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2014年11月6日

【島倉原】「財政健全化」と「緊縮財政」は似て非なるもの

From 島倉原@評論家

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おはようございます。
今回は、先週「チャンネルAJER」に出演して行った「積極財政こそが財政健全化を実現する」というプレゼンテーションに関するお話です。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-69.html

このプレゼンテーションは、タイトルが示す通り、

「積極財政を行うと政府の財政は健全化し、緊縮財政を行えば政府の財政は逆に悪化する(現実にこの15年、緊縮財政を行うことで財政は悪化してきた)」

という内容です。

こう書くと、

「アレ、財政健全化って緊縮財政のことじゃないの?」

と思われた方もいるかもしれません。
確かに、「財政健全化(あるいは財政再建)のためには、支出の抑制や増税(すなわち、緊縮財政)は避けられない」というのが、マスメディアで当たり前のように報道される内容です。

(参考記事)政府、補正予算の対応に苦慮 歳出削減危うく、公共工事進まず(産経ニュース、2014年10月23日)
http://www.sankei.com/economy/news/141023/ecn1410230040-n1.html

かつて「第4の矢は財政健全化」と述べた大臣も、よもや「積極財政」を念頭に置いていたわけではないでしょう(念頭に置いていたとすると、「第2の矢=機動的な財政政策」が別途存在することと、一見ツジツマが合わなくなりますから)。

(参考記事)財政健全化を「第4の矢に」 諮問会議、骨太方針策定へ(日本経済新聞、2013年5月28日)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS28043_Y3A520C1EA2000/

でも、ちょっと待ってください。
そもそも「財政健全化」って何でしょう?

「政府の収入から支出を差し引いた『収支』のプラスがより拡大する(あるいはマイナスがより縮小する)」という「結果」あるいは「状態」のことですよね(上記引用記事でも明らかにそういった意味で使われています)。

これに対して「緊縮財政」とは、収入を増やそうとする(→増税や公共サービスの値上げ)、あるいは支出を減らそうとする「行為」に過ぎません。
したがって、緊縮財政と財政健全化は概念としてイコールではありませんし、緊縮財政という行為が本当に財政健全化という結果につながるかどうかも、自明のことではないのです。

「でも、家計が苦しければ仕事を増やしたり節約して収支を改善するのが当たり前。だったら緊縮財政をすれば財政が健全化するのは常識でしょ?」

本当でしょうか?
実はこの「常識」も、「自分が行為を変えたとしても、自分以外の人々の行為が全く変わらない」という前提が成り立たなければ、常に正しいとは限らないのです。

実際は、

「誰かの支出は、別の誰かの所得である」
「誰かの収支が改善する時は、別の誰かの収支が悪化している(経済全体では、収支合計は常にゼロになるため)」

という「常に正しい前提」が存在するがゆえに、

「政府が緊縮財政を行うと、所得を減らされた民間部門が支出を減らそうとするため、経済全体の所得(=GDP=国内総所得=国内総支出)が減少し、GDPの影響を受ける政府の収入(税収)にも減少圧力が働く」

のが現実の経済です(積極財政を行った場合には、この逆のプロセスが生じます)。

つまり、財政収支への影響を考えれば、

緊縮財政=ミクロレベルではプラス要因、マクロレベルではマイナス要因
積極財政=ミクロレベルではマイナス要因、マクロレベルではプラス要因

というように、どちらの政策にも「財政健全化」にとってプラス、マイナス両面が存在するのです。

したがって、緊縮財政が財政健全化につながるとは限らないどころか、積極財政が財政健全化をもたらす可能性さえあるのです。
だとすれば、プラスの影響がより大きいのはどちらの政策なのか、事実に基づく検証が行われるべきなのは言うまでもないでしょう。

そして、事実は冒頭に述べた結論、

「積極財政を行うと政府の財政は健全化し、緊縮財政を行えば政府の財政は逆に悪化する」

が妥当であることをどうやら示しているのです。
その実現メカニズムを詳しく述べたのが、今回のプレゼンテーションです。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-69.html

しかも、緊縮財政は財政悪化をもたらしているのみならず、企業の国内投資意欲を失わせ、産業空洞化や雇用環境の悪化を招いています。
だとすれば、今行うべきなのは緊縮財政か積極財政か、自ずと明らかではないでしょうか。
http://on.fb.me/1wUHmu8

(島倉原からのお知らせ1)
世界経済の先行きに不安がささやかれる中、史上最高値を更新しているアメリカ株の上昇トレンドはこのまま続くのか。アメリカのGDP統計を手がかりに、経済政策や国際情勢の視点も交えて考察してみました。
手前味噌ですが、株式投資に全く興味がない方にとっても、経済動向を展望する上で参考になるかもしれません。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-70.html

(島倉原からのお知らせ2)
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【島倉原】「財政健全化」と「緊縮財政」は似て非なるものへの1件のコメント

  1. 藤田昭仁 より

    目的と手段がいつのまにかすり替わっていて、議論が循環論の迷子になることよくありますね。「財政健全化」は政策目的であり、「緊縮財政」 「積極財政」はともに手段としての政策です。手段と目的がすり替わってしまい、 支出を減らすことが目的になると、支出を減らすために支出を減らすという堂々巡りに陥ります。さて「財政健全化」を政策目的として考える時、「健全」とはどういう状態なのかを定義しなくてはなりません。 島倉先生の記事では健全な財政とは 税収が増えて収支の均衡が取れることのように考ておられるようです。それだけなら手段としての「積極財政」が目的合理的かもしれません。しかし現在の日本の財政は借金漬け。 この状態を放置しておいて、健全な財政とは言えないでしょう。積極財政の財源は増税か借金を増やすことによってしか得られないわけですから、積極財政で投入する金がどのようにして、どれだけのGDPの成長をもたらすのか、それでどのように税収が増え、借金が減らせるのか。 また企業の自己資本にあた税金と債務に相当する国債による調達資金の割合がどのくらいであるのが健全なのか、 つまり財源のうちの借金の割合をどこまで減らすべきなのかの目標設定が必要でしょう。このように目的である健全財政の定義とそれに対する合意ができて、初めて緊縮財政か積極財政かという二律背反議論でなく目的合理な政策はなにかが見えてくるはずです。

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