From 適菜収@哲学者
維新の党が旗揚げとかエボラ出血熱が拡大とか、暗いニュースが続いていますが、最後の最後は自分に投資した奴が生き延びる。ということで、英会話学校に行くカネがあるなら、ギターを買ったほうがいいと思うんだよね。カスタネットでもいいけど。
今回は先輩のミュージシャン、山田大介氏と、曲つくりについて語り合いました。
※※※
【最初の一曲は「ラヴ・ミー・ドゥ」がお勧め】
適菜 スリーコードでペンタ一発みたいな簡単な曲しか演らないバンドは山ほどあります。最初の頃は、ああいうものから入ってもいい。
山田 ダウン・タウン・ブギウギ・バンドや横浜銀蝿もそうだね。ビートルズの「ラヴ・ミー・ドゥ」もほとんどスリーコードでしょう。
適菜 練習しなくてもすぐに演奏できる曲ですね。
山田 ジョン・レノンは、ほとんどハーモニカしか吹いていないし。出来の悪い曲ですよ。
適菜 「ラヴ・ミー・ドゥ」を延々と演るのもいい。
山田 「ツイスト・アンド・シャウト」もばかばかしくていいよ。ただ、歌詞が英語なのがネック。だから、適当に日本語の歌詞をつければいい。
適菜 「ラヴ・ミー・ドゥ」の部分だけ英語で唄って、あとは鼻歌でもいい。
山田 あの曲は歌詞も簡単だからね。三行くらいですから。
適菜 そもそも歌詞なんて三行くらいでいいんですよ。
山田 ビートパンク系の音楽をやりたいなら、歌詞なんて重要じゃないんだよ。むしろボーカルは楽器の一種だからね。
適菜 歌詞を扱うのが面倒なら、ボーカルは楽器として割り切ってしまえばいいんですよ。
山田 うん。リズムが一番大事だからね。ビートルズもきちんと聴くと、リズムがブレている。
適菜 アマチュアバンドが、きちんとしたリズムをキープするのはほとんど不可能に近いのでは?
山田 楽器の中ではドラムが一番ハードルが高いと思う。アマチュアとプロのドラマーって実力が雲泥の差だよね。でもギタリストの場合、プロに遜色のないアマチュアは多い。
適菜 だから、リズムに関しては挫折感を味わう必要はない。
山田 恥ずかしがらずにやればいい。心を込めていれば、右手と左手が一緒でもいいよ。精神的な話だけどさ。
【「オリジナルの曲」なんて幻想】
山田 コピーバンドを始めても、飽きてしまう人は多い。心の中に渦巻く情熱を未来の音楽につなげていくためには、最初はいびつなものでもいいので、自分の音楽をどんどん実験しながら作っていくことが大切ですね。
適菜 うん。
山田 たとえ失敗しても、かけがえのないものができることがある。
適菜 アマチュアバンドはお金をとるわけではないから、誰の曲でも勝手に演奏していい。あと好きな曲をパクって適当にアレンジして自分の曲にしてしまえばいいんです。
山田 プロでもそんな奴いっぱいいるからね。Bzもパクリが多いでしょう。
適菜 Bzはデビュー後ぜんぜん売れなくて、ブレイクしたのが「バッド・コミュニケーション」という曲ですね。私は当時高校一年生だったけど、すごくショックを受けたので覚えている。あれは、レッド・ツェッペリンの「トランプルド・アンダー・フット」の完全なパクリでしょう。最初はカバー曲かと思っていた。
山田 『フィジカル・グラフティ』に入っている曲か。
適菜 なんとなく似ているのではなくて、完全な盗作。まあ、ポップスは構造的にすべて盗作にならざるを得ないのですが。一方、アマチュアだったら、パクリまくればいいんです。たとえば、好きな曲のドラムとベースのラインをそのまま全部パクって、その上に違う歌詞とメロディーを乗せる。ステージでCDをかけて共演したり。
山田 オレたちが普段しゃべっている言葉も、パクリと言えばパクリ。大人の真似をすることで言葉を覚えるんだから。そもそも何がオリジナルかは判別がつかない。音楽も影響の連鎖にあるわけだからね。
適菜 ゲーテも「独創性にこだわると、人生の大半を迷うことになる」と言っている。「完全な個性」「オリジナルな作品」なんて幻想にすぎないと。ブルースもジャズもまずは型を学ぶところから始まるわけでしょう。
山田 ブルースもジャズも型や定番のフレーズがある。そこはマネをしないと音楽が成り立たないからね。
適菜 プロはそこで「オリジナルである」という幻想を抱かせるのが商売だから、完全な盗作はまずいけど、アマチュアだったら、どんどんいいとこ取りで、曲を作ればいい。
