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2014年9月27日

【宍戸駿太郎】公共投資に労働力不足は深刻か? アベノミクスと天動説

From 宍戸駿太郎@@筑波大学・国際大学名誉教授

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1.労働力は不足か?

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最近アベノミクスの低迷と関連して、財政出動の主柱であるべき公共投資が労働力不足という暗礁に乗り上げかかっている。理由として次の3点が挙げられている。

<1>東日本の大震災の復興需要がすでに労働不足に悩んでいる。
<2>アベノミクスの財政出動に関連する公共投資も工事の発注が人出不足で予算執行の未消化が累積し、これも労働力不足の証拠であるといわれる。
<3>基本的には人口問題があり、生産年齢人口と労動力人口の伸び悩みで公共事業はもはや時代遅れになり始めたともいわれる。

一方、有効求人率は1.1を超え、完全失業率も4%を切って3%台の後半にまで来ているので、労働需給は長年の不況から漸く脱出しかけているようにも見える。

しかし一方で消費税増税8%への引き上げが、この3月までの駆け込み需要の反動でGDPの成長全体が落ち込んでおり、7〜9月には若干回復が見込まれるものの、中期の展望は決して明るいものではないと予想されている。‘労働力不足’型の低い天井の下で低迷型成長が続くのであろうか?

第2の労働不足問題は省力化投資の推進と関連している。現在農業分野からサービス、特に高齢者の介護分野にいたるまでIT化、ロボット化、無人化、等の省力化の波が滔々と広がっている。
先日橋梁の建設工事の分野でも、大小・さまざまのヘリの活躍が報じられていたが、熟練工の不足を補う、省力化の技術革新はいまやこの建設分野でも広がっている。
給与の引き上げは省力技術の導入をさらに加速させるから、いまの日本経済の技術進歩は今後ますます加速する可能性化は高くこの分野でも経済成長は加速する可能性はむしろ高いとみられている。筆者はこの面でも‘天動説’ならぬ‘地動説’を強く支持したいのである。

第3の領域は、アベノミクスが支持する高齢者と婦人の労働力の活用で、今後の潜在分野でも日本経済の技術進歩は進行中であるが、その前にまず考えたいのは、公共建設分野の契約・落札状況の不振の問題である。
この契約単価の引き上げが国や自治体で遅々としていることで、思い切った大胆な単価引き上げで解決する分野が少なくない。
とくに賃金単価の引き上げは、アベノミクスの第三の矢の平均給与引き上げ運動にも貢献するから、建設単価引き上げに反対する理由は全く見当たらない。この問題の解決は緊急を要するが、労働不足を補う高齢者と婦人労働力の問題が近年注目されてきた。

まず高齢者の有効活用は技術大国日本の輝かしい伝投技術の持続と進化に欠かせない分野であり、その潜在力はきわめて大きい。
また婦人労働力の積極的活用も人手不足_特に事務・管理系とIT技術系の両分野で今後活用の余地は広がりつつあり、この将来は極めて明るい。
生産年齢人口の減少傾向に強力な歯止めをかけるのは、この二つの戦略的労働力の存在で、近年急速に注目を集めつつあり、筆者はこの面でも地動説の見方である。

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2.公共投資の中長期の経済効果:金融支援型公共投資は財政健全化の王道である

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近年 マネタリストを中心に財政支出、特に公共投資の経済効果に疑念を投げかける論者が多い。しかし実証分析の結果は、全く逆で、特に金融支援付きの公共投資は実質GDPと雇用に有意な影響を与えるだけでなく、名目GDPの拡大と税収入の自然増収を通じて、財政収支を改善させ、政府債務比率を有意に低下させることが判明している。

今回日本の20年デフレもこの問題の究明をおろそかにして、デフレによる歳入不足と政府債務の累増とが財政支出の節約不足とと増税努力の怠慢であるかのごとき議論がいまでもマスコミを含めて広く行はれているのはまさに天動説そのものである。

以下で取り上げる公共投資は経済学では、アコモデーテツド・フィスカルポリシーと呼ばれ、通常の純粋の財政政策とは峻別されている分野である。日銀は政府の公債発行を間接的に購入して債権市場の梗塞を未然に防ぐ、いわば裏方の支援政策が通常の公共投資の慣行であり、下図はこの影響をグラフで示したものである。(詳細は数表参照)

