる必要があるというのです。

私もそう思います。日本では、他者の言い分を受入れ、自分を変えていくことが美徳だと考えられることが多いからか、どうも自分たちのものの見方の意味を言語化し、相手に説明し、納得させることをあまりしてきませんでした。日本人自身が日本的なものの見方は特殊だと思い込み、海外(特に米国)の基準に合わせようとしてきました。

近年は特にそうですね。いわゆる構造改革も、最近のTPP参加を見据えた国内の制度改革(例えば軽自動車の税制上の優遇措置の廃止など)も、そうでしょう。「グローバル化=英語」と言わんばかりのビジネスや教育での英語化の流れも顕著です。この調子でいけば、近い将来、日本人にとって生きづらい日本社会ができてしまい、我々の子孫は大変苦労することになりかねません。

何年かぶりに米国からメジャー・リーガーがやって来て、現在、日米野球が開催されています。近頃いつもそうですが、相変わらず、使用するボールの規格で日本人選手は苦労していると報じられています。

日本のプロ野球で使われているボールと、アメリカの大リーグで使用されているボールは、手触りや縫い目の高さなど細かいところで違うからです。

これなんかも私は、日本で開催するときは、基本的に日本のプロ野球が普段使っているボールを日米野球でも使用するべきではないかと素朴に考えます。あるいは、全試合中、半分は日本球、もう半分はメジャー球というふうに公平にすべきだと思います。

もちろん、メジャー・リーグ主催のWBCではメジャー使用球が使われるので、それに慣れるためという事情もあるのでしょう。

しかし、だったらWBCでも、あるいはメジャー・リーグ自体でも、品質がよりよいとされる日本式のボールを公式球として一部でも採用してもらうように日本野球機構などの上部組織は粘り強く交渉してもらいたいものです。

上に立つ者、あるいは組織が、相手方のルールや土俵を呑まされてしまい、現場の人間が苦労する。なんか最近の日本ってそういうことがやけに多い気がします。

長くなってしまいますた…
「リカちゃん人形」から「いただきます」になって最後は野球の話…。
(^_^;)

だらだらとまとまりがなく失礼しますた<(_ _)>

PS
日本は<負ける戦い>に突入するのか? 三橋貴明が無料Videoで解説
http://youtu.be/FYzYGcCtZpI

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【施 光恒】「リカちゃん人形」と「いただきます」への9件のコメント

  1. 日本財布論、改め、日本連帯保証人論 より

    >しかし は日本人の感覚を代表していないと思いま>す。 またガンを飛ばすのが失礼なのは見知らぬ人>に対してであって、これは日本に特殊な話ではあり>ません。ご教示有難うございます。鈴木御大の件の書、実は自分も以前読んでいたのですが、このくだりの記述内容にコロっと騙されて今まで素朴に信用してました。「文化本質主義」の類を敵視している割には、結構、警戒甘いです。

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  2. 拓三 より

    関係重視=縦軸(時間)原理重視=横軸(ルール)最近のエライさんども、縦軸で考えらなあかん所を横軸で考えたり、横軸で考えらなあかん所を縦軸で考えたり、メチャクチャや。思考のバランスどころか、思考が無いだけやろ。

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  3. 藤田昭仁 より

    kanataさんへ。 戦後民主主義教育を反日左翼的な教育と規定しておられるようだが、「誰も見ていなくても、お天道様が見ている」というような感覚は身体に染みついており」と あなた自身がきちんと日本の美徳とされるものを継承して育ってこられたことはあなたの受けた戦後民主主義教育は全然反日左翼的でなかったことの証ではありませんか。

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  4. 藤田昭仁 より

    上記 3行目 「しかし」の後に「人の目をじっと見続けることは、失礼なことです」が送信時に消えてしまいましたので 訂正いたします。

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  5. 藤田昭仁 より

    リカちゃん人形の目にそういう配慮がなされていたとは初めて知りました。子供が人形の目から圧迫感を感じないようにという配慮 ウーンなるほど。しかし は日本人の感覚を代表していないと思います。 またガンを飛ばすのが失礼なのは見知らぬ人に対してであって、これは日本に特殊な話ではありません。さて、知っている人と何か真剣な内容を話すときは 目を見て話すのが自然の動作です。別に誰からそうすべきと教えられたからそうするのではありません。 真剣の話をしているときに 目をそらされると不快になるのがむしろ普通ではありませんか? 好きな異性に自分の恋心を打ち明けるのに相手の目を見つめませんか?多少とも人間とユミュニケ−ションが可能な動物とでさえアイコンタクトが大切です。 目を見つめて話すことは日本以外の外国に特殊な習慣ではありません。演歌の「兄弟仁義」の歌詞にもありますよね: 俺の目をみろ何にゆうな 男同志の腹のうち...。 「腹のうち」を以心伝心でわかりあうのは日本文化の特徴ですが、それには目を互いに直視する必要があるわけで、知っている人と真剣な話をしている時に人の目をじっと見つめることが失礼と感じるのは日本文化の中にもあり得ないと思います。

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  6. 日本財布論、改め、日本連帯保証人論 より

    >当然ながら、日本と欧米の文化のどちらが優れてい>るかという優劣の問題ではなく、文化の違いの問題>です。優劣が問題にならないのは、「優れている」というコトバがひどくアイマイだからにすぎません。危機の時代にあっては、情実に流されるのと、事実と論理を重んじるのと、生存戦略としてどちらが適合的かは、火をみるより明かではないですか。

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  7. 日本財布論、改め、日本連帯保証人論 より

    >だから、いつも通説に感じるのです。誤: 通説正: 痛切

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  8. 日本財布論、改め、日本連帯保証人論 より

    >日本では、状況における他者の気持ちや期待、人々の関係性や社>会的役割に注意を払う「関係重視の道徳」が優勢である。他方、>欧米文化では抽象的な原理や非人格的なルールを尊重する「原理>重視の道徳」が優勢である。仰る通りです。だから、いつも通説に感じるのです。「情けないなぁ」、と。欧米文化圏の人々の指摘を待つまでもなく。

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  9. kanata より

    僕は親から厳しく躾けられたわけでもなく、戦後民主主義教育、つまり反日左翼的な教育を受けて育ったわけですが、そんな僕でも「誰も見ていなくても、お天道様が見ている」というような感覚は身体に染みついており、そのおかげか、これまで一度も人の物を盗む(万引きや親の財布も含めて)ことなく生きてきました。しかしながら最近では、万引きや窃盗が日常化しているようで、「いただきます」といった感覚も含めて日本人の特質は引き継がれているのか不安に思います。今回の記事のように日本人の特質を外国人にわかってもらうことも大切ですが、日本人の特質自体が失われつつあるのではないかと、つい心配してしまいますね。

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