山田 アマチュア・ミュージシャンでも、それに苛まされている人は多いよ。「オレには曲をつくる才能がないんだ」と悩んだり。でも新しいものなんて簡単に生み出させるわけがない。
適菜 そうですね。
山田 われわれも、昔はそういうものを追っていたわけじゃないですか。収ちゃんの部屋で、「新しい音楽とは何か?」と延々とやっていた。でも、あんなことに時間を費やすべきではなかった。
適菜 そんなものできるわけないんだから。「若者の陥りやすい罠」というやつです。
山田 あれは、自分探しの旅みたいなもの。「本当の自分とは何か?」と問う前に、設問自体が不毛であることに気づいたほうがいい。
【もっと自由に曲をつくろう】
山田 今のポピュラー・ミュージックのつまらないところは、カラオケ用のおもちゃになっているところだね。一曲単位でダウンロードして、それを必死で覚えて、カラオケで唄う。最新のヒット曲を誰が一番上手に歌えるかということを競うわけですよ。
適菜 だから、中高生レベルの曲が巷にあふれる。
山田 その「上手」というのもよくわからない。歌い手に似ていることが重視されたり。でも、音楽の楽しみは、むしろそれ以外のところにある。もっと自由に曲をつくればいいんですよ。
適菜 別にオリコンやビルボードに登場するような音楽を作る必要もないわけだし。あれはあれで商品価値はあるんだろうけど。
山田 あれは背広を着た頭のいい人たちが、大量の資本を投入してつくっている世界です。何億円もカネを使って曲をつくって世界に発信するというビジネス。
適菜 それはそれで面白いものができますからね。
山田 逆に言えば、あれだけカネをかけてもたいしたものをつくっていない。軒並みつまらないから、そこがすごいね。
適菜 おそらく、つまらない曲のほうが売れるんですよ。あそこには緻密な計算がある。吉野家の牛丼を、松坂牛にして汁を洗練させても、あまり旨くないと思うんですよ。
山田 吉野屋はあえてアメリカンビーフにこだわっていたからね。カップラーメンもロクなものじゃないけど、年に2回くらいは食べたくなる。
適菜 まずい餃子屋も店舗を増やし続けている。だからよく脱サラして飯屋をはじめるようなオヤジが勘違いするのは、「いいものをつくれば客はくる」と確信しているところ。でも、いいものは売れないんですよ。
山田 なるほど。
適菜 カネを儲けるのが目的だったら、きちんと市場調査して一般受けするような適度にまずいものをつくらなければならない。だから、日高屋やマクドナルドのビジネスに学んだほうがいいんです。つまり、今のポピュラー・ミュージックを「つまらない」と批判しても意味がない。彼らは日々努力を重ねて「つまらないもの」をつくっているんだから。
山田 その一方で、完全に趣味として自分の店を出すというやり方もある。近所のお客さんを取り込んで、きちんと食いぶちを稼ぐ。これはバンド活動も同じで、目標をどこに置くかによって、方向性も必然的に決まってくるわけです。
適菜 そうですね。味が分かる常連だけで成り立つ店があれば、それはそれで幸せなことですからね。
山田 特に東京はそれが可能な街です。人口1300万人のうち200人くらいの客を常時呼ぶことができれば、なんとか食っていくことはできる。
適菜 バンドをつくるときに、ミスチルみたいになってミリオンヒットを狙おうと思っても必ず頓挫します。ああいうものをつくるためには、資金とバックが必要となる。
山田 テレビに毎日のように露出していれば、視聴者も愛着がわくだろうしね。でも、そういう世界はむしろ例外であって、ほとんどのバンドは、半径数キロの世界で成り立っている。
適菜 だから、最初はデモテープ、デモCDをつくって、30枚くらいを売るのを目標にすればいいんですよ。タワーレコードに置いてもらったりして。
山田 今だったら、ユーチューブやニコニコ動画に直接流せばいいわけだし。
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【適菜収】近代とオリジナル幻想への1件のコメント
2014年9月26日 10:23 AM
レッド・ツェッペリンなんて古典ブルーズ他をパクりまくってるくせに著作表示ロクにしてないし(笑) その点、ストーンズは立派だね。先人たちへの敬意がある。
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