※グラフ
http://mitsuhashitakaaki.net/images/shiryou2.pdf

※数表
http://mitsuhashitakaaki.net/images/shiryou1.pdf

公共投資は毎年20兆円で5年間(累積100兆円)の経済効果を以下のグラフでは8個の変数の動きとしてで表示している。すなわち

実質公共投資 実質GDP 実質民間消費 実質住宅投資 実質設備投資 名目GDP 政府プライマリーバランス 広義の通貨供給(M3)

グラフの最左端が実質公共投資で、毎年5兆円づつが支出される。その右側が実質GDPでその乗数効果は初年度(2011年)1.6倍から5年目2015年)には2.7倍まで上昇する。問題は名目GDPの動きで、初年度は1.4倍から5年目には3.3倍まで増加し、以後は実質と同様名目値もその伸びは収斂する。

政府収入は初年度の3倍強となり、政府プライマリ・バランスは当初は赤字でも2年目以後は大幅に黒字となり、このことは政府債務・GDP比率も減少することを意味する。ところでこの間の潤滑剤の役割は通貨供給(M3)の急増で、初年度の21兆円から5年後には4倍強の87兆円となり、最高の伸びを示している。為替レートも当然円安に推移し、経済効果を高める要因となる。

このアコモ型財政政策は俗称‘合わせ技’ともいわれ、これまで日銀は必要の都度しばしば行っており、特に珍しいものではない。このシミュレーションの教訓は、この合わせ技型の公共投資こそ財政再建の王道であり、消費税率引き上げ政策のような財政再建策はむしろ邪道であることを鮮明に示しているのである。

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3.まず国土計画の見直しを先行させ次に‘国土強靭化計画’を断行せよ
:財政再建は金融支援型公共投資の下では自動的に達成する

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現在のアベノミクスの減速傾向をストップさせ、総需要と総雇用を全国的に喚起させる絶好の機会が今こそ到来しているのである。全国の衰弱型の地域経済が再び気力を取り戻し、経済優先のアベノミクスが再出発する好機が熟しつつあるとみてよい。
そのためには無計画のばらまき型の公共投資の積み上げを避け、日本列島全域の血流を活性化さすための全国開発計画を20年間の射程でまず構想化し、これを5年おきの中期開発実行プログラムで着実に実行し、耐震、減震、復興の具体化プランのもとで、地域経済の安全と再活性化を図るべきである。

いまアベノミクスの真価がまさに問われようとしている。天動説から地動説への180度の転換で、日本経済は初めて完全雇用/完全稼働の方向へと舵を切り替える好機が到来したのである。

参考資料:拙著『奇跡を起こせアベノミクス─あなたを豊かにする世直し提言』(あうん出版)
http://amzn.to/1oir9Ir

PS
韓国が絶対に日本人に知られたくないこととは?
https://www.youtube.com/watch?v=ZK5RY5rIGs8

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【号外】三橋経済塾通信1

【宍戸駿太郎】公共投資に労働力不足は深刻か? アベノミクスと天動説への3件のコメント

  1. バルハンハルドゥンナ偏屈男 より

     ある意味、トリクルダウンを唱える考え方は、植民地、人種(広義に)差別主義が頭の回路の根底にあるからこそではないかと思ってしまう。 否、需要は着いて来るものと考える、ローテク時代の理論を使用しているのがおかしい?気がする。

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  2. 拓三 より

    本当に、本当に、本当に、仰る通りでございます。                    以上。

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  3. パソナシステム擁護隊 より

     自分な親と同世代位の先生。この時代のエリートたる先生等を煙に巻くような政策だらけの現政財官メディアには怒りを感じ、情けなくて泣きたくなります。天動説‥‥ある意味、政財官メディアは政府の本来持ち合わせている機能を悪魔とまで見なし封印し、デフレの根源が需要不足だとは導かない逆輸入自由思想の日本版“ネオアベ経済真理教”の教えを崇める単なる一企業と化したのでしょうか。「政治ですから…」と発言されていた総理。政治だからこそ一企業家の為にルールをぶち壊すなんてしちゃいけないんじゃないんですか?。結局、党内政治に奔走していていいんでしょうか。そうアホなマイ頭が感じるだけなんでしょうね。やはりネオリベ回路なんですね。そんなトップダウンならもういっそショートさせちまえよっ!バチッバチッバチッバチッバチッバチッバチッバチッバチッバチッバチッバチッバチッバチッバチッバチーッ!ほとほと愛想も尽きていく気がします。そんなコメント字体が愛想尽かされてますね。

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